横隔膜を鍛えるメリットとは?【プロトレーナー監修】

監修者

宮城島大樹

NESTA PFT 食コンディショニングアドバイザー

肺に代表される、呼吸を司る様々な器官。その中の1つに横隔膜があるのですが、実はこの横隔膜、れっきとした筋肉で鍛えることができるのです。では、横隔膜を鍛えることにはどんなメリットがあるのか。そしてどんな鍛え方があるのかをまとめて解説します!

横隔膜は体幹にある動かせる「筋肉」

横隔膜は肺の下を覆うように存在する、文字通り膜のような筋肉です。ちなみに膜とは行っても、薄皮1枚のような頼りなげなものではなく、実物は意外と分厚かったりもします。

そして、この筋肉は体幹にある「インナーユニット」と呼ばれる筋肉たちの1つでもあります。

インナーユニットとは、体幹の中でも特に腹部から腰にかけて存在する、上半身と下半身とを繋ぐ重要な場所にある筋肉のことです。具体的には次の4つの筋肉のことを指します。

・腹横筋:お腹周りをコルセットのように覆っている筋肉)
・多裂筋:背中を走っている筋肉
・横隔膜
・骨盤底筋群:骨盤に伸びている筋肉の総称

通常体幹とは「手足と頭以外の胴体全体」を指すことが多いのですが、これらのインナーユニットを狭い意味での体幹として呼ぶほど、非常に重要な役割を持っています。

この横隔膜はそんな大切なインナーユニットの1つで、自分の意思で動かすことができる「随意筋」と呼ばれる筋肉でもあるのです。そしてこの横隔膜には、こんな役割があります。

宮城島大樹監修トレーナーからのアドバイス

NESTA PFT
食コンディショニングアドバイザー

横隔膜は鍛えることができるのです!

横隔膜の持っている働きについて

横隔膜の役割といえば、何と言っても呼吸の補助があります。人は呼吸をすると肺に空気が取り込まれるわけですが、肺自体は筋肉ではないので自由に動くことができません。そんな肺の動きを担っているのが横隔膜の役割です。

簡単に言うと、息を吸うときは横隔膜は下にさがり、空気が取り込まれます。そして息を吐くときは横隔膜が迫り上がることで肺を圧迫して、肺から息を吐き出します。ちょうど注射器のピストンの動きを連想するとわかりやすいのではないでしょうか。

また、横隔膜は腹圧を生み出すのにも役立っています。腹圧とは文字通りお腹の部分で生まれる圧力のことで、トイレなどで排便をするときの力みなどがそれにあたります。腹式呼吸で息を吸うときや、ウェイトトレーニングで高重量を扱うときなど、様々なシーンで活躍するのがこの腹圧で、それを支えているのが横隔膜というわけです。

横隔膜を鍛えるメリット① 呼吸が楽になる

横隔膜をトレーニングなどで鍛えることで、まず実感できるのが呼吸が楽になるという点です。横隔膜は腹式呼吸で大きな活躍を見せるのですが、主にこの腹式呼吸は副交感神経が優位になりやすく、リラックスする時に最適に呼吸と言われています。

一方、胸の筋肉を主体で行う胸式呼吸は交感神経が優位になるので、スポーツ時や普段の生活に適している呼吸法です。

腹式呼吸で重要なのは、横隔膜を大きく動かして「たくさん息を吸って、しっかりと息を吐き切る」という点にあります。横隔膜が鍛えられるとこの動作が非常に楽になるのです。

普段私たちはスマホやPCを使っている時、ついつい前傾姿勢になりがちです。そのため、胸や肺が圧迫されて普段の呼吸が浅くなってしまうことがあります。そこで、家でリラックスしているときや寝る前などに大きな呼吸を行うことで、深い呼吸を習慣化することができるようになるのです。

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横隔膜を鍛えるメリット② 代謝アップでダイエットにもいい

腹式呼吸というのは、胸式呼吸よりも横隔膜の動きが非常に大きくなります。それにより、運動量が増して代謝がアップするのです。一時期「ロングブレスダイエット」など深呼吸をダイエットに活かすメソッドが人気を集めましたが、その背景にはこんな理由が隠されていたのですね。

