上腕二頭筋は長頭と短頭を意識して鍛えよう!それぞれの作用の違いとは?

監修者

北村 真美

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

【プロトレーナー解説】上腕二頭筋の機能解剖と作用を解説し、その上で上腕二頭筋長頭と短頭を意識して鍛える際の注意点と、その他関連筋肉についても解説します。筋トレ種目は初心者向けから上級者向けまで紹介します。

上腕二頭筋:機能解剖と作用について

上腕二頭筋について教えてください。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

上腕二頭筋とは、「力こぶ」を作っている筋肉のことです。長頭と短頭という起始部が二つあるため二頭筋と名前がついています。詳しくみていきましょう。

上腕二頭筋

上腕二頭筋は、肩関節と肘関節にまたがる二関節筋です。橈尺関節も加えて三関節筋と呼ばれることもあります。
外側に位置する長頭と、内側に位置する短頭の二頭で構成されています。

起始:長頭:肩甲骨の関節上結節
   短頭:烏口突起
停止:橈骨粗面、上腕二頭筋腱膜を介して前腕筋膜
神経:筋皮神経(C5,6)

機能:特に前腕が回外しているときに肘関節の屈筋として大きな力を発揮します。
   肘関節が屈曲している状態では、上腕骨を回外させる機能があります。
   長頭腱は、肩甲上腕関節内で関節窩上部で起こり、短頭腱は烏口突起より起こります。
   これは、上腕骨頭を肩甲骨の関節窩に接合させ、肩の前方に動的安定性を与えています。
   しかし、肩関節の運動には補助筋としての役割しかありません。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

上腕二頭筋は肩関節の動的安定を与える作用を持つとともに、肘関節の屈曲・前腕の回外作用があることがわかります。

上腕二頭筋を鍛える際に、関連して肘関節や前腕に作用する筋肉がありますので、いくつかご紹介いたします。

上腕筋

上腕二頭筋の深層にある広い扁平な筋です。

起始:上腕骨遠位2/3の前面
停止:尺骨の尺骨粗面
神経:筋皮神経(C5,6)
機能:前腕の動きに関係なく肘を屈曲させる純粋な肘関節の屈曲筋です。
   つまり前腕が回内・回外のいずれの状態にあっても、肘関節の屈曲に関与します。

腕橈骨筋

前腕部の最も外側に位置する筋です。

起始:上腕骨外側下部
停止:橈骨の茎状突起
神経:橈骨神経(C5,6)
機能:肘関節の屈曲
    前腕の回内・回外

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

上腕筋、腕橈骨筋は、実際に上腕二頭筋を鍛える運動に関連してくる筋肉です。次項では筋トレの種目について説明していきたいと思います。

上腕二頭筋の鍛え方|自重で行うやり方

上腕二頭筋は長頭と短頭とありますが、鍛え方も違うのですか?

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

上腕二頭筋の鍛え方について説明していきます。上記で述べた関連筋肉についても一緒にみていきましょう。

上腕二頭筋を鍛える運動としては、肘関節の屈曲運動が一般的です。
肘関節の屈曲運動では、上記で述べた上腕筋、腕橈骨筋の働きも関連してきます。

肘関節屈曲運動時の前腕の位置による筋の働き

1.前腕回外位
ダンベル等を持つ際に手のひらを上に向けた状態(前腕回外位)で肘を曲げる。
上腕二頭筋が主働筋として働き、上腕筋、腕橈骨筋も協力して働く。
肘の屈曲最終域でさらに前腕を回外させると上腕二頭筋短頭が働く。

2.前腕中間位
ダンベルを持つ手の親指を上に向けた状態(前腕中間位)で肘を曲げる。
腕橈骨筋が主働筋として働く。上腕筋も腕橈骨筋と一緒に主働筋として働く。
上腕二頭筋は長頭が主に働く。

3.前腕回内位
ダンベルを持つ手の甲を上に向けた状態(前腕回内位または半回内位)で肘を曲げる。
上腕筋が主働筋として働き、腕橈骨筋も上腕筋と一緒に主働筋として働く。

上腕二頭筋は二関節筋であり、肩関節と肘関節(橈尺関節)にまたがっているため、肩関節や前腕の位置が重要になります。
また上腕二頭筋の長頭は上腕の外側、短頭は内側に位置していることも意識することで効果的に発揮できます。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

