背中を鍛えると猫背は治る!と聞いたことはあるでしょうか。果たしてそれだけで猫背の問題を解消できるのか徹底的に検証。猫背を根本解決するために必要なことは、実は意外なところにあった。
猫背の定義と筋肉との関係性
あの~、鏡や写真で自分を見た時の猫背が本当に嫌なんです...。
神尾健太監修トレーナーからのアドバイス
G.tail代表/BLDA代表理事/千葉大学スポーツ科学過程卒/BLDAマスターボディデザイナー,NSCA-CSCS,鍼灸マッサージ師,EBFA,NKT,PS2AD-A,JM7,ファイトライフ協会認定トレーナー,骨格スタイル協会認定ファッションアドバイザーなど
猫背でお悩みなんですね。猫背になると外見はもちろん、凝りや痛みの原因にもなりますからね。
はい、そうなんです。そこで、背中の筋肉を鍛えると猫背は治ると聞いたのですが、これって本当ですか?
神尾健太監修トレーナーからのアドバイス
G.tail代表/BLDA代表理事/千葉大学スポーツ科学過程卒/BLDAマスターボディデザイナー,NSCA-CSCS,鍼灸マッサージ師,EBFA,NKT,PS2AD-A,JM7,ファイトライフ協会認定トレーナー,骨格スタイル協会認定ファッションアドバイザーなど
さてどうでしょう?では詳しく解説していきます!
現在では、かつてはあまり見られなかったのに、最近になって流行り出した病気や症状のことをまとめて21世紀病、あるいは慢性的現代病と呼んでいます。
猫背がその一角を担っていることに、異論がある専門家はもはやいないでしょう。
重要なのは、どうして現代人の多くが猫背になってしまうのかを知ることです。原因が分かれば対処法を練ることができますからね。
では猫背の原因を探る前に、そもそも猫背とはどういった状態のことを指すのか学んでいきましょう。
猫背の定義
関連するワードを挙げていくだけで、頭部前方位姿勢・ストレートネック・円背・巻き肩・アッパークロスシンドローム・反り腰・スウェイバック・スラウチング姿勢・骨盤前傾位&後傾位、歪みなどなどなど。つまり色々なパターンがあって複雑ということです。
しかしこれらのパターンに共通している点を見出すことも可能です。
それは、骨同士の位置関係が正常から逸脱しているということ。
したがって猫背とは、骨同士の関係性が逸脱したせいで、上半身が丸いシルエットに固定されてしまった状態の総称を指していることにしましょう。
猫背と筋肉の関係性
筋肉は、自身が緊張することで縮む作用を発揮することは周知の事実でしょう。なぜ縮むかと言えば、骨を引き寄せて関節を動かすためです。
では猫の背中のように丸まった姿勢をしている人の場合、どこの筋肉が縮こまったせいでその様な状態に陥ってしまったのでしょうか?
答えは単純明快。身体の前側の部分、つまり胸筋(特に大胸筋、小胸筋など)です。
つまり胸筋が過剰に緊張したまま固定されると、肩(肩甲骨)を巻き込むように引っ張り続けるので、その結果背中が丸くなるというわけです。
そしてこのことは、もう一つ重要な事実を予測させます。
緊張して縮こまった筋肉の逆側の筋肉、要するに背中側の筋肉が弱くなっているのではないか?ということです。
過剰に緊張した前側の胸筋をほぐすと同時に、弱化した背中の筋肉を鍛えればいいのだと。
かくして整体師は大胸筋、小胸筋をストレッチで伸ばしたり、マッサージでほぐしたりするでしょうし、パーソナルトレーナーは肩甲骨周辺の筋肉(下部・中部僧帽筋、前鋸筋、広背筋、上腕三頭筋など)を筋トレによって鍛えるのです。
筋肉を鍛えても猫背は治らない?
