女性のための腹筋を鍛える体幹トレーニング4選

監修者

松永有紀

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

6つに腹筋が割れるほどムキムキでなくてもいいけれど…、たるんだお腹をどうにかしたい!そんな女性のために簡単な体幹トレーニングとコツをまとめました。腹筋を割る・スッキリした縦線を入れるためには様々な観点から鍛える必要があります。腹筋を徹底解説します。

あなたの理想のお腹は?6つに割れた腹筋?それとも…

腹筋と言われてイメージするのは6つに割れた腹直筋でしょう。特に男性はこの腹直筋の割れ目が見えるシックスパックを目指してトレーニングする方も多く、正しくトレーニングすれば比較的結果が見えやすいのでモチベーションも上がります。内臓周りについた内臓脂肪は食事に少し気を配ればある程度までは落ちやすいので、筋トレと食事制限を組み合わせれば、余分な脂肪のない6つに割れた腹筋のお腹は女性より楽に手に入れられるでしょう。

一方、女性はもともと内臓脂肪がつきにくい代わりに皮下脂肪が男性より多く、特に子宮を守るお腹周りには皮下脂肪がつきやすくなっています。皮下脂肪は内臓脂肪より落としにくいので、シックスパックが見えるまで鍛えるには相当ハードなトレーニングや食事管理が必要です。

女性で腹筋が6つにきれいに割れた人の画像も見かけるけれど… 正直そこまでムキムキじゃなくてもいいかな。

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

どのくらいのお腹が理想ですか?

そうですね、お腹がぺったんこでウエストもくびれていて、おへその脇にすっと縦にくぼみがあるぐらい、それくらいが理想ですね。

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

おへその脇に少しくぼみがあるくらいがちょうど、引き締まっているけれど女性らしい、健康的な感じがしますね。この感じを目指してみましょう。

腹筋の種類とコア(体幹)の筋肉

腹筋と言えば6つに割れたシックスパックを思い浮かべる人が多いと思いますが…。実はいくつか種類があります。すっきりしたお腹を作るのに欠かせない腹筋の種類を見てみましょう。

腹直筋

腹筋と言われて誰もが思い浮かべるであろう代表的な筋肉です。体の表面にあるいわゆるアウターマッスルで、体を前に折り曲げる時に使います。

腹斜筋

肋骨から骨盤にかけて、文字通り斜めについている筋肉です。表面にある外腹斜筋と、その奥にある内腹斜筋があります。腹直筋と同様に体を前に曲げたり、また横に倒したり回すときにも使われます。この腹斜筋をうまく使えるとウエストが引き締まってきます。

腹横筋

内腹斜筋のさらに奥、体の深いところで肋骨と骨盤をつなぐように縦に伸びる筋肉です。他の腹筋と同じように体を前や横に倒したり、ひねったりするときに使われますが、特に大事なのは内臓の位置を安定させたり排便を助けたりする働きです。

仰向けになって体を起こすいわゆる「上体起こし」の腹筋運動は、腹直筋を収縮させ鍛える運動になりますが、実は腹斜筋や腹横筋のトレーニングにはなっていません。ぽっこりお腹を撃退し、おへそ脇の縦線を作るには、腹横筋や腹斜筋もバランスよく鍛える必要があります。

では、どんなトレーニングが効果的なのでしょうか?効果的なトレーニングをご紹介する前に、すっきりお腹を作る「コア」について確認しておきましょう。

「コア」とは英語で「核」という意味ですが、ここでは両腕の付け根と両脚の付け根の四点を結んだ、いわゆる体幹部を支える筋肉とします。上述した腹筋群だけではなく「コア」の筋肉を鍛えることが、おへそ脇の縦線、すっきりお腹をつくるためには大切です。様々な捉え方がありますが、ピラティスの多くの流派では、この「コア」を横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群の4つとしています。

横隔膜

肺の下にあるドーム状の筋肉で、胴体を肺のある「胸部」と、腸などその他の臓器のある「腹部」に分けています。呼吸に連動して上下に動き、息を吸った時には肺に空気を取り込めるようぐっと下がり、息を吐くときは逆に上がります。
 

