アジリティトレーニングとは?効果的なメニューを紹介!野球、サッカーが上達!

監修者

伊藤俊太

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

【プロトレーナー解説】アジリティトレーニングとは何か?ただ早く動かすだけでは意味がありません。まずは人間の基本となる”軸”を手に入れてから実際のアジリティトレーニングに臨みましょう。各スポーツに使えるアジリティトレーニングの練習メニューについても紹介します。

アジリティとは?定義を覚えよう!

よくスポーツをしている人なら耳にするアジリティというワード。しかし、これはそもそもどういう意味を表しているのでしょうか?

アジリティとは素早く身体を動かすスキル!

最近野球の試合でもう少し機敏に動けてたら試合に勝てたんだろうな〜という試合がたくさんあります。

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

なるほど。どんな状況でそう痛感したんですか?

内野を守っていて打球の一歩目の判断が遅くなりバウンドを合わせることができなくてエラーをしてしまいそれで試合に負けてしまったんです……ステップも大股になってしまい、そこが原因なのかもしれません…

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

なるほど。もしかしたらアジリティスキルを向上させれば試合に勝つ確率が増えるかもしれませんね。

アジリティスキルですか。聞いたことありますけど具体的にどのような能力のことを言うんですかね?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

基本的には”素早く身体を動かすスキルです。これはスピードが問われるスポーツにおいては欠かせないスキルとなります。

アジリティとは敏捷性のことを言い表します。切り返しや方向転換、速度の変化を操りながら体を動かしていくスキルです。
今回の野球の例ですと、一歩めの判断が遅くなり、細かいステップが踏めずにバウンドが合わずにエラーをしてしまったとのこと。これは、野球ではよくあることです。

他のスポーツの場合はどうでしょうか?
バスケやサッカー、ラグビーのような相手選手とは逆の動きをするスポーツで例えると、対戦相手の動作に素早くかつ正確に反応する必要があります。そのスキルが劣ってしまうと相手選手と1対1で勝つことができず試合が決まってしまうなんてこともあると思います。

アジリティ能力が高いとあらゆる状況に瞬時に対応できる!

アジリティスキルの意味はわかりました。では、そのアジリティを鍛えることでどのようにプレーが変化するのでしょうか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

シンプルに動き出しや細かい動きができるようになります。相手の選手を一瞬で振り切ったり、細かい動きでボディコントロールをするスキルが身につきますよ

例えば、サッカーでドリブルしている時に相手ディフェンダーを振り切る足技や細かいステップ、ディフェンダーの場合ですと相手のフォワードについていくために必要なスキルとなります。野球の場合では、内野ゴロのバウンドを合わせるのに細かく足を運ばなければいけません。

もし、アジリティ能力が低く細かく足を運ばなければ、急な方向転換や、イレギュラーの対応に苦戦します。

ただまっすぐ走るだけでなく、一瞬一瞬の細かい動きが問われるスポーツにはなくてはなりません。しかも、スポーツは細かい動作の繰り返しです。ただ速く動かすだけでなく次の動作に備えて自分の身体の”運動軸”を保ったまま動かさなければ次の動作にスムーズに入ることもできません。

”運動軸”と出てきましたがその軸はどう言う意味を表すのでしょうか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

姿勢のことです。正しい姿勢を作りことがアジリティスキルを身につけるのに最も重要なスキルです。姿勢の中でも”静的姿勢”と言うものが存在します。まずは静的姿勢から見ていきましょう

姿勢を制するものはアジリティを制す!!

アジリティスキルを身につけたいのですが、そのために行う最初の確認事項はまずは姿勢の確認なんですね。

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

そうなんです。ここからは、姿勢を見ていきたいと思います。

矢状面からの姿勢を見たときに

①耳垂
②肩峰
③大転子
④膝の前方
⑤外顆2cm前方

この五つがしっかりと直線で繋がっているかどうかがポイントになります。
前額面からの姿勢を見ると、①後頭隆起②椎骨棘突起③電裂④両膝関節の内側の中心⑤両内顆間の中心。このポイントをクリアできていれば静的姿勢はクリアです。

アジリティトレーニングの基本はスクワット!

