『ウォーミングアップ』といっても何を意識しているのか?なんのために行なっているのか?これらの目的を把握しないとウォーミングアップの効果は何も得られない。だからこそ最新のウォーミングアップ内容を把握して常にベストパフォーマンスで試合に臨んでほしいと思います!
ウォーミングアップとは?ウォーミングアップには3種類ある
ウォーミングアップには3種類ある
ウォーミングアップには種類があると聞いたことがありますがどのくらいあるのでしょうか?
伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス
全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー
基本的に3種類に分かれます。その3種類の使い分けをできるようにすることが『トップアスリート』の証となるのではないでしょうか。
1. 受動的
2. 一般的
3. 特異的
基本的にはこの3つから成り立ちます。
1つ1つを見ていきましょう。
①受動的ウォーミングアップ
しかし、受動的ウォーミングアップでは、組織温の適切な上昇は期待できない=深部体温、筋温の上昇は期待できないとのことです。
②一般的ウォーミングアップ
一般的ウォーミングアップは大筋群がより動員されるために、組織温を増加させるうえでは一般的ウォーミングアップは受動的ウォーミングアップより効果的です。
これから”ベストパフォーマンスを行えるような準備”という目的においては、一般的ウォームアップは受動的ウォームアップより適していると言えます。
③特異的ウォーミングアップ
特異的ウォーミングアップの最大の魅力は、筋温を上昇させるだけでなく、試合直前のリハーサルとしても利用できるという点がなんといっても魅力的です。
特異的ウォーミングアップにより、 技術が求められる複雑な動作をより動かしやすいようになることが狙いです。
このことが可能となる理由としては、特異的ウォーミングアップの神経的な部分に働きかけるという特性が挙げられます。
つまり、特異的ウォーミングアップは、組織温を上昇させて活動の中で求められる神経系の応答を最適化するという長所を持ち合わせていると言えるのではないでしょうか。
ウォーミングアップで得られる効果とは?
ウォーミングアップでの効果はどのような効果があるのですか?
伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス
全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー
基本的にはメリットしかないのがウォーミングアップの特徴です。その中で得られる効果を見て行きましょう。
ウォーミングアップの効果①|パフォーマンス向上
試合でベストパフォーマンスを発揮するためには”最善の準備”が必要になります。
例えば、試合で調子が悪くて自分本来のパフォーマンスを発揮することができなかったという選手は多いと思います。
しかし、これは『その日のコンディションを把握していれば絶不調という最悪なコンディションを避けることができる』ことは間違いありません。
全部がの試合で絶好調でプレーするというのは難しいかもしれませんが、絶不調の状態で試合に望むことを避けることはできます。
一流の選手は、調子が悪くてもこのウォーミングアップの段階で絶不調ではない状態を作ってきて試合に望むことができていることが多いです。
ウォーミングアップを惰性に行うのではなく、きちんと目的を明確にして行うことでただのウォーミングアップではなく、試合でベストパフォーマンスを発揮するために必要なスキルを獲得することができれば、ウォーミングアップの取り組みも変わってくるのではないでしょうか。
ウォーミングアップの効果②|障害予防
では、ウォーミングアップがなぜ障害予防になるのでしょうか。
理由としては、交感神経を優位に立たせることが一つ目の理由です。
交感神経が働くということは”戦闘態勢”に入るということです。
ウォーミングアップが不足し、深部温の上昇が見込めないままプレーを行うと乳酸が溜まりやすくなり、疲労回復も見込みにくくなります。
その疲労が蓄積した結果、慢性疲労により障害を生む可能性があります。
その場の障害予防ももちろんですが、その場しのぎにならないように先の障害予防にも力を入れていくことでウォーミングアップの価値観が上がるかと思います。
ウォーミングアップの効果③|筋温上昇
その感覚はモビリティ関節を大きく動かしているからこそ起こる感覚です。
モビリティ関節で代表的なものといえば、股関節と胸郭(特に肩甲骨)です。
これらのモビリティ関節を大きく動かすことで”人間の動かなければいけない関節機能が向上”しますのでその部分を大きく動かす必要があります。
いわゆる体幹部分ですが、体幹を固定させるのではなく”優位に働かせる”機能が必要になります。
スポーツはいかに身体をスムーズに動かすかが鍵となります。
体幹を固める=全身を固めてしまう可能性がありますので、しなやかさを失う可能性もあります。
