大臀筋とは?作用から筋トレメニューまで徹底解剖!コレで大臀筋マスターだ!

監修者

佐々木大地

NSPAパーソナルトレーナー

【プロトレーナー解説】大臀筋を大きく綺麗に発達させることは意外と難しいです。この筋肉の機能や特徴を正しく理解することで効率よく理想的なボディラインを作ることが出来るようになるでしょう。

大臀筋の機能と作用

大臀筋を鍛えてお尻を引き締めたいです!

佐々木大地監修トレーナーからのアドバイス

NSPAパーソナルトレーナー

いいですね!大臀筋の説明は以下の記事で説明させて頂きましたが、ここでは更に詳しい解説を加えていきたいと思います。

大臀筋はgluteus maximus(グルティアス マキシマス)と言ってギリシャ語由来の言葉です。グルティアスは殿筋、マキシマスは最大を意味します。glut(グルート)と省略される場合が多いです。

大きな特徴としては、単一の筋肉として人体で最大のサイズの筋肉であるということがあげられます。筋体積は864㎤です。当然発揮する力も強い筋肉です。深部に中殿筋、更にその下に小殿筋が位置しています。ちなみに人体で2番目に大きい筋肉は三角筋で792㎤です。この二つはどちらも自由度の高い四肢の動きのかなめになる関節を動かしている筋肉ですので非常に強い作りをしています。

起始は腸骨翼の殿筋面、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、胸腰筋膜と幅広く付着しています。そこから大腿骨の殿筋粗面に停止部があり、更に大腿筋膜の外側部で腸脛靭帯に移ります。

支配神経は下殿神経となっており、主な働きとして股関節の伸展(特に屈曲位から)、外旋、股関節の外転、内転です。

股関節の伸展は階段や傾斜の強い坂道を上る時の動作やスクワットなどの座位からの起立動作に移る動きなどが分かりやすいでしょう。走る動作の際にはハムストリングスと共に体を前方に運ぶ為、強く働きます。

体のバランス制御の作用

また、殿筋群はバランス制御にも大きく貢献しています。お尻の筋肉が弱ってくると片足でバランスを取ることが難しくなります。通常片足で立つときは軸足を体軸の中央にキープすることでバランスが取れるのですが、殿筋が弱いと軸足を中央に維持できなくなる為、軸がずれてバランスが取れません。

股関節の外転とは股関節から脚全体を外向きに捻る動きの事です。スクワットで足を外側に向けて開いたワイドスタンスを取ると大臀筋を強く収縮させることができます。股関節の外転とは直立姿勢で片足を外側に開く動作の事です。よく床に横向きで寝転がり脚を上部に持ち上げて開くエクササイズがあると思いますが、あの動作がまさにこの股関節の外転のトレーニングになります。マシンのトレーニングでいえばアウターサイがこれに当てはまるでしょう。

内転はその逆で、開いた脚を閉じる動作になります。股関節が外旋(膝が外側に向いている)状態で脚を閉じる動作を行うと非常に強い収縮を感じられます。

大臀筋は強い力を発揮する

大臀筋は羽状筋であるため基本的に収縮速度は速くないですが非常に強い力を発揮します。可動域を取ることよりも、しっかりと重りを持ちながら殿筋に負荷をかけるトレーニングを行いたいです。

ワイドスタンススクワットを実施する際に挙上重量の変化で各筋肉の仕事量や関節トルクがどのように変化するのか実験した論文があります。

Yoshiaki Manabe, etc(2003) “EFFECT OF LOAD VARIATION ON LOWER MUSCLE ACTIVITY AND JOINT TORQUE DURING PARALLEL SQUATS”

これによると大臀筋に関しては1RMに対して90%の重量を選択した方が1RM60%と75%よりも著しく大臀筋の動員量が大きくなりました。ただし、何も考えずに高重量のトレーニングをするだけでは連動して動く内転筋やハムストリングスが先に疲労してしまい、大臀筋まで刺激が届いていないという状況になることがあります。股関節の使い方や足の置き方などを工夫していくことで刺激をダイレクトに届ける事が出来るようになるでしょう。

筋繊維の割合は速筋繊維が47.6%、遅筋繊維が52.4%となります。

佐々木大地監修トレーナーからのアドバイス

NSPAパーソナルトレーナー

上記の点を踏まえると大臀筋の発達には重さを持つ種目と回数をこなす種目の両方を行うことがベストになります。

そして覚えておいていただきたいのが、大臀筋がサイズアップするときは必ず脚の筋肉全体が大きくなるという事。殿筋群は単一で鍛える事が出来ない筋肉です。必ず他の筋肉と連動して動きます。そのため大臀筋を狙った種目でも負荷を上げていけば一緒に動く筋肉はどうしても発達してしまいます。

