スクワットの呼吸法は?吸う・吐くタイミングと高重量時の注意点

監修者

小川 雄翔

日本トレーニング指導者協会の資格(JATI-ATI)保持者。パーソナルトレーナーとして科学的根拠に基づいた指導が得意。

自重や軽い負荷のスクワットでは、基本的にしゃがむときに息を吸い、立ち上がるときに息を吐きます。動作中ずっと息を止めず、1回ごとに呼吸を整えるのが初心者には安全で覚えやすい方法です。ただし、高重量のバーベルスクワットでは体幹を固定するために短時間息を保つ方法が使われることがあり、自重スクワットと同じ呼吸法とは限りません。

スクワットの呼吸は「下で吸い、上で吐く」が基本

自重スクワットや軽〜中程度の負荷なら、次の順番で行いましょう。

  1. 立った姿勢で呼吸を整える:足裏を床につけ、背中を反りすぎず、お腹の周りを軽く固めます。
  2. しゃがみながら吸う:鼻だけに限定せず、自分が無理なく空気を取り込める方法で構いません。
  3. 切り返して立ち上がりながら吐く:口をすぼめ、細く長く吐くと力みすぎを防ぎやすくなります。
  4. 立った位置で次の呼吸を整える:息が乱れたら、急いで次の反復へ入らず一度止まりましょう。

「力を出す局面で吐く」という一般的な筋力トレーニングの覚え方を、スクワットに当てはめたものです。呼吸だけで筋トレ効果が倍増するわけではありませんが、動作のリズムを保ち、必要以上に息を止めないために役立ちます。

呼吸とフォームを合わせるやり方

1.立った姿勢で準備する

足幅は肩幅前後を目安にし、つま先と膝の向きをおおむねそろえます。息を吸って胸だけを持ち上げるのではなく、脇腹や背中まで含めて胴体の周囲が広がるように呼吸し、お腹を軽く固めます。

2.息を吸いながらしゃがむ

椅子へ腰かけるように股関節と膝を曲げます。吸うことに気を取られて急に深くしゃがまず、かかとを浮かせずに保てる範囲まで下がりましょう。

3.息を吐きながら立つ

足裏全体で床を押し、膝と股関節を伸ばしながら息を吐きます。勢いよく全部吐き切る必要はありません。最もきつい部分を越えるまで、細く吐き続けるイメージで十分です。

呼吸が逆になっても大丈夫?

軽いスクワットで一時的に逆になっても、直ちに危険というわけではありません。呼吸の向きより、長時間息を止める、息苦しいまま反復を続ける、フォームを崩すことのほうが問題です。いったん立って休み、次の反復から「下で吸う・上で吐く」へ戻しましょう。

テンポの速いスクワットでは、動作と呼吸を毎回きれいに一致させにくくなります。初心者は回数よりも、呼吸できる速度へ落とすことを優先してください。

高重量のバーベルスクワットは呼吸法が異なる

トレーナーの補助を受けてバーベルスクワットを行う男性
高重量では、ラックの安全装置と補助者を用意し、経験のある指導者のもとで呼吸と体幹固定を練習します。

重いバーベルを担ぐ場合、立位で息を吸い、腹部を360度から押し返すように固め、最も力が必要な局面まで短時間呼吸を保つ方法が使われます。これはブレーシングやバルサルバ法と関連する技術で、腹腔内圧を高め、体幹の剛性を保つ目的があります。

一方で、息こらえを伴う高重量運動では血圧が大きく変化します。研究レビューでは、バルサルバ法が腹腔内圧を高めて体幹固定を助ける可能性と、循環動態への影響の両方が報告されています。そのため、初心者が動画だけを見て自己流で試すものではありません。

  • まず自重・軽い負荷でフォームと通常呼吸を覚える
  • 高重量ではセーフティバーを適切な高さに設定する
  • 経験のあるトレーナーや指導者にブレーシングを確認してもらう
  • 1回の反復を超えて息を止め続けない
  • 高血圧、心血管疾患、眼科疾患などで治療中の人は、開始前に医師へ相談する

「息を吐き切ってから立つ」は高重量では避ける

旧記事では、重いバーベルスクワットで「しゃがみながら息を吐き切り、空気がない状態で立つ」という方法を紹介していましたが、これは推奨できません。重い負荷の下で体幹の支えを失う可能性があるためです。高重量では、息を吐き切るのではなく、負荷に耐えられるよう胴体を固めることが重要です。

息を止めると低血糖になる?

スクワット中に息を止めたことが原因で低血糖になる、という説明には根拠がありません。めまいやふらつきは、呼吸の乱れ、血圧の変動、過度な負荷、脱水、食事状況など複数の要因で起こり得ます。原因を自己判断で「酸素不足」や「低血糖」と決めつけないでください。

めまい、胸痛、強い息切れ、動悸、視界の異常などが出たら、すぐに運動を中止して安全な場所で休みます。症状が強い、繰り返す、意識を失った場合は医療機関へ相談してください。

初心者が呼吸を覚える3つの練習

椅子スクワット

後ろに安定した椅子を置き、座面へ軽く触れて立ちます。「下がりながら吸う、立ちながら吐く」を5〜10回、ゆっくり練習しましょう。椅子が動かないよう壁際へ置いてください。

3秒で下がるスクワット

3秒かけて吸いながら下がり、1〜2秒で吐きながら立ちます。動作を遅くすると、呼吸の切り替えを意識しやすくなります。痛みのない深さに留めましょう。

声に出して数える

立ち上がるときに「1、2、3」と小さく数えると、息を吐けているか確認できます。呼吸を止める癖がある人に取り入れやすい方法です。

スクワットの呼吸に関するよくある質問

鼻から吸い、口から吐くべきですか?

必須ではありません。軽い運動では鼻から吸って口から吐くとリズムを作りやすい人もいますが、運動強度が上がれば口からも吸うのが自然です。呼吸経路より、無理なく呼吸を続けられることを優先しましょう。

スクワット中に息がきついときは?

反復を止め、立位または安全な姿勢で呼吸を整えてください。回数、速度、深さ、負荷のいずれかを下げます。会話ができないほど息が乱れる場合は、休憩を長く取りましょう。

何回ごとに呼吸すればよいですか?

自重・軽負荷なら、基本は1回につき1呼吸です。高重量では1回ごとにトップで呼吸と体幹を作り直します。何回分も息を止めたまま続けないでください。

ブルガリアンスクワットも同じですか?

自重や軽いダンベルなら、下がるときに吸い、立つときに吐く基本は同じです。バランスが崩れやすいため、呼吸を合わせる前に安定した支えを使い、軽い負荷でフォームを練習しましょう。

まとめ

初心者の自重・軽負荷スクワットは「しゃがむときに吸い、立つときに吐く」が基本です。呼吸だけで効果が倍増するわけではありませんが、動作のリズムを作り、不要な息止めを避ける助けになります。高重量のバーベルスクワットでは短い息こらえとブレーシングが使われる場合があるため、自重と同じルールで考えず、指導者のもとで安全装置を使って練習してください。

参考文献