肩のインナーマッスルの作用と鍛え方

監修者

北村 真美

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

【プロトレーナー解説】 肩関節の安定に重要なインナーマッスルについて機能解剖と作用を日常生活動作やスポーツ動作も併せて説明。そして怪我予防のためのストレッチと鍛え方について解説しています。

肩関節の安定機構について

肩のインナーマッスルについて教えてください。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

それは肩の安定機構について知ることで、インナーマッスルを知ることができます。

肩関節は、胸鎖関節肩鎖関節肩甲上腕関節(狭義の肩関節)の三つの解剖学的関節と、第二の肩関節と呼ばれる肩峰下関節肩甲胸郭関節の機能的な関節から構成されています。
狭義の肩関節である肩甲上腕関節は、可動関節の中でも特に可動性の高い球関節という多軸関節です。
肩関節は骨性では非常に不安定な分、関節唇、関節包、靱帯、腱板、上腕二頭筋腱など、骨以外の安定機構が複数備わっています。

確かに画像を見ると肩の骨って複雑で骨だけでは安定性はなさそうですね…。

上肢帯に関わる代表的な筋は、僧帽筋、菱形筋、前鋸筋です。
肩甲上腕関節の運動に関わる代表的な筋群は、三角筋、大胸筋、広背筋、大円筋、回旋筋腱板(ローテーターカフ)です。
この回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる筋群がインナーマッスルということになります。
回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる筋群は、肩甲上腕関節の関節包と一体化した腱板を形成し、関節のごく近くに停止しています。
上腕骨大結節・小結節に付着する棘上筋棘下筋小円筋肩甲下筋の4つの筋が回旋筋腱板(ローテーターカフ)であり、上腕骨を関節窩で安定させる役割を担っています。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

次項からは、肩のインナーマッスルである回旋筋腱板(ローテーターカフ)の筋群の機能解剖と作用について詳しくいみていきましょう。

肩のインナーマッスル:機能解剖と作用について

前項でも述べた通り、肩のインナーマッスルとは、回旋筋腱板(ローテーターカフ)の名称で呼ばれている筋群である棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋です。
この筋群は、上腕骨頭を関節窩の適切な位置に維持するのに重要な役割を担っています。

棘上筋

起始:肩甲骨の棘上窩
停止:上腕骨の大結節上部、肩関節包
支配神経:肩甲上神経(C5-6)
主な働き:肩関節の外転(三角筋の協力筋)、上腕骨を関節窩に引き寄せて肩関節を安定させる。
特徴:肩関節の下方への脱臼を防止する。回旋筋腱板(ローテーターカフ)の中で最も損傷を受けやすい。
日常生活動作:体の横で荷物を持つ
スポーツ動作:球技でボールを投げる。野球でバットを振る。ゴルフクラブを振る。

棘下筋

起始:肩甲骨の棘下窩
停止:上腕骨の大結節後中部、肩関節包
支配神経:肩甲上神経(C5-6)
主な働き:上部:肩関節の外転、外旋 下部:肩関節の内転、外旋
特徴:上腕を外旋させるときの主力筋。回旋筋腱板(ローテーターカフ)の中で棘上筋の次に損傷しやすい。
日常生活動作:髪をかき上げる。髪を後ろにブラッシングする。
スポーツ動作:テニス・バドミントン卓球などのバックハンド動作。

小円筋

起始:肩甲骨の外側縁
停止:上腕骨の大結節下部、肩関節包
支配神経:腋窩神経(C5-6)
主な働き:肩関節の伸展、内転、外旋
特徴:上腕を外旋させるときの主力筋。
日常生活動作:髪をかき上げる。髪を後ろにブラッシングする。
スポーツ動作:テニス・バドミントン卓球などのバックハンド動作。

肩甲下筋

起始:肩甲骨前面(肩甲下窩)
停止:上腕骨の小結節、肩関節包
支配神経:肩甲下神経(C5-7)
主な働き:肩関節の内転、内旋
特徴:広背筋、大円筋とともに肩関節の内旋に働く筋。
日常生活動作:後ろポケットに手を伸ばす。自分の腰をさする。
スポーツ動作:陸上のリレーでバトンを受け取る動作。クロスカントリーで腕を後ろに引く動作。

