股関節の筋肉の全て|作用や痛みの原因・筋トレ・ストレッチ方法まで

監修者

福山 宏

NSCA認定パーソナルトレーナー JFTA認定ファンクショナルトレーナー

【専門家解説】股関節の筋肉の作用とは?腰痛などの痛み予防のためになぜ股関節が重要なのか?解説します。さらにストレッチやトレーニング方法についても解説します。股関節周りの筋肉をほぐす。ほぐした後は正しく刺激する。重心、軸を意識して扱うことで股関節の痛みは勿論、膝の痛み、腰の痛み、間接的には肩こりの改善にも繋がります。

股関節を支える筋肉とは?

股関節を支える筋肉は主に①臀筋②大腿深部の外旋筋群③股関節全面の筋肉の3つに分類されます。
これらの筋肉がそれぞれ作用することにより、股関節の屈曲や伸展、内転や外転、内旋や外旋という機能が果たせるのです。

3つの分類をもう少し具体的に見ると以下のようになります。
大臀筋、中臀筋、小臀筋

腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)、恥骨筋

福山 宏監修トレーナーからのアドバイス

NSCA認定パーソナルトレーナー JFTA認定ファンクショナルトレーナー

実際は①、②、③にはもっと多くの筋肉が関係してきますが、代表的な筋肉を上げるとこのようになります。

このように、股関節周りには数多くの筋肉が関わっています。その理由は、股関節が人体の動きをサポートする上で非常に重要な役割を果たすからです。
例えば、ヒトは背骨をもった脊柱動物ですが、背骨は骨盤にくっついています。そして股関節は骨盤にくっついた筋肉ですので、股関節を支える筋肉のバランスが悪くなる(いずれかの筋肉が硬い、弱いなど)と骨盤の位置が悪くなり、結果的に背骨に影響します。姿勢が悪くなり、肩こりや腰痛など様々な症状の原因になってしまうのです。

では、股関節周りの筋肉のバランスが崩れるとどのようなことが起こるのでしょうか?

痛みの原因は、股関節周りの筋力のバランスにある。

前述したように、股関節周りにはたくさんの筋肉があります。この筋肉がバランスよく使われないと、痛みが出てしまいます。

筋力がアンバランスだと、部分的に負担がかかります。すると筋肉が固くなってしまい、血液の循環が悪くなります。そして、筋肉に酸素が行き届かず痛みになるわけです。それは股関節に限りません。膝、足首にも負担がかかっていきます。さらに腰にも負担がかかり、最終的には、肩にも影響が出ることもあります。腰痛や肩こりですね。だから股関節周りの筋肉をバランスよく使えるようにすることは、とても大切なことなのです。

そのためには、まず固くなってしまった筋肉をしっかりほぐしていきましょう。ほぐしていくと痛みがだんだん消えていきます。ただ、ここで終わってしまうとまた痛みが起きてしまいます。つまり、痛みのくせが取れていないのですね。

そもそも、痛みが起きるのはなぜか?それはタイトル通り、筋力のバランスが崩れているからなのです。ですので、ほぐした後は正しく使えるようにしてきましょう。

次の項では、ほぐす方法と土台づくりの基本的なメニューについて説明します。

股関節の筋肉のストレッチ

福山 宏監修トレーナーからのアドバイス

NSCA認定パーソナルトレーナー JFTA認定ファンクショナルトレーナー

まず、硬くなってしまった筋肉を和らげるためにストレッチをやりましょう。

太ももを引き寄せる(股関節の屈曲)

仰向けになって、片膝を抱えるようにして、お腹の方に引き寄せます。

太もも前を伸ばす(股関節の伸展)

横向きに寝転んで、足首を手で持ちます。足首をお尻に引き寄せながら、体全体をやや後ろにそらしてみましょう。太ももの前が気持ちよく伸びていきます。

お尻の横を伸ばす(股関節内転)

