「生理中の筋トレは筋肉がつきやすい」は本当か?事実と注意点

監修者

高山 菜緒

日本赤十字社救急法救急員 健康運動実践指導者 オープンウォーターダイバー 一般社団法人ボディリラクゼーション従事者安全安心機構 全米ヨガアライアンス200

女性は男性ホルモンが少なく女性ホルモンが多いことから、筋トレをしても筋肉がつきにくく、筋トレの効果がなかなか出にくいです。そんな女性であっても「生理中に筋トレをすると筋肉がつきやすい」と言われているのが本当なのか、その事実と注意点を解説します。

「女性ホルモン」と「男性ホルモン」とは

生理中って筋肉がつきやすいと聞いたことがあるのですが本当でしょうか?

高山 菜緒監修トレーナーからのアドバイス

日本赤十字社救急法救急員 健康運動実践指導者 オープンウォーターダイバー 一般社団法人ボディリラクゼーション従事者安全安心機構 全米ヨガアライアンス200

それを理解するためには、女性ホルモンと男性ホルモンとは何か?を知る必要があります。見ていきましょう。

「女性ホルモン」や「男性ホルモン」という言葉は聞いたことがあっても、具体的な詳細を知っている人は少ないのではないでしょうか?
しかし、筋トレをして筋肉をつける上で女性ホルモンと男性ホルモンの働きを知ることは重要です。

「性ホルモン」とは

女性ホルモンと男性ホルモンは「性ホルモン」といわれ、生殖機能や性徴に関係するホルモンです。男女に関係なく両方の性ホルモンは分泌されますが、女性は女性ホルモンが多く、男性は男性ホルモンが多く分泌されます。

そして、間脳に位置する視床下部が性腺刺激ホルモン放出ホルモンを分泌することで、脳下垂体が分泌した性腺刺激ホルモンが性ホルモンの分泌を指令することで、性ホルモンは分泌されます。

「女性ホルモン」とは

女性ホルモンには、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」「プロゲステロン(黄体ホルモン)」があります。

エストロゲンは排卵前の卵胞期に増加し、プロゲステロンは月経前の黄体期に増加します。エストロゲンは妊娠前の準備をするホルモンで、胎児が育つように子宮を体内で十分な大きさにする必要が有るために内臓脂肪を燃焼させる働きがあり、これが排卵前は痩せやすいと言われる原因です。

そしてプロゲステロンは妊娠に備えて脂肪や水分を体に溜め込んで、筋肉をつけにくくする働きがあり、これが生理前に体重が増加する原因です。

「男性ホルモン」とは

「男性ホルモン」の中で代表的なのが「テストステロン」です。

テストステロンはタンパク質の合成を促進することで筋肉を大きくする働きがあり、筋肉をつけるためには分泌量が多いほうが有利といわれています。そしてテストステロンは筋トレをすることで、普段分泌されている量の20〜30%増加します。

テストステロンについては以下の記事に詳しく解説してあります。ぜひ参考にしてください。

やっぱり筋肉がつくのは男性ホルモンなんですね。

高山 菜緒監修トレーナーからのアドバイス

日本赤十字社救急法救急員 健康運動実践指導者 オープンウォーターダイバー 一般社団法人ボディリラクゼーション従事者安全安心機構 全米ヨガアライアンス200

はい、しかし男性ホルモンが少ない女性でもしっかり筋肉をつけることができます。次項で解説します。

筋トレには「男性ホルモン」より「成長ホルモン」

女性は男性ホルモンが男性の15分の1しか分泌されないため、男性ホルモンの観点で見ると筋肉をつけるのには不利です。

しかし、上手に筋トレすることができれば、筋肉の合成や脂肪の代謝に関わる「成長ホルモン」の分泌においては男女に差異はありません。そのため、同じ筋トレをした場合の筋肉量の増加の割合にほとんど男女で違いはなかったという結果も出ています。

そして、成長ホルモンはトレーニング後には300倍近くになるまで増加させることができ、20〜30%増加する男性ホルモンより増加幅が大きいです。そのため、女性であっても「成長ホルモン」を増加させることで、男性ホルモンの少なさをカバーすることができます。

成長ホルモンが重要なんですね!では成長ホルモンを分泌させるにはどうすればいいのでしょうか?

高山 菜緒監修トレーナーからのアドバイス

日本赤十字社救急法救急員 健康運動実践指導者 オープンウォーターダイバー 一般社団法人ボディリラクゼーション従事者安全安心機構 全米ヨガアライアンス200

成長ホルモンを増やすためには、睡眠時に多く分泌されるので、筋トレ後には質の良い睡眠を十分にとることが大切です。

「筋トレをしたあとはしっかり休養を取る」ということが筋肉を成長させるために必要なのです。

「生理中の筋トレは筋肉がつきやすい」のは本当か?