また、有酸素運動などで脂肪燃焼をする場合、呼吸によって体内に入る酸素が非常に大きな役割を担っています。その為、酸素の吸入量を増やすことができる横隔膜のトレーニングは、様々な角度からダイエットに適した運動とも言えるわけです。

横隔膜を鍛えるメリット③ 姿勢の改善にもつながる

横隔膜をはじめとしたインナーユニットがある部分というのは、基本的に背骨以外の筋肉がほとんどありません。その為、これらの筋肉は姿勢を正しい状態に維持するのに必要不可欠な存在なのです。

逆を言うと、これらの筋肉が衰えることで腰痛やヘルニア、あとは体全体のコリや慢性的な痛みの原因にもつながってしまいます。そこで、横隔膜を鍛えることで体幹の力をアップさせ、本来の姿勢を維持する力を取り戻すことができるのです。

他にも横隔膜を鍛えるメリットはたくさんある

今回紹介した以外にも、横隔膜を鍛えることで得られるメリットは数多く存在します。残りのメリットをまとめて紹介していきましょう。

睡眠の質が向上する

腹式呼吸が安定することでリラックスがしやすくなり、よりぐっすりと眠ることができます。それが睡眠の質の向上へとつながるのです。

自律神経が整うことで免疫が向上する

横隔膜のトレーニングにより、交感神経・副交感神経といった自律神経のバランスが整いやすくなります。この2つの神経はどちらかが偏ると、免疫機能が偏ってしまうという問題を抱えています。横隔膜主導の腹式呼吸はこのバランスを整えやすいという特徴があり、それによって免疫機能も回復・向上しやすくなるのです。

逆流性食道炎の予防

胃液や胃の中にあったものが逆流してしまい、食道に炎症が起こる病気を逆流性食道炎と言います。横隔膜は胃の上部にある筋肉なのですが、この筋肉の働きがそんな胃液などの逆流を防いでくれると言われているのです。

これ以外にも、呼吸が整うことで様々な病気のリスク軽減、あるいは予防ができるのが横隔膜の大きなメリットと言えます。

横隔膜を鍛えるなら「ドローイン」が一番!

横隔膜を鍛える一番の方法は、やはり横隔膜をフルに使う腹式呼吸を行うことにあります。そこでオススメなトレーニング方法が「ドローイン」です。深い息をすることで横隔膜を鍛えるこのトレーニングは、寝る前や仕事終わりでリラックスをしたい時にも有効です。

まず、床の上に横になります。仰向きになった状態で、膝は楽な状態で立てましょう。そこから、鼻から息を吸ってお腹をできる限り大きく膨らませます。そのあと、今度は口から大きく息を吐きましょう。この時、お腹を大きく凹ませるようにします。

呼吸はできる限りゆっくり大きく行うのがコツです。だいたい10回程度の呼吸をして、余裕があれば3セットほど繰り返し行うようにしてみてください。

ポイントは「横隔膜をなるべく大きく動かす」という点です。息を吸う時は限界までお腹を膨らませ、息を吐く時はお腹を床にくっつけるくらいのイメージで、限界までお腹を凹ませます。

このトレーニングは腹部にかなりの負荷をかけることになります。そのため、なるべく食後すぐといったタイミングでは行わないように注意してください。

【ドローインをもっと詳しく知りたい方はこちら】

横隔膜を鍛えることで健康的で引き締まった体を手に入れよう!

横隔膜が持つ様々な働きや、横隔膜を鍛えることで得られるメリット、そしてオススメのトレーニング方法について解説しました。呼吸という人の生活で欠かせない活動を支えてくれる横隔膜を鍛えると、様々な病気のリスクを減らし、より健康的な生活が送りやすくなります。

また、それだけでなく横隔膜には体の引き締め効果やダイエットにも威力を発揮します。ぜひ寝る前や仕事帰りなど、自宅にいる時間を活用してドローインのトレーニングを行い、横隔膜を鍛えて健康的かつ引き締まった理想的な体を手に入れてください。

宮城島大樹監修トレーナーからのアドバイス

NESTA PFT
食コンディショニングアドバイザー

横隔膜が鍛えられることでそのほかのトレーニングの際にも腰を痛めにくくなるなど多くのメリットがあります。
ぜひ呼吸などの際にも意識して日々過ごしてみてくださいね!