筋トレで足が速くなる?短距離走を速くなるための筋トレメニュー

監修者

木暮 淳一

NSCA-CSCS

筋トレをすると身体が重くなるから足が遅くなる…そのような恐れがある方はトレーニングのメニューや意識を一度見直してみませんか?
短距離走で足を速くなるための筋トレのポイントとメニューをお伝えします。

短距離走とは?短距離走の種類

短距離走というとオリンピックでは日本の陸上のリレーの活躍の印象が強いですね

木暮 淳一監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CSCS

そうですね。短距離走というと100m走や200m走のイメージが強いですが、他のスポーツの場面でも短い距離を全力で走ることがあります。例を挙げてみましょう。

スピード

最大スピードのことです。
100m走でいえば40m~50mくらいの区間になります。
野球選手がセカンドからホームベースまで全力で走るスピードなどがこれにあたります。

アジリティ

主に方向転換の能力のことです。
アメフト選手がカットをきってディフェンス選手を振り切る場面などになります。

クイックネス

主に加速力のことです。
テニス選手が相手の打球に反応して加速をする場面などになります。

このようにスポーツによってさまざまな短距離が存在します。
もちろんそれぞれスポーツの動作に合わせた、足を速くする練習が必要になりますが、土台の部分はすべて共通しています。
それはいわゆる筋力になります。
オリンピックの短距離選手はみんな下半身も上半身もいい体をしていますよね。
足の速い方は筋力トレーニングを行っているということをイメージしていただければと思います。

トレーニングをすると身体が重くなる?

確かに100m走の選手の方はみなさんいい体をしています。でも筋トレをすると身体が重くなると聞いたことがあるのですが、大丈夫ですか?

木暮 淳一監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CSCS

はい、大丈夫です。トレーニングメニューを適切に選択すれば体重が筋肉量によってある程度増えても身体が重く感じることはありません。

トレーニングをすると身体が重くなると言われるのは昔からよく言われています。
しかしその原因としては、
・トレーニングの疲労が蓄積したことで起きるもの
といった一時的なものから、

・回復の栄養が足りていない
・上半身ばかり鍛えている

といった体や栄養のアンバランスがあります。

その原因は個人個人で変わりますので、一度その部分を見直すことが必要になります。
それらの点を踏まえたうえで、以下にポイントをお伝えします。

背面を鍛える

メニューの選択の考え方として、足を速くするために重要な背面を鍛えていく必要があります。

筋肉名で言いますと
・ハムストリングス

・殿筋群
・背筋群
といった筋肉群になります。

これらの筋肉群はアクセルの筋肉と呼ばれており、身体を前に進める役割があります。
これらの筋肉の力が強くなれば、地面を前に押す力が強くなりますので、足が速くなりやすくなります。

理想はハムストリングス:太もも前面=7:3の筋力の割合とのことです。
中々高い理想ですね…

地面を押す力を鍛える

例え筋肉の量が多くても、地面を押す力が弱ければ足は速くなりません。
また筋肉単品で鍛えるよりも、全身を同時に使いながら地面を押すトレーニングをした方がより重量を扱えるので力を高めやすくなります。