しかし、女性の場合は下半身に関してもともと脂肪が多かったりむくみやすい方が部位ですのでトレーニングを継続することでの引き締め効果の方が筋肥大反応よりも早く表れるかと思います。
これらの機能・特徴を踏まえて臀部のトレーニング筋トレを行うことが出来ればフリーウエイトでも自重でも効果的な筋トレが出来るでしょう。

大臀筋の鍛え方|自重トレーニングメニュー

佐々木大地監修トレーナーからのアドバイス

NSPAパーソナルトレーナー

まずは自宅でも実施可能な大臀筋の鍛え方・筋トレメニューをご紹介します。

たるんだお尻を引き締める為ならばここで紹介する筋トレ種目でも十分に効果があります。ただしある程度の食事管理は絶対に必要です。ボディメイクは総合的に取り組んで初めて効果が出てきます。これだけやれば大丈夫という甘い言葉に流されないようにしましょう。

ドンキーバックキック

鍛え方ですが、まずは四つん這いになって背筋をしっかり伸ばします。お腹にしっかり力を入れておきましょう。膝の角度を90度でキープしたまま片足を後ろに蹴りだします。体勢が崩れない範囲で出来る限り足を高く持ち上げましょう。
大臀筋ににしっかり力が入っている状態を確認してからゆっくり元の位置に戻します。15~20回程度反復したら左右を入れ替えます。2~3セット程度繰り返すようにしましょう。チューブやバンドを利用して負荷を上げる事も出来ます。

足の裏中央にバンドを引っかけて逆側を手に持ちます。そのままバンドの負荷を感じつつ、後ろに足を蹴りだします。足を伸ばし切ったらゆっくりと負荷が抜けないように戻します。

ヒップリフト

仰向けになり膝を立てます。両手で床を抑えバランスを取りやすいようにして構えます。両足は肩幅程度に開いておいてください。お尻を引き締めながら腰をなるべく高く持ち上げます。体が一直線になるところまで持ちあがったらゆっくりと腰を下ろします。
この時床にお尻が付かないようにして、そのまま動作を反復しましょう。強度を上げる場合は足の位置を高くしたり、片足で行うようにすると手軽に強度を上げられます。これも15~20回程度反復出来るようにして2~3セット程度を目安にしましょう。

ステーショナリーランジ

この筋トレ種目は最初にボトムポジションを作っておくほうが動作をスムーズに反復出来ます。片膝立ちの要領で片足を一歩前に踏み出した体勢で両足の膝を角度が90度になるようにします。後ろ脚の膝は床から5cm程度浮かせて構えます。
ここから立ち上がる動作を繰り返すだけなのですが、前足に重心をのせたまま動作を反復する為に若干上半身を前傾させておく事と立ち上がる動作を行う時に後ろ脚が伸びるようにしましょう。横から見たときに上半身が真っすぐ上下しているように動けていればOKです。

佐々木大地監修トレーナーからのアドバイス

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自重では強度が高い方もいらっしゃるかもしれませんが、5回でも10回でもまずは出来る範囲で反復しましょう。

1セット20回程度反復出来るようになったらダンベルを両手に持つなどして強度を上げてみましょう。これも2~3セット程度出来れば良いでしょう。お尻により重点を置いて行う、あるいはバランス制御の強化を行うバリエーションとして両足を一直線において構えるパターンがあります。通常のステーショナリーランジが20回程度反復出来るようになったら試してみましょう。

大臀筋下部とハムストリングスの境目を作る筋トレメニュー

どの部位も同じような事が言えますが、一つの種目で全体を綺麗に刺激することはかなり難しい作業になります。全体に刺激がいきわたっていたとしても、必ずどこか集中的に刺激されている場所があるので偏った成長をしてしまいます。色々な種目のバリエーションを持っておく事で刺激がマンネリせず常に新鮮な刺激を筋肉に送ることが出来るでしょう。

大臀筋下部を鍛えるにはハムストリングスにストレッチがかかる種目やスクワット系の種目が非常に有効です。同じ筋トレ種目でも、太ももを狙うフォームとは多少考え方が変わってきます。

ワイドスタンススクワット

肩幅の1.5倍程度に足幅を広げて爪先を外に向けた状態で構えます。足の幅と爪先の角度は膝の動く向きと爪先の向きがあっている事としゃがみ切ったときに脛が垂直になるという点を合わせて確定します。
しゃがみ込む時は膝を爪先の方向に向けて蟹股に開き、骨盤をしっかり前に前傾させお尻を突き出す事で大臀筋・内転筋・ハムストリングスをストレッチさせます。太ももが平行になるくらいが目安です。出来ればお尻が膝頭よりも少し下がるくらいがベストでしょう。
そこからお尻を引っ込めるように立ち上がります。スクワット系の種目では強度が軽すぎると大臀筋が優先的に使われずに他の部位ばかり疲れてしまう事があります。ただ、あまりに重い重量を扱う事はかなり上級者にならないと難しいと思いますので、8~12回程度を目安にしっかり限界まで追い込むようにしましょう。