高山 菜緒監修トレーナーからのアドバイス

日本赤十字社救急法救急員 健康運動実践指導者 オープンウォーターダイバー 一般社団法人ボディリラクゼーション従事者安全安心機構 全米ヨガアライアンス200

では本題の「生理中の筋トレは筋肉がつきやすいか?」を解説します。

女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量は生理後から増加し始め、排卵前になると低下し始めます。プロゲステロンの分泌量は排卵前から増加し始め、生理前に低下し始めます。

そのため生理中は女性ホルモンの分泌量が少ない状態です。女性ホルモンには、脂肪を体に蓄えたり、筋肉の合成を妨げたりする働きがあるので、女性ホルモンの分泌量の少ない時期である生理中は、筋肉がつきやすいといえます。

生理中の筋トレの注意点

生理中は女性ホルモンが少なく筋肉がつきやすいため、女性アスリートの中には生理中に激しい筋トレをすることで筋肉をつけようとする人もいます。

しかし、生理中は様々な不調が身体にも心にも現れやすい時期です。生理中の不調の症状としては、下腹部痛、背中痛、頭痛、下痢、発熱、悪心、嘔吐、貧血、食欲不振があります。心の不調としては、憂鬱な気分になりやすかったりします。

これらの症状が酷い場合に筋トレをするとかえって悪化する危険がありますので、控えた方が良いでしょう。

高山 菜緒監修トレーナーからのアドバイス

日本赤十字社救急法救急員 健康運動実践指導者 オープンウォーターダイバー 一般社団法人ボディリラクゼーション従事者安全安心機構 全米ヨガアライアンス200

生理の痛みが強い場合も激しい筋トレなどの運動は避けてください。

生理中の有酸素運動は痩せやすいのか?

ダイエット、脂肪燃焼に効果的な有酸素運動ですが、生理中に行っていいかどうかは前述した注意点の通りです。生理の痛みなどの症状がひどい場合は避けたほうがいいですが、そうでない場合は特に制限する必要はありません。

そして、女性ホルモンの分泌量が少ない生理中にランニングなどの有酸素運動を行うと通常より痩せやすくなります。
ダイエットに活用するには生理中はいいタイミングなのです。

高山 菜緒監修トレーナーからのアドバイス

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しかし何度も言いますが、生理中に無理に運動をするのは身体に負担をかけストレスにもなりますので注意して行ってくださいね。

生理中の不調の改善方法とは

筋肉をつけやすい生理中に筋トレをしたいのに、生理中の不調があってできないという人は、まずは体質の改善で生理痛が軽くなるようにしましょう。

栄養バランスのとれた食事

肉や乳製品は筋肉をつけるためには非常に重要な食材ですが、摂りすぎることでコレステロールや中性脂肪が増加して、生理痛を引き起こすプロスタグランジンという物質の生成を促します。

そのため中性脂肪を下げる食物繊維を含む野菜などを中心に栄養バランスのとれた食事を摂ることが体質の改善につながります。生理痛緩和のために良い成分が含まれている食材としては、ビタミン類、鉄分、イソフラボン、オメガ3脂肪酸、ハーブ類、プラセンタエキスがあります。これらの食材を生理前や生理中だけではなく、日常的に取り入れることが体質の改善につながります。

ビタミン類は体の調子を整える作用があり、特にビタミンB6とビタミンEが生理痛の緩和に効果があります。

ビタミンB6には、生理前や生理中のイライラを抑えるセロトニンの合成を促す働きがあります。ビタミンB6を多く含む食材としては、にんにくや唐辛子があります。

ビタミンEには、血液の流れを良くしたり、「女性ホルモン」のバランスを整えたりする働きがあります。ビタミンEを多く含む食材としては、アーモンドや抹茶があります。

鉄分には、ヘモグロビンの合成を促す働きがあり、貧血予防に効果的な食材です。鉄分を多く含む食材としては、レバーやプルーンがあります。

イソフラボンには、女性ホルモンのバランスを整える働きがあります。イソフラボンは、豆腐や豆乳といった大豆製品に含まれています。

オメガ3脂肪酸とはDHA、EPA、α-リノレン酸の脂肪酸のことで、プロスタグランジンの生成を促す中性脂肪の抑制、冷えやむくみ、炎症の抑制、ホルモンバランスを整える働きがあります。オメガ3脂肪酸を多く含む食材としては、青魚、チアシード、えごま油があります。

ハーブ類は、古くからヨーロッパ医学で植物療法として取り入れられてきました。ハーブの摂取方法としては、アロマ、サプリメント、マッサージ、ハーブティーがあり、それぞれのハーブによって効能が違います。

生理痛の緩和に効果的なハーブとしては、チェストツリーにはホルモンバランスを整える働き、ジャスミンアブソリュートには生理を促す働きや子宮強壮作用、ローズオットーには子宮強壮作用があり、セージには月経痛の緩和の作用があります。

プラセンタエキスには、プロスタグランジンの生成を抑制する働きや、ホルモンバランスを整える働き、血液の流れを良くする働きがあります。

適度な運動を取り入れよう

普段から適度に運動していないと、筋肉が衰えてしまって基礎代謝も低下してしまうので冷えや肥満につながります。冷えは生理痛を引き起こすプロスタグランジンの生成を促し、肥満はホルモンバランスを乱す原因になります。そのため普段から日常的に適度な運動をすることが、体質の改善につながります。

質の良い睡眠を

質の良い睡眠は、より多くの成長ホルモンの分泌を促しますが、これは筋肉合成のためだけではなく、女性ホルモンのバランスを整えるためにも必要なものです。そのため質の良い睡眠をとることが、体質の改善につながります。

質の良い睡眠を取るためには、寝る前の2時間前には食事をとらない、寝る前にはスマホやパソコンを触らない、寝る前にはカフェインを控える、寝る前にストレッチをする、寝る1時間前には湯船につかって体を温めるなどの方法をとると良いでしょう。また質の良い睡眠は重要ではありますが、睡眠時間、リズムにも気をつけましょう。

生理中には無理のない程度での筋トレを

生理中は女性ホルモンが少ない時期で、筋肉がつけにくい女性にとって絶好のチャンスといえるでしょう。

しかし、無理は禁物で生理中に不調があるなら控えるべきです。生理中の不調が原因で筋トレが行えないという人は、まずは体質改善に取り組んでみてください。

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