臨月のスクワットが安産に効くのはなぜ?回数等の正しいやり方を解説!

監修者

松永有紀

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

【プロトレーナー解説】赤ちゃんがいつ産まれてもおかしくない臨月。スクワットは安産になぜ効果的なのか?体を動かすのが億劫になる臨月でも、意識して動かすことのメリットはたくさん。そんなスクワットの効果や、安全なやり方を見ていきましょう。

なぜスクワットが安産につながるのか?

妊娠36週、いわゆる臨月を迎えるとおなかの赤ちゃんはいつ産まれてもおかしくない状態になります。36週を超えると飛行機に乗るにも医師の診断書が必要になりますし、そこまでの遠出でなくてもなんとなく外出が不安になるものです。妊婦さん向けの運動プログラムは出産直前まで大丈夫、と言われていても、行き帰りが不安でやっぱり出かけるのをためらってしまったり…。

産前休暇に入ったらマタニティヨガやピラティスをやろうと思っていた人も、いざ休暇に入ってみるとそれまでの疲れもあって、予約して出かけていくのが億劫になってしまう人も多いようですね

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

新しいところに出かけて行くのはパワーもいりますし、特に初産の場合は色々心配が先に立ちますよね。

マタニティプログラムにわざわざ参加するのが不安だったり億劫でも、自宅で気軽にできるエクササイズがスクワットです。膝を曲げて伸ばす、シンプルに言うとこれだけ、決してきついエクササイズではないのですが、安産につながる要素がいくつも含まれています。なぜ安産につながるのか?代表的な要素4つを順番に見ていきましょう。

体重管理に役立つ

臨月のあたりになると、赤ちゃんの位置がだんだん下がってきてそれまで圧迫されていた胃のあたりが楽になる方が多いようです。そのため食欲が増し急激な体重増加につながることもあります。また、仕事をしていた人が産前休暇に入ると急に体重が増えてしまった、というのもよく聞く話です。通勤分の運動が減ったことでカロリー消費が減ったり、自宅でリラックスしてついつい間食が増えてしまったり。

臨月はおなかの赤ちゃんの体重が1㎏近く増える時期でもあるのである程度の体重増加は当たり前ではあるのですが、赤ちゃんの成長以上の急な体重増加は妊娠高血圧症候群や妊娠性糖尿病を招く可能性があります。これらの疾患は胎児発育不全や早産、お腹の中に胎児がいる状態で胎盤がはがれてしまう常位胎盤早期剥離の原因にもなります。また、肥満や急激な体重増加は微弱陣痛の要因にもなります。体重が増えすぎないように管理することは安全な出産のためには大切なことなのです。

体重管理の基本はバランスのよい食生活ですが、適度な運動でカロリーを消費することも大切です。ゆったりとした呼吸と共に行うスクワットは代謝を高め、脂肪を燃やす効果があるので、できる運動が限られている妊婦さんには強い味方になるでしょう。

参考までにスクワットで消費するカロリーを以下の記事に詳しくまとめてあります。ご覧ください。

基礎体力がつく

基礎体力とは、体を効率的に動かすために必要な筋力、持久力、柔軟力などの総合力のことです。陣痛が始まってから出産まで、初産で平均15時間と言われていますが、長時間の痛みに耐えさらに出産するにはまさに基礎体力が必要です。

スクワットは下半身の筋力を付けるイメージがありますが、後述する腕の動きも組み合わせれば背面や上半身の筋力トレーニングにもなります。また、骨盤の底で重い子宮を支えている骨盤底筋群も鍛えることができます。ゆったりとした呼吸と共に行えば持久力もつきますし、動かすことによって股関節や膝関節、足首の柔軟性を高めます。お産に必要な体力を効率よくつける優れたエクササイズなのです。

子宮口や産道をしなやかな状態にする

意外に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、子宮や産道も平滑筋と呼ばれる筋肉の一種です。そのため動かさずにいるとどんどん硬くなりしなやかさを失っていきます。おなかが大きく重くなる臨月は動くのが億劫でついつい運動不足になりがちですが、運動不足は子宮口や産道が硬くなるリスクにつながってしまうのです。

スクワットの動きは子宮口や産道にも刺激を与え、しなやかな状態を保つのを助けます。いざ出産、という時に子宮口が開きやすくなり、産道も赤ちゃんが通りやすい状態になるのです。

