前鋸筋とは?働きから鍛え方まで

監修者

小川 雄翔

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

肩甲骨を支え、肩の動きを助けてくれる筋肉というのは非常にたくさんあります。その中で、ボディメイクやスポーツ、特に格闘技で重要な役割を持っているのが「前鋸筋(ぜんきょきん)」です。そんな前鋸筋の持つ働きやダンベルを使った鍛え方を解説していきます。

前鋸筋の場所とその働き

前鋸筋(ぜんきょきん)というのは、外見への影響も強い部類の「インナーマッスル」です。そんな前鋸筋は胸のすぐ下のちょうど脇に近い場所にあり、「鋸」の漢字でもわかるように、ギザギザ状の見た目をしています。

前鋸筋は、具体的には肋骨の各部から体の外側を通り、肩甲骨に広く繋がる筋肉です。

この筋肉の働きは主に以下の4つです。

<前鋸筋の働き>
・肩甲骨を安定させる
・肩甲骨を前方面に動かす
・肋骨を上へと動かす
・腕を前方へ押し出す

小川 雄翔監修トレーナーからのアドバイス

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

「肩甲骨の安定性」と言われても一般の方にはあまり馴染みがないでしょう。少し離れた所にあるモノをぐっと手を伸ばして取ろうとする時に肩甲骨の安定性は求められますが、一般の日常生活はその程度のことです。

肩甲骨の安定性を求めて前鋸筋を鍛えるメリットは野球やボクシングなどのスポーツをしている方です。
ボールを投げたりパンチを打つときに、肩甲骨が安定していると強いパワーを発揮することができるのです。

また、前鋸筋はインナーマッスルです。そのため、鍛えることで筋肥大をするというよりは、筋繊維が強くなり引き締め効果が高まる筋肉でもあります。そのため、前鋸筋が発達することで胸からウエストへのラインにメリハリがつくというメリットがあるのです。

前鋸筋の鍛え方

① ベンチプレス

前鋸筋を鍛える時にオススメのトレーニングは「ベンチプレス」です。ここではダンベルを使ったベンチプレスで解説しますが、前鋸筋を鍛える時には通常の鍛え方に1アクションを足すといいでしょう。

【やり方】
①ベンチに横になった状態で、ダンベルを持つ
②バストトップのラインで上へダンベルを持ち上げる
③ゆっくりスタートポジションへ戻す

ダンベルを真上へ持ち上げたら、肩甲骨を外に開くようなイメージで、腕をさらに拳1つ分上へと押し込んでください。

この1アクションによって、前鋸筋を鍛えることができるようになります。腕を押し上げる動きで、しっかり肩甲骨も動いていることを意識して行ってください。

② フロントレイズ

フロントレイズはダンベル・チューブで行うことができます。いずれの場合も立って行い、ダンベルやグリップを手の甲が前になるように持ちましょう。

【やり方】
①まっすぐ立った姿勢でダンベルやグリップを手の甲が前になるように持つ
②①の状態からゆっくりとダンベルを肩の高さまで持ち上げる
③ゆっくりとスタートポジションに戻す

肩を鍛える他のメニューと比べ、反動がついてしまわないよう注意が必要です。特にチューブでのトレーニングでは、普段のメニューより軽めの負荷でゆっくりと動作するようにしましょう。

小川 雄翔監修トレーナーからのアドバイス

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

フロントレイズのポイントは腕時計を見るようなイメージで行うとよりキレイにできますので、こちらのポイントを意識しながらゆっくりと行いましょう。

前鋸筋と肩甲骨の痛みは関係してる?

前鋸筋に機能不全が生じると、肩甲骨周りに痛みを感じたり、腕を挙げられなくなる症状がよく出ます。(腕を上げられないということは、肩甲骨が回転しないということです)

一見すると、前鋸筋は肩甲骨からは離れている筋肉に見えるのですが、これだけ大きな影響を与えるのです。

しかし、前鋸筋が一般の生活において機能不全になることはあまりありません。前鋸筋が機能不全になるのはスポーツなどを行うことによる外的損傷が主な原因だからです。

小川 雄翔監修トレーナーからのアドバイス

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

前鋸筋はスポーツを行っている人にとっては非常に重要な筋肉、といえるでしょう。

【参考文献】

前鋸筋のストレッチ

前鋸筋は、単独ではなく背中側にある僧帽筋・菱形筋と繋がっているため、これらのいずれかが凝り固まってしまうと背中・肩全般が凝ってしまいます。そんな症状を解消するために、次のようなストレッチを運動前、あるいは仕事でずっと同じ姿勢だった時などに実施するといいでしょう。

①片手を上へと伸ばし、肘を90度程度曲げる
②もう片方で伸ばした腕の手首を掴む
③掴んだ腕を伸ばすようにして、体をゆっくりと横に倒す

この時、体が前方に偏ったりせず、なるべく真横に体を倒し、腕を伸ばすといいでしょう。

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前鋸筋は外腹斜筋ともつながっている

前鋸筋は前述したように、肩甲骨・肩関節の安定に寄与することがよく言われますが、実は外腹斜筋とのつながりもあります。

前鋸筋と外腹斜筋は互いに筋連結をしています。筋連結をしている筋肉同士は、片方の筋肉が使われるともう片方の筋肉も使われます。

実際にこれを証明する実験が行われており、14名の成人男性にベンチプレスをやってもらい、その際に前鋸筋と外腹斜筋に電極を貼り、互いの筋肉の連動性を測りました。
その結果、前鋸筋と外腹斜筋は筋連結がある、と実証されたのです。

【参考文献】

この実験結果から、肩甲骨・肩関節の安定のためには前鋸筋だけではなく、外腹斜筋のトレーニングも合わせて行うと良いということがいえるのです。

本記事では前鋸筋に絞って筋トレ方法を紹介しましたが、外腹斜筋の鍛え方については以下の記事を参考にしてください。

前鋸筋を鍛えて引き締まったかっこいい上半身を手に入れよう!

前鋸筋は機能レベルの話でみると、一般の方にはあまり馴染みのない筋肉です。

しかし、ボディメイクという点では前鋸筋は鍛えることで上半身のメリハリを作るのに欠かせない筋肉でもあります。
この筋肉が浮かび上がるにはかなりの筋密度が必要なので、鍛えるのはとても大変です。

今回紹介した鍛え方を参考にしつつ、日々のトレーニングライフで前鋸筋をガンガン鍛えていきましょう。引き締まったかっこいい上半身を手に入れるために頑張ってください。

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