腹横筋

いわゆるインナーマッスルの代表格のような筋肉で、上述したように肋骨と骨盤の間で内臓を安定させる筋肉です。

多裂筋

背骨と背骨をつなぐ筋肉で背骨全体を安定させる役割を担っています。背骨が回る動きをする時に使われます。

骨盤底筋群

骨盤の底から内臓が落ちてこないように支えています。横隔膜や腹筋群と連動して腹腔(横隔膜より下、骨盤の上の部分のことで胃や腸などの内臓がある部分)の圧を維持しています。息を吸った時には横隔膜と連動して下がり、息を吐くときには上がります。

腹腔を上から横から後ろから下から囲み、適度な圧をかけているのがコアの筋肉です。この圧がうまくかかっていないと内臓がきれいに腹腔内に収まらずぽっこりお腹にもつながりますし、せっかくの体幹トレーニングも効果が上がりません。そればかりか、腰痛をひきおこす可能性もあるので注意が必要です。

体幹トレーニングを始めるその前に|呼吸でコアを意識する

腹筋群やコアを起動し、より効果的な体幹トレーニングに導くのがピラティスで使われる「胸式ラテラル呼吸」です。この胸式ラテラル呼吸に、骨盤底筋群を収縮させる「ウインドジップ」を組み合わせると、体幹部が安定しトレーニングの効果がいっそう上がります。そのやり方を詳しく見てみましょう。

胸式ラテラル呼吸

ラテラル(lateral)とは英語で「側面の」という意味です。

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

余談ですが、アイスバケツチャレンジで有名になった筋萎縮性側索硬化症という病気はALSという略称で知られていますが、ALSはAmyotrophic Lateral Sclerosisの略です。解剖学的に脊髄の中央外側の神経線維が縦走する場所を「側索=lateral」と言います。

息を吸った時、肋骨を横に後ろに大きく広げる呼吸法が胸式ラテラル呼吸です。

1.親指を背中側に、残りの4本指をお腹側にして、両手で肋骨を触ってみましょう。
2.鼻から息を大きく吸い、その時に肋骨を横に後ろに大きく広げます。この時できるだけ肩を上げないように、首を長く保ったままにしましょう。
3.口からゆっくり息を吐きます。この時、肋骨を親指のある背中側からおへその方に斜めにとじ込むようにします。この時細いウエスト、そしておへその方向に斜めに走る腹斜筋を意識しましょう。
4.数回繰り返します。

肋骨を広げる動きをするのは肋骨と肋骨の間についている肋間筋という筋肉の役割です。そのため普段意識して使ってないと肋間筋の動きが悪く、肋骨が広がる感じがわからないかもしれません。ラテラル呼吸を試しただけで肋骨のあたりがひどい筋肉痛になる方もいらっしゃいます。ウエストを細くしたいと願う方の多くは肋骨回りの動きが悪いです。それでも数日繰り返しているとだんだん肋骨が動き出してきます。あきらめずに続けてみましょう。

ウインドジップ

ウインド(wind)とは、イギリスの俗語でおならのこと。そのおならをチャックをしてがまんするように筋肉を使うのが「ウインドジップ」です。

1.おならを我慢するようにやさしく肛門を閉じましょう。この時、ぎゅっと締めすぎないことがポイントです。2つのお尻を1つにまとめるようにぎゅっと締めてしまうと、ターゲットにしている骨盤底筋群ではなく、お尻の外側の大きい筋肉、大殿筋などを使うことになってしまいます。お尻はあくまで2つ。おならをがまんしていることがばれないようにさりげなく、ぐらいがちょうどよい力加減です。

2.息を吐きながら、やさしく肛門を閉じた力をチャックを引き上げるように恥骨、おへその方へつなげていきます。

3.息を吸っても、おへそまで引き上げたチャックをできるだけ緩めず、キープするようにしましょう。

4.次に息を吐くときに、また肛門→恥骨→おへそとチャックをやさしく引き上げます。

5.数回繰り返します。

ウインドジップをした時のお腹を観察してみましょう。下腹が引き締まった感じになるのではないでしょうか。ウインドジップは骨盤底筋群を収縮させるために使うイメージですが、上述したように骨盤底筋群は腹横筋とも連動しているため腹横筋も収縮し腹圧を高めるのでお腹が引き締まります。

