マラソンのためのトレーニング方法|初心者から上級者までのメニューを紹介

監修者

沖 和彦

NESTA ハートレートスペシャリスト

マラソンのためのトレーニングについて、そのメリットや初心者から上級者までのトレーニングメニューを紹介します。マラソンは低コストで手軽にでき、ダイエットや体力作りなど様々な効果が期待できます。ぜひトレーニングと合わせて生活に取り入れてください。

マラソン前に筋トレが必要な5つの理由

仕事でデスクワークが多くて太ってきてしまいました。まずはダイエットや健康のためにランニングを始めようと思います!

沖 和彦監修トレーナーからのアドバイス

NESTA ハートレートスペシャリスト

それはとてもいい心がけですね!ランニングは健康のためにとてもいい運動ですよ。

ゆくゆくはマラソンにも出たいです!やる気マックス!すぐに走ります!!

沖 和彦監修トレーナーからのアドバイス

NESTA ハートレートスペシャリスト

ちょっと待って下さい!いきなり走るのも良いですが、その前に走る前のウォーミングアップや走る身体を作るためのトレーニングについて知りましょう。

走る前の準備として、ウォーミングアップは欠かせません。
身体を温め、マラソンモードに切り替えることで、様々なメリットが得られます。まず、ウォーミングアップとして筋トレを取り入れることの5つのメリットについて説明します。

1.脂肪燃焼を助けるホルモンの分泌が活発になる

体脂肪の燃焼に役立っているのが「成長ホルモン」
成長ホルモンは、筋肉を成長させるホルモンとしても有名で、脂肪細胞内に存在する感受性リパーゼ(HSL)という酵素の活性を上げる働きを持っています。感受性リパーゼ(HSL)は脂肪細胞内に蓄えられた体脂肪を分解する働きを持っているため、成長ホルモンにより活性化が進むと、脂肪の分解も促進されるというわけです。

マラソン前のトレーニングは、成長ホルモンの分泌を促し、体脂肪を燃焼しやすい状態にさせることで、よりマラソンの効果を上げることができます。

2.筋肉が鍛えられ、基礎代謝量が上がる

トレーニングによって筋肉量を増加させると、それに伴って基礎代謝量もアップします。

基礎代謝とは、身体を動かしていなくても使われるエネルギー代謝のことで、体温の維持などのために行われています。基礎代謝は1日に消費しているエネルギー量の約70%を占めており、そのうちの20~30%は筋肉が使われています。

つまり、筋肉を鍛えて増量させることで基礎代謝が上がり、体脂肪の燃焼を促進させることができるのです。

3.身体が運動モードに切り替わる

マラソンの前にトレーニングを行うことで、筋温の上昇や関節可動域の広がりが見込めることで、何もしないときよりもスタートから体が動かしやすい状態にしておくことができます。

マラソンの目標が、距離ではなく時間であった場合、ペースを速めることで走る距離が伸び、その分消費カロリーが増えて、より多くの脂肪を燃焼させることができる、ということも期待できます。

4.インナーマッスルを使えるような身体にし、脂肪燃焼が促進される

姿勢を維持するインナーマッスルを鍛え、マラソンでインナーマッスルを使えるようになると、体脂肪は燃えやすくなります。
インナーマッスルは「遅筋」「速筋」という2種類の筋繊維で構成されており、それぞれ異なる性質を持っています。特に、赤い筋肉とも呼ばれる「遅筋」は酵素を活発に筋繊維中に取り込み、エネルギー生産を助ける働きを担っているため、遅筋を使うことで脂肪の燃焼を高めることができます。

インナーマッスルにはアウターマッスルに比べ、この遅筋の割合が多いことから、インナーマッスルを増量させることで、より体脂肪を燃焼させやすくすることができるというわけです。

マラソン前のトレーニングをすることで姿勢を整え、走っている時でもインナーマッスルを上手に使って走れるようになりましょう。

5.筋肉疲労によるケガを予防できる

「オーバーユース症候群」という言葉をご存知でしょうか。
オーバーユース症候群とは、膝や足首など、身体のある一部の使い過ぎによって筋肉や靱帯などが損傷し、炎症や痛みを引き起こすことです。

