【プロトレーナー解説】加齢とともに階段登りや降りるのがキツイ…という方。筋力低下が原因ではないでしょうか?筋力低下する原因、理由。筋力低下すると生じる問題や症状。筋力低下を起こさないための予防・対策方法を解説します。
高齢者にある筋力低下が起こる原因・メカニズム
うちの母が最近歳をとってきたからか、階段登りが辛いみたいで…これは筋肉が無くなってしまったんでしょうか?
島津 鉄平監修トレーナーからのアドバイス
健康運動実践指導者 ZUMBA®︎インストラクター
なるほど。それは筋肉は無くなってしまったというより、減ってしまったのでしょう。
やっぱり…筋肉ってやっぱり筋トレをしないと減ってしまうものなのですか?
島津 鉄平監修トレーナーからのアドバイス
健康運動実践指導者 ZUMBA®︎インストラクター
はい。筋肉量は20歳を境目に毎年1%づつ減ってしまうなんていうデータがあります。もちろん、筋トレを週1〜2以上している方は、維持、向上も見込めます。
じゃあ、やっぱり筋トレはしなきゃいけないんですね。今、毎朝30分くらい歩いているみたいですがダメですか?
島津 鉄平監修トレーナーからのアドバイス
健康運動実践指導者 ZUMBA®︎インストラクター
ダメではないですよ。ただウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」は心肺機能向上が目的のトレーニングなので、筋肉はそれほどつきません。なので筋肉をつける「無酸素運動」が必要になります。
無酸素運動…?ってなんですか?
島津 鉄平監修トレーナーからのアドバイス
健康運動実践指導者 ZUMBA®︎インストラクター
平たく言えば筋トレです。例えば腕立て伏せをしても何回か目かでもう出来なくなりますよね。(インチキしなければ…)時間で言えば数秒〜1〜2分でしょう。しかし、ウォーキングやジョギングは何分でも何時間でも体力が持つ限り続ける事ができます。「有酸素運動」と「無酸素運動」の違いは簡単に言うと長く続けられるか、続けられないかとなり、筋肉をつけるには「無酸素運動」をします。決して息を止めるからとかではありません。
筋力低下する生物学的な理由
なぜ減っていくのか?
生き物の本能で考えましょう。
生き物は外敵から自分を守る為に身体を大きく成長させ、自然界を生き抜いていきます。そしてパートナーを見つけると、子孫を残します。子孫を残したら基本的に役目が終わるので、大きく成長させた身体を維持していく必要が無くなります。つまり、だんだんと身体が衰えていくのです。
人間も生き物ですので、ある程度骨格が成長しきると徐々に衰えていきます。20代前半は部活であったり、友達と野外で遊ぶ機会も多いでしょう、しかし、30代ごろになると仕事が忙しかったり、結婚、出産、環境の変化などで運動する機会がめっきり減ってしまう事が多いでしょう。そうなってくると、使わない筋肉からどんどん減っていきます。
加齢に伴い筋力はどのぐらい低下するのか?
20歳を100%とした場合、
70歳で握力80%、全身持久力60%、上体起こし40%、開眼片脚立ちが10%まで低下しているデータがあります。
このデータから読み取れるように、単純に筋力だけではなく総合的な体力そのものが落ちていってしまっています。
筋力低下で起こる症状|サルコペニア・廃用症候群の筋萎縮
①サルコペニア
筋力などが顕著に低下し、このままいくと寝たきりになる可能性が高い状態を言います。加齢や、何らかの疾患により筋肉を動かす為の司令を伝える上位運動ニューロンや下位運動ニューロンの損失や神経筋接合部の変化、ホルモンの機能低下など様々な原因があります。なので、いま現在具体的な改善方法は見つかっていません。
②廃用症候群
加齢もある意味原因ですが、一番の原因は不動です。その為、運動単位や運動ニューロン、神経筋接合部の変化に伴って起こる症状ではありません。しかし放っておけばサルコペニアとなり、寝たきり状態になる可能性があるので対策は必要です。
もう少し詳しく説明すると
例えば、高齢者の方が転倒して骨折をしました。手首だったので歩いたりするのは問題ありません。しかし家族が心配して外出したり、運動するのを控えさせました。その結果、日常的に身体を動かす事が減った為(不動)筋萎縮が顕著に見られ、骨折は治ったのにその後、更につまずきやすくなってしまった。(筋萎縮が起きてる)
基本的には寝たきりやギプス固定で全く動かなくなった場合に筋萎縮が始まるとされていますが、先ほど述べたように、高齢者はタンパク質合成能力が若い人に比べると低いので、食事内容を特に工夫していなければ、運動する習慣が以前よりぐっと減っただけでも起きると考えています。