では、いくつか筋トレの種目を紹介していきます。

器具なしで行う上腕二頭筋の筋トレ種目

※各筋トレ種目ごとの画像を

1.パームカール
器具等を一切必要としない初心者におすすめの方法です。

立位姿勢で脚は肩幅に開き背筋を伸ばす。トレーニングする方の腕は肘屈曲90°で、上記の長頭・短頭を意識して、前腕中間位または回外位とする。

反対の手で手首を握り負荷をかけ、ゆっくりと肘を曲げていく。肘を曲げていくときに息を吐く。肩関節は屈曲しないように注意。

前腕中間位では上腕二頭筋長頭を、前腕回外位では上腕二頭筋全体に刺激が入る。10回×3セットから開始し、徐々に回数を増やしていく。

2.アンダーグリップチンニング
鉄棒やチンニングマシーンを使った自重トレーニングです。

まず、鉄棒を肩幅で逆手に握り、身体を浮かせる。背中は伸ばし、体を安定させるため、足をクロスし膝を90°程に曲げる。

バーに胸を引き付けるように体を持ち上げ、ゆっくりと戻していく。このとき肘は伸び切らないようにし、回数を重ねていく。

身体を持ち上げたときに体を大きく反ることで、広背筋という背中の大きな筋肉も同時に鍛えることができる。

体重を腕で支える必要があり、回数やセット数は個人によって差があります。

上腕二頭筋の鍛え方|ダンベルやバーベルを使ったやり方

ダンベルを使った筋トレ種目

1.ハンマーカール
これは上腕二頭筋の長頭を意識したトレーニングです。

立位姿勢で脚は肩幅に開き、背筋を伸ばす。

ダンベルを縦に持ち(手の親指を上に向けた状態)、肘の位置を動かさないようにして持ち上げていく。

戻すときはゆっくりと行う。

10回×3セット行い、慣れてくれば徐々に回数とセット数を増やしていく。

ダンベルの重量は軽いものから徐々に重さを調整しましょう。

2.ダンベルカール

立位姿勢で脚は肩幅に開き、背筋を伸ばす。

ダンベルを横に持ち(手のひらを上に向けた状態)、肘の位置を動かさないようにして持ち上げていく。

ゆっくりと戻し、回数を重ねていく。

10回×3セット行い、慣れてくれば徐々に回数とセット数を増やしていく。

ハンマーカールに比べ、高重量のダンベルで行うことが可能です。

3.ダンベルスピネートカール
姿勢はダンベルカールと同じで、ダンベルを持つ腕を、肘を曲げながら前腕外向きにひねって回外させていくダンベルカールです。

肘を曲げた状態で前腕を回外していくことで、肩甲骨前部(烏口突起)を起始に持つ、上腕二頭筋の短頭に刺激が強く入るトレーニングです。

4.インクラインカール

これは、インクラインベンチという背もたれが斜めになっているベンチを使用した筋トレ種目です。パイプ椅子などに持たれかかった姿勢でも可能ですが、動作に慣れた上級者向けの方法になります。

インクラインベンチの背もたれは、初心者は70度から始め、最大でも45度までの角度で行うようにしてください。

背もたれを倒したベンチに背中をつけることで、身体が後方に倒れ、ダンベルを持った腕が自然と後方に振られます。(肩関節伸展位)

肘を戻すときにはゆっくりと行い、完全に肘が伸び切らないようにして回数を重ねる。

上腕二頭筋が伸長された状態から肘の屈曲運動を始めるため、他の運動と比べ強い刺激が入ります。
他の種目に比べ刺激が強いため、回数とセット数は、少なめから始め、徐々に増やしていきましょう。

バーベルを使った筋トレ種目

1.バーベルカール

立位姿勢で脚は肩幅に開き、手のひらを上に向けた前腕回外位で手は肩幅の位置でバーベルを握る。

開始位置は背筋を伸ばし、肩は自然に下垂させた位置で、肘を軽く曲げた状態でバーは体に触れないようにする。

両肘同時にゆっくりとバーを持ち上げ、戻すときも力を抜かずゆっくりと下ろしてく。肘が伸び切らないようにして回数を重ねる。

体が前後にぶれないように、また肘の位置が変わらないようにすることで、左右の上腕二頭筋にしっかりとした刺激が入る。

10回×3セットから開始して徐々に回数とセット数を増やしていきましょう。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

この他にも、様々な器具を使った筋トレ種目があります。

肩関節の位置、上腕の回内外によって上腕二頭筋長頭・短頭、またその他の肘関節屈曲筋への刺激が違うということを知っていただき、トレーニングの際に意識していただければと思います。

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