だからこそ、動的ストレッチをどんどん活用していき筋肉の温度を上昇させていく必要があります。
筋温が上昇すると、筋肉の収縮と弛緩が行われやすくなります。
縮みやすく、緩みやすい。
言い換えれば、鍛えやすく、伸ばしやすい。こういったイメージです。
モビリティ関節を優位に働かせて、筋温を上昇させていき、身体が動かしやすいように整えていきましょう。
ウォーミングアップの効果④|可動域拡大
いきなり筋肉を伸ばしてしまうと、伸張反射によって筋肉が急激に縮む傾向が強くなります。
しかし、先ほど記載したように筋温を上昇させることで筋肉が収縮と弛緩を繰り返しやすくなります。
可動域には身体の柔軟性が必要になります。
そのためには静的ストレッチを蔑ろにすることはできません。
そう考えてみると、イチロー選手は常にストレッチをしています。
守備の時もベンチにいる時も。
ただぼーっと立っている瞬間はありません。
これが一流選手の最善の準備ではないでしょうか。
可動域が広がることで、パフォーマンスも上がります。
骨盤の前傾が行いやすくなり、重心が安定したり、投球時のゼロポジションも取りやすくなったりします。
サッカーの場合では、クロスを上げるときに腸腰筋の硬さがあると、しっかり踏み込めず、膝がつま先よりも前に出てしまし力が伝わらずに、正確なクロスを上げることができなくなる可能性も高くなります。
だからこそ、私はウォーミングアップの段階でも静的ストレッチをどんどん取り入れても良いかと思います。
ベストパフォーマンスを発揮のためのウォーミングアップメニュー
メニュー①|静的ストレッチ
ウォーミングアップで行うストレッチとして何を大事にしていますか?
伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス
全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー
私は意識してほしいことは、まずは動きやすい身体を作ることです。つまり、柔軟性を出して可動域を広げることがまずは大事になってくると思います。
文献などでは、”運動前に静的ストレッチを行うと筋出力が下がる”と言われています。
そのためほとんどのチームが試合前の静的ストレッチは意欲的に行わせていないのではないでしょうか。
しかし、私の考えは”可動域がない身体は捻ることも、曲げることも、伸ばすことも何もできない身体だと思っています。
その身体で、動的ストレッチや、プレーを行っても軸がぶれたり、優位に働かせやすい筋肉を使い続けてしまいます。
それが結果的にベストパフォーマンスを発揮できなかったり、最終的にオーバーユースに繋がります。
動的ストレッチは要らないというわけではなく、あくまでも『動きやすい身体作りのためにまずは可動域を広げる』ということかなによりも大事になって来ます。
トップアスリートで身体の硬い選手は間違いなくいません。
【プロトレーナー解説】スタティック(静的)ストレッチとは何か?その仕組み、特徴、効果、ダイナミック(動的)ストレッチとの違いや取り入れ方を解説します。さらに各部位の代表的なスタティックスストレッチのやり方をご紹介します。
メニュー②|動的ストレッチ
ウォーミングアップで静的ストレッチを重視するとは意外でした。しかし、静的ストレッチだけではウォーミングアップは万全ではないですよね?
伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス
全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー
もちろんその通りです。静的ストレッチのメインは”可動域を広げること”です。
動的ストレッチはいろいろな捉え方もできます。ダイナミックストレッチやアクティブストレッチとも言うことができるかと思います。
そこで今回は、動的ストレッチ=『モビリティ関節の機能向上』を目指してウォーミングアップをしていきます。
その中でも特に動かしたい関節は 『肩甲骨』『股関節』 この二つです。
上肢と体幹をつなぐ肩甲骨。下肢と体幹をつなぐ股関節。 肩甲骨は関節ではないですが、肩関節を自由に動かすためには肩甲骨の機能が非常に重要になります。
これらの機能を向上させることで、床からの反力を体幹に伝えていき、その力をロスさせることなく指先に伝えていくのが基本かと思います。
また、モビリティ関節の動きが悪くなると上肢、下肢のみに頼ったプレーをするようになります。
そういったプレースタイルになるとスタビリティ関節と言われている膝関節や、腰椎の障害が増えて来るかと思います。
人間の関節の身体は動かすところは動かし、止めるところは止めると言うことが基本です。
その動かす部分が『肩甲骨』と『股関節』となります。
それでは、ここからは動的ストレッチの紹介をしていきます。
ダイナミックストレッチとは何か?いつ行うべき?スタティックストレッチとの違いは?ダイナミックストレッチの効果やポイント、ダイナミックストレッチの部位別の方法(胸、背中、肩、腰、脇、腕、ハムストリングス、お尻、股関節)を徹底解説します!
