【プロトレーナー解説】中殿筋について、作用・構造をお尻の筋肉とともに解説。また歩行時の機能や腰痛との関係を説明、中殿筋の鍛え方やストレッチ方法もご紹介しています。
お尻の筋肉(大殿筋・中殿筋・小殿筋)について
殿筋といえば、お尻の筋肉ですよね。大殿筋が有名ですが、中殿筋という筋肉もあるのですか。
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
そうです。まず殿筋はお尻の筋肉で、表層から大殿筋、中殿筋、小殿筋という筋肉があります。まずは、殿筋群の構造について説明していきます。
大殿筋
起始部:腸骨稜の後方1/4、仙骨・尾骨の外側縁、胸腰筋膜
停止部:大腿骨後上面の殿筋粗面、大腿筋膜張筋の腸脛靭帯
支配神経:下殿神経(L5-S2)
主な働き:股関節伸展、外旋、股屈曲位での股外転、股伸展位での股内転
中殿筋
起始部:腸骨翼の殿筋面、腸骨稜の外唇、殿筋筋膜
停止部:大腿骨大転子の後外側
支配神経:上殿神経(L4-S1)
主な働き:股関節外転 (前部繊維)股関節屈曲、内旋を補助 (後部繊維)股関節伸展、外旋を補助
小殿筋
起始部:腸骨翼の殿筋面(中殿筋の起始のすぐ下)
停止部:大腿骨大転子の前面
支配神経:上殿神経(L4-S1)
主な働き:股関節外転、股関節のわずかな内旋
小殿筋の一部は中殿筋に覆われており、中殿筋の一部と小殿筋は大殿筋に覆われていることがわかります。
大殿筋、中殿筋、小殿筋ともに、骨盤である腸骨から始まり、下肢である大腿骨に付着している扇状の筋肉であることがわかります。
大殿筋の働きと、中殿筋、小殿筋の働きが違うこともわかると思います。
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
次項からは殿筋群の中でも、特に中殿筋について、詳しくみていきましょう。
中殿筋の構造と作用について
大殿筋、中殿筋、小殿筋は、それぞれ別々の働きをしているのですか?
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
中殿筋と小殿筋は同じ機能をすることもありますが、大殿筋は別の働きをしています。
前項でも述べた通り、殿筋はお尻の筋肉であり、骨盤と下肢を繋ぐ大事な筋肉であり、そのなかでも中殿筋は、お尻の側面に付着している筋肉で、片足立ちや歩行時に骨盤を安定させる機能があり、とても重要な役割を果たしています。中殿筋について、より詳しくみていきましょう。
停止部:大腿骨大転子の後外側
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
骨盤である腸骨から下肢の大腿骨に付着しており、身体の側面にあることがわかります。
中殿筋の主な働き
中殿筋前部繊維の補助的な働き
股関節内旋:大腿骨を内側に捻る動作。
中殿筋後部繊維の補助的な働き
股関節外旋:大腿骨を外側に捻る動作。
中殿筋の働きの中で主な働きである股関節の外転が、片足立ちや歩行時の骨盤を安定させる機能に重要な役割となっています。
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
次項では、歩行時の筋活動を通して、中殿筋の役割についてみていきましょう。
歩行時の中殿筋の筋活動・作用について
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
歩行周期について説明を行い、中殿筋の筋活動についてみていきます。
前項で述べた通り、中殿筋は、身体の側面に付着している筋肉で、主に股関節の外転を行う筋肉ということを頭に入れておいてください。
歩行時には、床に脚を着いている状態の「立脚相」と、床から脚が離れている状態の「遊脚相」に分けられます。
自然歩行の歩行周期では、60%が立脚相、40%が遊脚相にあたります。
立脚相の期分け
初期接地:イニシャルコンタクト(IC: Initial Contact)
荷重反応期:ローディングディスポンス(LR: Loading Response)
立脚中期:ミッドスタンス(MSt: Mid stance)
立脚終期:ターミナルスタンス(TSt: Terminal stance)
遊脚前期:プレスウィング(PSw: Pre-swing)
遊脚相の期分け
遊脚初期:イニシャルスウィング(ISw: Initial Swing)
遊脚中期:ミッドスウイング(MSw: Mid Swing)
遊脚終期:ターミナルスウィング(TSw: Terminal Swing)
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
以前は、立脚相を踵接地、足底接地、踵離地、反対側の踵接地、足趾離地と分け、遊脚相を加速期、遊脚中期、減速期というような分け方をしていましたが、異常歩行の際に踵から接地しない場合もあるとのことで、ランチョ・ロス・アミーゴ方式という期分けの方法に変更になりました。
遊脚相では62~75%の間が遊脚初期、75~87%までが遊脚中期、87~100%までが遊脚終期となります。