仰向けに寝転んで両膝を三角形に立てます。そこから、片方の足首のくるぶしより少し上をもう一方の三角形に立てている膝に引っ掛けます。その膝の太もも後ろをお腹に向かって引き寄せるようにします。

いてて…。これは苦手です

福山 宏監修トレーナーからのアドバイス

NSCA認定パーソナルトレーナー JFTA認定ファンクショナルトレーナー

ということは普段がに股気味で股関節が開いてしまっているかもしれませんね。太ももの内側(内転筋)が弱くO脚かもしれません。

内腿を伸ばす(股関節の外旋、外転)

仰向けに寝て、片膝を90度に曲げて軽く持ち上げます。そこからガニ股にするようなイメージで片脚だけ足を開きます。

以上、この四つのストレッチをやりましょう。

福山 宏監修トレーナーからのアドバイス

NSCA認定パーソナルトレーナー JFTA認定ファンクショナルトレーナー

さて、こうして、股関節周りの筋肉がほぐれてきました。次は、いよいよ土台作りに入ります。

股関節の安定のためにインナーマッスルを鍛える

体がほぐれてきたら、次にやることは土台作りです。
まずは、股関節の細かい動きを身につけるためにインナーマッスルを動かしましょう。

シェルエクササイズ(股関節外旋)

横向きに寝転んで、膝を90度に曲げておきます。つま先を適度に引き寄せた状態で、膝を外側に向かって開きましょう。扉がぱたっと開いては閉じるようなイメージです。

股関節周りの小さな筋肉(深層外旋六筋、中臀筋など)がしっかり動き、股関節を安定させます。

ヒップリフト(股関節伸展)

仰向け寝て、両膝を三角形にして立てます。この時、すねは地面から垂直になるように、お尻に近づけてきます。

また、足幅は骨盤の幅に開いておきましょう。
ここから下腹に軽く力を入れて、お尻を持ち上げて下ろします。お尻と太もも後ろの筋力が整っていきます。

インナーサイ(股関節内転)

横向きに寝転んで、上の足を曲げて床についておきます。下の脚をまっすぐにしたまま、地面から軽く浮かせて、またおろします。

内腿の筋肉が整っていきます。

ニーアップ(股関節屈曲)

立った状態で、片脚を床と平行になるくらいまで、引きあげましょう。大腰筋や、腸腰筋が整っていきます。

股関節は球関節で、前後左右に動きますから、先の種目のように前後左右の四方向から動かす練習をします。
こうして、股関節をあらゆる方向に動かす練習をすることで、筋力のバランスが整っていきます。

ただ、ここまでのトレーニングでは、土台の体が重力に対応してくれるかというと、100%そうとはいえません。寝転んだ状態で作った体は、寝転んだ状態での対応しかしてくれないのです。だから、土台となる筋力を整えたら、重力に対応してバランスよく働くように、基礎筋力をつける筋トレが必要です。また、この時に重心、軸を意識しておくことが重要です。

最も基本となるのは、両脚を揃えてのトレーニングです。

人間の毎日の基本的な動作。それは椅子から立ちあがる、椅子に座るという動作。あるいは地面から立ち上がる、しゃがむことです。

この動作に一番近い種目を、選びましょう。そこで、一番わかりやすいのは、スクワットです。

スクワット

両脚を腰幅より少し広めに開いて立ちます。足裏は地面をしっかり捉えて、お尻をやや引くようにして、上体の角度を前に傾けながら、しゃがんでいきます。

このとき、膝の位置、スネの角度などに気を配りながらスクワットをやるといいですね。

股関節周りの筋肉を鍛える|片脚でバランスをとる

先ほどまでは、土台となるインナーマッスルと、両脚を揃えた状態での基礎筋力を養ってきました。
しかし、人間は常に、両手両脚を同時に使うわけではありません。むしろ、片脚片手でバランスをとりながら生活しています。ですので、基礎筋力がついてきたら、片脚でバランスをとる必要があります。