ルーマニアンデッドリフト

通常のデッドリフトと同じ要領でバーベルを肩幅で握ります。この時、通常のデッドリフトよりもお尻を高くつき上げるようにしてハムストリングスにストレッチをかけるようにします。膝を伸ばすように意識しましょう。ただし、膝が完全に伸びきらない様にすることがこの種目のポイントです。
膝を完全に伸ばした状態で行うスティフレッグデッドリフトではハムストリングスのストレッチと脊柱起立筋群への刺激が優先されて大臀筋を強く収縮させることが出来ません。扱える重量も落ちますので必然的に大臀筋の刺激が弱くなります。
ルーマニアンデッドリフトの方が重量を扱いやすいため殿筋への刺激は高くなりやすいです。デッドリフト基本かかと重心で行う種目ですが、若干つま先重心にして体を少しだけ前傾させておくようにすると殿筋への刺激が強くなります。最後まで収縮させきる種目ではないのでパワーラック等で高さをセッティングできる場合は若干高めにセーフティーバーをセットして出来るだけ高重量を扱えるようにしたほうが良いでしょう。

大臀筋上部を盛り上げる筋トレメニュー

ブルガリアンスクワット

シングルレッグスクワットなどと表記されることもありますが、片足で行うスクワットにも色々とバリエーションがあります。ここではブルガリアンスクワットで統一させて頂きます。

大臀筋・大腿四頭筋・内転筋・ハムストリングスなど下半身全体の筋肉が使われるため、筋肥大反応を起こしやすい種目です。股関節が弱い方やスクワットが苦手な方は、この種目をメインの種目として取り入れることもできるでしょう。

ベンチに足の甲を乗せて、もう片方の足は前方に大きく踏み出します。前足の膝を90度程度まで曲げたら、そのまま立ち上がります。この種目はいくつかポイントがあります。まず、基本的に終始かかとに重心を置くようにします。ダンベルや角材などでつま先を上げて構えても良いでしょう。
基本的に胸を張った状態で動作をスタートしますが、自重で行う場合やダンベルなどで加重する場合は上半身を前傾させて股関節をより大きく使うようにするとストレッチが強くかかります。バーベルはバランスを崩した時かなり危険なのでおすすめできません。

佐々木大地監修トレーナーからのアドバイス

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ダンベルがあれば自宅でも高負荷で大臀筋上部を鍛えることができます。

高重量で加重したい場合はスミスマシンを使いましょう。ただしこの場合は終始上半身は胸を張ってまっすぐにキープします。そうしないと重量を持てないだけでなく、股関節に無駄な負担をかけてしまいます。足の置く位置も調整します。

最初に90度程度に曲がるように足の位置を決めるようにお伝えしたと思いますが、そこからさらに1歩大きく踏み出して動作中に膝が自分のくるぶしよりも前に出ないくらいの位置にセットしてみてください。ここまでしっかりポジションを決めればかなりダイレクトに大臀筋を刺激できるでしょう。

ヒップスラスト

大臀筋のトレーニングとしては王道の種目でしょう。この種目はストレッチはさほど意識せずに収縮を最大限に行うようにします。スクワット系の種目と違って大腿四頭筋の関与が0に近い状態を作れますので、臀部を集中的に鍛えるにはベストな種目でしょう。比較的難易度の低い種目ですので、お尻を鍛えたい方はすぐにでも実行しましょう。
膝を立ててベンチの前に座り、膝を立てておきます。そのままベンチに仰向けになってください。肩甲骨の下側をシートに当てるようにすると丁度良いポジションを作れます。足の幅は腰幅から肩幅くらいで収縮感の強い場所を探してください。膝の角度は90度で固定しましょう。ウェイトで加重する場合はバーベルを股関節の付け根部分に乗せましょう。スクワット用のパッドをまけば慣れていない方でも痛みなく加重出来るでしょう。

セットが完了したらそのままお尻を高く持ち上げます。トップまで持ち上げたら1秒静止してゆっくりウェイト下ろします。ストレッチを狙う種目ではありませんので可動域全体の半分程度まで下ろしたらすぐに切り返すようにしましょう。8回~12回前後反復出来る回数で行いましょう。

ブルガリアンスクワットやヒップスラストはスクワットやデッドリフトとは違ってある程度高重量が扱えて、大臀筋にメインの刺激を送ることが出来る珍しい種目です。下半身のトレーニングとして積極的に取り入れるようにしましょう。

佐々木大地監修トレーナーからのアドバイス

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後半で紹介した大臀筋の種目をワイドスタンススクワット→ブルガリアンスクワット→ルーマニアンデッドリフト→ヒップスラストの順で行って頂くと下半身全体を万遍無く鍛えながら、大臀筋を大きくきれいに作りあげる事が出来ると思います。是非試してみてください。

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