ハイクリーン(パワークリーン)の効果とやり方!フォームに注意!

監修者

野上 鉄夫

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

爆発的エクササイズと呼ばれる「ハイクリーン(パワークリーン)」のやり方や効果、注意点、バリエーションについて解説します。パワーを鍛える筋トレ種目ですが、具体的にはどんなパワーなのでしょうか?

ハイクリーン(パワークリーン)で鍛えられる筋肉と効果

ハイクリーン(パワークリーン)のフォーム

鍛えられる「筋肉」について

ハイクリーン(パワークリーン)で鍛えられる筋肉はかなり多岐にわたります、ほぼ「全身」と言っても過言ではないのですが、その中でも特に鍛えられるのは

「大臀筋」「大腿四頭筋」「ハムストリングス」「腓腹筋」「脊柱起立筋」「僧帽筋」「広背筋」

といった、下半身の筋肉全般から、身体の背部の筋肉全般になります。

ハイクリーン(パワークリーン)で鍛えられる筋肉
また、高重量を瞬間的に挙上し支えなければならないので、体幹から脊柱周辺のアウターマッスル、インナーマッスルの両方に強い刺激がかかります。

鍛えられる「能力」について

次にその鍛えられる「能力」についてですが、まず代表的な能力は「パワー」と呼ばれる能力です。

一般的に「パワー」と言われると、「力」の事を想像する方が多いですが、「力」と「パワー」は、実は微妙に違います。

◯「力」もしくは「筋力」
スピードを伴なわず、ゆっくりでもいいのでとにかく高重量を上げられる能力のこと

◯「パワー」
「スピードを伴った力」のこと

実際のスポーツシーンでは、この「スピードを伴った力」は、非常に大切な能力になります。
ハイクリーン(パワークリーン)は、この「パワー」を鍛えるのに最適な種目であると言えます。

また、一般的には瞬発力を鍛えるエクササイズという方が馴染みやすいかもしれません。
現にオリンビック選手の競技別ジャンプ力を測定した際には、ウェイトリフティング選手のジャンプ力の平均値は、パレーボールやバスケットボールの選手を凌駕するほどの瞬発力及びジャンプ力を有しています。

また、重たいバーベルを扱っている印象に反して、筋肥大などを目的とするトレーニングではありませんので、その点は誤解のないように注意しなければなりません。

ハイクリーン(パワークリーン)のやり方

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

次にハイクリーン(パワークリーン)のやり方についてご紹介します。

ハイクリーンのスタートポジション
<ポジショニング(開始姿勢)>
・バーベルは拇指級の上、脛にやや触れるくらいの位置に立つ
・足幅は肩幅程度とする。(ジャンプ動作をしやすい幅がベスト)
・つま先はやや外側を向く
・床に置いたバーベルを順手で持つ
・グリップ幅は肩幅よりや広く握る(手を返したときに親指が肩の外側に触れる程度の幅とする)
・両膝は腕の間に位置する
・足裏は床にしっかりとつける(踵を浮かさない)
・背筋はまっすぐに伸ばす
・肩はバーの上方かやや前に位置する
・頭はニュートラルに保ち視線は前方を見る(下を見ない)
ハイクリーン(パワークリーン)のファーストプル
<ファーストプル>
・背部を伸ばしたまま床と上体の角度を変えないようにしながら膝を伸ばしていく。(すなわち肩と腰を同じスピードで動かす)
・腕はあまり力を入れすぎずややリラックスしておく
・足裏全体はこの時点ではまだ全体をつけておく
ハイクリーン(パワークリーン)のセカンドプル
<セカンドプル>
・バーベルが膝を通過したら、大腿部に沿ってバーベルを引き上げるように上体を起こす(股関節を伸展させる)
・背部を伸ばし、腕をリラックスさせたまま、上体の伸展動作に合わせて股関節、膝間接、足関節は素早く爆発的に伸展させる
・上体が垂直になるのと同時に股関節、膝間接、足関節は完全に伸展させ、肩甲骨を挙上(ショルダーシュラッグ)させる
・股関節・膝間接・足関節の伸展によって加速されたバーベルを身体に沿って引き上げる
・バーベルを引き上げる際は、肘は手首よりも高い位置で引き上げる
・この際、勢いとともに床からつま先が離れてもOK! ただし、高くジャンプすることよりも、「つま先を伸ばすこと」に意識を向ける
ハイクリーン(パワークリーン)のフィニッシュポジション
<キャッチ>
・セカンドプルで勢いよく引き上げられたバーベルが胸を通過したら、両肘を素早く前方に回転させるのと同時に股関節、膝間接を素早く曲げ、クォータースクスクワットの体制でバーベルの下に沈み込み、バーベルをキャッチする
・両肘は前方に向けて三角筋前部と鎖骨部でパーベルをキャッチする
・背中は曲げず、顔は正面を向け、重心が前後に移動しないように注意する 特に後方への重心移動は転倒の危険があるため十分に注意する
ハイクリーン(パワークリーン)の下降動作
<下降動作>
・キャッチしたら、股関節・膝間接を伸ばし、言ったん立ち上がる
・バーベルをコントロールしながら大腿部に降ろして衝撃を緩和しながら、デッドリフト の下降動作の要領でバーベルを床に置く
※筋肉の肥大を目的としたエクササイズではなく、あくまで瞬発力やパワーを向上させるために行うトレーニングなので、トレーニングの実施回数は1回から数回程度にとどめてトレーニングを行う

ハイクリーン(パワークリーン)のバリエーション

ハングクリーン

・ハイクリーン(パワークリーン)のスタートの位置を、ハイクリーン(パワークリーン)より少し高い状態から行う
・バーベルは膝頭よりやや高い位置からスタートする
・クリーン系エクササイズを初心者のトレーニーが行う際は、いきなりハイクリーン(パワークリーン)から始めるのでではなく、一般的にはこのハングクリーンから実施して、クリーン系エクササイズに慣れてからパワークリーンに移行していくことが多い

スクワットクリーン

・ハイクリーン(パワークリーン)のキャッチの動作から下降の局面で、より深くしゃがんで(フルスクワットのボトム付近までしゃがむ)キャッチを行う

ハイプル

・ハイクリーン(パワークリーン)の挙上動作をセカンドプルまでで終了する
・バーベルは胸の前くらいまで挙上したら降ろし、腕はキャッチ動作はしない

プルツーニー

・ハイクリーン(パワークリーン)の挙上をファーストプルの動作で終了する
・バーベルは、膝頭の高さまで挙上し終了する
・ファーストプルの動作に特化したエクササイズで、より高重量や、ファーストプルのテクニクック習得のために行う

ハングハイプル

・ハイクリーン(パワークリーン)の動作でセカンドプルから、さらに少し肘を上げてアップライトローの形でそのままジャンプする
・セカンドプルからキャッチ動作の代わりにジャンプすることによって、セカンドプルでの勢いをつけるテクニックを習得するエクササイズである
・スタート位置は、ハイプルよりは少し高い位置から行う

ダンベルパワークリーン

・ハイクリーン(パワークリーン)の動作を、バーベルではなくダンベルで行う
・基本的な動作はハイクリーン(パワークリーン)と同じだが、ダンベルの位置は身体の側面で持ち、そこから体側に沿って挙上していく

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

パワーが必要なアスリートはぜひこれらのバリエーションも組み合わせてトレーニングを行ってみてください。