そもそも、硬くなった筋肉をほぐすことと、弱くなった筋肉を鍛えること。これだけで猫背の問題が解消できれば、こんなにも猫背に悩む現代人はいないでしょう。
これは政治家の不正が発覚した時に、その当事者を辞任させることでその場の事態を収拾させるだけで、根本にある組織的欠陥に対処しようとしない政界の悪しき構造と同じで、一見猫背が改善したように思われても、またいつの日かあなたの背中は丸まり始めることになるでしょう。
猫背を生み出す2つの不足
言われてみれば確かにその通りです。私たちはいつもその場限りの単純な解決策で満足してしまいますね。。
神尾健太監修トレーナーからのアドバイス
G.tail代表/BLDA代表理事/千葉大学スポーツ科学過程卒/BLDAマスターボディデザイナー,NSCA-CSCS,鍼灸マッサージ師,EBFA,NKT,PS2AD-A,JM7,ファイトライフ協会認定トレーナー,骨格スタイル協会認定ファッションアドバイザーなど
もちろん、背中の筋肉を鍛えることが無意味というわけではありませんが、それだけで終わってしまうともったいないと覚えておくと尚良しです。
はい!ではでは、、猫背を根本的に改善したい場合は、背中を鍛えることに加えて何が必要なんですか?
神尾健太監修トレーナーからのアドバイス
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いい質問ですね。それではまず、私たちを猫背に陥れる真の原因から探っていきましょう!
猫背を改善するための重要な視点
身体のあらゆる問題を、たった一つの原因に還元することはできませんし、そうする意味もありません。(ただし特定の遺伝子の異常で起こる遺伝病は例外)
なぜなら、人体とは小宇宙とも呼ばれる複雑な代物ですし、何より私たちは遺伝子も腸内細菌も経験してきた過去も一人ひとり違うからです。
そこで猫背のような21世紀病の原因を探る場合は、かなり大局的な視点が必要となります。
「私たち人類は、どのように進化してきたのか?」
「私たち人類は、どういった環境に適しているのか?」
「私たち人類にとって、自然ではないこととは何なのか?」
こういった問いの先に見えてくるのは、裕福で便利な現代と、過酷で厳しい過去(人類誕生から産業革命までの約600万年)とを比較した時のライフスタイルの急激な変化でしょう。
このように21世紀病の原因を、激変した私たちのライフスタイルそのものとする考えを[進化と文化のミスマッチ仮説]と呼びます。
ということでこれから私は、進化と文化のミスマッチからくる2つの“不足”が猫背の原因だと主張していくことにいたします。
運動のボリュームとバリエーションの不足
原始時代の狩猟採集民と比較して、現代人が身体を動かす機会がかなり少なくなったと考えることには、誰もが納得できますよね。
そしてここで言いたいのは、お腹のトレーニングや体幹トレーニングをして姿勢を維持する筋肉を鍛えましょう!ということではなく、趣味でもスポーツでも何でもいいので身体をたくさん動かそう!というもっと抽象的な意味です。
(そもそも体幹トレーニングの最も有意義な効果は、筋力を増強することではなく、適切な身体の動かし方を再学習することです)
実は私たちは普段から活発に体を動かしていないと、自分の身体の感覚に鈍感になってしまいます。すると脳は自分の身体の位置を正確に把握できないので、常に緊張モードに入ることがわかっています。
結果的に肩首には余計に力が入り、呼吸が浅くなるという悪循環を生み出すのです。
肩と首が過緊張したまま浅い呼吸を繰り返すことが慢性的に定着すると、私たちは背骨と頭を安定させることができません。
(姿勢を安定させる最も重要な要素は、適切な呼吸パターンによる体幹部の均一した拡張です!)
したがって、運動不足が現代人を猫背にする原因の第一候補と言えるのです。
自然との触れ合い不足
あなたはここ何日かの間に、森の中を歩いたでしょうか?鳥のさえずりに、小川が流れる音、どこまでも続く空と海、青々とした芝生などを感じた時間はどのくらいあったでしょうか?
