腰方形筋とは?作用から腰痛予防になるストレッチまで紹介

腰痛の原因になる「腰方形筋(ようほうけいきん)」の作用やストレッチ方法、鍛え方について解説します。腰方形筋は腰のインナーマッスルであり、骨盤のバランスを整えてくれます。論文の実験結果から腰方形筋が人体に及ぼす重要性について学んでいきましょう。

腰方形筋の場所と作用

腰方形筋(ようほうけいきん)は腰にあるインナーマッスルです。

体幹というのは、通常胴体全般を指しますが、その体幹の深層部にある筋肉というのは、狭い意味での「体幹」として非常に重要視されます。この筋肉は腸骨の上部分から腰椎と肋骨の下部分に繋がっていて、左右でそれぞれ別に存在しているのが特徴です。

起始:腸骨稜、腸腰靭帯
停止:第12肋骨、L1〜L4の肋骨突起

図をみると分かるように、骨盤にくっついており、腰方形筋を上に収縮させることによって骨盤を持ち上げ、股関節を上げることに寄与するため、「股関節挙筋」とも呼ばれることがあります。

作用について

腰方形筋の作用は、日常生活であれば床座位から側屈(身体を側方に曲げる)する動きや、体幹の側屈時に働きます。身体を横に曲げたりする運動ですね。身体を反らす動きにも作用します。

腰方形筋は、主に体を横に曲げたり、上半身を後ろに反らしたりする動作で大きく働きます。
日常生活では、空を見上げたりカバンを体の横に置いたりする動作などが一般的です。この筋肉が衰えてしまうと骨盤が歪んだり位置がずれたりしてしまいます。

なぜこの筋肉が重要かと言うと、骨盤にくっついていることもあり、姿勢に大きく影響する筋肉だからです。腰方形筋の左右のバランスがずれる(片方の腰方形筋が硬いなど)、といったことが起こると腰痛の原因になるのです。
実際、腰痛を訴える人の多くが腰方形筋に何らかの異常があることが多く、腰痛患者と健常者を対象にした腰方形筋の作用の違いを実験した論文があります。

その実験において、健常者が前屈をした際には腰方形筋の筋圧は減少しましたが、腰痛患者には筋圧の変化は見られませんでした。
これが意味することは、腰の痛みを持つ人は前屈など腰周りを動かすことで腰方形筋が伸び縮みしにくいということです。

腰方形筋をストレッチし、緩めることは腰痛の予防・改善に効果的なことなのです。

【参考文献】
松岡健、他(2009)『超音波診断装置を用いた腰方形筋機能の検討(第2報)』- 日本理学療法士協会

スポーツの「スイング」に欠かせない腰方形筋

腰方形筋は、スポーツでも非常に重要な役割を果たします。

その代表例が、ゴルフやテニス、そして野球などで欠かせない「スイング」の動作です。また、柔道や相撲などで見られる投げ技のように体をひねる動作にも、この筋肉は大切な役割を果たしています。

左右が独立している筋肉のため、腰方形筋は左右差が生まれて、いずれかの筋肉が発達してしまっている選手も少なくありません。そうすると体のバランスが崩れるだけでなく、腰痛の遠因にもなってしまいます。

日頃からストレッチやトレーニングを行うことで、この左右差を均等にしましょう。

腰方形筋のストレッチ方法

腰方形筋のストレッチはいくつかありますが、その中でも道具なしで立って行えるものを紹介します。

①まず、直立して足は肩幅より広げ、まっすぐと立つ。
②両腕を真上に伸ばし、肩幅程度に開く
③そのまま、上半身をゆっくり真横へと倒していく
④横に倒した姿勢を15〜20秒維持したら、今度は反対側へと体を倒す

この時、上半身が前後にずれないよう注意してください。あくまで、両腕をしっかり伸ばしておくと、その重みと反動で腰方形筋を効率的に伸ばすことができます。

普段デスクワークが多い人はこのストレッチは毎日行ってください。腰痛予防にとても効果的ですよ。

【あわせて読みたい】

腰方形筋の鍛え方

① サイドクランチ

ここからは、腰方形筋の鍛え方としてオススメな筋トレメニューを解説します。ポイントとなるのは、先ほど紹介したストレッチと同じく、上半身を真横へと動かす類のトレーニングです。

まず1つ目に紹介するのは「サイドクランチ」です。このトレーニングは体を真横にして寝かせ、上半身をゆっくりと上へ持ち上げます。

ポイントとなるのは、上半身を持ち上げる時に脇腹の収縮を意識するという点です。また、体が前後にずれないよう下になっている手で体を支えるようにしてあげるといいでしょう。

② サイドベント

もう1つ紹介するトレーニングは「サイドベント」です。サイドクランチよりも可動域が広くダンベルで負荷を上げることができるので、高強度で鍛えたいという方はこちらのトレーニングメニューがオススメです。

トレーニング中の注意点は、「体を横に倒した時、上半身が前かがみにならない」です。ダンベルの負荷に負けて、あるいはなるべく体を大きく動かそうと上半身を前傾させながら体を倒してしまう人がいるのですが、これでは体側や腰方形筋への刺激が逃げてしまいます。

サイドベントの実施時は、真横へ体を動かす意識でトレーニングをするようにしましょう。

腰方形筋を鍛えて体幹力をアップさせる

腰方形筋に限らず、体幹のインナーマッスルはいずれも体の安定性向上やケガ、肩こり・腰痛の防止など、非常に多くの役割を担っています。そんな重要な部位である体幹の筋肉の1つが、今回ご紹介した腰方形筋というわけなのです。

今回紹介した腰方形筋のストレッチや鍛え方を日常生活に取り入れつつ、日々の腰のケアや体幹力アップを目指して日々トレーニングしていきましょう。

【あわせて読みたい】