アジリティトレーニングを行うにあたってまず基本となるのがスクワットです。
では、正しいスクワットはどういった姿勢なのか見ていきましょう。
このスクワットにも意味があります。まず、スクワットポジション(SQP)=パワーポジションととらえてもらえれば良いです。そのSQPが作れなければ、アジリティスキル向上は見込めません。

だからこそ、まずはSQPを確実にできるようにして欲しいです。これができればアジリティの第一歩は合格だと思います。

正しいSQPは把握しました。ここからは実際に動作の確認をしていくわけですね。どういったトレーニングがあるのでしょうか。

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

では、次からは実際にSQPで行うアジリティトレーニングを紹介していきます。

スポーツ別アジリティトレーニングメニュー

テニス、サッカー選手の身体のキレを作るアジリティトレーニング①〜Tテスト〜

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

最初のアジリティトレーニングは、Tテストという種目です。

どの競技にも生きていきますが、ここはテニスをメインとしたトレーニングとして考えていきます。フォワードスプリント、サイドシャッフル、バックランという異なる動作の動きを行うことで、アジリティを強化していきます。

テニスの前へのドロップを拾う時のスプリントや、後ろに上がったロブを拾いに行くためにバックランに近い動作を行わなくてはいけません、サイドの動きにも対牛なければいけないスポーツであるテニスにはもってこいのトレーニングですので、特異的トレーニングにもなります。

このTテストの注意点はありますか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

以下の3つを注意しましょう。

①サイドシャッフルの時に足をクロスさせないようにしましょう。
シャッフルでいかに速く動かせるかがポイントです。クロスオーバーステップになると目線も上下にぶれるため、SQPが崩れてしまいます。

②二つ目は切り返しを速くすることです。
そのためには結局SQPができていないとスムーズに行えないのでとにかくSQPを作ることが最優先です。

③三つ目は重心を保つことです。
身体を速く動かすためには重心がぶれていると速く動かすことができなくなります。それを避けるためにはまずは重心を安定させることが最重要になります。

TテストのポイントはとにかくSQPを安定させること。ここがブレてしまうと速く身体を動かすことができなくなりますし、次の動作の準備も遅れるため、結果的にS相手選手についていけなくなったりする場面が増えてくるかと思います。

また、長時間行うスポーツでもあるため余計な動きがあると、身体が上下左右に無駄な動きを行いますので、体力の消耗にもつながってしまいます。

野球、ラグビーの身体のキレを作るアジリティトレーニング②〜マーカーアジリティ〜

今度のアジリティトレーニングの目的はなんですか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

今度の目的はTテストとは違って前方や後方への切り返し能力の強化が期待できます。例えば、野球の外野手の背走するシーンを思い浮かべて見てください。後方のフライを追う時にバックランで追っている選手はまずいないと思います。バックランではなく、しっかりと体を切り返して目線を切って背走しているはずです。そうしないとスピードに乗れませんし、後方のフライを取るか取れないかで試合展開は大きく変わってきます。加速、減速をこの短い距離の間で行わなければいけないので自然とアジリティスキルが身につきます。

マーカーアジリティのポイントはバックラン→シャッフル、シャッフル→切り返し→スプリントの時に目線をブラさないことです。目線が上下すると確実に重心が上下に動いている証拠になるので、その重心を保つように意識します。

また、ラグビーのオフェンシブ選手はタックルを避けて再びフォワードスプリントを繰り返していきますが、タックルを避ける際のサイドシャッフルは非常に有効かと思います。

サッカー、ラグビー、バスケの身体のキレを作るアジリティトレーニング③〜ミラーリング〜

サッカーやバスケ、ラグビーのような相手選手を引き離したり、逆に追いついていくようなアジリティトレー二ングはありますか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

ありますよ。ミラーリングというアジリティトレーニングは良いと思います。2人で行うのですが、正体しサイドシャッフルを相手の真似をしながらついて行くだけです。横の動きにも強くなりますし、相手の動きを目で捉えたものを実際に体を動かすことでより実戦に近いトレーニングに変わります。

サッカーやラグビー、バスケといった相手選手との距離感や、一瞬の動きの差が大きな結果に結びついてしまうスポーツには『相手選手の一瞬の隙をついて素早くマークを剥がすスキル』や、『そのマークを剥がそうとしている選手に素早く反応して追いついて行くスキル』これらが必要不可欠になります。相手選手に食らいついて行くスキルを高めることのできるトレーニングです。

このトレーニングの注意点はやはり目線をブラさないことですか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

そうですね。やはり目線がブレる=上下動や横に重心がぶれているので動きのロスにつながります。だからと言って、ゆっくり動かしてはアジリティトレーニングの成果は得られなくなってしまうので、素早く、かつ丁寧に動かさないといけません。

ウォーミングアップなどで使えるメニュー

身体のキレを作るアジリティトレーニング④〜ラダー、サイドストップ〜

競技別トレーニングの話を聞きましたが、このトレーニングはどのスポーツにも使えそうなトレーニングですが、この点はどうなんですか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

全くもってその通りです。どのスポーツにも生きてきます。実際どのスポーツにもアジリティの要素は欠かせないものになってきますので、アジリティトレーニングを省いてトレーニングしているチームや選手はいないのではないでしょうか。

確かにそうですよね。アジリティトレーニングは練習のどのタイミングで取り入れれば良いとかありますか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