少し余談ですが…
内科的疾患や怪我で長期入院を余儀なくされ、安静していた為に筋萎縮が起きます。それが(安静という名の不動)原因で認知機能が低下して、認知症発症もない話ではありません。
安静というのはあくまで怪我した患部をという事で、無理のない(内科的疾患や薬物投与、重症な怪我は医師の指示の元)範囲で毎日少しでも良いので、立ったり歩いたりと動くことをオススメします。
高齢者の筋力低下を引き起こさないための予防と対策
予防と対策のポイント
安静といっても座ったり、トイレまで歩いたり、身体を起こして話したり、出来ることはなるべく以前と変わらない大きさの動作を行いましょう。高齢者が一度、廃用症候群にかかると改善が難しいとされています。予防を心がけましょう。
そして何も怪我をした人だけが注意するのではなく、日常的に身体を動かす習慣はつけていきましょう。先ほど説明した通り、何らかの原因で外出が減ったり、家の中でじっとする事が多くなると、筋萎縮が起きてきてしまいます。そして筋力が低下すると…
・つまずきやすくなる→転倒して骨折
・姿勢が悪くなる→ひざ痛、腰痛、肩こり
・身体をうまく使えない→動くのが嫌になる
など、運動機能に様々な障害が生まれる為、身体のあちこちが悪くなっていきます。
高齢者に有効な運動|椅子から立ったり座ったり運動
2.姿勢を腰からまっすぐ伸ばし膝を90°ほどに曲げます
3.踵を床を押すようにして、膝が前に出ないように立ちます
4.まっすぐ立ったらゆっくり椅子に座り直します。
これを10回3セット繰り返しましょう。大事なのは腿の前とお尻の筋肉を使って立ち座りすることです。立つときに踵で床を押すだけで十分お尻の筋肉(大臀筋)を使えます。なぜなら、腿の前だけ(大腿四頭筋)で立とうとすると膝の関節が正しく使えない為に膝を悪くして、歩けなくなってしまうからです。日常から意識することも大切です。
必ず行って頂きたい筋トレは以上です。これだけと思うのではないでしょうか?
これだけで十分です。
高齢者の筋トレはその方々にあった筋トレがあります。
姿勢、柔軟性、既往歴、筋力、平衡性など…それらを無視してお伝えできる。なおかつ、絶対的に必要な下肢の筋トレはこれだけです。と胸を張って言えます。
もっと詳しく筋トレの方法を知りたい方は専門のパーソナルトレーナーをつけてあなただけのメニューを組むことをオススメします。
食事|タンパク質を摂取
それだけと思うかもしれませんが、でも実際にそうなのです。
筋肉の材料は唯一タンパク質です。(アミノ酸も)効率的に吸収をよくするために糖質も必要ですが、タンパク質を摂取しなければそもそも話になりません。
日本人の食事摂取基準2015年版(5年間有効)では50歳以上の方は男性60g、女性50gが一日に必要なタンパク質と推奨してます。つまり一食15〜20g程摂取する必要があります。(鶏の卵2〜3個分)
みなさんは普段の食事でタンパク質を意識しているでしょうか?カロリーや糖質、脂質は意識していても、タンパク質は意識していないのではないでしょうか?しかしタンパク質は糖質、脂質に並ぶ身体の三大栄養素の一つで、実は筋肉など体づくりに非常に大切な役割を担っています。そんなタンパク質の特徴をおさえ、身体作りに活かしましょう。
最後に
それ以上摂取すると腎臓が悪くなる、肝臓に負担がかかりすぎるなど、否定的な意見が多いですが、こういった考えはあくまで「絶対に健康に害がない量」であり、もっと健康になる。元気になりたければそれなりの量を食べて、正しい運動をしていくべきと考えます。
日本の腰痛、ひざ痛、肩こり、転倒などの割合は全く減っていません。それは、保守的な考えでリスクを怖がる国民性なのかなとも思います。
誰よりも健康で元気な人ほど、よく動くため怪我のリスクも付き物でしょう。しかし、誰よりも輝いていればとても素晴らしいものだと思います。
「よく食べて、よく寝て、よく動く」
子供の頃から祖母によくそう言われていました。そんな祖母は他界する直前まで、肉を食べ、ダンスをしていたのをこの記事を書きながら思い出しました。
どうぞ、元気で健康な高齢者を目指していきましょう。
もっと重いものを持ち上げたい!ベンチプレスを強くなりたい!筋力アップはただ筋肥大させればいいわけではありません。筋肥大の違いから、筋力アップに必要なトレーニングの方法・ポイント、効果的な食事・栄養摂取のコツをお教えします!