この時には、脚を前後に開いたり、左右に大きく開いて、体重移動をするなどのトレーニングをしていきましょう。
その種目としては、以下のような種目があります。

シングルレッグデッドリフト

上半身は、適度にまっすぐにします。椅子や机に手をついて、片脚で立ちます。お尻を引いて、おじぎをするように体を前に倒して、また起こします。

このとき、膝は軽く曲がっていてもOK。お尻の筋肉、太もも裏の筋肉が効いている感じがあると良いです。

ラテラルスクワット

足を肩幅より広めに開き、左右に体重移動をします。

こうして股関節を支点にして、股関節周りの前後左右の筋肉を、使う練習をします。中臀筋、小臀筋など、お尻の横にある筋肉が主に効いていると良いです。

福山 宏監修トレーナーからのアドバイス

NSCA認定パーソナルトレーナー JFTA認定ファンクショナルトレーナー

定位置でバランスをとることを主眼においてエクササイズ、トレーニングを紹介してきましたが、ここからは、ある程度移動を伴うトレーニングをしていきます。日常の動きにどんどん近づけていきます。より実践的な内容になります。

ここでのトレーニングは、日常生活で、痛みを防ぐ対応力が身についていく、と思ってください。
種目は、以下の通りです。

フロントランジ

両脚を揃えて立ちます。そこから、片方の脚で一歩踏み出します。前足にしっかり体重がかかったら、地面を適度に蹴るようにして元の位置に戻ります。

この時、膝がつま先よりも前に出ないようにしましょう。

サイドランジ

両脚を揃えて立ちます。そこから横に一歩踏み出すようにして大きく体重を移動します。

体重がかかりきったら中央に戻り、両脚を揃えて立ちます。そして先ほどと同じ要領で反対側に大きく踏み出します。

この動作を繰り返しましょう。動きがダイナミックになるので、よくよく自分の感覚を確かめることが大切ですね。

最終段階のトレーニング|統合する

ここまでで基礎筋力、バランス、動作に対応する力をつけてきました。実際の動きに、徐々に近づけてきたわけです。
ただ、今までのトレーニングはやはり、ある意味、部分的なトレーニングです。最終段階としては、実際の動きを練習します。

歩く

歩くときは、脚を大きく前に出すとブレーキがかかってしまいます。足首、膝、股関節への負担がかかる元にもなります。

体の真下よりやや前に足を着き、お尻の筋肉を使って歩いてみましょう。

走る

走るときは、歩く動作を少し大きくして、軽くはずむように走ると良いでしょう。あくまで歩くことの延長にある、という気持ちで走ってみましょう。

階段を上がる、下りる

上がるときは上体をやや前に傾けて、足裏で地面をしっかり捉えて、上がっていきます。太ももの後ろと、お尻を使っている感覚があれば、正解です。下りるときは、がに股にならないようにしましょう。つま先からつきますが、こちらも足裏でしっかり地面を捉えて、下りるのが良いです。

こうして日常の動きで痛み、違和感など、股関節、膝、足首の感覚をを確認してみましょう。
これで痛みが改善していれば、これまでのエクササイズを一定期間やって、正しい感覚を定着させていくと良いです。痛みが出てくるようであれば、まだバランスが崩れているので、まずはストレッチを中心にケアして行くのが良いでしょう。

まとめ

福山 宏監修トレーナーからのアドバイス

NSCA認定パーソナルトレーナー JFTA認定ファンクショナルトレーナー

大切なのは体をほぐす、緩めた後に、正しく体を使えるようにすることです。

痛みを和らげるためのケアだけでは、また痛みが起きてしまい兼ねません。
疲れた体は、しっかり癒す。そのあとは不具合が起きにくい体を作る。このとき、単純に筋力を強くするのではなく、正しく体を操作する感覚まで、身につけて行くことが大切です。そうすると、煩わしい痛みが改善し痛みが起きない体になれるのです。

【あわせて読みたい】