筋肉痛の回復を早める方法については多くの間違いや誤解があります。例えばストレッチは筋肉痛回復に効果的ではありません。その他よく言われるタンパク質、アミノ酸などの栄養素の摂取は本当でしょうか?筋肉痛のメカニズムを知り、その正しい回復方法を解説します。
筋肉痛とは?起こる理由と痛みの原因
筋肉痛が起こる原因は、未だに医学的に解明されていません。しかし長く研究されており、断定は出来ないながらも有力な説はあります。
筋トレや運動などによって筋繊維が傷つき、炎症が起きます。このときに炎症部に白血球が集まり、要らない細胞の除去及びクリーニングを行います。除去を行うときに痛みを伴うとされています。
この場合はトレーニング後翌日か翌々日に痛みとなって現れる場合がそれ以外にもトレーニング直後に痛みが出る場合もあります。筋肉が激しく損傷している場合などは怪我に近く筋断裂している場合もあります。
筋肉痛の痛みには、要らない細胞の除去の際に感じる痛みと筋断裂などの怪我に近い形の2種類があるのです。筋肉痛と一言にいっても内容によって対処する方法が違うため、どちらになっても大丈夫なように知識を知っておきましょう。
筋肉痛の回復を早める方法① 栄養補給
筋トレ後のタンパク源やプロテインの摂取は傷ついた筋肉を修復する際の材料となるため、筋肉の成長につながります。しかし、これが筋肉痛の回復を早める研究結果はありません。タンパク質が直接筋肉痛の回復を早めるという科学的根拠は現時点ではないのです。
タンパク質の摂取が筋肉痛の回復スピードを上げる事にはなりませんが、タンパク質の摂取は筋肉の回復に非常に重要な役割を果たします。筋肉の回復時に材料となるタンパク質が足りない場合、傷ついた所をそのままにするわけにはいかないため体内でタンパク質を作る必要があります。
その場合、他の筋肉を分解しタンパク質を捻出し傷ついた筋肉の修復に充てます。筋肉が回復すると他の筋肉が弱くなるという本末転倒してしまうため、タンパク質は必須になってくるのです。
食事だけで必要量のタンパク質を摂取するのは相当な量を食べる必要があるため、筋トレなどをしている人は各メーカーのプロテインを飲むのも良いでしょう。
ちなみに一般的な摂取目標は『体重1kgあたり1g』と言われているため、60kgの人は60g以上ののタンパク質が必要になるのです。トレーニングをし筋肉の修復も行っている場合は更に必要となるでしょう。
しかし、タンパク質の過剰摂取は肝臓に大きな負担をかけるため摂りすぎには注意しましょう。
大前提は栄養バランスの良い食事です。タンパク質が不足する場合はプロテインなどを利用して栄養素の補給をしましょう。
トレーニング後の筋肉痛を回復させるために、様々な方法を行うでしょう。プロテイン摂取やストレッチなどです。しかし、私達が信じているこのような方法は科学的には筋肉痛を解消させる効果は全く証明されていないことが多いです。プロテインと筋肉痛、その他筋肉痛解消の間違った知識と正しい知識を解説します。
筋肉痛の回復を早める方法② 質の高い睡眠
特に成長ホルモンの分泌は夜22時から朝の2時の間に豊富に分泌され「ゴールデンタイム」とも呼ばれています。仕事をしていてなかなか22時に睡眠に入る事が出来ない方でも、午前0時には寝るように心がけましょう。睡眠してから約90分で深い眠りに入るとされているので睡眠導入時間を気を付けると成長ホルモンの分泌量を多く確保する事が可能になるでしょう。
成長ホルモンは筋肥大や筋肉の回復に大きな効果があります。他にも細胞の活性化による育毛効果や美肌など様々な効果があり、睡眠はストレス解消にもなるため筋肉痛の回復を手助けするだけでなく、様々な角度から身体の質を良くしてくれます。
筋肉痛の回復を早める方法③ 筋膜リリース
筋肉は筋膜に覆われており、筋トレを行うと筋膜は収縮します。この筋膜をほぐすこと(筋膜リリース)は血行をよくし疲労物や不必要な細胞を流してくれるため重さやだるさの軽減にはなるでしょう。
筋膜リリースとストレッチの違いがわかりづらいかもしれませんが、筋膜はフォームローラーなどで筋膜をゴリゴリ当てるとほぐされます。
