肩甲骨の内側の痛みの原因とは?放っておくと慢性化するかも!すぐに解消しよう!

監修者

岩渕翔一

理学療法士、呼吸認定療法士、JARTA認定SS rankトレーナー兼認定講師

【専門家解説】肩甲骨周りの痛みといっても原因は多様にあります。原因が変われば当然対応法も変わってきますので、原因にあった対策を行わなければ痛みは改善しません。この記事ではその痛みの原因の可能性について解説し、対策をお伝えします。

肩甲骨とは?また肩甲骨周囲の痛みの原因って?

肩甲骨とは、背中の後ろに左右2つある平らで三角形の形をした骨です。肩甲骨と直接関節を持つ鎖骨と合わせて、「肩甲帯」と言いますが、この肩甲帯の可動性と運動自由度が肩甲骨の機能を活かすのに重要です。
しかし浮遊骨で肩甲骨は運動自由度が高い分、多くの筋肉に支えられ(左右合わせて34個)そのポジションや動きを支えられています。

肩甲骨の機能を支えるためにこれだけ多くの筋肉が関わっている以上、異常が起こった際の原因も多様です。当然、その筋肉を支配する神経、肩甲骨と関節を構成する骨、筋肉そのもの。これらは運動器といい、比較的痛みの原因と症状を判別しやすいです。しかし、原因はそれだけではなく、「関連痛」と言われるものも存在します。

関連痛とは、その神経支配領域の皮膚や筋肉の痛みとして感じる知覚異常のことを指します。肩甲骨周囲に発生する関連痛に代表されるものに、胆石症や上腹部臓器の異常に伴うものがあります。これ以外にも心疾患からくるもの、神経の圧迫からくるもの、精神的なストレスからくるものなど原因は本当に多岐に及びます。

内臓の異常やストレスからも痛みが発生するんですね。

岩渕翔一監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、呼吸認定療法士、JARTA認定SS rankトレーナー兼認定講師

意外かもしれませんが、そうなのです。

原因が運動器であれば運動療法を行えば改善を見込めますが、そうでなければ当然対応は異なります。どのような症状であっても原因に合った対策をしなければ症状の改善は見込めません。この記事では肩甲骨に起こる痛みの原因を探りその対策をご紹介します。

肩甲骨の内側・周囲の痛み|筋肉の硬さと循環不全が原因の場合

肩甲骨周囲の痛みの原因で代表的なものに筋肉の硬さや循環不全があります。特に肩甲骨の内側の痛みの場合、大菱形筋小菱形筋と呼ばれる内側に付着する筋肉の機能不全が多くみられます。
この筋肉の硬さや循環不全が原因の場合はの対処法は簡単です。ようは、筋肉の柔軟性を取り戻し、血液循環を改善すれば良いのです。
一つテストをしてみてください。二人ペアで行うのですが写真のように側臥位をとり、下側の上肢を背中側に回します。その状態でペアの人が肩甲骨の内側に自分の指をずっぽり入れたみます。指がすっと入る人は十分な柔軟性を保持しているので大丈夫です。しかし、肩甲骨の内側が硬い人は指が入りにくかったり、全く入らなかったりします。
このような場合は明らかに柔軟性が不足しており、当然血液循環が悪くなってしまいます。そうなると慢性的に疲労物質を抱え、いわゆる「コリ」を作り出しそれが痛みの原因となります。このコリはマッサージするだけでは即時的に効果があるだけで根本的な解決に至らないことがほとんどです。大切なのはストレッチや適度な運動、筋トレを行うことで自分自身で筋肉の収縮弛緩と関節運動をしっかり行うことです。そうすることで血液循環が改善し、筋肉そのものの柔軟性も改善し自然と痛みは緩和します。

筋肉の硬さを引き起こす原因でもう一つ忘れてはならないのが、「神経の圧迫」です。寝違えやヘルニアにより神経根を圧迫することで、痛みと筋肉の局所的な硬さを誘発します。この場合は頸椎や胸椎の力学的なストレスを除去するため、適切なアライメントを確保することが重要です。その上で適度な運動と保温を行うことが痛みの改善に有効です。

肩甲骨周りの痛みは心臓や内臓、ストレスが原因のことも

上記のように運動器が直接的に原因となっているだけでなく、違った部位が原因で思いもしない病気が隠されている場合があります。この場合、肩甲骨の内側の痛みというのは身体からの重要なサインになります。