理想なのは、非疲労性の運動になってくるので練習の最初に持ってくると良いです。身体に疲労感が無いうちに最大速度で動かせるアジリティトレーニングは非常に有効なトレーニングにもなりますし、ウォーミングアップにも取り入れられるのでは2かと思います。ウォーミングアップの中に混ぜることで体温の上昇、敏捷性の向上を狙いつつ、アジリティスキルの獲得を狙えるのではないかと思います。そのため、ウォーミングアップでもラダーやミニハードルを取り入れているチームも多いのではないのでしょうか。

⑤ラダートレーニング

ラダートレーニングはよくやっているのを見たことがありますね。素早く動かすこと以外に注意点はありますか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

細かいステップを身につけるためのトレーニングですよね。ラダーを利用しているチームは非常に多いですが、この時に特に注意して欲しい点があります。

ラダーを行う時にラダーに気が取られてしまい、姿勢が丸くなってしまう選手が多いのが現状です。これらの姿勢を改善していくためにはまずは、目線は上を向けること。とは言ってもラダーを踏んではいけないので空間認知能力や間接視野を鍛えるトレーニングにも繋がります。姿勢を作ることで体の軸が出来上がり動きやすさに繋がります。結果として素早く動きやすい体が出来上がる。これがラダートレーニングの狙いです。

また、決められたボックスの中を細かく足を運ぶので、野球選手はゴロの足の運び方に必要なフットワーク能力を鍛えることができます。

⑥サイドシャッフルシングルレッグストップ

最後のトレーニングはサイドシャッフルからのシングルレッグストップです。横への体重移動を行いながら止まる姿勢は片脚で止まるというトレーニングです。
バスケ、サッカーなどは必ずしも安定した状態でバランスが取れるわけでもなく、必ずしも両足で着地できるわけではありません。その時に、いかに上手く減速ができるか。横への動きをいかに素早く加速できるかがキーポイントになります。

横への動きを速くするために関与する筋肉はなんですか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

中臀筋や腰方形筋、深層になってくると腹横筋なんかも関与してきます。主に活躍するのが中臀筋ですが、片脚立位の支持脚の安定性として必要不可欠な筋肉です。

中臀筋を鍛えるトレーニングもした方が良いのですね。

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

横への動きは基本的にスポーツしかありませんので、中臀筋のトレーニングは必須ですね。もちろん日常生活でも歩行時に何度も片脚になっていますので鍛えなくていいというわけではないのですが、スポーツ選手の優先度に比べるとだいぶ変わってきます。

どのトレーニングも基本的に2セットずつ!
意識するポイントは”スクワットポジション”で行いましょう。

アジリティスキルが高いとどんな効果が得られるか!?

アジリティトレーニングで得られる最大の魅力

アジリティトレーニングを行うことで敏捷性の向上、それが競技力の向上につながり試合に勝つために必要なスキル獲得ということになるのですね!

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

まさにその通りです!しかし、アジリティスキルの獲得はそれ以上に魅力的なものがあります。

素早い動きを習得できるのがアジリティトレーニングの効果です。しかし、それだけではまだアジリティとスキルの獲得は100%とはいえません。

正しい姿勢で行うことで得られるアジリティトレーニングの魅力は”傷害予防”です。
コーディネーションスキルの向上、加速力や反応時間短縮の獲得などはもちろんですが、それよりも”傷害の予防”に一番魅力を感じています。

傷害予防をすることと、アジリティ向上って関係性はあるんですか?

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

自分はものすごい威力を感じていますし、関係性は非常に高いと思います。

アジリティトレーニングは最大スピードで行うことで効果が得られます。

そこで得られるスキルは傷害予防=正しい身体の使い方を把握できていることに繋がると思っています。結局は、正しい姿勢がまずは行えていなければいけませんし、正しい姿勢=負担をうまく逃がせている可能性が高いということにも繋がります。その中で最大スピードでアジリティトレーニングを行うことで関節や腱を強化することができます。
結果的に身体の制御スキルも向上することができるので、自ずと傷害予防となることができます。

アジリティトレーニングの頻度

よし!そうとなれば今すぐにポイントを踏まえて”毎日”アジリティトレーニングを行えば、パーフォーマンス向上が見込めて野球の内野ゴロの捕球もスムーズになるんですね!

伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス

全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー

そうなりますね!しかし、やりすぎは良くないです。いくらウォーミングアップで毎日行うとはいえ最大スピードで動かすトレーニングになるのでやはり負担はかかります。日本人は”頑張りすぎてしまう”生き物だと思っています。逆に休むと「何サボってるんだ」と言われるのがこの日本の特徴です。だからこそ、正しい姿勢で行い、負担を軽くすると共に力発揮しやすい姿勢作りを基本として欲しいですね。

基本的に毎日行っても良いトレーニングではありますが、種目が多すぎると練習の序盤でバテてしまいます。2〜3種目程度に絞って、一回一回の動きを丁寧にかつ素早く行うことが非常に大事になります。まずは、姿勢作りから意識してアジリティトレーニングに取り組んでみましょう!