オーバーユース症候群を起こしてしまうと、走っても効果的に脂肪を燃焼させることができなかったり、悪化させてマラソンを中止しなければならなくなってしまいます。マラソンにおけるオーバーユース症候群の主な原因は、自分の筋力レベル以上のペースで走ることによる筋疲労です。

走るスピードを上げて心肺機能を活発にさせると、脂肪は燃焼させやすくなりますが、筋力が不十分な段階で無理をしてしまうと、筋肉への負荷が大きくなりすぎたり、着地衝撃が強くなり、結果、オーバーユース症候群を引き起こすきっかけとなってしまいます。

そこで、マラソン前にトレーニングを行い、筋肉を鍛えて筋力を向上させることで、オーバーユース症候群の発症を予防することができるのです。

沖 和彦監修トレーナーからのアドバイス

NESTA ハートレートスペシャリスト

オーバーユースの原因を付け加えると、自分の身の丈に合わない無茶な走りをするということがあります。つまり、数字や速度だけを求めて肝心の姿勢やフォームや心地よく走るという感覚を持たずに走ると末端に近い筋肉や各関節への負担が大きくなってしまうからです。

マラソンのためのトレーニング【初心者向けメニュー】

【プランク】

主に腹直筋体幹筋が鍛えられます。体幹が鍛えられるので、疲れにくく一定のペースで走るための理想のマラソンフォームを維持することができます。

1.うつ伏せの状態になります。
2.肘と足の爪先を立てて体を支えます。
3.この姿勢を30秒間キープします。

目標:30秒キープ×3セット

身体を支える時は腹筋に力を入れ、背中は一直線にして腰が丸まったり反ったりしないようにしましょう。

【スプリットジャンプ】

主に大腿四頭筋大臀筋を鍛える事ができます。スムーズな蹴りだしを可能にし、エネルギーを無駄なく前進力に変えていきます。

1.脚を前後に大きく開き、前側の膝を曲げます。
2.両肘を軽く曲げ、走る時のように脚と逆に前後に構えます。
3.両脚で踏み込み、真上にジャンプし、着地と同時に手足を入れ替えます。

目標:10回×3セット

後ろの膝が地面に付きそうになるまで曲げましょう。上半身が前屈みにならないよう、胸を張って行いましょう。

【フロントランジ】

主にハムストリングス大臀筋大腿四頭筋が鍛えられます。
関節可動域が狭いと大きな動きができずに歩幅も小さくなってしまうため、マラソンでは関節の柔軟性も大切です。フロントランジは関節可動域を拡大しながら下半身の筋力を鍛えられるため、フォームの改善とペースの向上につなげることができます。

1.腰に手をあて、脚を肩幅に広げて立ちます。
2.片方の脚を90度になるまで上げ、その後大きく一歩前に踏み出します。
3.踏み出した脚で地面を蹴って、1の体勢に戻ります。

目標:左右10回ずつ×3セット

背筋を伸ばして行います。
膝は爪先より前に出ないようにし、身体の重心を突き出した脚でなく、お尻に落とすようにしましょう。

マラソンのためのトレーニング【上級者向けメニュー】

【ドロップランジ】

主に大腿四頭筋大臀筋ハムストリングス下腿三頭筋が鍛えられることで、着地時の地面反力を捉える力を強化することができます。
着地時の地面反力を効率よく受け止めることで、脚や腰の負担を軽減させることができます。

1.両手を腰にあてて両脚を少し開き、つま先立ちになる。
2.両脚を前後に開き腰を落としながら着地する。
3.着地の反作用で1の姿勢に戻す。

目標:左右15回×3セット

前の膝が90度になるまで腰を落としましょう。
背筋を伸ばし胸を張って行い、1秒に1動作のリズムで進めましょう。

【フロントキック】

走るときに脚の運びが流れてしまっていると、足首に負担がかかったり、スピードを伸ばすこともできません。
このトレーニングによって主に腸腰筋下腿三頭筋を鍛えることで、脚を振り出す動きを強化し、安定した走りにつなげることができます。