これらの筋肉は、三角筋や大胸筋などと比べ大きくないために、十分な筋力のみならず、スポーツ時の反復性のオーバーヘッド動作(野球の投球動作や水泳など)において適切な機能を維持できるだけの筋持久力も必要となってきます。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

次項からは、肩のインナーマッスルの鍛え方とストレッチ方法について説明していきます。

肩のインナーマッスル:鍛え方とストレッチ方法

肩のインナーマッスルのストレッチや鍛え方について教えてください。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

肩のインナーマッスルである回旋筋腱板(ローテーターカフ)の肩関節運動への関与を以下にまとめています。

回旋筋腱板(ローテーターカフ)の肩関節への機能

肩関節の外旋:棘上筋、小円筋、棘下筋
肩関節の外転:棘上筋
肩関節の水平外転:棘下筋
肩関節の水平内転:肩甲下筋
肩関節の内旋:肩甲下筋
肩関節の安定:棘上筋、小円筋、棘下筋、肩甲下筋

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

肩の安定性を保つ機能とともに、上腕骨を回旋(内旋・外旋)させる機能が主な役割といえます。それを踏まえたうえでストレッチや筋トレを行うとより効果的です。

肩関節のストレッチ

・棘上筋・小円筋・棘下筋

立位姿勢で肩幅に脚を開く。片手を腰に当て、肘がカラダの真横になるように姿勢を整え力を抜く。反対の手で曲げた肘をつかみ、肘をゆっくりと前に押し出していくイメージで力を加える。このとき、肩や肩甲骨が一緒になって前方に出てこないように姿勢に気をつけて行う。
・肩甲下筋
立位姿勢で、伸ばしたい側に壁がある場所に位置する。肩より少し下のあたりで壁に手を当て、姿勢を崩さないようにして前に体重移動する。肩の前面が伸びるのを感じる程度の力で行う。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

息を止めずに、15~20秒間ゆっくりとおこなってください。インナーマッスルは小さい筋肉であるため、大きな力を加えないように注意してください。

トレーニング方法

主に上腕骨を回旋(内旋・外旋)する機能があるため、内旋動作と外旋動作に分けてトレーニングしていきます。また、肩関節を安定させる機能をもつ筋群のため負荷は軽めで行っても効果は期待できます。
チューブを使う方法とダンベルを使う方法の二種類を紹介します。

・チューブを使った筋トレ方法
チューブの負荷は軽いものを使用して、10~30回で回数は徐々に増やしていくようにします。左右2~3セット行います。

1.肩の内旋(肩甲下筋)

立位姿勢で、肘をカラダに付けた状態で、手を外側に開いた姿勢からチューブを持って内側に引っ張ります。このとき肩や肘の位置が動かないように注意しましょう。

2.肩の外旋(棘上筋、小円筋、棘下筋)

立位姿勢で、肘はカラダに付けて、手は腹部に近づけた姿勢からチューブを持って外側に引っ張ります。内旋の動きと反対になります。肩や肘の位置は動かないようにしましょう。
3.エンプティカン・エクササイズ(棘上筋)
立位姿勢で、腕は伸ばして体側に付け、小指が外側になるようにチューブを持って横方向(やや前方)に引っ張ります。カンの中身を注ぎだす動作に似ていることから名づけられています。

ダンベルを使った筋トレ方法

ダンベルの負荷は軽いものを使用して、10~30回で回数は徐々に増やしていくようにします。左右2~3セット行います。

1.肩関節外転位での肩の内外旋
仰向けになり、鍛える側の腕を床に沿って肩の位置まで上げる(肩関節外転位)。ダンベルを持ち肘を90°曲げ、重力に抗しながらゆっくりと足側へと降ろしていく。このときダンベルを床まで降ろさないことがポイント。

ゆっくりと正中まで戻し、次は頭側へと降ろしていく。肘の位置が移動しないことと、肩が浮いてこないように注意して行う。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

肩のインナーマッスルは小さい筋肉ですが、重要な役割をしています。軽負荷高頻度で行うようにして、筋力・筋持久力をつけて、怪我の予防をしていきましょう。

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