むくみを防ぎ、自分の体の状態を知る手がかりになる

むくみとは血液中の水分や老廃物が染み出して皮下組織にたまった状態のこと。血流やリンパの流れが悪くなることで起こります。

妊娠中はホルモンの影響で体が水分をため込みやすくなるのに加え、おなかが大きくなるとその重みで脚の付け根が圧迫され下半身への血流が悪くなり、これがむくみにつながります。スクワットは脚の付け根、股関節を動かすので下半身への血流がよくなります。またふくらはぎを使うことにより、筋肉の収縮作用で血液やリンパを心臓に戻すのを助けます。

ある程度のむくみは生理現象なので致し方ないのですが、数日スクワットを続けても改善しないひどいむくみは、上でも挙げた妊娠高血圧症候群のサインかもしれません。自分の体の状態を知る道具としてスクワットを使いましょう。そして少しでもおかしいと思った場合はお医者さんに相談してみましょう。

臨月スクワットの仕方|準備〜スクワットをする前に〜

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

メリットたくさんのスクワットをするその前に。
胎盤の位置などによっては、臨月を迎えても運動はしないほうがよい妊婦さんもいます。必ず主治医に相談しスクワットなど軽い運動をしてもよいという許可をもらっておきましょう。

スクワットの準備―骨盤底筋群をコントロールする「ウインドジップ」と「フラワー」

骨盤の底で内臓を下から支えている骨盤底筋群は日々大きくなる子宮も支えています。臨月になると子宮の重みで圧力がかかり、骨盤底筋群が本来の位置より、人によっては2.5㎝も下がっていることがあります。骨盤底筋群が重みで薄くなり、うまく収縮できなくなってしまうと腹圧性尿失禁(いわゆる尿漏れ)を招きます。重さに負けないよう、意識して収縮できるようにしておきましょう。

出産時は逆に、この骨盤底筋群を緩めて骨盤を広げます。収縮させるだけでなく緩める感覚を掴んでおくと出産時に役立ちます。

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

産後のお悩みで代表的なのも腹圧性尿失禁(尿漏れ)です。骨盤底筋群を鍛えることが予防、改善につながります。妊娠中から備えておきましょう。

骨盤底筋群を収縮させる「ウインドジップ」

ウインド(wind)とは、イギリスの俗語でおならのこと。そのおならをチャックをしてがまんするように筋肉を使うのが「ウインドジップ」です。

1.おならを我慢するようにやさしく肛門を閉じましょう。この時、ぎゅっと締めすぎないことがポイントです。2つのお尻を1つにまとめるようにぎゅっと締めてしまうと、ターゲットにしている骨盤底筋群ではなく、お尻の外側の大きい筋肉、大殿筋などを使うことになってしまいます。お尻はあくまで2つ。おならをがまんしていることがばれないようにさりげなく、ぐらいがちょうどよい力加減です。

2.息を吐きながら、やさしく肛門を閉じた力をチャックを引き上げるように恥骨、おへその方へつなげていきます。

3.息を吸っても、おへそまで引き上げたチャックをできるだけ緩めず、キープするようにしましょう。

4.次に息を吐くときに、また肛門→恥骨→おへそとチャックをやさしく引き上げます。

5.数回繰り返してみましょう。

チャックを引き上げる時は骨盤の底からやさしく赤ちゃんを抱き上げ、背骨の方に抱き寄せるようにイメージしてみるといいですね。

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

最初のうちはせっかく引き上げたチャックがすぐ緩んでしまってキープできず焦ってしまうかもしれません。でも、毎日少しづつトレーニングすることで骨盤の底から持ち上げるような感覚を長くキープすることができるようになりますよ。長くキープするためには力加減も大切。やさしくふんわり、太ももやお尻の外側など余計なところに力が入らないようにしてみましょう。

骨盤底筋群を緩める「フラワー」

「ウインドジップ」では息を吐くときに骨盤底筋群を収縮させましたが、「フラワー」は吐く息で骨盤底筋群を緩めます。

1.産道全体が細い花のつぼみだとイメージしてみましょう。つぼみは脚に向けて下向きで子宮の底がつぼみの根元です。

2.息を吸う時に、股の間から膣を通ってすーっと空気を吸い上げるようにしてみます。

3.息を吐くときに、今度は吸い上げた空気が膣を通って出ていくように、ふわっと大きな花が足もとに向けて下向きに開くようにイメージしてみます。

4.「ウィンドジップ」と組み合わせて行ってみましょう。
息を吸って準備→吐く息に合わせて肛門→恥骨→おへそ、と「ウインドジップ」をする→息を吸ってキープ→息を吐きながらふわっと「フラワー」

