ランニングやスポーツをする人にとって厄介なのがふくらはぎなどの痙攣。特にマラソン本番では絶対につりたくないもの。原因は何なのか、予めどう予防すればいいか、治し方は?などの疑問について詳しく解説していきます
ふくらはぎがつった!すぐにできる対処法とは?
ふくらはぎがつったとき、どのように対処すればいいですか?
植松駿太監修トレーナーからのアドバイス
Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー
運動中であれば、まずは無理せず運動を中止し、休んでください。その後落ち着いたらストレッチを徐々にかけます。ふくらはぎは体重を支えたり地面を蹴ったりするので、すぐに復帰しようとするとまたつる可能性が高いです。焦らず緊張が取れるのを待ちましょう。
そう、もしつってしまったら、ストレッチがひとつの対処法として有効です。
一口にストレッチが良いといっても、その症状の強さや状況により、対処法は異なってきます。
例えば、つったとしても足を動かせる程度の軽い痛みであれば、前述したストレッチをすぐかけられますし、それが有効だと思います。
しかし痛みが強い場合、少しの荷重や足首を動かしただけでも激痛が走り、ストレッチをかけようとしても痛みでできないことも。そうなってしまった時は無理にすぐにストレッチをする必要はありません。地面に座るか横になって、とにかく痛みと強い緊張が楽になるのを待つのです。少し痛みが取れてきたら、ストレッチをかけたり動かす前にまず軽くさすったりしましょう。
指圧みたいに押すのではなく、まずは軽擦と言って、軽くさするだけです。次第に筋肉の強い緊張感、スパズムが取れてきます。痛みが取れてきたところで、まず足首を動かしてみて、またつらないか確かめましょう。大丈夫そうであれば、そこから軽めのストレッチをかけます。
動かせないくらいつってしまった時には、すぐに立ったり動き出そうとするとまたつりやすいため、焦らず、ストレッチを2,3回、じっくりかけるようにしてみてください。そこまでやってあげると、ひどいつり方をしても再発を防ぎやすくなります。
ストレッチには、筋肉の緊張を解く作用がありますので対処法として頭に入れておいてください。
温める、冷やす治し方も効果的?
よくスポーツの現場では急性期の怪我、痛みにはアイシングが適用されることが多いです。アイシングには、痛みの信号に伴う筋肉の過緊張、スパズムを緩和する作用があると言われています。一方で、温めるという行為も血行促進につながり、つった際の早期回復に有効なケースも多いです。
植松駿太監修トレーナーからのアドバイス
Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー
この冷やすか温めるかどっちがいいのかという問題は、痙攣だけでなくその他の急性期の怪我の応急処置でも実はまだ議論されているところです。
そもそもつらないように予防したいもの。普段からできることは?