以下の動画のようにラクロスボールを使っても筋膜をほぐすことができるので、部位によって使い分けてみてください。
筋肉痛の回復を早める方法④ 交代浴
この基本と常識の上にコンディショニングとして加えて頂きたいお薦めが交代浴です。交代浴は水風呂と熱いお風呂に交互に入る入浴法で筋肉の疲労回復には効果が期待できます。
筋肉痛の撃退やコンディショニングの際の交代浴にはとても重要なポイントが一つあります。それは身体の表面だけでなく、筋肉の奥深い部分、骨の周辺までしっかりと身体を冷やす点です。15〜17℃程の冷たい水に浸かる際は8〜12分程浸かりましょう。短い時間だと皮膚の表面が冷えるだけで、筋肉内には熱が溜まり残ってしまうためです。
冷水に筋肉内の熱を奪ってもらいます。入った瞬間から数十秒はとても冷たく痛みが伴うかもしれませんが、すぐに皮膚が慣れるのであっという間に体の熱を奪ってくれるでしょう。筋肉を冷やす理由の内の一つに炎症を抑える事が含まれます。
筋トレ後には筋肉内に細かな炎症で溢れています。これが筋肉痛の原因でもあるのですが、冷やしきる事によって炎症を抑える事が可能です。ケガをしたらアイシングをするのと同じ要領です。水風呂ではしっかりと体の芯まで冷やし、体温を放出して下さい。
次にこの筋肉の体温を放出した状態で熱いお風呂に向かいます。血管が著しく膨張し、大量の血液が筋肉に運ばれるようになるでしょう。実際に血液が身体をもの凄いスピードで流れるのを実感できるはずですよ。この血液の勢いは乳酸や二酸化炭素、古くなった細胞やその他の毒素を完全に洗い流します。高いデトックス効果を発揮します。
水風呂は冷たさに「耐える」必要がありますが、熱いお風呂はそのご褒美とも言える素晴らしく気持ちの良い瞬間になるはずです。脳内にはドーパミンが大量に発生して快楽を与えるでしょう。水温にもよりますが、基本的に水風呂も熱いお風呂も8〜12分以上浸かる事をお薦めしています。これを2回ずつ行うと良いでしょう。
ちなみに交代浴の際には、心臓をびっくりさせない様に、飛び込む事を避け、ゆっくりと入水しましょう。血管の収縮性を高めるので、脳梗塞などのリスクが上がってしまうため注意が必要です。
筋肉痛の回復を早める方法⑤ 運動前のカフェイン摂取
カフェイン摂取後血流量が上がるため血流に乗って筋肉の炎症部の不必要な細胞などを流してくれるためです。他にもカフェインがアデノシンという痛みの感覚に作用する物質の働きを抑制するためです。これは筋肉痛回復の根本的な解決ではなく、一種の痛み止めのようなものになります。
【参考文献】
筋肉痛の回復を早める方法⑥ アクティブレスト
これは筋肉痛のピークが過ぎ少し体を動かせる様になってきた時に有効で、体を全く動かさずに寝ているだけより安静時より少し心拍数の上がるウォーキングやジョギングをすることで血流を促し疲労物質を流す働きがあるのです。
筋トレの後には筋肉は硬くなりやすく、柔軟性を失います。そして血流が悪化すると、筋肉痛の改善の邪魔になってしまいます。アクティブレストでは激しく強度の高い筋トレをするのではなく、可動域を広げるて柔軟性を高めるストレッチや心肺能力や軽い有酸素運動を取り入れると良いでしょう。
どうしても筋トレをしたい場合は、小さな負荷で大きな可動域を意識して取り組んで下さい。オーバートレーニングを避けながらも、小さな負荷を効率良く掛ける事が大切です。筋肉に無理のない負荷を掛けながらも、回復を促してくれるでしょう。
筋肉痛の回復を早める方法⑦ 医薬品を利用する
シップや塗り薬、痛み止めなどが筋肉痛に効果があります。医薬品は非ステロイド系消炎鎮痛剤である事を確認しましょう。
ちなみにシップよりも塗り薬の方が成分の浸透性が高いので、シップを張るのではなく、こまめに塗り薬を使用する事をお薦めします。鎮痛剤には炎症を抑える効果がありますので、市販のロキソニンやバファリンなども筋肉痛に使用可能です。
ただし、筋肉痛は身体の自然現象で、身体が刺激に対応する事でほっておいても数日で治ります。ですので、基本的には薬品に頼らずに、質の高い食事や睡眠、身体んケアで治すように心がけるようにしましょう。
筋肉痛にストレッチは本当に良いのか?