胸式ラテラル呼吸

とウインドジップを組み合わせる
息を吸う時は肋骨を広げ、息を吐くときは肋骨を閉じつつ、ウインドジップで骨盤底筋群を引き上げてみましょう。慣れないうちは同時に行うのが難しいかもしれませんが、段々慣れてくると、息を吐くだけでウエストはすっと細くなり、下腹部が引き締まります。

骨盤底筋群は横隔膜とも連動しているので、息を吐くときに横隔膜が上に上がるのに合わせてウインドジップでさらに意識的に骨盤底筋群を引き上げてみましょう。

腹筋を鍛える体幹トレーニングメニュー4選!

カールアップ

いわゆる「上体起こし」を、コアを意識しながら行ってみましょう。

1.マットに仰向けになり、膝を立てます。膝の幅、かかとの幅はだいたい骨盤幅ぐらいに開き、足先はまっすぐ前に向けましょう。

2.骨盤を「ニュートラル」(前にも後ろにも傾いていない状態)にセットします。目安は下腹部に手を当ててみて、おへそと恥骨を結ぶラインが床と平行になっている状態です。恥骨が天井に向きやすいので注意しましょう。

3.骨盤が「ニュートラル」にセットできると、腰の部分の背骨は前にカーブしているため、腰の後ろには手のひらが一枚入るぐらいのスペースができるはずです。腰の後ろのスペースを確認してみましょう。

4.この体勢で「胸式ラテラル呼吸」+「ウインドジップ」を繰り返してみます。肋骨を閉じ込むように息を吐くと腹斜筋が意識でき、肩甲骨、みぞおちの裏あたりがマットに重たく沈むような感じになってきます。みぞおちの裏あたりがマットから浮いているといわゆる腰が反った状態となり、腰を痛める可能性があります。肋骨の一番下まできちんとマットにつけておくようにしましょう。

5.両手の指と指を軽く組み、後頭部を支えるようにしてみましょう。いったん両ひじを寄せたところから少しづつ開いていき、みぞおち裏が浮かないところで開くのをストップします。ひじを床に近づけすぎてしまうと腰が反り、痛めてしまうかもしれないので注意しましょう。

6.いよいよ上体を起こします。背骨を一個づつ、カールさせるように起こしていくので「カールアップ」です。大きく息を吸って、吐きながらまずは軽くあごを引きます。あごを引くことで頭がい骨と背骨の境目(ちょうど耳の穴の高さのあたり)が動きます。そこから吐く息で7つある首の骨を一つづつマットからはがし、胸の骨もはがし、肩甲骨が浮くぐらいのところまで上体を起こしてきます。

7.吸う息で、今度は背骨の下から一つづつマットに戻していき、頭もマットに戻します。

8.5回ほど繰り返してみましょう。

<注意点>
・体を起こし切る必要はありません。肩甲骨が離れるぐらいで十分コアのトレーニングになります。
・あごを引きすぎて、首の付け根に負担を与えないように注意しましょう。背骨の首の部分から胸の部分にかけてきれいにカールするようにイメージしてみましょう。
・体を起こしてきても下腹部(骨盤周り)は動かさないようにしましょう。上体を起こすときに息を吐いているので肋骨は閉じられ、ウインドジップで骨盤部が下から安定しているはずです。恥骨が天井を向いていないか確認してみましょう。
・両ひじが近づいてこないようにしっかりひじを張っておきましょう。肩甲骨の安定筋、背筋のトレーニングにもなります。

ダブルレッグストレートストレッチ

カールアップで意識できたコアの筋肉を、自分の脚の重さを使ってさらに鍛えるエクササイズです。

1.「カールアップ」が終わった状態(仰向けで膝を立て、両手を後頭部で組んでいる状態)から、骨盤部を動かさないように両脚のひざとひざを軽く合わせ、ひざ、つま先を伸ばし天井に向けて垂直に上げます。