その後にストレッチをします。順番が大事で、いきなりストレッチだと、筋肉や関節周囲の温度が上がらないまま伸ばそうとするので、思ったほどストレッチ効果が得られません。ジョギング程度だからウォーミングアップはいらない、ではなく、軽めのウォーキングを最初に入れたりしてストレッチ効果を高めましょう。
それでも運動中にふくらはぎに過度に負担をかけてしまうと、筋疲労によりつりやすいです。エクササイズやスポーツにより動作は違うので、対処法も異なってきますが、私はランニングが専門なのでランナーの指導をさせてもらうことが多いです。マラソン3回出場し、3回とも後半でふくらはぎがつった、なんて人ともお会いしてアドバイスすることもあります。ランニングの様に単純な動きを繰り返すスポーツは、ちょっとした癖による負担が繰り返しかかります。そこで、足の接地位置やアーチの崩れ、足首のブレなどによって足底やふくらはぎに過剰にストレスをかけている人には具体的なストレッチやフォーム改善のエクササイズをお伝えしたりします。
正しいランニングフォームについては以下の記事に解説してありますので、ぜひ参考にしてください。
【プロトレーナー監修】「ダイエットがしたい」、「体力維持の為に」ランニングを始める理由は人それぞれですが、まずは『正しいランニングのフォーム』を身につけましょう。特に初心者の場合、早い内に正しいランニングフォームを知っておけば無駄な体力を使わずにランニングの恩恵が得られます。正しいフォームのポイントを紹介します。
筋肉は動かすことで血液を送るポンプ作用も担います。座りっぱなしだとしても、時々は足首を動かしたり、踵上げエクササイズをしたり、ストレッチをかけたりして血行不良、運動不足にならないように心がけておきましょう。
ふくらはぎと関連の強い足。足のケアも同時に考えよう。
ふくらはぎを中心に話をしましたが、もう一つケアをしてあげてほしいのが足裏です。何故なら、足裏から足首を通り、ふくらはぎの方に伸びている筋肉はいくつもあるからです。また、ウォーキングやランニングでは、ふくらはぎより先に地面からの衝撃を受け止めています。足裏の筋肉が疲労していくと、徐々にふくらはぎの筋肉も疲労していくのです。
日常からつりやすい方は特に、足裏のほぐしやストレッチ、足の指のグーチョキパー運動など、足の筋肉を使うエクササイズも少し取り入れてみてください。
ほぐし方は簡単で、テニスボールを足裏に置き、体重をかけながら前後にゴロゴロ動かすだけです。できれば立った状態がいいです。その後座ります。先ほど足裏でゴロゴロ動かしたとき、痛いな感じたところにボールを置いた状態で足の指全体を持ち上げるように手で引っ張ってみてください。
足裏でテニスボールを踏みながらのストレッチです。更にテニスボールを踏みながら指のグーチョキパー運動をするのがお勧めです。最初は全く指が動かないという人もいるでしょう。しかしテニスボールの上に足を乗っけながら行うと、早めに指を動かしやすくなるので、この方法でやってみてください。
これらはアーチ改善にも有効なので、ふくらはぎの疲労防止、怪我防止、外反母趾の予防などにも同時に効果があります。
つる原因は運動不足や筋力不足だけじゃない
そもそも何故筋肉はつるんですか?
植松駿太監修トレーナーからのアドバイス
Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー
つる原因はいくつかあると言われています。例えば以下の様な原因が挙げられます
①筋収縮や神経伝達に関連する栄養素の不足
カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムといったミネラル、ビタミンB1やタウリンが不足すると、つりやすいと言われています。筋肉の適切な収縮のためには神経を介して信号を送りますが、その指令がうまくいかなくなります。中でもナトリウムとカリウムのバランスが取れているのが重要です。
日本人の食生活では比較的ナトリウムは摂取できているはずです。どちらかというとカリウム不足の方に気をつけましょう。簡単に、そしてスポーツをやっている方も消化に負担をかけずに食べられる代表的な食材にバナナが挙げられます。エネルギーだけでなく、カリウムなどの栄養補給とも考え、食べるようにしてみてください。
②水分不足
夏はもちろん、定期的に運動をして汗をかいている方は気をつけましょう。汗にはミネラル分も含まれるため、水だけの摂取は①に挙げたミネラル不足も同時に起こしやすいと言えます。水分を摂ることに加え、ミネラルも摂取しましょう。激しいスポーツや長時間のランニングを行う方は、運動前、運動中の水分摂取をきちんと心がけ、3食の食事には汁物をつけるなど工夫しましょう。味噌汁には豊富なミネラルが含まれますので汁物の定番として是非取り入れてみてください。
気をつけてほしいのはカフェイン入り飲料です。水分と思って飲んでいるつもりが、利尿作用によりほとんどが体外に出てしまっているかもしれません。仕事中や気分転換に必要という方は、それ以外の水分補給と食事に気を配りましょう。
③筋肉疲労
筋肉は疲労してくると硬くなり、血管を圧迫します。血行不良の状態が起こります。また、疲労して硬くなっている筋肉は興奮状態となり、過緊張を引き起こします。疲労している筋肉は早めにケアをしてあげましょう。筋肉痛になっている筋肉などは特にです。マッサージ、ストレッチ、入浴などですね。運動中は無理せず、小まめに休憩をとってみてください。予防になります。
④冷えや血行不良
冷えている筋肉を急に大きく動かしたりするとつりやすいものです。直接的なマッサージやストレッチ、軽運動などはもちろん有効なのですが、やせ型の女性などは筋肉をつけることも考えてみて下さい。筋肉は血液を送るポンプ作用も担っています。筋肉がやせ細っていると、冷え性や血行不良に陥りやすいのです。最近ではジムに通い程よく筋肉をつけ、プロポーションづくりをしようとする方も増えてきました。筋肉がついて血行がよくなることでつり予防にもつながります。
ただつっただけと、肉離れの違いと判断基準は?
