胸筋内側を鍛える「ペックフライ」のやり方と効果!

監修者

佐藤公治

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

【プロトレーナー解説】胸の筋トレ種目、ペックフライを徹底解説!ペックフライで鍛えられる筋肉、得られる効果とやり方、フォームの注意点と効果を上げる取り入れ方などを解説。またペックフライの代替エクササイズもご紹介します。

ペックフライとは?鍛えられる筋肉・メリットは?

ペックフライとは?

ペックフライとは、どのようなエクササイズなのですか?

佐藤公治監修トレーナーからのアドバイス

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

専用のペックデックマシンを使ったエクササイズで、大胸筋を集中的に鍛える効果があります。

鍛えられる筋肉

ペックフライでカギとなる肩関節の筋肉は、三角筋前部、烏口腕筋、大胸筋などになります。

◯三角筋前部
肩の前面を覆っていて、腕が肩と一直線上にあるときに特に強い力を発揮します。

◯烏口腕筋
三角筋と大胸筋のすぐ下に位置し、このエクササイズで完全に刺激することができます。
◯大胸筋
このエクササイズには、大胸筋の上部と下部の両方が関与します。大胸筋は胸をおおっている大きな筋肉になります。
腕を十分に後ろまで引けば、大胸筋の外側の発達をうながすことができ、前方に強く押して腕を近づければ、大胸筋の内側の発達をうながすことができます。
肩甲帯で関与する主な筋肉は、小胸筋と前鋸筋になります。小胸筋は胸の上部に位置する小さな筋肉で、大胸筋におおわれています。前鋸筋は背面では肩甲骨に、体の前面では大胸筋におおわれ、肋骨の外側、わきの下のすぐ下に位置しています。

筋肉と関節の動き

肩関節においては、上腕が基本的に肩と一直線上のポジションを保ちながら、水平内転(水平屈曲)によって互いに近づいていきます。こうして、上腕は体側から前方に移動します。
同時に肩甲骨の伸展(前鋸筋と小胸筋の働きによって、肩甲骨が脊椎から肋骨の側部に向かって引かれる)によって、両腕が前方で近づいていきます。

ペックフライのメリット

胸の筋力・筋肉量を増やすプレス系の種目と比べ、ペックフライは三角筋(肩の筋肉)や上腕三頭筋(二の腕の筋肉)などの補助筋群の関与が少なくなります。

ベンチプレスやダンベルフライではウェイトを挙げきった際、胸筋のテンション(緊張)が途切れますが、ペックデックマシンで行うペックフライではテンションが維持され、両腕を前方に近づけていくことによって、胸筋を強く収縮する(引き締める)ことができます。

ペックフライのやり方とフォームのポイント・注意点

ペックフライのやり方

◯マシンの設定
ペックデックマシンのシートを、ハンドルをにぎると上腕が肩と同じ高さか、やや低くなるように調整します。
背中をバックパットにしっかりとつけ、前腕を両側のパッドに当てます。前腕全体と肘がパッドにつくようにします。
(肘をやや伸ばして、ハンドルをにぎるタイプのマシンもあります)

◯手順
1.足を肩幅に開き、足の裏全体を床につけ、膝はほぼ直角に曲げます。
2.息を吸って、パッド(またはハンドル)を体の前で合わせるように押していきます。
3.スティッキングポイント(動作が最もきつくなるポイント)を過ぎたら、息を吐きます。
4.合わせるようにして押し切ったところで、パッドを強く押して1~2秒間、動きを止め、筋肉を強く収縮させ(引き締めるようにし)ます。
5.胸筋をややリラックスさせて、ゆっくりとスタートポジションに戻します。肘と肩が同じラインになるまで、コントロールした動作で戻します。
6.スタートポジションに戻ったら、動きを止めて次の動作に入ります。これを繰り返します。

フォームの注意点

◯肘の引きすぎに注意
肩の柔軟性と筋力が十分でない場合は、肘を後ろに引きすぎないようにすること。肩に負担がかかり、ケガにつながる危険があります。

◯スタートポジションでは筋肉をリラックスさせない
ケガを避け、プッシュ(押す)動作で筋肉をより強く収縮させる(引き締める)ために、スタートポジションに戻るときに筋肉を完全にリラックスさせてしまわないこと。

◯動作の前半に息を吸って止める
動作の前半に息を吸って止めておくと、胸郭が広がって体幹を安定させることができます。(ただし、血圧が高めの場合などは呼吸を止めず、持ち上げるときに吐き、下ろすときに吸うようにします)

