筋膜リリースで腰痛も治せる?ローラーを使ったやり方を解説!

監修者

北村 真美

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

【専門家解説】筋膜や筋膜リリースとは何なのか?そして、腰痛との関連や腰痛に効果のある筋膜リリースの方法を解説します。腰痛の正体を知り、腰痛の原因を取り除くことで痛みの緩和が期待できます。

筋膜の構造と機能について

筋膜とは、どこにあるのですか?

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

筋膜とは、一言でいうと、筋肉(骨格筋)や内臓を覆っている膜のことです。筋膜について詳しく説明していきます。

筋膜は皮膚のすぐ下に存在する線維組織です。
筋膜は全身の筋をはじめ、骨や心臓、脳などすべての臓器を包んでいます。

筋膜の分類

大きく分けて、漿膜下筋膜浅筋膜深筋膜に分けられます。
漿膜下筋膜は、体腔にあり、漿膜(胸膜、心膜、腹膜)の線維層をつくり、臓器を覆い支えています。
浅筋膜は皮下組織の中に含まれ、皮下組織の中には脂肪細胞、皮膚の血管・神経、浅在性リンパ系などが含まれます。
浅筋膜より深部にあって筋に接している筋膜を総じて深筋膜といいます。

筋に接している深筋膜を知るために骨格筋の構造を下記にまとめています。

骨格筋の階層構造

筋の中で能動的に張力を発揮したり、短縮したりするのは筋線維(筋細胞)であり、筋の端から端までわたる細長い細胞です。
個々の筋線維は、筋内膜と呼ばれる、結合組織性の膜でできた「鞘」のような構造に覆われています。さらに、複数の筋線維が集まって束をつくり、その周囲を筋周膜という結合組織性の膜が覆っています。この筋線維の束を筋線維束(筋束)と呼びます。

筋線維束と筋線維束との間の空間には、線維性の結合組織や血管があります。
多数の筋束が集まり、筋外膜(または筋上膜)という結合組織性の膜に覆われ、筋となります。
筋の両端では、筋内膜、筋周膜、筋外膜と連続した結合組織が腱をつくり、腱の結合組織は、結合組織性の膜である骨膜とつながっています。

この筋を覆っている筋外膜、筋周膜、筋内膜という結合組織性の幾重にも重なった膜を筋膜といい、これが深筋膜のことです。

筋膜は、三次元的にカラダを覆い形作っているため、「第二の骨格」とも呼ばれています。

筋膜の構成

筋膜は、タンパク質であるコラーゲンを主成分とした膠原線維と、エラスチンを主成分とする弾性線維で構成されています。

膠原線維は、弾性は乏しく硬さがありますが、張力に対して強い抵抗性を示す特性があります。
弾性線維は、ゴムの性質に似ており、柔軟で伸縮性と形態記憶に富んでいます。

筋膜は、この膠原線維と弾性線維が網目状に縦、横、斜めの三方向に交差して存在しており、流動性のある細胞外基質に覆われているなかで配列を変化させることにより、筋肉の動きに合わせて筋膜を伸縮させています。

筋膜の異常による弊害

腰痛が酷い場合には、腰の筋膜に異常があるということなのでしょうか?

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

それは違います。痛みのある場所以外の筋膜が悪さをしているということも考えられるのです。筋膜に異常が起こる原因を説明します。

筋膜の異常とは

筋膜は膠原線維(コラーゲン)と弾性線維(エラスチン)が網目状に配列して、全身に張り巡らされています。その筋膜は、流動性のある細胞外基質の中で配列を変化させて筋肉に合わせ伸縮しています。

しかし、姿勢不良などにより一部の筋肉が縮んだままになると、細胞外基質の流動性が落ちてドロドロと固まってきます。そうすると、膠原線維と弾性線維の配列が乱れ捻じれた状態になります。そうすると基質の脱水が起こり、さらに流動性が低下してゼラチン状にまで固まってきます。

この状態が筋膜に捻れや突っ張りができている状態であり、隣接する筋肉の動きが制限され血流が悪くなりコリや痛みが出現し、血液や神経リンパ管なども機能低下を起こしてくるのです。
筋膜が捻れて痛みの原因となっている部位のことをといいます。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