実は「ストレッチが筋肉痛の回復に効果的である」というのは長年信じられてきた迷信なのです。
確かに筋トレ後は筋肉は疲労から縮みやすくなっており体温も上がっているため、ストレッチをすることによって疲労の回復や筋肉の柔軟性向上には効果が期待できるのですが、ストレッチに筋肉痛を解消させる効果は科学的には認められていません。
ストレッチが筋肉痛解消に効果があるのか、イギリスで始まったCochran Collaborationという医療テクノロジープロジェクトが2007年に2337人を対象に実験を行いました。
その結果、運動前後のストレッチが運動後の1週間の間に筋肉痛のピークの痛みを軽減させるデータは出ましたが、肝心のその値は非常に小さく、科学的にストレッチが筋肉痛を解消させると結論付けることは出来なかったのです。時間とともに筋肉痛は軽減していくためです。
ストレッチが筋肉痛解消に効果的であるとは言えないのです。
【参考文献】
筋肉痛の回復スピードを上げる方法はないとされています。ただ、筋肉痛を長引かせないことは可能となるでしょう。それらの方法を解説します。
筋肉痛が時間差でやってくる理由
筋肉痛には2種類あり、「即発性筋痛」と「遅発性筋痛」です。
筋肉痛は現状の筋肉では耐えられないほどの負荷がかかった場合に起こり、その対象の筋肉が速筋なのか、遅筋なのかで筋肉痛が発生するまでにかかる時間は変わります。
2日後など、時間差があって筋肉痛が発生する場合は遅筋です。
遅筋は大きな力を発揮することはできませんが、持久力に優れた筋肉です。
普段運動をしていない方が筋トレなどの高負荷な運動ではなく、サッカーなどの運動を行った場合は遅筋が使われ(ハードに走り回ったら別ですが)、筋肉痛が2日後など遅れてやってくるのです。
この理論についてもっと詳しく知りたい方はぜひ以下の記事を参照してください。
筋肉痛が運動した2日後に起こることがありますが加齢のせいなのでしょうか?一般的に言われていることですが実際にはどうなのか、筋肉痛のメカニズムを解説も交えながら筋肉痛が起こったときの対処法も解説します。
筋肉痛の回復を早めることは難しいが質を上げることは可能
しかし基本的には全て、人が健康になろうと思った時に真っ先に意識する、運動・栄養・休養なのです。サプリやプロテインの質も上がり味も様々で美味しいものが増えました。サプリやプロテインは栄養補助食品として普段の生活で足りない栄養素を補う目的で使用するべきでしょう。
痛みがあるのは必ず修復作業も同時に行われています。その修復作業中は激しい運動は控え、ゆっくりと回復に時間を充てましょう。
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【プロトレーナー解説】筋トレをすると必ず起こるのが「筋肉痛」です。筋肉痛でも筋トレをしていいのでしょうか?それとも休むべきなのでしょうか?ここでは、筋肉痛のメカニズムや、筋トレと超回復の関係、筋トレ後の筋肉痛を抑える方法などについて解説します。