【専門家解説】肉離れとは、急激に筋肉を使った結果、筋膜や筋線維が損傷することを言います。軽い場合も重症の場合も症状は違えど予防方法は同じです。怪我からの再発予防に向け遠心性収縮をともなったトレーニングを実施しましょう。やり方を詳しく解説します。
怪我の仕方は2パターン|肉離れはどっち?
明らかな外力によって組織が損傷したものを急性的なケガと言います。具体例としては、捻挫や打撲・骨折・肉離れ・靭帯損傷などがあります。
繰り返し過度の負担が積み重なり、痛みを主とした慢性的に症状が続くものを慢性なケガや障害と言います。具体的には、テニス肘・投球障害肩・シンスプリント・腰痛(ぎっくり腰を除く)などがあります。
軽い肉離れをよく繰り返すのですが、肉離れは慢性的なものではなくて突発的なものなんですね。
府木 薫監修トレーナーからのアドバイス
健康体育学修士、健康運動指導士、PHI Pilatesインストラクター(Mat level.1,level.2 & Props)、日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部A級トレーナー、日本ノルディックウォーキング協会インストラクター
はい。肉離れ自体は急性的なものです。しかし、確かに肉離れを繰り返す方を私も多く見てきました。その理由はまた別にあります。後ほど解説しますね。
肉離れとは?どんな症状なのか?
筋肉が強い収縮発揮することで、「自分自身の筋繊維の断裂または筋膜の損傷が起こる」ことを言います。
ケガをした場合、痛みと筋力が弱くなったり、体が硬くなったりますが、しっかりと休養を取ることで元どおりに戻し、日常生活やスポーツを楽しむことも可能です。
症状としては、スポーツをしている際に、「ピキッ」とした痛みが出現して体重をかけると歩きにくい。また重症の場合は、歩けないといった症状が現れます。
疲労の蓄積や走り方の問題から発生する可能性が高いと考えられています。また何度も繰り返し怪我をしやすいためセルフチェックとセルフケアを毎日(練習毎)行い、怪我をしない。肉離れを起こさないことが大切です。
肉離れは症状毎に3つに分類される
軽症
医師から「軽い肉離れですね。」と診断された場合、一般的には2〜3週間でスポーツ復帰が可能とご理解頂きたいです。
府木 薫監修トレーナーからのアドバイス
健康体育学修士、健康運動指導士、PHI Pilatesインストラクター(Mat level.1,level.2 & Props)、日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部A級トレーナー、日本ノルディックウォーキング協会インストラクター
軽い肉離れでも2〜3週間は休養なんですね。
中等症
一般的に中等症と診断された場合、6週間でスポーツ復帰が可能とご理解頂きたいです。スポーツ復帰まで期間があるので可能であれば、定期的に医師やトレーナーと相談し、画像診断などを行いながらリハビリやトレーニング強度を上げていく必要があります。
重症
一般的に重症と診断された場合、数ヶ月〜半年ほどスポーツ復帰に時間がかかります。
肉離れになったら病院で治療とRICE処置を
なぜなら、筋肉か靭帯損傷は画像所見が必要になってくるためです。肉離れだと思ったら、まずは整形外科のある病院かクリニックに受診する必要があると思います。
なかにはレントゲンだけで終わる病院などもあるとは思いますが、実際はレントゲンのみでは判断がむずかしく、MRIといった機器を使って画像診断する必要が出てきます。
また万が一受傷した際には、RICE処置を行いましょう。2〜3日は、炎症が起こっているためアイシングをすることで早く治りやすいです。
湿布でもいいですか?
府木 薫監修トレーナーからのアドバイス
健康体育学修士、健康運動指導士、PHI Pilatesインストラクター(Mat level.1,level.2 & Props)、日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部A級トレーナー、日本ノルディックウォーキング協会インストラクター
応急処置として、湿布は効果が期待できません。できるだけ氷で冷やして頂くことをお勧めします。
受傷した筋肉をゆるめるようにして安静を守ってください。また、歩き回ったりするなど疼痛を増強させるような動作はしないことも注意しておきます。
府木 薫監修トレーナーからのアドバイス
健康体育学修士、健康運動指導士、PHI Pilatesインストラクター(Mat level.1,level.2 & Props)、日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部A級トレーナー、日本ノルディックウォーキング協会インストラクター
肉離れを繰り返す原因は完全な回復を待たずに運動をしてしまうことが一番多いでしょう。
肉離れは遠心性収縮で起こる
筋肉自体が収縮(力が入っている)しているにもかかわらず、筋肉が伸ばされてしまっている状態です。
これを遠心性収縮(えんしんせいしゅうしゅく)と言います。
縮んでいる筋肉に引き延ばす力が加わり、自分は縮みたいのに引き伸ばされてしまう。筋肉が自分自身の耐久性を上回る力を受けることで断裂をしてしまうというメカニズムです。
わかりやすい具体例は、腕相撲をしている時。どんどん劣勢に追い込まれていく状態を想像してください。
なるほど。わかりやすいですね!
怪我をしないよう予防トレーニングを実施してみませんか。
肉離れの予防に向けた遠心性収縮トレーニング
痛みが完全になくならないうちに我慢できずにスポーツを実施する、または痛みは引いたが、肉離れは完全に完治するまでに待てずに再発をされる方を多く見てきました。
1度の肉離れよりも、2度目の肉離れが、2度目よりも3度目の方が筋肉が断裂しやすいようです。
ここからは予防に向けた、または怪我からの再発予防に向けたトレーニングを紹介していきます。
今一度、先ほどお伝えした肉離れのメカニズムを思い出してください。
怪我の原因となったスポーツ活動を実施される前には、遠心性収縮をともなったトレーニングを実施しましょう。
ジムなどに通われ色々なトレーニングを実施されていらっしゃる方は、耳にされたこともあるかもしれませんが、ネガティブトレーニングという運動を実施して頂きたいと考えています。
少しの動作でも筋肉に大きな刺激が入り、筋繊維が傷つき易いのが特徴です。しかし、そのぶん筋繊維はもちろんのこと、靭帯、腱、筋膜、筋腱移行部などの軟部組織が強度を増していきます。スポーツ活動に戻られる最終段階でのトレーニングとして実施しましょう。
ノルディックハムストリングス
1.足部を固定し、両膝立ちがスタートポジションです
2.膝を支点にし、身体を前に倒します
3.倒す際、頭から肩・体幹・膝を一直線にします
4.スタートポジションに戻ります
5回〜8回×3セットを目安に実施しましょう。
トップ選手も取り入れているトレーニングです。怪我を治すだけでなくより強靭な身体を作るために、このトレーニングを取り入れてみましょう。しかし怪我からの復帰最終段階ではない方や筋力(体力レベル)の低い方が実施されると、怪我の要因となる場合もあります。
実施される際は、注意し行ってください。
予防にむけて
1.元気な時(フレッシュな時)の適性な身体の柔らかさを知ること
2.運動前にはウォーミングアップを実施
3.筋力の低下および筋力のアンバランスの改善
4.ランニングフォームの不良の改善
5天候(温度・湿度)・サーフェス(地面)・シューズなど
肉離れの発生の要因として、1〜5のことも考えられます。
遠心性収縮を始め、疲労の蓄積や様々な要因が複雑に絡み合うことで肉離れが起こります。
1つでも予防に向け対策をとってみてください。
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