難消化性デキストリンにダイエット効果は本当にあるのか?

監修者

萩原智之

JATI-ATI 健康運動実践指導者

トクホの商品にも使われる『難消化性デキストリン』。口コミサイトでは効果がうたわれていますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?難消化性デキストリンに限らず、サプリメントを導入するにはコストも必要です。何故良いのか、そしてそれが自分に必要かを見極めてから導入してみましょう。

難消化性デキストリンとは

難消化性デキストリンって口コミでも評判が良いので、私も飲んでみようと思っています。しかし本当にダイエット効果があるのでしょうか。

萩原智之監修トレーナーからのアドバイス

JATI-ATI 健康運動実践指導者

通販で安く粉末が購入できたりトクホのお茶に含まれるなど、手軽に導入できますしね。
しかしその効果を考えず、なんとなく『良さそうだから』という理由で飲んでいる方が多いのではないでしょうか。

糖分の吸収が遅くなることがダイエットに良いとは聞いたことはありますが、他にも効果があるのですか?

萩原智之監修トレーナーからのアドバイス

JATI-ATI 健康運動実践指導者

そうですね。その他にいくつか効果が実証されていますので、実際にダイエット効果があるのかどうかをご説明しますね。

難消化性デキストリンの特徴

日本人の食生活が欧米化し、食物繊維の摂取量が不足しがちな現代。食物繊維の役割が重視されるようになりました。
食物繊維の不足のデメリットと言えば便秘や大腸がんを連想される方も多いと思いますが、実は生活習慣病に関して言えば特に心筋梗塞との関連性が明らかになっています。

年齢にもよりますが、成人男性では20g/日以上、女性では18g/日以上の摂取が推奨されています。
成人の1日の平均摂取量は14g程度とのことですので、慢性的に不足しがちな栄養素ですね。

【参考文献】
『日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要』(厚生労働省)

トウモロコシのでんぷんから作られた水溶性食物繊維である難消化性デキストリンは、水に溶けやすくてほぼ無味無臭。
耐熱性や耐酸性にも優れているため様々な食品に利用されており、手軽に摂取量を増やせる便利な食物繊維です。
1gあたり1kcalの熱量を持つとされています。

難消化性デキストリンにダイエット効果はあるのか?

難消化性デキストリンはいくつかの効果が認められていますのでそれをご紹介します。

食後の血糖値の急激な上昇を抑制する|おすすめの飲み方は『食前』

いくつかの研究を統合して解析するメタ分析(信頼度がとても高い研究)において『難消化性デキストリンの単回(1回の)投与は、食後の血糖値上昇を優位に抑制する効果があることが判明した。』とされました。

【参考文献】
波多江崇、他(2016)『日本人を対象とした食後血糖値上昇に対する難消化性デキストリンの効果:二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験のメタアナリシス』(神戸薬科大学薬学臨床教育センター)

糖質制限においては『血糖値の過剰な上昇によってインスリンが過剰に分泌されそれが体脂肪を増やす原因』とされますが、血糖値の急上昇を抑えることが出来るのであれば、ダイエット効果は見込めるかも知れません。
飲み方としては、食後よりも食前が効果的でしょう。

萩原智之監修トレーナーからのアドバイス

JATI-ATI 健康運動実践指導者

余談ではありますが、食事開始数分から15分以内に『インクレチン』というホルモンが分泌されます。そのホルモンによってインスリンの追加分泌が起こるとされています。

インクレチンがしっかりと分泌されていると、血糖値が高くなる前にインスリンの追加分泌が起こるため、血糖値が急激に上昇することはありません。
しかしインクレチンが分泌されないと、血糖値が上がりきってからインスリンが追加分泌されることとなります。
血糖値が高い場合にはインスリンも過剰に分泌されてしまうので、体脂肪が増えやすくなると考えられます。

インクレチンが分泌される条件としては『小腸に食事によって流入した栄養素が届くこと』と考えられており、ベジファーストの食べ方が血糖値の上昇を抑えることが出来る理由でもあります。
飲み物は早く小腸に届くので、難消化性デキストリンを含んだ飲料はそれに適しているかも知れません。
ちなみにプロテインを飲んでも血糖値の急上昇は抑えることは可能です。

逆を言えば、『インスリンが分泌される前に血糖値を上げてしまう』糖分を多く含むジュースが太りやすいものだと言うのがよく分かりますね。

整腸作用

こちらもメタ分析において、『難消化性デキストリン5gを食事と合わせて摂取することによって、整腸作用(便通改善作用)が期待できる』ことが示されています。
具体的には、排便回数と排便量が改善されたようですね。