メニュー③|トランクローテーション
この機能を高めると体幹部分と、上肢の連結機能が向上し、結果として骨盤と肩甲骨の連結が向上して身体の機能が良くなります。
ポイントは骨盤の前傾を保ったまま、胸椎の回旋機能を高めていくことです。
人間の身体にはリズムがあるので骨盤の後傾が強くなると胸椎の屈曲も強くなります。
そのため骨盤の前傾を保ったまま行えることが理想的です。
四つ這いで行うトレーニングですが、この姿勢で胸椎が回旋出来なかったり、骨盤の前傾が保持できない選手は立位姿勢=すなわち実際のプレー時にも姿勢保持ができなくなる可能性が高くなります。
立位姿勢でも崩れない姿勢を作るためには、まずは四つ這いの姿勢で”肩甲骨を大きく動かす”ことと”骨盤の前傾を保つ”この二つを意識してみると良いかもしれません。
メニュー④|立位レッグローテーション
トレーニングの基本はOKC(Open・kinetic・chain)からCKC(close・kinetic・chain)の順序で行うと良いと言われています。
その方法に従うと、まずは四つ這い姿勢から、立位姿勢の順で行うと良いと思います。
そしてこのレッグローテーションは良好姿勢で股関節を回すことで股関節の機能を働かせていこうと言うのが狙いです。
骨盤が丸まったり、腰椎が前後に動いたりすることなく股関節を回していくので、股関節の機能が整います。
股関節は前後、左右、回旋と、あらゆる方向に動いていくことができるのでそこを踏まえるとやはり可動域が広くてそんはないのではないかと思います。
また、この動的ストレッチのポイントは姿勢が崩れることなく(特に骨盤の後傾、腰椎の過伸展)動かすことがでできれば理想的です。
メニュー⑤|シングルレッグヒップヒンジ
しかし、このヒップヒンジは基本的に”股関節から折り曲げる”という感覚で行うと理想的です。
そのため、膝を無理やり曲げる必要はなく、あくまでも”股関節主導で行う”ということがメインになります。
人間は普段の生活でも歩く時に一瞬でも片脚の状態になっている時があります。
それがスポーツを行うということであれば、もっとその片脚の頻度は増えてきます。
だからこそ、このヒップヒンジで片脚の動的ストレッチを取り入れると良いかもしれません。
もし、ハムストリングスが硬い選手がいたら、この三つの動的ストレッチはうまく行えないかもしれませんので試しにやってみてください。
ランニングで心拍数を向上させて血液の循環を促進する
そのために静的ストレッチ、動的ストレッチ、そして最後にランニング系のメニューを入れて行くのがセオリーと言われています。
ウォームアップでは、 動員された筋内の温度の増加が起こります。温められた筋肉は強く収縮し、速く弛緩するようになります。
つまり、運動時の筋収縮の力、速度はウォームアップによって高める事ができると証明されるのではないでしょうか。
その中でもやはり、ランニングは筋温を上昇させるのに適したウォームアップだと思います。
動員されている筋肉に流れる血液の温度が上昇することで、血液温度が上昇するとともに、その血液によって運搬されている酸素の量が減少します。
結果的に動員される筋に利用可能な酸素が、より多く送られることになります。
また、深部体温も高くなるので筋、腱、靭帯の粘性を低下させることができるので可動域は増大します。
競技によっては走らない競技もあるかもしれませんが、その中でもランニングというのはスポーツの基本になるのでそう言った意味では、ランニングを行わずにウォームアップを済ませることはしないのではないでしょうか。
静的ストレッチでその日の身体の状態を把握する
その日のコンディションを身体の柔軟性で把握する
静的ストレッチは柔軟性を出すために必要なんですね。
伊藤俊太監修トレーナーからのアドバイス
全米ストレングス&コンディショニング協会ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・NSCA認定パーソナルトレーナー
そうですね。ただ、それだけでは物足りません。静的ストレッチには、その日の柔軟性や身体のコンディションを把握するために必要なスキルなんです。
筋出力低下、パワー低下などの懸念材料が挙げられていますが、その日の試合でベストパフォーマンスを発揮する、障害を予防する。
という観点で行くと、やはり必要なのは静的ストレッチです。
私からすれば、”可動域の狭い選手はプレーの質が下がる”と判断しています。
試合後半になるとパフォーマンスが下がるのは、可動域が試合前よりも狭くなっているから、という原因が多くあります。
しかし、「全員が全員静的ストレッチを入念に行いましょう」というわけでもありません。
人によっては弛緩性の強い選手もいると思いますので、そう言った選手は安定性を作る必要もがあります。
しかし、ほとんどの選手は圧倒的に柔軟性が不足している選手が多いです。
だからこそ、静的ストレッチを試合前に意識して取り組んでほしいです。
このコンディションの把握をすることで試合でのベストパフォーマンスを生む確率はぐんと上がるでしょう。