おそらくほとんどの人は0分でしょう。
現在様々な研究によって、先進的な都会で生活するだけで、ましてやスマホやパソコンなどのテクノロジーに囲まれ、同時に複数の課題(マルチタスク)をデスクワークでこなさなければいけない生活をしているだけで、交感神経がフルに稼働する実行モードから抜け出せなくなることが示されています。
要するに現代人は自然が足りないせいで、リラックスできていないのです。
その結果、上記した運動不足と同じ悪循環に陥るだけではなく、姿勢筋の過度な緊張を抑制する脳の機能が正常に役割を果たせなくなってしまいます。
つまりこういうこと。
何かをしなければいけない(トップダウンの実行モード)!や、あれにもこれにも注意を向けなければいけない(注意力の散漫)!という機能を司る大脳皮質(特に前頭葉)が過活動になり、より本能的な部分を司る大脳基底核と小脳がうまく機能しなくなってしまうのです。
その機能しなくなった大脳基底核と小脳は、姿勢や動作を無意識レベルでコントロールするための要の領域だと知れば、結果は想像に難くないでしょう。
だから自然と触れ合うことが極端に少ない現代人は、猫背になりやすい環境を生き続けているのです。
猫背の根本的な解消法|
猫背の根本的な解消法|ボトムアップ編
運動不足に自然不足ですか。私たちの本来あるべき姿からかけ離れたことが、猫背の根本原因だったんですね。
神尾健太監修トレーナーからのアドバイス
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その通りです。その根っこの部分に目を向けなければ、猫背の問題は解消できないと私は思っています。
じゃ、明日から私は何を始めればいいのか具体的に教えてください!
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はい!ではお伝えしていきます!
だから、ここで私が皆さんにできる最高のアドバイスはこうなります。
「もっと身体を活発に動かそう!ストレスを感じないレベルまで。」
「もっと自然の中で過ごそう!ストレスを感じないレベルまで。」
もちろん真面目に言ってます。
現在では自然のある環境の中をウォーキングするだけで、脳の認知機能や記憶機能や創造性は向上しストレス値や血圧は低減し、大脳皮質や交感神経の過活動が抑制されることが、様々な研究によって示されています。
こういった効果が猫背の改善に対しても、多大な貢献をすることは前章をお読みいただければわかるはずです。
具体的な目標は、月に5時間以上、つまり週に2,3日は自然の中を30分間散歩すること。しかもゆっくりと、深い呼吸を心がけながら。(できればスマホは家に置いてくるか電源をオフに!)
そして月に1回は、アウトドア(森林浴、海水浴、アスレチック、サーフィン、ハイキング、トレッキング、クライミング、キャンプ、屋外でやるスポーツなど)に出かけるように計画を立てましょう。
この目標はもしかすると現状の日本人のライフスタイルを考えると高いハードルかもしれませんが、猫背の問題(もちろん猫背以外の全ての21世紀病も含めて)は、運動不足と自然不足を補うだけでも解決に向かって傾き始めると私は確信しています。
猫背の根本的な解消法|トップダウン編
わかりました!明日から自然を感じながら散歩してみます!
神尾健太監修トレーナーからのアドバイス
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ですね。では最後にまとめに変えて、おまけの情報をもう少し。
①地に足を着けること
②股関節に加重できること
③体幹部の関節中心化
④適切な呼吸パターン
特にかかとの感覚は必須なので、歩くときはまずかかとを地面に接地するようにしましょう。と同時に、股関節に体重を乗せられるかどうかも意識したいところ。この2つができていない人は、上半身がリラックスできないので、ほぼ確実に猫背を促します。
次に体幹部、つまり骨盤と肋骨、背骨、肩甲骨が作る各関節が最も適切なポジションに位置していること。これを関節の中心化と言いますが、そのメリットは姿勢を安定させるために重要な体幹部の筋肉(腹筋群、背筋群、骨盤底筋群、横隔膜、腸腰筋、前鋸筋、深部頸部筋群など)が、協調的に活躍できるようになることです。
関節が中心化するためのポイントは、
1)骨盤は水平(前傾も後傾もNG)
2)肩甲骨は内側に寄せて、かつ下方に下げる(胸を開く)
3)アゴを引いて首を伸ばすの3つ。
こちらは私の過去の記事『呼吸と横隔膜は姿勢に関係!横隔膜を機能させるエクササイズ・ストレッチ3選』で詳しく解説しているので、是非参考にしてください。正しい呼吸がなければ正しい姿勢は身に付きません。
【プロトレーナー解説】不良姿勢や肩こりなどにも影響を与える呼吸。その呼吸が適切に行われるために最も重要な横隔膜をきちんと機能させるためのエクササイズを、詳しい解説を交えながらご紹介いたします。
あ、最後にこの記事にテーマにきちんと回答しておかなければいけませんね。
「背中を鍛えると猫背は改善するの?」でした。
ここでは「しません!」と、はっきり言っておきましょう。なぜなら、これさえすれば猫背は改善する!と断言できる方法など、この世には1つも存在しないのだから。