◯背中を後ろにつける
背中をしっかりとパッドにつけてマシンに座ります。足も肩幅程度に開いてしっかりと床につけ、体を安定させます。
動作全体をとおして、背中の上部をパッドにつけておきます。背中がパッドから離れると腕の関与が大きくなり、胸を強化する効果が小さくなります(ただし上級者向けのテクニックとして、セットの最後の数回を絞り出すために、背中を若干アーチさせる場合もあります)。

◯目線は正面に向ける
視線は正面に向けます(鏡がある場合は、フォームをチェックして行います)。上を向くと背中を反らしてしまいやすいので注意します。

ペックフライの効果を上げるコツ

ペックフライで効果を上げるポイントはありますか?

佐藤公治監修トレーナーからのアドバイス

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

フォームの注意点と効果を上げる取り入れ方、また代替エクササイズなども確認してみましょう。

回数と重量の目安

ペックフライは8~12回の範囲で反復できる重量で、3~4セットが目安。他の胸のプレス種目よりも(補助筋群の関与が少ないので)負荷は軽くなりますが、必ずゆっくりとコントロールされたフォームで行い、胸筋内側の収縮をしっかりと感じ取るようにします。

動作に慣れたら重量を上げる

動作に慣れてきたら8~12回で反復できる範囲で、できるだけ重い重量で行います。あるいは回数をやや多くして行うと、胸筋にバーン(焼けつくような感覚)を得ることができます。
必ず、ゆっくりとコントロールしたフォームで行うようにします。コンセントリック収縮(ウェイトを挙げる局面)に1秒、静止して胸の最も内側の筋肉を絞り込むピークコントラクションで1~2秒、エキセントリック収縮(ウェイトを下ろす局面)に1~2秒かけるつもりで行います。

順番はプレス種目→ペックフライ

マシンで行うペックフライは、胸筋内側をアイソレートして(分離して、重点的に)鍛えることができ、またウェイトを落とす心配がないのでプレス種目の後、胸のトレーニングの仕上げに行うのが一般的です。ただし、上級者向けのテクニックとして先にペックフライを行い、胸筋を予備疲労させてからプレス種目を行うやり方もあります(プレス種目で胸より先に、腕や肩が疲労してしまう場合に有効です)。

ペックフライの代替エクササイズ

ペックデックマシンを使った2つの種目

ペックデックマシンには2つのタイプがあります。

①ひとつは腕(肘)を曲げて行うタイプ

上腕が床と平行に(もしくは、やや肘が下になるように)して、ほぼ肩と一直線上になるようにして肘をパッドに当て、ハンドルを握ります。

②腕全体が床と平行になるタイプ

動作全体を通じて、肘をやや曲げるだけで、腕をほぼ完全に伸ばして行うタイプです。
腕を伸ばしたタイプの方がテコが長くなるので、やや強度が高くなります。
(応用のやり方として、このタイプはマシンに逆向きに座り、三角筋後部を鍛えるリアデルトレイズも行えます)

ペックフライの代替エクササイズ

ペックフライに類似したエクササイズに、ダンベルやケーブル(ワイヤーを引くマシン)で行うフライ動作があります(ダンベルフライ、ケーブルクロスオーバー)。

ダンベルフライではやや重い重量が扱え、ケーブルクロスオーバーではペックフライと同様、動作中のテンションが維持され、胸筋内側を刺激するのに効果的です。ベンチの角度やワイヤーの高さを変えることによって、胸筋の上部から下部まで重点をおく部位に変化を加えることができます。

スポーツへの展開

ペックフライには、どのような効果があるのですか?

佐藤公治監修トレーナーからのアドバイス

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

腕を胸の横から、前方に押し出す動作を強化することができます。

ペックフライは主に大胸筋中部と三角筋前部の発達をうながすエクササイズとなります。ウェイトトレーニングやパワーリフティングでは、ベンチプレスのパフォーマンス向上に効果があります。
肩関節の水平内転と肩甲帯の伸展の組み合わせは、前方に腕を伸ばして何かをつかむ動作で重要になります。
たとえば、体操競技ではとくに吊り輪や自由演技、ボクシングや格闘技ではさまざまなパンチ(とくにフック)、野球ではサイドスロー、アメリカンフットボールではタックルなどの動作で重要な役割を果たしています。
また、テニス、ラケットボール、スカッシュ、バドミントンなどのフォアハンド・ストローク動作にも、ペックフライは最適なエクササイズとなります。