2.ひざを伸ばすのが難しい場合は少し曲がっていてもOKです。足の付け根の真上に膝が来るようにセットしましょう。

3.数回ラテラル呼吸を繰り返し、みぞおち裏がマットについていることを確認しましょう。

4.吐く息でしっかり肋骨を閉じながら、その呼吸に合わせ、揃えた両脚を床に向けてゆっくり下ろします。胸元が浮いてこない程度でストップします。
5.吸う息で両脚を天井に向けて戻します。

6.5回ほど繰り返しましょう。

7.余裕がある方はカールアップで上体を起こして行ってみましょう。また、腰に不安のある方も、ちょっときついですがカールアップで行ったほうが腰を反らせ過ぎて痛めるリスクが減るので安全です。

<注意点>
・カールアップと同様にしっかりひじを張り、肩甲骨の安定筋、背筋も鍛えましょう。
・脚を下すときは、吐く息に合わせてゆっくりと下ろします。太ももの骨が骨盤にはまっている股関節から脚を動かすようにイメージしてみましょう。
・脚を床に近づければ近づけるほど負荷がかかってトレーニング効果が上がりますが、腰が反りやすくなるので注意が必要です。
・足の指の間にゴムが挟まっていて、そのゴムを下に引っ張るようなイメージで脚を下ろしていくと、腰を反らせることなくゆっくり下ろせます。

サイドプランク

腹斜筋にしっかり効かせましょう。

1.横向きになり、肩の真下にひじをつきます。膝の延長線上に骨盤、ひざを90度に曲げ、骨盤の延長線上にかかとが来るようにします。

2.上の手で下の脇腹を掴むようにし、ぐっと引き上げましょう。背骨が斜め一直線になります。

3.脇腹を引き上げることでひじの位置が肩より遠くなってしまったら、肩の真下に来るように再度セットしましょう。

4.息を吸い、吐く息に合わせて骨盤を少し浮かせます。この時に肋骨をしっかりととじ込むようにして腹斜筋を意識しましょう。ひじでしっかりマットを押し、頭のてっぺんと尾てい骨が引っ張り合いっこするようなイメージで体を持ち上げるとより少ない力で体を持ち上げることができます。

5.背骨がたわまないように注意しながら、吸う息に合わせてそっと骨盤をマットに戻しましょう。

6.5回ほど繰り返します。

プランク

体幹トレーニングの王道ともいえるプランク。腹筋、コアの筋肉を意識して行ってみましょう。

1.うつぶせで、肩の真下にひじが来るようにひじをつきます。手はグーで握っても、手のひらを下にしてマットを抑えるようにしてもやりやすいほうで構いません。

2.腿がマットについている状態でも、腰を反らせて痛めないよう、ウインドジップでしっかり下腹部を引き締めておきます。おへそを背骨に近づけるように息を吐いても良いでしょう。

3.脚の幅は骨盤幅ぐらい、足指を立ててしっかりマットを捉えます。

4.息を吸って準備をしたら、吐く息に合わせて頭のてっぺんからかかとまでピッと糸を張ったように、ひじでしっかり床を押しながら体を持ち上げます。

5.吸う息でそっと腿をマットにつけましょう。

6.5回ほど繰り返します。

7.余裕があれば、プランクの状態から、吐く息に合わせて脚を交互にマットから離してみましょう。

4つのトレーニングで1メニューとして1から順番に行うのが理想ですが、やりやすいものを1つだけなどでも構いません。順番もこの通りでなくてもOK。また、4つのトレーニングをやる時間や場所が取れなくても、「胸式ラテラル呼吸」と「ウインドジップ」ならどこでもできます。隙間時間を有効に活用して理想のお腹を手に入れましょう!

馴染みのあるトレーニングばかりですが、腹筋、コアを意識して行うことが大事なんですね。

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

ダンスの振付を真似するように、表面的にメニューをこなしてもあまり意味がありません。目に見えないコアの筋肉を意識して鍛えましょう。

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