一概に筋肉がついているといっても、マラソン選手と短距離走の選手では筋肉の付き方が違いますし、それぞれ得意分野が違います。マラソン選手と短距離走の選手などの筋肉の付き方や得意分野の違いは、遺伝子によるものか解説します。
速筋と遅筋の違いとは?
スポーツ遺伝子を理解するために、まずは筋肉の種類である「速筋」と「遅筋」のそれぞれの特徴を説明します。
速筋とは?
速筋は筋肉の収縮する速度が早いため、瞬発的に大きな力を働かせることのできる筋肉をいいます。速筋は筋肥大しやすく、アウターマッスルや白筋とも呼ばれます。速筋が発達する競技としては、ボディービルダーや短距離走の選手などがあげられます。
遅筋とは?
遅筋は筋肉の収縮する速度は遅く小さな力しか働かせることは出来ませんが、持久力のある筋肉です。遅筋は筋肥大しにくく、インナーマッスルや赤筋とも呼ばれます。遅筋が発達する競技としては、マラソンがあげられます。
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筋肉には、速筋と遅筋があります。速筋は瞬発的な力を発揮し、遅筋は長時間にわたって力を発揮する筋肉です。目的によって鍛え方が変わります。ダイエットをしたい方は、遅筋を鍛えるとよいとされています。この記事では、遅筋の鍛え方を紹介します。
「スポーツ遺伝子」とは?
遺伝子とは?
人間の体は約60兆億個の細胞から構成されています。細胞の中には核があり、核の中には46本の染色体があります。染色体は23本は父親からの遺伝によるもので、残りの23本は母親からの遺伝によるものです。
染色体は遺伝情報がのっているDNA(デオキシリボ核酸)とタンパク質であるヒストンから構成されています。DNAは二重らせん構造という形で、1つのDNAを伸ばすとその長さは2mにもなります。
DNAは糖、リン酸、塩基から成り立っています。塩基には、アデニン、グアニン、シトニン、チニンの4種類があります。「遺伝子」とは、塩基配列によって記録された遺伝情報をいいます。
「スポーツ遺伝子」とは?
人間は「遺伝子」を約3万個持っていますが、スポーツ能力に関わる可能性のある「遺伝子」も100個以上判明しています。そしてスポーツ能力に関わる可能性のある「遺伝子」は「スポーツ遺伝子」と呼ばれています。
「スポーツ遺伝子」は「遺伝子」であることから、「スポーツ遺伝子」のタイプや性質を変えることは出来ないので、自分に適したスポーツを選ぶことも一つの手であるといえます。
スポーツ遺伝子① 「ACTN3」
「ACTN3」遺伝子とは?
「α-アクチニン3」は速筋で作られる遺伝子で、正常に「α-アクチニン3」を作り出せる遺伝子を持つR型と、「α-アクチニン3」を作り出すことのできない遺伝子を持つX型があります。
速筋では「α-アクチニン3」以外に「α-アクチニン2」というタンパク質も作り出しており、遅筋でも「α-アクチニン2」は作り出されています。そのため「α-アクチニン3」が作り出せない変異型のX型であっても、速筋の機能を果たすことが出来ています。
「ACTN3」の遺伝子タイプとしては、3種類あります。両親それぞれからR型遺伝子を受け継いだ場合はR/R型となります。一方の親からR型遺伝子を受け継いで、もう一方の親からX型遺伝子を受け継いだ場合はR/X型となります。両親それぞれからX型遺伝子を受け継いだ場合はX/X型となります。
筋肉の付き方と得意分野
・速筋型(R/R型)
速筋型は、α-アクチニン3を遺伝子型の中で最も多く作り出すことができる遺伝子型です。そのため筋肉を肥大させることのできる速筋が多いので、筋肉を肥大させやすい遺伝子型といえます。
また速筋は瞬発力を必要とするスポーツに適しており、ウエイトリフティング、短距離走、投てき競技、跳躍競技などを得意分野とします。
両筋バランス型は、α-アクチニン3を作り出す量は標準的です。そのため速筋と遅筋のバランスがとれており、いわゆる細マッチョ体型になりやすい遺伝子型といえます。
また瞬発力と持久力のどちらも必要とするスポーツに適しており、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、テニスなどを得意分野とします。
遅筋型は、α-アクチニン3を作り出すことの出来ない遺伝子型です。そのため遅筋が多く、すらっとしたモデル体型になりやすい遺伝子型といえます。
また遅筋は持久力を必要とするスポーツに適しており、長距離走、ダンス、登山を得意分野とします。
スポーツ遺伝子② 「ACE」
「ACE」遺伝子とは?
