腹横筋の鍛え方・トレーニング方法!役割、鍛え方のコツ、ストレッチまで

監修者

岡 大祐

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

腹横筋とはどのような筋肉なのか?鍛えたらどうなるのか?鍛えるにはどのようなトレーニングやストレッチが有効なのか?体幹トレーニングを軸としたパーソナルトレーニング指導を年間1000件以上8年間実施している実力派ベテランパーソナルトレーナーが解説!!

腹横筋ってどんな筋肉??

腹横筋とは読んで字のごとく、お腹の横方向に筋繊維が走っている筋肉です。

筋繊維の特徴である収縮・拡張が横方向に現れる為、収縮すると腹囲が縮まり、拡張すると腹囲が広がります。トレーニングすることで体脂肪の減少とは関係なくウエストが細くなる等、大注目の筋肉です。

腹横筋はどこからどこに付いているのか

腹横筋は肋骨と骨盤と背中の筋膜から始まり、お腹の真ん中の白線まで付いています。要するにお腹全体をぐるりと取り囲むように存在しているインナーマッスルです。

ポッコリお腹を凹ませるのに効果的な筋肉なのですか?

岡 大祐監修トレーナーからのアドバイス

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

はい、とても効果的な筋肉です。

腹横筋の特徴として、始まりの部分(肋骨・骨盤・背中の筋膜)は固定されており動くことはありません。

反対に終わりの部分(お腹の真ん中白線)は筋肉を収縮させるとベルトを締めるように凹みます。
この動作をドローインエクササイズと呼び、お腹を凹ませるのに非常に効果的な運動です。

お腹を凹ます以外にはどのような働きがあるのでしょうか?

岡 大祐監修トレーナーからのアドバイス

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

コルセットのようにお腹から腰回りを締め付けて支えてくれる働きがあります。これにより姿勢が安定し腰痛の予防改善にも役立ちますので『天然のコルセット』と言われます。

腹横筋が働く事でウエストが引き締まり、姿勢がキレイになり、腰痛予防や改善にも繋がります。
とても重要な筋肉であることがわかりました。次は他の筋肉との関わりをお伝えします。

腹横筋を含むインナーユニット4兄弟とは!?

腹横筋はとても重要な役割を行う筋肉ですが、人間の体は筋肉単体で活動することはありません。他の筋肉と協調しながら体の動きを作っています。

腹横筋を含む4つの筋肉が強調しながら働くインナーユニット4兄弟

インナーユニット4兄弟とは、腹横筋横隔膜骨盤底筋群多裂筋の事です。

●横隔膜
横隔膜は胸郭内にあるドーム状の筋肉でこのドームが筋肉の収縮・弛緩することにより肺に空気を取り込んだり、吐き出したりする腹式呼吸を行っています。

●骨盤底筋群
骨盤底筋群は骨盤の底でハンモックのように位置し、子宮や膀胱、腸などの臓器を支える役割をしています。又筋力低下すると尿漏れ等を起こしてしまいます。
●多裂筋
多裂筋は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個で形成されている背骨一つ一つに付いており、脊柱の安定と、左右へ体を捻る回旋動作を作る役割を担っています。

インナーユニット4兄弟はどのように連動するのですか?

岡 大祐監修トレーナーからのアドバイス

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

インナーユニット4兄弟で安定性のある筒状のユニットを形成します。4つの筋肉が筒状に安定する事で内圧を高めることが出来ます。

例えれば開栓前のペットボトルのような状態です。強く握ってもベコベコと凹むことのない状態でありこれを体幹が安定している状態と言います。

もし4つのうちどれか一つでも機能低下してしまうと、上蓋は横隔膜、底は骨盤底筋群、周囲を取り囲んでいる腹横筋と、1本の柱のように支える多裂筋の働きが低下し、穴が開いたペットボトルみたいになり、圧がかかると穴から圧が逃げてしまいます。

これではベコベコのペットボトルのようになってしまい安定しませんので体幹が入っていない状態と言います。

この状態では姿勢維持呼吸動作が乱れてしまう事からパフォーマンスが低下しケガしやすい状態に陥ってしまいます。

腹横筋が弱ると起こる問題

知らず知らずのうちに起こるのが筋力低下。腹横筋が低下してしまったらどうなるのでしょうか。上記にある尿漏れ等の視点とは別視線から考えてみましょう。

腹横筋が低下すると起こる問題|フィードフォワード機能が働かない

腹横筋が低下しているかを自分で感じるのは難しいですよね。もし気づいた時には既に手遅れだったらどのような事が起こるのでしょうか?