筋膜が捻じれたり、引っ張ったりしている場所の隣接する筋肉やその他の組織に機能低下が起きてくるため、腰痛の場合には腰から離れた背中などの筋膜に異常が起こっていることもあるのです。

では、筋膜が捻れる原因はどんなことがあるのでしょうか。

筋膜が捻れる原因

1.姿勢不良
一部の筋肉にのみ負担がきて筋膜の捻じれが起きやすい状態です。
特に悪い姿勢を長時間続けることにより、細胞外基質の流動性が著しく低下すると筋膜の捻じれから血行不良が生じ痛みに繋がりやすくなります。

2.習慣的パターン
いつも同じ方の脚を組む、カバンを同じ方に持つ、片肘をつく癖があるなどによっても起こります。

3.他にも、運動不足や慢性的なストレス、偏った筋活動、循環不全、筋緊張異常、炎症、器質的疾患や外傷による傷なども筋膜の捻れの原因となります。

筋膜が捻れてしまったら、どのように対処すればいいのですか?

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

ここで、「筋膜リリース」という方法がでてきます。次項では、「筋膜リリースについて」の説明と実際の方法を紹介していきます。

筋膜リリースについて|正しいやり方で腰痛を治そう

筋膜リリースとは

筋膜は膠原線維と弾性線維からなりますが、膠原線維は弾性が乏しく硬さがあり、一度捻じれてしまうとその捻じれた形状を留めようとしてなかなか元に戻らない性質があります。そのため、元の形状に戻すためには時間をかけて伸ばす必要があります。
一方、弾性線維はゴムのように伸縮自在で、引っ張ると簡単に伸びるのです。

リリースとは、束縛を解いて放つことや離すことです。筋膜リリースとは、「捻れてしまった線維を解いて放つこと」ということになります。

まずは弾性線維を引っ張り伸ばすこと。そして、膠原線維が元の形状に戻るまでゆっくり時間をかけて伸ばすことで、脱水状態だった細胞外基質が水分を取り戻していきます。

筋膜リリースのポイント

ゆっくり時間をかけて、といってもどれくらいの時間なのかというと、90秒から5分とかなり長いです。しかし、筋膜が捻れを起こし脱水状態になっている期間を考えると納得できるのではないでしょうか。
筋膜は皮膚のすぐ下の線維組織であるため、マッサージというよりも、圧をかけて伸ばしていくという方法です。

指などの一点ではなく、手のひらやローラーを使って面で圧をかけ伸ばしていくと効果的です。

また筋膜はカラダを覆っているボディスーツのようなものなので、カラダ全体をストレッチしていくという方法も効果的です。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

では、実際に腰痛に効果のある筋膜リリースの方法を紹介していきます。

筋膜リリースのやり方(腰痛編)

痛みのある部位が筋膜の捻じれている部位ではないということは何度も説明してきました。
筋膜の捻じれている部位「トリガーポイント」を押さえる必要があります。
筋膜はカラダを覆っており、三次元的に繋がっているので、腰痛がある場合には背中全体を伸ばすことをイメージして行います。

ローラーを使用することで動的・静的なストレッチ、そしてセルフマッサージの効果が得られます。

1.ポールに肩幅で両手をつき、両膝をついて四つ這いの姿勢をとる。手のひらでポールを押し転がし、両腕の間に頭を入れ背中全体を伸ばしていく。

2.四つ這いの姿勢で片手のみポールに乗せ、乗せた手の反対方向にポールを押し転がす。肩を内側に入れ、上体をひねって伸ばした腕側の背中を伸ばしていく。反対も同様に実施する。
3.肩甲骨のあたりにポールを当て仰向けになる。両膝を曲げてバランスをとり、ポールを下背部・上背部へと転がしていく。背中全体のマッサージをするように行う。
4.ポールをまっすぐ背中にあて仰向けになる。両膝を曲げ、両腕も床につけてカラダを安定させる。カラダを左右に揺らし、脊柱の両側が軽くマッサージされるように行う。

北村 真美監修トレーナーからのアドバイス

元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。

呼吸を止めずに、20~30秒かけて行い、3~5セット行ってみてください。また、筋膜の捻じれる原因を取り除くように生活の中で意識することが腰痛予防につながります。試してみてください。

【あわせて読みたい】