岩渕翔一監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、呼吸認定療法士、JARTA認定SS rankトレーナー兼認定講師

このサインにしっかり気づき状態や症状の原因に応じた適切た処置と治療が必要になります。

心臓の原因が示唆されるケース

左の肩甲骨だけが痛い場合で上記のテストも問題がない。さらに肩甲骨の痛みだけでなく、胸痛がある、息苦しさなど呼吸に影響があるなどが併発している場合、狭心症などの心臓疾患の疑いが示唆されます。こういった症状が疑われる方は速やかに医療機関を受診するようにしてください。

内臓の原因が示唆されるケース

右の肩甲骨だけの痛みの場合は肝臓や胆のうの異常の可能性があります。このケースも肩甲骨の痛みだけでなく、腹痛、背中や腰全体の痛みが併発することが多いです。

ストレスの原因が示唆されるケース

ストレスが原因となる場合、症状そのものは筋肉の硬さや循環不全とほとんど変わりません。ストレスは自律神経系の不調をきたすため、自律神経の走路である背骨が硬くなります。また、姿勢も悪くなり、結果的に背骨や肩周囲の動きが悪くなります。日常的に緊張に晒されているようなケースでは肩が挙上位となりやすく(緊張すると力んで肩が上がりやすくなります)、呼吸も浅くなるので結果的に肩甲骨そのものの動きが著しく悪くなり、それが痛みを引き起こす原因となります。

また、現代社会はスマホが普及したことや、デスクワークなどでのパソコン作業を多くこなす必要がある人が少なくありません。こういったケースでは姿勢が自然と猫背になりやすく結果的に背骨や肩甲骨の動きが悪くなり、痛み症状となり身体に現れることがあります。

セルフケアで行える対策

痛みを予防できるストレッチなどを教えてください!

岩渕翔一監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、呼吸認定療法士、JARTA認定SS rankトレーナー兼認定講師

わかりました!

立甲

こちらの記事で紹介した立甲。立甲は肩甲骨の内側の柔軟性が伴わなければ不可能なので立甲の習得は肩甲骨の内側の痛みの改善に直結する対象法です。

非荷重位での肩甲骨の分化運動

前腕を地面に対し垂直にします。手のひらは自身に向け、その状態で自分の前腕が何か筒状のものの中に入っているとイメージしてください。そのつつの内側をなでるように前腕を動かします。地面との関係は垂直のままです。この運動を行うことで肩甲骨のしっかりと動きます。

肩のストレッチ

肩甲骨の外転のストレッチをしっかり行うことで菱形筋のストレッチを行えます。

ミゾオチと背骨の運動

背骨の硬さは肩甲骨の動きを阻害します。またストレス由来のケースで解説したように自律神経にも影響を及ぼします。ですので、背骨をしっかり動かす運動を行います。

呼吸法

呼吸が浅くなることで肩甲骨に付着している呼吸筋の機能が低下し、結果的に肩甲骨周囲の痛みや機能不全を引き起こすことがあります。また、呼吸が浅くなることで組織への酸素供給が不足する、自律神経機能が低下するなどを引き起こすことがあります。呼吸法は吸気:呼気=1:2を基本とし、空気を胸側、胸の横側、背中側の3つを意識し空気を取り込むように深呼吸をします。そうすることで胸郭をまんべんなく可動することができ関わる関節や筋肉をしっかり動かすことができます。

まとめ

今回は肩甲骨の内側の痛みについて解説しました。多様な原因がありますが、
・筋肉の硬さと循環不全
・寝違え
・ヘルニア
・心臓
・胆のうや肝臓など内臓
・ストレス
・姿勢

などが代表的な原因です。

まずは今回ご紹介した評価や運動をしてみてご自身の症状の原因がどれにあたるのかを考えてみてください。その上で心臓や内臓の原因が疑われる方は速やかに医療機関への受診を行い、適切な診断を受け治療を行うようにしてください。

岩渕翔一監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、呼吸認定療法士、JARTA認定SS rankトレーナー兼認定講師

いずれにしても痛みというのは肉体的にも精神的にも大きなストレスとなり結果的にポジティブな思考を奪ってしまいます。明るい日常を過ごすためにも今痛みを抱えている方はそれが改善するよう行動してみましょう。

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