岡 大祐監修トレーナーからのアドバイス

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

考えられる有名な症状はぎっくり腰ですね。

筋肉には『フィードフォワード』と言って腹横筋が他の筋肉の収縮に先立ち収縮し体の動きを安定させる機能があります。
上肢運動は腕が動き出す0.03秒前、下肢運動は脚が動き出す0.11秒前に腹横筋収縮が起こる現象です。これらの機能が正常に起こることにより脊柱が安定し痛みが出ることなく身体を動かすことが可能となります。では、ぎっくり腰が起こる時はどんな時かわかりますか??

くしゃみの瞬間、うがいをしようと上を向いた瞬間、不意に重い物を持ち上げた瞬間などでしょうか。

岡 大祐監修トレーナーからのアドバイス

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

そうですね。この時にフィードフォワード機能が働かない場合、体幹が不安定な状態で体を動かしますので急激な痛みとしてぎっくり腰が発生するリスクが高まります。

ではどうすればぎっくり腰を防げるのでしょうか?

岡 大祐監修トレーナーからのアドバイス

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

それは普段から腹横筋を始めインナーユニットを鍛え、活性化させておく事が有効な手段の一つでしょう。

又、普段から無意識で緩みっぱなしのお腹(腹横筋)ではフィードフォワード以前に姿勢が崩れてしまっています。これにより腰部の筋肉や筋膜に小さなストレスををかけ続けてしまいます。この小さなストレスが積み重なる事で、何百年何千年と時間をかけて水滴が岩に穴をあけるように、人間の体も痛んでいきます。この状態もぎっくり腰や腰痛の主な原因となります。

くしゃみやうがいが急性の痛みで、小さなストレスの積み重ねは慢性の痛みなのです。これらから如何に腹横筋やインナーユニットを普段から鍛えておくことの大切かがわかりますね。

フィードフォワード機能が正常かチェックする方法

実際にフィードフォワードが機能しているのか確かめてみて下さい。

<チェック方法>
1.まずは仰向けに寝転びます。
2.手でお腹を触ります。
3.その状態で足を持ち上げるように上げると、脚が動く少し前にお腹がグッと硬くなるのを感じる事ができます。これがフィードフォワードが機能している状態です。

日常では体を動かすときに常に何度も何度も腹横筋に収縮が入ります。この無意識な筋収縮活動がエラー動作を起こすと痛みに繋がるのです。棚から荷物を取る時、タクシーを止めようと手を上げる時、階段を登ろうと脚を上げる時、トイレに座る時、服を着替える時等全ての動作で腹横筋収縮が行われています。

しかし無意識に働く筋肉ですから、子供のころのように外で走り回ったりして遊んだり、学生時代のように体育の授業で定期的に体を動かす習慣がなくなる大人達は、加齢による筋力低下と合わさって慢性的な運動不足になりがちです。そうして知らず知らずのうちに筋力低下が進み腹横筋エラー動作が起こる可能性が高まります。同時に全身の筋肉が低下している事からさらに運動不足が進みます。これは様々な機能低下を引き起こします。最終的には要介護な状態になるでしょう。

このように腹横筋が弱るということは、それ以外の全身の筋力が弱ってしまうという事です。

『木を見て森を見ず』になるべからず。腹横筋にだけ目を向けずに体全体の筋力低下が起こらないようにする事が腹横筋強化に繋がります。

腹横筋の鍛え方|筋トレメニュー8選

それでは腹横筋の筋トレメニュー、方法について説明します。

①ドローイン

1.四つ這い姿勢で、肩の下に手首、股関節の下に膝が来るようにセットします。
2.次に胸を張り肩甲骨を寄せます。
3.この時に息を口から細く長く吐き出しながらおへそを背中の方向へ引き込むようにお腹を凹ませます。正しく腹横筋に意識できると腰が反ることなくお腹に刺激を感じる事が出来ます。

10秒かけてお腹を凹ませ、呼吸を吸い込みお腹を緩めるトレーニングを3~5セット繰り返しましょう。

②プランク

1.うつ伏せの状態で両肘が両肩の真下に来るようにセットします。
2.脚は膝を浮かし足の指先で背伸びをするようにセットします。
3.そこから身体を持ち上げます。この時に頭のテッペンから踝までが真っすぐ一直線になるようにセットします。

●ポイント
意識のポイントは、お尻を締めます。これは骨盤底筋群を活性化させる為。お腹を凹ませておきます。これは腹横筋を収縮させる意識です。次に顎を軽く引き肩甲骨を寄せて胸を張ります。これは横隔膜の働きを意識し、多裂筋で脊柱を固定させることが目的です。