つっている時というのは、筋肉はどういう状態なんですか?
植松駿太監修トレーナーからのアドバイス
Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー
脳から筋肉に送られる神経伝達がスムーズに行われず、過度な収縮が起きている状態です。強い緊張により、痛みを感じます。肉離れと判断が難しい場合もありますね
肉離れかどうか、その場ではどう判断したらいいのでしょうか
植松駿太監修トレーナーからのアドバイス
Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー
我々トレーナーはいくつかの判断基準を持っていますが、つった瞬間にご自身で判断するのは難しいでしょう。自分でもできる大まかな判断基準は、痛みが軽快していくか、むしろ悪化するかです
少しでも怪しいなと思ったら病院へ
ちなみに、肉離れの症状と治し方については以下の記事に詳しく解説してありますのでぜひ参考にしてください。
肉離れはスポーツ選手のニュースで耳にする言葉ですがスポーツに限ったことではありません。日常生活でも起こる怪我なのです。肉離れを起こしてしまうと全治に1年かかる場合もあります。そうならないためにも肉離れのメカニズムから予防法まで解説します。
翌日まで治らない場合の治し方は?
植松駿太監修トレーナーからのアドバイス
Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー
稀に、強い痙攣を経験すると、翌日まで痛みが残ることもあるかと思います。そこで有効なケアをご紹介します。
①冷やす、もしくは温める
できれば前述の様に、どちらの方が楽になりやすいか事前に知っておくと良いです。分からないという方は手軽にできる方で、まずは温めましょう。
②軽擦
優しくなでるようにさすります。足首からふくらはぎの上に向かって血行を良くするように。
③マッサージ
指圧ではなく、ふくらはぎを大きくやわらかくつかむようにし、回しながら動かすようなイメージでもんでいきます。下から上にゆっくり移動します。何回か繰り返します。
④足首を起こす運動
つま先を持ち上げるようにぐ~っと力を入れます。脛の前側に力を感じて下さい。つま先を上げた状態で3秒キープ、力を緩めてもう一度。これを10回繰り返します。脛の前側についていて、足首を起こす筋肉、前脛骨筋はふくらはぎの筋肉を拮抗する関係にあり、この筋肉を積極的に使うとふくらはぎの筋肉は緩みやすくなるという性質を使います。
⑤ストレッチをかける
最後にしっかりとストレッチをかけます。手で足指全体を持ち、手前に引きます。つま先、足首が手前に起こされます。手で引くと同時に、④でやったように、少し脛の筋肉にも力を入れてみてください。もう一段階ストレッチがよく効くのを感じるはずです。その他ふくらはぎにいくつかストレッチを入念にかけてあげましょう。
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【プロトレーナー監修】「筋肉痛の解消にストレッチが効果的である」。これは長年信じられてきた迷信です。筋肉痛にストレッチを行っても痛みの軽減を促進してはくれません。正しい向き合い方を知るために筋肉痛のメカニズム、そして対処方法を解説します。