1.両脚を前後に開き、前脚の膝を曲げる。
2.両手は走るように前後に構える。
3.後ろ足の爪先で地面を蹴り、膝を引き上げた勢いで前に向かって蹴り出す。
4.蹴り出す時に腕を入れ替える。

目標:左右15回ずつ×3セット

脚が完全に伸びきるように蹴り出しましょう。

【ヒップリフト】

主に三角筋後部脊柱起立筋が鍛えられます。
体幹と肩が同時に鍛えられ、長距離でも理想のフォームや腕振り動作をキープすることができるため、一定のペースを保持して安定した走りに
つなげることができます。

1.長座姿勢になり、両手を肩幅に開いて身体の後方の床に付け、指先は自分に向ける。
2.ゆっくりとお尻を引き上げ、頭から踵までを一直線になるようにして支える。視線は天井へ。
3.ゆっくりと1の姿勢に戻す。

目標:15回×3セット

2秒かけてお尻を引き上げ、1秒かけて床に付けるように意識して行いましょう。

スピードアップのためのトレーニングメニュー

心肺機能を高める【インターバルトレーニング】

走るペースを上げるためには、心肺機能を高めることが重要です。
なぜなら運動をする際に使われる筋肉は、酸素を取り込んでエネルギーを作り出しますのですが、心肺機能を強化することで、速く走る際のエネルギー供給が効率的に行われるようになるからです。

特に、マラソン初心者は丈夫な心肺機能が備わっていないため、エネルギー供給が追い付かず、すぐに疲れてしまうことが多いです。心肺機能を鍛えるトレーニングによって、持久力を高めることがマラソンで距離を伸ばしていくために必要です。

その心肺機能の向上に有効なのが【インターバルトレーニング】です。
インターバルとダッシュを交互に行うことで、心肺機能の向上を目指します。

インターバルトレーニングの一例として「300~500mをダッシュし、1分程度のゆっくりのジョギングで休憩する」方法をおすすめします。
300mや500mなら1本目・2本目あたりは最大心拍数に届きづらいですが、セット間インターバルを60~90秒あたりにすることで3本目以降、スピードが落ちても(フォームを崩さない/しゃべる余裕はないくらい)最大酸素摂取能力を上げることができます。
この方法で、1回5セットを目標とし、必ずダッシュを先に行い、最後にはジョギングをして筋肉の疲労回復を促しましょう。

初心者の方で、300~500mのダッシュがキツイと感じる人は、100m等短い距離のダッシュから初めて、徐々に伸ばしていくと良いです。1週間に1度程度行うことを目安として、段階的に心肺機能の向上を目指しましょう。

沖 和彦監修トレーナーからのアドバイス

NESTA ハートレートスペシャリスト

インターバルが長いと心拍数が下がりすぎてしまい最大心拍に上げるのに300mや500mでは短すぎることになります。なので適度なスピードでいいからあまり長く休憩を取りすぎてしまわないようにすることが心肺機能を高めるのに効果的でしょう。

自分の心肺機能に合わせて段階的にトレーニングする【心拍トレーニング】

【心拍トレーニング】とは、目標心拍数を維持しながら走るトレーニングです。

長い距離を走るコツは、できる限り一定の速度で走り続けることです。
安静時の心拍数の基準値は60~70拍/分ですが、走るスピードや運動強度に比例して上昇します。
オーバーペースで走っていると、いつまでも距離を伸ばせなかったり、筋肉疲労によるケガを引き起こす可能性があるため、自分の最適なペースを知ってそのペースを守って走ることが基本となります。

自分の最適なペースは、心拍数から算出することができます。
距離を伸ばすためには、最大心拍数の約60~65%を目安として走ると良いでしょう。

目標心拍数は
「(220ー年齢ー安静時心拍数)×0.6~0.65+安静時心拍数」
で算出できます。

(最大心拍数は「220ー年齢」で推定できます。安静時心拍とは、起床時に坐位で測った心拍数のことを言います。)

ここで算出された心拍数を維持して走るトレーニングをするにあたっては、リアルタイムで心拍数がわかる、心拍計やランニングウォッチが便利です。
もしくは、手首の親指側にある脈拍を、反対側の人差し指から薬指の3本指を当てて、15秒計測して4倍すると1分間のおおよその心拍数を概算することができます。