この状態で30秒キープさせて下さい。
更に出来る方は休まずに連続して
①右足を宙に浮かせて10秒
②左足に変えて10秒
③右手を耳の高さまで上げて10秒
④左手に変えて10秒
⑤最後は右足左手を上げて10秒
⑥反対でも10秒キープ頑張りましょう。
この時に骨盤が回転してしまわないように意識すると効果的です。

③サイドプランク

1.横向けに寝た姿勢から、下側の肘を肩の真下にセットします。
2.脚は揃えて真っすぐ伸ばしておきます。
3.そのままお尻を締め、顎を引き肩甲骨を寄せて胸を張ります。

●ポイント
プランクと同じように次に下側の肘と足(外側)でお尻を宙に浮かし体を真っすぐに持ち上げてキープします。お尻が下がっていたり、上がり過ぎていると姿勢が崩れて効果が出にくい状態になります。プランク同様真っすぐに身体をキープすることがポイントです。

この状態で片側30秒を両側各3セット取り組みましょう。

④クランチ

クランチは腹筋の代表的な筋トレ種目です。
膝を90°で確保し股関節も90°にセットし、状態を起こすトレーニング種目です。実はクランチの主な活動筋肉は腹直筋であり腹横筋ではありません。
お腹を曲げる動作も入りますのでプランクのような腹圧を高めた状態をキープ出来ません。しかし腹圧を上げて行うことで腰の反りや反動を抑え効果的なトレーニングとなります。

まずはお墓を凹ませる意識をしながらクランチを行ってください。腹横筋収縮しながら腹直筋トレーニングができますのでオススメのトレーニング方法です。

15回×3セットを反動を付けずにゆっくり丁寧に動かして下さい。

岡 大祐監修トレーナーからのアドバイス

延べ8000人以上の身体を変えたパーソナルトレーナー 所有資格:ファンクショナルトレーナー、BFRトレーナー、トレーニング指導士

続いて、上級者向け筋トレメニューを紹介します。

⑤デッドリフト

バーベルやダンベルを使い、重い荷物を床から持ち上げるようにトレーニングを行う種目です。主導筋としてハムストリングス(太もも裏側)、殿筋、脊柱起立筋群が働いていますが、体を前屈した状態から起き上がるまでの姿勢において、腰(腰椎)が曲がると脊柱に大きな負荷がかかりケガに繋がるフォームになります。

そこで腹横筋の働きが重要になります。腹横筋が働くことで脊柱を真っすぐに保つ事ができます。体幹を安定させている状態です。この状態を保ちながら負荷を床から上げ下ろしすることで安定したフォームでのトレーニングが可能となります。デッドリフトにおいて主導筋ではありませんが、腹横筋もかなり重要な働きをしています。

⑥スクワット

バーベルを肩に担いで股関節を屈曲しお尻を膝の高さまで降ろして立ち上がるトレーニングです。主に下半身(太もも前側、殿筋)のトレーニングですがバーベルを担ぎ姿勢を保つことで腹横筋収縮が起こり体幹を安定させるトレーニングです。ドローインやプランクのような腹横筋だけ収縮させるトレーニングを基礎トレーニングとして行い、デットリフトやスクワットは日常動作やスポーツパフォーマンスを向上させる発展型応用トレーニングとして有効なトレーニングです。

腹横筋のストレッチ方法
筋肉はトレーニングで収縮させる事と、ストレッチで弛緩させる事が重要です。
腹横筋もストレッチが必要ですが、腹横筋の機能として体を動かす筋肉ではなく、姿勢を安定させる筋肉ですから腕や脚の筋肉のようにピンポイントで伸ばすことはできません。ですから、お腹周りの筋肉(腹直筋、内外腹斜筋等)を伸ばすストレッチを行うことで腹横筋も一緒に伸ばすストレッチを行います。

⑦上体反らし

1.うつ伏せに寝転びます。
2.次に腰椎への負担がかからないように足のかかとを揃え、指先を外側に向けてお尻を締めます。
3.この状態から両肘を胸の横辺りについて地面を押しながら顎を天井に向けるように上体を反らします。
4.更に伸ばしたい方は肘で地面を押す姿勢から手のひらで地面を押す姿勢に変えてみて下さい。

これにより腹直筋(お腹の前面)が伸ばされながら一緒に腹横筋もストレッチできます。10秒×3セット行ってください。

⑧側屈

1.足幅を肩幅に開いて立ちます。
2.両手を頭の上に伸ばして組みます。
3.そこから左側に側屈させます。
4.これにより腹斜筋(お腹の横面)が伸ばされながら腹横筋のお腹の横面がストレッチできます。

右側も同じように各10秒×3セット行ってください。