また1歩行周期には、体重を両側で支持する両脚支持期と片足で支持する片脚支持期があります。
歩行時の重心移動
立脚相の荷重反応期から、支持脚足部上に重心を位置させるために、外側への重心移動が生じ、股関節が内転するとともに骨盤が反対側へ傾斜します。
立脚中期を過ぎて両脚支持期に移行するまでに、対側への重心移動が始まることで股関節は外転していきます。
歩行時の中殿筋の筋活動
歩行周期において、立脚相の初期接地から上記で述べた重心移動が始まります。それに伴って中殿筋の筋活動も始まります。
中殿筋は立脚側で筋収縮し、骨盤を安定させるように働きます。そのおかげで、遊脚側の骨盤が正中位で保持されています。中殿筋は荷重反応期で筋活動が高まり、その後立脚相の最後まで活動しています。
中殿筋の筋力低下
中殿筋の筋力低下による異常歩行は、トレンデレンブルグ歩行という立脚相で股関節が内転して反対側の骨盤が下がるものと、動揺歩行という骨盤の傾斜異常ではなく、代償的に体幹を支持脚側に振って重心位置を股関節上に近づけて歩くものがあります。
中殿筋の筋力低下で、歩行にも影響が出るのですね。
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
中殿筋は、小さな筋肉ですが重要な働きをしていることがわかります。そこで、次項からは、中殿筋のトレーニング方法について説明していきます。
中殿筋の鍛え方・トレーニングとその効果について
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
さてここから、中殿筋の鍛え方とその効果について説明していきます。
骨盤と下肢を繋ぐ筋肉であるため、下肢の動きを最大限に生かすためには重要な筋肉であるということです。ランニング、ホッピング、スキップなどで体重が左右交互に移動する運動の際に効果的に働きます。
年齢を重ねるとともに、大きな動作がなくなってくるため、意識して鍛えていかなければ筋力や機能の低下が進むというわけです。
中殿筋の鍛え方
①ヒップ・アブダクション
上側の脚を伸ばした状態で真上に持ち上げます。角度は床と45度になる程度まで。10回ずつ左右行いましょう。
②サイド・リフト
③ワイドスタンス・スクワット
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④サイド・ランジ
⑤チューブ・ヒップ・アブダクション
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
中殿筋の鍛え方について、今日からでも行える簡単なものを中心にご紹介しています。ぜひ行ってみてください。中殿筋は小さい筋肉ですので、回数は少なく設定しています。徐々に増やしていってみてください。
中殿筋と腰痛の関係、その対策について
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
腰痛の原因は様々ですが、中殿筋との関係について説明していきます。
中殿筋のように小さい筋肉で、重要な働きをしている筋肉は、知らず知らずのうちに使い過ぎによる筋疲労が起こることがあります。
中殿筋と腰痛の関係|お尻のこりが原因?
対策としては、中殿筋を含むお尻や股関節周りの筋肉のストレッチが効果的です。お尻や股関節周囲の柔軟性がアップすると血行もよくなりコリの改善に繋がります。
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中殿筋を含むお尻・股関節周囲のストレッチ
仰向けになり、片方の膝を曲げ、もう片方の脚の上から交差させます。曲げた脚の膝を反対の手でつかんで床の方向へ引き下げます。
仰向けになり、両手両脚を伸ばし、片方の脚をもう片方の脚の上から交差させます。
仰向けになり、両膝を曲げてそろえ、左右交互に倒していきます。このとき両手を伸ばして、上半身はまっすぐ上を向いたままにすると効果的です。
仰向けで両膝を曲げ、片方の足をもう片方の大腿部に乗せます。両手を伸ばし、床についている方の脚の膝をつかんで胸の方にひきつけます。
長坐位で片方の膝を曲げ、もう片方の脚の上から交差させます。曲げた脚の膝の上に反対側の腕または肘を乗せ、身体をねじっていきます。
坐って両足の裏を合わせ、背中をまっすぐにしたまま、上体をゆっくり前に倒していきます。このとき息を吐きながら行うと行いやすいです。
北村 真美監修トレーナーからのアドバイス
元理学療法士。心と体の健康を夫婦でサポートしています。
ストレッチの際には、呼吸を楽にしながら、筋肉が伸びているのを感じて5~10秒間キープすると効果的です。臥位でできるものは、就寝前や朝起きる前に布団で行うことを習慣づけるといいと思います。ぜひ行ってみてください。
【プロトレーナー解説】美尻を作るには筋トレは欠かせません。自宅でできる簡単エクササイズを中心に美尻を作る方法を解説します。ポイントはお尻の筋肉の一部である大殿筋と中殿筋をバランスよく鍛える事です。