ただし、
『整腸作用は生活習慣も重要な要因であり、一つの食品だけを摂取すれば問題ないという考えではなく、食生活や運動などにも注意を払う必要がある。
適切な整腸作用を継続するうえで必要な要素として、食事療法だけでなく、運動療法、睡眠などの生活習慣などとの交絡因子の影響について、継続した研究が必要と考えられる。』との記載もあります。

【参考文献】
『最終製品「グリーンケールスムージー」に含有される機能性関与成分で
ある難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する整腸作用(便通改善作用
に)に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)』(株式会社ファンケル)

食後の脂肪の吸収スピードを遅くする

こちらもメタ分析において、『難消化性デキストリン5gを食事と合わせて摂取することによって、食後血中修正脂肪値の上昇を抑制する期待できる』ことが示されています。

ただし、
『食事療法だけでなく、運動療法、その他生活習慣などとの交絡因子の影響について、さらなる研究が必要と考えられる。』と記載されています。

【参考文献】
『難消化性デキストリンを用いた健常成人に対する食後血中中性脂肪上昇
抑制作用に関するシステマティックレビュー(メタアナリシス)』(日本コカ・コーラ株式会社)

内臓脂肪の低減作用

成人12名を対象に難消化性デキストリンを10gを1日3回、毎食事ごとに3か月間投与した結果、体脂肪率と、CTスキャンの画像による内臓脂肪面積が優位に低下したそうです。

食事摂取基準では1日4~6gとされていますが、この実験中においては毎食10gの難消化性デキストリンを投与しても下痢などの症状は無かったようですね。

萩原智之監修トレーナーからのアドバイス

JATI-ATI 健康運動実践指導者

ただし、こちらはメタ分析ではなく単体での研究になるためエビデンス(根拠)のレベルとしては多少低くなります。
メタ分析が見当たらなかったので、もしご存知の方がいたら教えてください。

ミネラルの吸収促進作用

こちらはマウスを使った実験結果のようです。
カルシウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛の吸収を促進したことが確認されたとのこと。人間を使った実験ではないため、エビデンス(根拠)としては非常に弱いものになります。

萩原智之監修トレーナーからのアドバイス

JATI-ATI 健康運動実践指導者

これらを踏まえると、一定のダイエット効果はあると言えるのではないでしょうか

難消化性デキストリンの安全性

アメリカの食品医薬品局は『難消化性デキストリンについての1日の摂取量の上限を定める必要がない』としています。
ただし、厚生労働省が定めるトクホ制度の規格基準においては『摂り過ぎ、あるいは体質・体調によりおなかがゆるくなることがあります』とあります。

【参考文献】
『「特定保健用食品(規格基準型)制度の創設に伴う規格基準の設定等」についての一部改正』(厚生労働省)

食事摂取基準においても、『大量に摂取すると大腸内浸透圧を高くして緩下作用を誘発する(お腹が緩くなる)ので1回の摂取量は遵守する必要がある』としており、1日の摂取量の目安は4~6gとなっています。

【参考文献】
『炭水化物』(厚生労働省)

先程の血糖値についての論文を改めて読んでみましょう。
難消化性デキストリンの摂取期間中、それが原因となる有害事象(腹部膨満感や放屁増加、下痢や便秘など)が無かったとの報告が多いようです。
消化器系に有害事象があったとする報告も複数あったようですが、無処置のまま症状が無くなったとのこと。

それらを踏まえると、過剰に摂取をしなければ長期的に摂取しても安全性に問題はないと判断できるのではないでしょうか。
はじめから大量に摂取するのではなく、少しずつ摂取量を増やすようにすると安全でしょう。

ダイエットとは特定の食品を摂るだけで成り立つものではない

難消化性デキストリンについては、トクホの記載基準においても『糖の吸収をおだやかにするので食後の血糖値が気になる方に適しています』としか書かれていません。
肝心の内臓脂肪を減らすという報告も(他に研究がないのであれば)対象となる人数が少なかったりとエビデンス(根拠)としてはレベルが多少低いものですし、ましてや『飲んだら痩せる』とは書かれていないのです。

血糖値の上昇が緩やかになろうが、脂肪の吸収スピードが遅くなろうが、過剰に摂取したエネルギー(使われなかったカロリー)が体脂肪として蓄積されることに間違いはありません。
カロリー収支がプラス(摂取>消費)の状態であれば間違いなく太りますし、それを帳消しにする効果はありません。
これはその他のダイエットサプリでも同じです。

野菜やキノコ類、海藻類などから食物繊維がしっかりと摂取できているのであれば、難消化性デキストリンではなく別のアプローチが必要になるかも知れません。
ですから、まずはご自身の食事の問題点は何かを把握しそれを改善することから始めて下さい。
そのうえで難消化性デキストリンを導入したならば、より効果的なダイエットを進めることが出来る可能性があると言えます。

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