【トレーナー監修】プロテインに筋肉痛解消効果はない!筋肉痛の正しい知識

監修者

千陽 ハーヴェイ

NSCA認定パーソナルトレーナー

トレーニング後の筋肉痛を回復させるために、様々な方法を行うでしょう。プロテイン摂取やストレッチなどです。しかし、私達が信じているこのような方法は科学的には筋肉痛を解消させる効果は全く証明されていないことが多いです。プロテインと筋肉痛、その他筋肉痛解消の間違った知識と正しい知識を解説します。

筋肉痛の仕組みとは?どうして痛くなるの!?

誰もが一度は経験したことがある筋肉痛。久しぶりに運動したり、普段より負荷の多いトレーニングをしたときの翌日や数日後に、カラダのあちこちが痛む筋肉痛は、激しい運動やトレーニングでダメージをおった筋肉の線維を復活させるしようとしたときに起きる痛みだと言われています。

運動をした直後には痛みを感じなくても、運動が終わった数時間後から翌日、または2~3日後に痛みを感じますが、痛みが起きるまで時間がかかる「遅発性筋痛」のことを「筋肉痛」と呼んでいるのです。

この筋肉痛が起きるメカニズムについては、まだ未知の部分が多く、科学的に解明されているわけではありませんが、主な要因は以下の2つと考えられています。

1)慣れない運動を行ったとき(新しいエクササイズに挑戦した時など)
2)筋肉が力を発揮させながら伸ばされるエクササイズを行なったとき(スクワットやランジデットリフトなどの伸長動作でカが加わると筋繊維のダメージが受けやすい)

筋肉痛が起こらなかったからといって、筋肉が成長してない訳ではありません。筋肉痛が起こることが筋肥大が起こる主な要因ではなく、エクササイズの種類や、運動強度の差によるものだと考えられています。

筋肉痛を回復させるには睡眠をしっかりと摂る

筋肉痛は24〜72時間に渡って筋肉痛のピークが起こり、5〜7日後におさまると言われています。

傷ついている筋肉を修復している痛みなので、仕方がないものの、早く修復、回復させるためには十分な睡眠と栄養を摂らなければなりません。また、筋肉痛が起きているときは運動量を調節したり、お休みするなどして、負担がかかりすぎないように心掛けましょう。

特に筋肉アップのために行う、筋トレはお休みすることをおすすめします。どれだけトレーニングを重ねても、筋肉を効率よく増やすには「休養」も必要なのです。筋肉痛のときは筋トレを控え、ゆっくりと有酸素運動を行うという方が多いようです。

プロテインで筋肉痛は回復しない

プロテインはあくまで食事で補いきれない栄養を補う補助食品なので、プロテインを飲むだけで筋肉が増強したり、筋肉痛が治るということはありません。

しかし、プロテインには筋肉をつくるために必要と言われている栄養素「タンパク質」が豊富に含まれています。タンパク質は筋肉をつくるためだけでなく、筋肉を回復させるためにも必要な栄養素です。

食事だけではなかなか補い切れないタンパク質をプロテインから補給することで、筋肉の修復と回復をサポートできるのではないか、と考えられています。

筋肉痛の回復と栄養摂取

運動後の筋肥大は、最近の研究によると、4〜6時間ほど続くそうです。

もし、運動前に食事をしていればその栄養素を合成できるので、運動後すぐに食事をしなくても大丈夫です。運動後は肝臓と血中の糖質が枯渇しているので、吸収の早い果物などを食べると回復が促進されます。

脂質は栄養の吸収を遅くするので、運動後はなるべく抑えましょう。タンパク質と糖質を主に補うと、回復が促進され、筋肉の成長を促します。

プロテインが、直接筋肉痛を防ぐという科学的根拠は現時点ではありません。栄養をしっかりと補給することで、運動後のタンパク合成と細胞内の同化作用が促進されますが、筋ダメージを減らして筋肉の機能を回復させるとは言えないようです。

「筋肉痛解消にストレッチ」も意味がない!?

「筋肉痛解消のために運動前後にストレッチをする」
これは多くの人が信じてきた迷信です。学生時代、部活動の前後にストレッチをした経験はどなたもあるでしょう。

確かにストレッチにはウォーミングアップなどの理由で怪我防止などの効果は期待できます。しかし、ストレッチに筋肉痛を解消させる効果は科学的には支持されていません。

ストレッチが筋肉痛解消に効果があるのか、イギリスで始まったCochran Collaborationという医療テクノロジープロジェクトが2007年に2337人を対象に実験を行いました。

その結果、運動前後のストレッチが運動後の1週間の間に筋肉痛のピークの痛みを軽減させるデータは出ましたが、肝心のその値は非常に小さく、科学的にストレッチが筋肉痛を解消させると結論付けることは出来ませんでした。

つまり、ストレッチが筋肉痛解消に効果的であるとは言えないのです。
(参考: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/21735398/ )

体作りのためにはプロテインだけでなくBCAAも補給しよう!

タンパク質の吸収を助けるために、BCAAの摂取も効果的です。
BCAAとは分岐鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acids)という、バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類の必須アミノ酸のことです。

BCAAは筋肉の分解を防いだり、筋肉の合成を促してくれるなど、カラダづくりには欠かせない栄養素です。

しかしBCAAは、動物性のタンパク質に含まれているアミノ酸なので、もしタンパク質の摂取量が十分に足りて入れば、補足で摂る必要は特にありません。多く摂取したからといって効果が増すものではありません。

ファスティングやベジタリアンなど、タンパク質の摂取量が低い生活をされている方は摂取をすることで効果が出やすいでしょう。

BCAAの働きや摂取方法について詳しくは以下の記事を参考にしてください。

結局筋肉痛の解消には何が効果的なのか?

筋肉痛に効果的だと思われがちな間違いを紹介してきました。ストレッチは意味がなく、プロテインなどの栄養摂取は筋肉の合成を促進しますが、それは筋肉痛の回復とは関係がない、ということは衝撃的だったかもしれません。

では一体何が筋肉痛解消に効果的なのでしょうか?

筋肉痛の痛みを和らげるにはいくつか方法があります。
例えばフォームローラーを使った筋膜を和らげるマッサージは効果的です。筋肉痛になると筋膜が収縮しているため、筋膜を和らげる(筋膜リリース)は効果的です。

その他、運動前にカフェインを摂取したり、運動後のアイシングも効果的です。

ストレッチは怪我防止などの効果があるため行ってほしいですが、筋肉痛解消の効果は期待できませんので、このようなことを行ってみてください。

プロテインやストレッチは筋肉痛解消に効果がない!まとめ

●プロテインなどの栄養摂取は筋肉の合成を促進するが、それが筋肉痛の痛みを和らげるわけではない
●ストレッチは怪我防止などの効果は期待できるが、筋肉痛解消の効果はない
●筋肉痛解消にはフォームローラーなどの筋膜リリースマッサージやカフェイン摂取、アイシングなどが効果的である

「ストレッチや栄養摂取は筋肉痛解消に効果的である」
このような長年信じられてきた情報は簡単には上書きされません。筋肉痛は決して悪いことではありませんが、身体が疲れているということを表すサインでもあります。

筋肉痛があるときはハードなトレーニングは行わず、しっかり休みましょう。今回紹介したような方法で回復を早めてみてもいいですよ。ぜひ、今後のトレーニングライフに生かしてください。