骨盤底筋群を収縮させる感覚、緩める感覚を掴み、自分の意志でコントロールできるようにしましょう。

臨月スクワットのやり方|実践

さていよいよスクワットのやり方です。

スクワットをする場所

壁を使って行います。背中を付けてすべらせたいので、でこぼこしておらずなめらかな壁が適しています。足もとがすべりにくいようできればヨガマットを壁に沿って横向きに敷き、周りを片付けておきます。暑すぎず、寒すぎないよう室温に注意しましょう。

スクワットのやり方

スクワットには様々なやり方がありますが、骨と骨をつなぐ靭帯がホルモンバランスの影響で緩んでいる妊婦さんは、安全性を最重視した方法で行いましょう。ゆったりとした呼吸で、息が上がらない程度、きつさを感じない程度に行うことが大切です。

1.スクワットは素足で行います。足の幅は肩幅ぐらい、壁から10~20㎝離れて立ちます。つま先、膝がまっすぐ前を向くようにします。

2.お尻、背中(肩甲骨)を壁につけましょう。腰の後ろは少し壁から離れていてもOKです。後頭部も壁につけたいですが、後頭部をつけようとすると顎が上がってしまって首の後ろが詰まるような感じがする場合は無理をしてつける必要はありません。

3.壁に背中を付けたまま、何度か深呼吸をしてみましょう。吸った空気が肺にたっぷり入り、肋骨が背中の壁を押すぐらい吸えるとよいですね。息を吐くときに「ウインドジップ」「フラワー」を行ってみましょう。

4.吐く息に合わせて「ウインドジップ」をしながらゆっくり膝を曲げ、背中を壁につけたまま、接地面が全く変わらないように下へ滑らせます。この時、頭のてっぺんは常に天井に引っ張られるようにイメージしておくとよいでしょう。膝がつま先より前に出ない程度でストップ、吸う息でゆっくり元の位置に戻ります。膝と同時に足首、股関節が動いていることを感じましょう。

5.膝を曲げても特にきつさを感じなければ、膝を曲げる時に同時に両腕を前に、肩の高さまで上げてみましょう。膝を戻すときに腕も元の位置に戻します。

6.「ウインドジップ」で3回程度行ったら、次に膝を曲げるときは息を吐くときに「フラワー」で行ってみます。

7.「ウインドジップ」「フラワー」を合わせて5回で1セットを目安に、1日3セットまで行います。臨月であれば「ウインドジップ」「フラワー」のどちらを多く行っても構いません。(臨月前は「ウインドジップ」のみにしておきましょう。)

臨月スクワットの注意点

・骨盤底に圧がかかるので破水を招く可能性も若干あります。破水のリスクは頭に入れておきましょう。(とはいえ臨月になればいつ破水してもおかしくありません。)

膝を曲げる時は必ずまっすぐ前の方向に曲げましょう。X脚のように内に入ったり、O脚のように外に向いたりしてしまうと膝を痛める可能性があります。

・膝を曲げた時、足の指に力を入れすぎないように。足の指でギュッとマットを掴むようにしてしまうと足首が十分に動かず、膝や股関節に負担をかけてしまうことがあります。膝を曲げた時は足の指も前になめらかに滑っていくようなイメージをしてみましょう。

曲げた膝を戻す時、伸ばしすぎないように。膝を後ろに押し込むようにピンっと伸ばしすぎてしまうと膝を痛める可能性があります。妊娠中はホルモンの影響で靭帯が緩んでいますので、関節を痛めないよう伸ばしすぎには注意が必要です。

・おなかの張りや恥骨痛、膝痛など、異変を感じたらすぐ休むようにしましょう。

・若干の筋肉痛を全身に感じる程度でしたら気にしないでも大丈夫ですが、ひどい筋肉痛になるまでやる必要はありません。特に腿の前側や外側、お尻の外側にひどい筋肉痛を感じる場合は膝に負担がかかっている可能性があるので注意しましょう。

・やりすぎは禁物です。1日3セットを上限に、きつさを感じない程度に自分の体力に合わせて行いましょう。

膝をまっすぐに曲げられているか、これは自分ではちょっとわかりづらくて不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。特に妊娠前から膝痛や股関節痛がある方など。

松永有紀監修トレーナーからのアドバイス

Body Control Pilates マットワークティーチャー、産前/産後インストラクター、シニアピラティスインストラクター

スクワットは手軽なエクササイズではありますが、正しいフォームで行うのが大切です。不安な場合は専門家に見てもらうという手もあります。妊婦さんに指導ができるパーソナルトレーナーがいるスタジオや、自宅に出張してくれるマタニティヨガ・ピラティスのトレーナーもいますので、一度フォームを見てもらうと安心して取り組めるかもしれませんね。スクワットをうまく利用して出産に備えましょう。

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