スクワットは呼吸を意識しよう!効果倍増!?

監修者

小川 雄翔

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

下半身の代表的トレーニングであるスクワットは、正しいフォームで行うことでトレーニング効果をさらにアップできます。しかし、フォームと同じくらい大切で、かつ見落としがちなのが「呼吸」というポイントです。スクワットと呼吸の切っても切れない関係の秘密を解説します。

呼吸の働きとは?

スクワットと呼吸との関係を紐解く前に、まずは根本的な話をしましょう。

呼吸の役割というのは、言うまでもなく「酸素を取り入れて二酸化炭素を取り出す」ことにあります。呼吸によって取り込んだ酸素は体を巡り、体が生じたゴミのような存在である二酸化炭素を体外へと出すと言うのが呼吸の役目です。

では、酸素は体の中で一体何をしているのでしょう?

酸素の役目というのを端的に説明すると、「エネルギーを作る手助けをする」という点につきます。私たちは食事によって体の栄養やエネルギーを摂取しますが、それらを体で使うためのエネルギーに変換させるために必要となるのが酸素というわけです。

ちなみに、酸素が関わって作られる体内のエネルギーをATPと呼びます。これは次の説明にも頻繁に出てくるので、ぜひ覚えておいてください。

呼吸を止めるとなぜ苦しくなるのか?

酸素の体内における役割がエネルギーの生成であることがわかりました。しかし、なぜ人はほんの数十秒息を止めるだけでも苦しくなってしまうのでしょうか?その理由は、先ほど登場した「ATP」と呼ばれるエネルギーに関連しています。

私たちが体内の「エネルギー」というのを想像すると、大抵は体を動かすためのものと思いがちではないでしょうか?しかし、このエネルギーというのは単純に運動に必要なのではありません。炭水化物も脂質もタンパク質も、最終的にATPへと変換されて細胞に届き、それがあらゆる生命維持活動に使われることとなるのです。

そんなATPを作り出す酸素が体内で不足しては大変です。また、呼吸をやめれば体内の二酸化炭素濃度がたまってしまいます。二酸化炭素があると体内のPh濃度が酸性に近くなってしまい、その状態が苦手な細胞の多くが死滅してしまいます。

それを防ぐために、脳にあるセンサーから体に「呼吸をしなさい」という指令が来ます。この信号を受けることで、呼吸を止める事なく酸素を取り込み二酸化炭素を外に排出するのです。

スクワット中にやりがちな誤った呼吸のパターン

小川 雄翔監修トレーナーからのアドバイス

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

呼吸の大切さの理由を理解したところで、本格的にスクワットと呼吸との切っても切れない関係についてお話ししていきたいと思います。

スクワットに限らず、あらゆるトレーニングでは決して呼吸を止めないように指導されます。しかし、スクワットで高重量を扱うとき、つい呼吸を止めて力んでしまうという人は少なくないのではないでしょうか?

そうした方が行なっている呼吸というのは、次のようなパターンであることが多いです。

・大きく息を吸ってしゃがみこむ。あるいは息を吸いながらしゃがみこむ。
・吸い込んだ息を吐き出さず、腹圧に力を目一杯込めて立ち上がる。

ここでのポイントは「吸った空気を吐き出さずにそのままトレーニングを続ける」という点にあります。この誤った呼吸法を実践し続けてしまうと、次に紹介するとても怖いアクシデントに繋がりやすくなってしまうのです。

スクワット中の誤った呼吸が引き起こす2つのデメリット

先ほど紹介した誤った呼吸法を行なってしまうのは、次の2つのデメリットから決してオススメできません。

①体内のエネルギーが枯渇してしまう

呼吸を止めるというのは、単純に体内のエネルギーを枯渇させてしまうという状態に直結してしまいます。高重量のバーベルを担いでいる時にエネルギーが枯渇してしまうのは、トレーニングの途中で支えられなくなり怪我につながるなどの危険があります。

②血圧が急上昇してしまう

息を思い切り吸った状態というのは、「お腹を大きく膨らませた状態=腹圧を高めている状態」と言えます。この状態で息を止めてスクワットを行うと、血圧が驚くほどのスピードで急上昇してしまうのです。

元々スクワットは太ももやお尻といった大きな筋肉を使うため、血圧の変動が起こりやすい種目です。息を止めたトレーニングは、その流れを一気に加速させてしまうことになります。

この2つのデメリットが起こると、体には共通した異変が起こります。それが「立ちくらみ」やそれに似たふらつきです。体内エネルギーが枯渇してしまう、脳に十分な血液が回らなくなってしまう、という2つの原因によって、めまいが起きやすい条件が整ってしまうわけです。

これは怖いですね…。

小川 雄翔監修トレーナーからのアドバイス

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

低血糖症になってしまう可能性もあります。息は止めないようにしてください。

重いバーベルを持っている時にこんな症状が出てしまえば、重大な事故にも繋がりかねません。では、そうした事態を防ぐためにどんな呼吸法を実践すればいいのでしょうか。

スクワット中の正しい呼吸の方法

よくスクワット中の呼吸法として紹介されるのは、次のような方法です。

・しゃがみこむ時は息を吸う。
・立ち上がる時に息を吐く。

筋トレ時というのは、「力が入る時には息を吐き、力が抜ける時には息を吸う」というのが1つの鉄則になっています。スクワットもこの鉄則に従うと、上のような呼吸法へと繋がるわけです。

ただし、自重トレーニングでスクワットを行うのに対して、バーベルで高重量のトレーニングを行う時、このルーティンを守りながらトレーニングをするのはとても大変です。立ち上がる時に息を吐くのは、うまく力を込められないという人も少なくないでしょう。

そんな人は、次のような呼吸法を実践してみてはいかがでしょうか?

・バーベルを担いで立っている姿勢で大きく息を吸う。
・しゃがみながらゆっくりと息を吐いていく。
・しゃがみこんだ姿勢の時に、息を吐き切る。
・息を吐ききった状態で立ち上がる。

ここでポイントとなるのは、立ち上がる時に息を吐ききった状態だという点にあります。動作の全体を通して息を止めている時間をなくす、あるいは限りなく0に近い状態にすることで、先ほど伝えたデメリットから起こる体の異変をなるべく起こさないようにするというわけです。

初心者がスクワットの呼吸法をマスターするには?

筋トレ中の呼吸法というのは、筋トレ上級者に限った問題ではありません。比較的軽い重量からトレーニングを始める筋トレ初心者の頃から、ぜひ覚えて欲しいことでもあります。

とは言え、最初のうちは運動に意識が集中して、呼吸のことを忘れがちになってしまうこともあるでしょう。そんな人がスクワット中の呼吸をマスターしたい時にオススメなのが、イスやベッド、ベンチを使ってトレーニングを行うという方法です。

やり方は簡単で、自分の後ろにベンチなどを置き、自重でのスクワットを行うだけです。仮に呼吸に意識が向いて体のバランスを崩しても、ベンチがあるので大きく転んでケガをしてしまうのを防げます。

こうした道具をうまく活用して、呼吸法をマスターしていきましょう。

呼吸はスクワットに欠かせない要素の1つ!

呼吸が体にもたらす様々な影響から、スクワット中の正しい呼吸法までを解説してきました。トレーニングではダイナミックに体を動かすので、その分多くのエネルギーを消耗します。そんな時、しっかりと呼吸を行なってエネルギーの補充や体の環境を整えることで、よりトレーニング中のパフォーマンスを向上、維持することができるのです。

ぜひスクワットも、今回紹介した呼吸法で効果の高いトレーニングを実践していきましょう!

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