スポーツ遺伝子の中に「ACE」という遺伝子があります。「ACE」は運動時に血管を収縮させて血液の供給量を調整する物質を作り出す遺伝子で、運動時の疲労度に影響します。
「ACE」の遺伝子型は血管拡張能力の高いI型と、血管収縮能力の高いD型があり、遺伝子タイプとしては3種類あります。両親それぞれからI型を受け継いだ場合はI/I型になります。一方の親からはI型を、もう一方の親からはD型を受け継いだ場合はI/D型になります。両親それぞれからD型を受け継いだ場合はD/D型になります。
得意分野
・血管拡張型(I/I型)
血管拡張型は、血管を拡張させる能力が高く、筋肉に酸素や栄養を供給する能力が高いです。そのため疲労物質が抜けやすく、疲れを感じにくい遺伝子タイプといえます。
また持久力を必要する運動に適しており、酸素や栄養を供給する力が高いため、無酸素状態になる登山が得意分野です。
・血管拡張/収縮バランス型(I/D型)
血管拡張/収縮バランス型は、血管を拡張させる能力が標準的です。そのため運動をすると程よい疲れが感じられる遺伝子タイプであるといえます。
また瞬発力よりは持久力を必要とする運動に適しており、得意分野とします。
・血管収縮型(D/D型)
血管収縮型は、血管を収縮させる能力が高く、瞬間的に筋肉に酸素や栄養を供給する能力が高いです。そのため瞬発力を必要とする運動に適しており、得意分野とします。
スポーツ遺伝子③ 「PPARGC1A」
「PPARGC1A」遺伝子とは?
スポーツ遺伝子の中に「PPARGC1A」という遺伝子があります。「PPARGC1A」は、ミトコンドリア合成や機能の調整に関わる「PGC-1α」の働きを活発にさせる遺伝子です。
「PGC-1α」の働きを活発にさせることで、ミトコンドリアが増え、エネルギーが合成されるので、使えるエネルギー量も増えます。
「PPARGC1A」の遺伝子型は、ミトコンドリアの増殖能力の高いG型と、ミトコンドリアの増殖能力の低いS型があります。遺伝子タイプとしては、両親それぞれからG型遺伝子を受け継いだ場合はG/G型となります。一方の親からG型遺伝子を受け継いで、もう一方の親からS型を受け継いだ場合はG/S型となります。両親それぞれからS型遺伝子を受け継いだ場合はS/S型遺伝子となります。
得意分野
・ミトコンドリア高増殖型(G/G型)
ミトコンドリア高増殖型は、ミトコンドリアを増やす力が高いため、高い運動強度でも長時間運動することができる運動効率の高いタイプであり、持久力を必要とする運動を得意分野とします。
・ミトコンドリア標準増殖型(G/S型)
ミトコンドリア標準増殖型は、ミトコンドリアを増やす力が標準的にあるので、継続した運動をすることで、運動効率を向上させて、持久力を必要とする運動を楽に行うことができるようになります。よって持久力を必要する運動は得意分野といえます。
・ミトコンドリア低増殖型(S/S型)
ミトコンドリア低増殖型は、ミトコンドリアを増やす力が低いので、他の2つの遺伝子タイプと比べて持久力を必要とする運動は得意ではありませんが、運動習慣を身につけることで運動効率は良くすることは可能です。
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