筋肥大よりも筋力アップのプログラム

トレーニングは目的によって重量や回数の設定が変わってきます。
イメージとして

①10回×3セットのようなメニューは筋肥大のトレーニングになりますので、目的は筋肉の量を増やすことになります。

②5回×3セットのようなメニューは筋力アップのトレーニングになりますので、筋肉の量を増やすよりも力を高める目的になります。

足を速くするなら②のメニューのイメージですので、高重量・低回数になります。

これらのポイントを踏まえてトレーニングを進めていけば、身体が重くなるという悩みから解放され、足が速くなりやすくなります。

足が速くなるトレーニング筋トレのメニュー4つ

全身を使ったメニューと、背面を鍛えるメニューをメインにトレーニングを進めていくのですね。では具体的なお勧めのトレーニングを教えてください。

木暮 淳一監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CSCS

はい、ではトレーニングとそのポイントを紹介します。

①フルスクワット

フルスクワットでは主に地面を押す力を鍛えます。
トレーニングの中ではフルスクワットが優先順位が一番になります。
その理由としては

・下半身のトレーニングの中でも特に重い重量を扱えるので筋力を高めやすい

・体幹などの全身を同時に鍛えることが出来る

・股関節の柔軟性の改善を見込める

というように走る動作につながりやすく、フルスクワットが強い選手はそれだけでも足が速くなりやすく、また他のトレーニングの効果も向上しやすくなります。

<ポイント>
①手幅はなるべく狭めて肩甲骨を強く寄せ、背中を固定する

②足幅は肩幅程度に開き、より深くしゃがめる位置を探す

③つま先を30度程度外側に開く。股関節と膝をつま先の方向に開き、より深くしゃがめる位置を探す

といったことが挙げられます。
なるべく深くしゃがみ股関節の可動域を意識してスクワットをすることで、股関節全体の可動域が狭い方は段々と柔軟性が向上しますし、ハムストリングスや臀部といった背面も鍛えられやすくなります。
体重×2倍上がると効果が現れやすくなります。
NFLのランニングバックには300Kg上げる方もいたとか…

②デッドリフト

デッドリフトでは主に下半身から上半身の背面を全体的に鍛えます。
そのためデッドリフトも足を速くするための優先順位はスクワットに次ぐ高さです。

<ポイント>
①足幅は腰幅程度の狭さで、上半身の前傾を角度を大きめにする

②つま先を15度程度外側に開く。股関節と膝をつま先の方向に開き、腰が丸まらないようにする

ナロースタンスで身体の前傾を強くすることで、より背面に負荷をかけることが出来ます。
ワイドスタンスでも問題ありませんが、最初はなるべくナロースタンスから始めることをお勧めします。

③懸垂

懸垂では主に背中を鍛えます。
背中を鍛えることで走っているときの姿勢の安定や、それにより腕の振りを効率よく行えるようになります。

<ポイント>
①腕を伸ばし切ったところから上げきる(最大可動域で)

②手幅は、上げきった時に前腕が地面に対して垂直になる幅

注意点として、最初から手幅を広くしてしまうと肩を痛めてしまったり、可動域が狭くなるので背中の筋肉を鍛えにくくなってしまう恐れがあります。
軽量級の方は25回以上連続でできるとオリンピック選手のレベルという基準もあるようですので、ご参考にしてください。

④クイックリフト

パワークリーンやスナッチといった、重量挙げ・ウェイトリフティング・オリンピックリフティングと言われるものです。

<ポイント>
①1回1回床にバーベルを置いた状態からスタートする(地面を押す力を利用する)

②スピードを意識する

注意点として、技術を習得するのに他のトレーニングよりも時間がかかります。
デッドリフトのウォームアップセットに組み込むなどして軽い重量でいいので動作練習をたくさん行いましょう。
フォームなどは難しいので、専門のコーチに教えていただくことをお勧めします。

木暮 淳一監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CSCS

共通のポイントとして
①可動域を大きく
②1回1回全力で挙げる
という意識があります。
まずその2点を意識すれば走りやすく・より力強く・短距離を速くするトレーニングを行うことが出来ます。

トレーニングをする際の注意点

トレーニング時の注意点はありますか?

木暮 淳一監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CSCS

疲労が溜まりやすいですので、特に怪我のリスクを下げる工夫は必要になります。

①体幹の力を強くする

バーベルを担いだり重量の負担がかかります。
体幹の力が弱いと、腰が反ったり丸まったりしてしまい腰痛のリスクが大きく上がってしまいます。
また力も入りにくくなりますので、トレーニングの効果も薄くなってしまいます。
お腹周りを触った時に、360度どこを触っても硬くなるように体幹に力が入るように鍛えましょう。

②コンディションを高める

重量を扱うようになると、身体の様々な部分に疲労が溜まります。

関節の疲労には関節のコンディショニングエクササイズ、筋肉の疲労には栄養やストレッチ、脳の疲労には栄養や睡眠などが必要です。

足りない部分は人それぞれ異なりますので、記録を付けて自分の身体状況を知りましょう。

③まずは10回×3セットから

いきなり5回しかできないような高重量を扱うと怪我のリスクはとても高くなります。

ウォーキングしかしたことのない方がいきなり100mダッシュをするようなものですので、まずはダッシュをするための下準備が必要です。
10回程度できる重量から始め、数か月は土台を築いていきましょう。

短距離を速くするためにはまずはトレーニングでの土台作りが必要です。
土台があってこそ技術練習・ファンクショナルトレーニングなどの特異的なトレーニングの効果が現れるようになりますので、迷っている方はまずはスクワットから始めてみましょう!