タバコを吸うと筋肉が増えにくい?筋トレとタバコの関係

タバコはガンの原因となるとされ、健康に悪いというイメージがあります。それでは、タバコは筋トレにも悪い影響を与えるのでしょうか。筋トレの効果を最大限得るためにタバコとどう付き合うべきか考えていきましょう。

タバコは酸素の供給を妨害してしまう!

タバコにはニコチンやタールなど、身体に影響を及ぼす物質が含まれており、このニコチンなどの有害物質の危険性についてはよく耳にします。しかし、煙自体にも大きな害があるのです。

肺の中には、酸素と結合して全身に酸素を送り届ける働きをするヘモグロビンという物質があります。一方、タバコの煙の中には一酸化炭素が多く含まれています。一酸化炭素は不安定な物質で、ヘモグロビンとの結合力が酸素の200倍と、非常に強くなっています。

つまり、タバコの煙が肺に入ってヘモグロビンと強く結合することにより、酸素が身体に送り届けられなくなってしまうのです。

これはどんなタイプの煙にも共通する性質で、タバコ以外の煙でも同じように一酸化炭素がヘモグロビンと結びつく現象は起こり得ます。しかし、タバコの煙は継続的に吸われることが多いので、健康に害を与えることが多いと考えられるでしょう。

無酸素運動としての筋トレとタバコ

マラソンや水泳、ヨガなどの長時間続けることができるスポーツは有酸素運動といわれます。身体を安静に保ち、精神を整える「エアロビクス」と呼ばれるトレーニングがありますが、この言葉も元々の意味は「有酸素」です。

一方で、ベンチプレスやスクワットなどのトレーニングを何十回も連続で行うことは難しいでしょう。一気に体に負荷を掛けるこれらのトレーニングは無酸素運動と呼ばれ、体内でエネルギーを作り出すため、体内に乳酸が溜まり、長く続けられなくなってしまうのです。

筋トレはこのように、基本的には酸素を必要としないのでタバコを吸って体内に酸素が供給しづらくなったところであまり影響がないように思えてきます。しかし、トレーニング中には酸素が重要ではない筋トレにおいても、タバコはマイナスに働いてしまうことがあります。

タバコの筋肉への悪影響① 筋肉の修復が遅れる

それでも、筋トレをする人はタバコを控えたほうがいいというのは確かでしょう。ただ単にタバコは身体に悪いというだけではなく、前述したように肺から酸素を奪う現象が、結果として継続的な筋トレを妨げてしまうのです。

定期的にトレーニングをすることを継続しなければ、筋トレによる筋肉増強効果は期待できません。継続的にトレーニングするためには、前回のトレーニングで受けた筋肉の損傷をはやく治すことが不可欠です。筋肉が炎症を起こしている状態では、トレーニングをすることができません。

しかし、タバコを吸うことによって全身に酸素が回らない、つまり損傷している筋肉にも必要な量の酸素が回らないことになります。筋肉痛からの回復にも、ケガからの回復にも酸素は重要です。それなのに、ヘモグロビンがタバコから生じた一酸化炭素と結合してしまうと、回復が遅くなります。回復が遅れると、次のトレーニングまでのスパンが長くなってしまいます。

タバコの筋肉への悪影響② 心拍数が上昇

タバコが筋トレに与える悪影響は他にもあります。

タバコを吸うと心拍数は急上昇します。習慣的に喫煙していると、タバコを吸ってから時間が経っても心拍数が高いままの状態が続いてしまいます。

心拍数が上がることで、全身に十分な量の血液を届けるために多くのエネルギーが必要になります。この状態でトレーニングすると血圧が上昇し、結果として血流量が減少します。そのため、同じトレーニングをしても非喫煙者と比べて得られる効果が少なくなってしまうのです。

トレーニング量を増やすことなく、非喫煙者と同じくらい筋肉を増強させたいのであれば、タバコの量は減らしたほうが良いと考えられます。心拍数が高い状態でトレーニングをすると、心臓に負担がかかり、最悪の場合は心臓発作を起こしてしまうこともあるので注意しましょう。

タバコの筋肉への悪影響③ テストステロンが減少

テストステロンは筋肉を増強させる男性ホルモンの一種です。分泌量は圧倒的に男性の方が多いですが、女性にも少量分泌されます。

喫煙することによって、テストステロンの濃度は下がってしまいます。タバコの煙が血中の酸素濃度を下げることはすでに説明しましたが、この酸素濃度低下によってテストステロンを生成する細胞がダメージを受けてしまうためです。

テストステロンの濃度が低下することで、筋トレの効果が筋肉の成長として現れなくなり、モチベーションが下がってしまうかもしれません。できればタバコは控えてトレーニングの恩恵を文字通り全身で受け取りましょう。

さらにテストステロン濃度の低下は、男性の更年期障害につながると考えられています。全体として集中力や持続力が低下する恐れがあるので、筋肉以外の点からもテストステロンはしっかりと維持したいところです。

タバコをやめたらムキムキになれるのか

タバコに害があるというなら、タバコをやめればすぐに筋肉の量は増えるのでしょうか。

結論から言うと、禁煙すればすぐにムキムキになるということはありません。タバコを吸っていれば筋肉がつかないということもありません。世界的に活躍するスポーツ選手の中にはヘビースモーカーもいますが、彼らはタバコを吸わない一般の人々よりもはるかに多くの筋肉を持っています。

筋トレに限らず、禁煙すればマラソンのタイムが短くなったり、水泳が上手くなったりする保証もありません。

しかし、一般的に言われているタバコの害を無視するとしても、禁煙することで筋トレがより身近になることが多い、とはいえるでしょう。筋肉痛が長く続くことは誰にとっても嫌なことですが、禁煙することで苦しい時間が縮まる可能性は高いのです。

筋トレに限定して言えば、タバコをやめることでイライラが募ってトレーニングに差し支えるのは望ましくありません。しかし、全体として筋肉を増強するに当たってタバコの煙がマイナスに働いてしまうことは確かです。

タバコとどう向き合っていけば良いだろうか

近年、タバコの害が広く認識されるようになり、禁煙が推進されています。しかし、その実態はまだ明らかなものではないし、さらに最近流行している電子タバコについては、発ガン性があるか否かなどさらに様々な見解があります。

ただ、タバコは次の点で筋トレの効果を減らしてしまいます。

●筋肉の回復に必要な酸素が、筋肉に行き渡らず筋トレを継続して行いづらくなる
●心拍数が上がって心臓に負担がかかり、筋トレの効果が下がってしまう
●筋肉を増やすテストステロンが、生成されにくくなる

タバコをやめるかどうかは最終的には個人の判断ですが、筋トレの効果をできるだけ早く手に入れたいと願う人は控えた方が良いでしょう。

【あわせて読みたい】