インターバルトレーニングと心拍トレーニングを組み合わせてスピードアップを目指そう

このように、インターバルトレーニングで心肺機能を向上させ、心拍トレーニングで一定のペースで走る練習を行うことによって徐々に距離は伸びてくると思います。

例えば、5分/kmのコースを140拍/分で走っていたのが、120拍/分で走れるようになったら、心肺機能が向上している証です。

マラソンのためのアプリ紹介

Runkeeper

これからランニングを習慣化させていきたいという初心者の方におすすめのアプリです。
ペース、距離、タイム、消費カロリー等の統計や、記録がグラフ化されて、これまでの進捗をデータとして見ることができたり、イヤホンから音声指示による音声ナビが受けられます。

ランニング以外のアクティビティも豊富で、目標を自由に設定したり、練習内容に応じてワークアウトを設定することができます。また、SNS機能もあるため、アクティビティデータやトレーニングプランを投稿してランニング仲間と共有することができます。

友達のランニングデータを見て刺激されたり、競い合うことでモチベーションが維持され、継続性を高めます。

Nike+ Run Club

ランニング初心者から上級者まで様々なレベルのランナーにおすすめです。
ペース、コース、距離、高低差、心拍数、距離ごとのスプリットデータの記録はもちろん、自分の目標を運動レベルに合わせたプランをNIKEコーチが提案してくれます。

こちらもSNS機能があり、ランニング結果や写真を自由にカスタマイズして投稿することができたり、友達とランニング結果を比較・競争して楽しむことができます。

Runtastic

ワンプッシュで測定が開始されるシンプル操作なので、始めて使う人でも使いやすいアプリです。簡単な操作で詳細な記録の計測・保存ができるので、どのアプリを使おうか迷っている人におすすめです。

ランニング測定中の画面には距離・時間・スピード・ペース・消費カロリーが表示され、現在までの測定値を確認することができます。

ランニング終了後には、走った時間と距離、平均ペース、平均速度、高度、消費カロリーが記録されます。前回のランニングデータだけでなく、1か月ごとのデータも一覧で見れるので、自分が1か月にどのくらい頑張ったのかが一目でわかるようになっています。

Strava

StravaはSNS機能が充実していて、ランニング仲間との情報共有やランニング記録のシェア、仲間との競争をすることができます。
走行コースから、自動で他のランナーの記録を比較してランク付けしてくれるので、そのコースのチャンピオンを目指してゲーム感覚でランを楽しむことができます。

また、プライバシーゾーンが登録でき、自宅の場所が特定されないように設定することができるので安心して使えます。走行データは地図上で表示されるので、走った距離やコースをわかりやすく把握することができます。

アクティビティの編集も簡単で、ランニングタイプを「ランニング」「ロングラン」「ワークアウト」「レース」の4つから選択できたり、ランニング日誌が記入できる項目があるため、記録しておくと後で読み返す時に便利です。

マラソンのためのトレーニング【まとめ】

マラソンを行うにあたって、特に初心者は「無理をしないこと」が大切です。
初心者の練習メニューの目標としては、【走ることに慣れること】【マラソンの身体作り】になります。基礎的なところから鍛えていき、身体と心の持久力を身に付けていきましょう。

頑張りすぎてしまうと、体に過度な負担がかかり、ケガやオーバーユース症候群を招く原因となります。これらを防止するためにも、マラソン前には十分なウォーミングアップとトレーニングを行い、自分の適切なペースを知って走りましょう。

マラソン前にしっかりとウォーミングアップすることで、身体が運動モードになり、ケガの予防だけでなく脂肪燃焼率の向上にも役立ちます。
筋力トレーニングや、インターバルトレーニング、心拍トレーニングを組み合わせて行うことで、インナーマッスルや下肢の骨格筋、そして心肺機能が鍛えられ、マラソンのスピードや距離を伸ばしていくことができます。

また、日々のマラソンの成果をデータ化して客観的に把握したり、ランニング仲間のデータと比較して楽しむためにアプリを利用するのもおすすめです。
自分のランニングスタイルに合ったアプリを見つけて、楽しくマラソンを続けていきましょう。

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