「HIITトレーニングのダイエット効果」は嘘!本当の効果とメニューについて

監修者

野上 鉄夫

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

最近巷で流行の「HIITトレーニング」をプロのトレーナーが徹底解説します。今HIITトレーニングは一般のフィットネスクラブでも行う人が多いですが、実際はどのような効果があるのか?最適な導入の仕方や他のトレーニングとの住み分けについて、さらにその手順などを徹底解説します!

HIITトレーニングとは何なのか?

HIITというトレーニング方法を聞いたのですが、どんなトレーニングなんですか?

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

それではまず、そもそもHIITトレーニングとは何なのか?について解説します。

HIITとは正式名称「hi intensity training」と言い、「HIIT」とはその頭文字をとったものです。
日本では「高強度インターバルトレーニング」と言われることもあります。
インターバルトレーニングとは、強度の強い有酸素運動と、強度の低い有酸素運動を交互に行うことによって、心肺能力の向上を狙うトレーニングです。HIITとは、その名の通り、このインターバルトレーニングを「より高強度」で行うトレーニングのことを言います。

代表的な高強度インターバルトレーニングの方法としては、「タバタプロトコル」と言われる、日本の、田畑 泉先生が提唱しているトレーニング方法が世界的にも有名です。タバタプロトコルは、20秒の全力で行うトレーニングと、10秒の休息を1セットとして、これを8セット連続して行っていくトレーニング方法です。

フィットネスクラブなどでは一般的にこれは「バイク」で行われることが多いです。バイクを20秒全力で漕いでは10秒休息をし、再び20秒全力で漕いでいくということを繰り返すトレーニングです。

フィットネスクラブに設置してあるバイクは、そのほとんどが心拍数を測ることが出来ます。その為、心拍数をモニターしながら安全にトレーニングを進めていけるメリットがあるので、好んで使われるケースが多いのです。しかしもちろん、これはHIITのやり方の一つにすぎません。

これから色々なバリエーションも含めてご紹介していきたいと思います。

HIITの効果とは?

なるほど。HIITは高強度なトレーニングを短時間で何サイクルも回すトレーニングなんですね!
ではどんな効果があるのでしょうか?

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

HIITの最も代表的な効果は「心肺持久力の向上」です!

まず、一般的な「運動を行った時に向上する能力」をちよっとまとめてみましょう。

・スピード(加速・トップスピード)
・瞬発力(ジャンプ力・RFD)
・敏捷性(アジリティ・クイックネス)
・筋力(パワー・筋力)
・筋持久力
・心肺持久力
・柔軟性

などが代表的な能力です。

他にも、ボディメイクをターゲットとした場合は

・脂肪燃焼
・筋肥大

と言った効果が見込めます。

この中でHIITを行うことによって最もその効果を得られるのは「心肺持久力」です。通常、心肺持久力とはある程度長い時間行う運動を行わなければなりません。

運動初心者においては「LSD」と呼ばれる、長い時間ゆっくりと走るトレーニングから初めて行きます。さらに運動に慣れていない方は「ウォーキング」から始めて行く方もとても多いです。これらは、一般的に「有酸素運動」と言われるものですが、心肺持久力を向上させたい場合は、この有酸素運動を「軽く息が弾むくらいの運動強度で長い時間実施することがこれまで一般的に勧められてきました。

しかし、HIITは前述した通り「全力で運動する」時間と、「休息」を、交互に行う運動であり、その運動強度は非常に高く、また、「全力で動いている時間」はほとんど無酸素運動に近い非常にハードなトレーニングになります。

HIITは、数々のエピデンスにより、「短時間のトレーニング」にも関わらず「心肺持久力の向上」が著しく見られたという報告が得られています。
現代社会の日本において、「短時間」で効果を得るということは、非常に意味を持つと思われます。

1時間・2時間と生活の中で時間を作ってトレーニングしてきたものが、その何分の1の時間でトレーニングで同様の心肺持久力の向上を得られるということは、練習時間が限られているアスリートのトレーニングにおいても非常に意義のあるトレーニングと思われます。

HIITの脂肪燃焼効果についての誤解

よくネットでは、HIITは通常の有酸素運動の〇〇倍の脂肪燃焼効果が見込めると書かれていることもあります。

しかしまず、ここではっきりと言っておかなくてはならないのは、「全く脂肪が減らない」とは言いませんが、少なくともLSDなどのような長時間行う有酸素運動に比べて脂肪燃焼の効果があるということは決してありません!実際、田端メソッドの発案者である田端先生自身も「脂肪燃焼の効果に対する確かなエピデンスは得られていない」と、ご自身の著書で述べられています。

えっ、そうなんですか!?

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

そうなんです。ではそれは何故か?
まず、脂肪を減らすためには、HIITは圧倒的に「時間が短すぎる」のです。

通常、運動における消費カロリーの計算は以下になります。

消費カロリー(kcal) = 体重(kg) × 運動強度(メッツ) × 時間(h) × 1.05

HIITは強度はとても高いものの、時間が短いため消費カロリーは非常に少ないものになります。

また、よくトレーニング後も代謝が高い状態が続くとも言われますが、それはHIITに限らず、ウェイトトレーニングでも普通の有酸素運動においてもトレーニング後においては代謝は高い状態は生じるので、HIITが特別に高いということもありません。
この点はHIITにおいて誤解の多い部分ですのでダイエットとして取り入れようとしている方は十分にお気をつけください。

HIITの具体的なメニューについて

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

続いてHIITの具体的な指導例、メニューについてご紹介します。

① タバタメソッドについて

まず、最も有名なHIITのメニューは、前述したように20秒間全力でバイクを漕ぎ、次に10秒休息をとったら、再び全力で20秒間バイクを漕ぐというのを8セット繰り返すタバタメソッドでしょう。この方法はフィットネスクラブで行うHIITとしては、最も取り入れやすい手法であると言えます。

また、スタジオなどでは、この手法をサーキットトレーニングのように実施することもできます。

例えば、
バービー10回(約20秒)→10秒休息→腹筋10回(約20秒)→10秒休息→腕立て伏せ10回(約20秒)→休息→スクワットジャンプ(約20秒)

の4種目のルーティンを2セット行うという手法です。
これは道具が要らず、グランドや体育館などどこでもできるトレーニングとしてとても手軽にできると思います。この場合、一つの動作に2秒ほどかる前提でいますが、もちろんもっと早くできる方は12回〜15回ほど行っていただいてもOKです。

タバタメソッドは運動の種目に関しては特に限定していませんので、このように全身の筋肉を使いながら行うのは、運動の全面性から見てもとても有効なトレーニング手法だと思われます。

② 競技的特異性に合わせてみる

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

私は以前、自身のクライアントにK-1系のプロの選手を指導したことがあるのですが、その時に、心肺持久力を向上させるためにとった手法がこのHIITでした。

最初は、やはりバイクによるタバタ方式でまずこのトレーニングに慣れてもらったのですが、その後は、「競技的特異性」に合わせてプログラムを変化させていきました。

プロのキックボクシングでは、1回の攻撃&防御にかかる時間の平均は10秒から15秒前後、そして次の攻防までのインターバルは5秒前後になります。

その為、HIITの実施時間をこの攻防の時間と休息の時間に照らし合わせ、全力で行う時間を15秒、休息を5秒と通常のタバタメソッドより短くし、セット数を9セット、時間にして1ラウンドと同じ合計3分とし、1分の休息を入れて、3ラウンドと同じ3セットを実施させるという試合と全く同じ運動時間に設定するのです。

HIITの効果は心肺持久力の向上にある点から、スポーツをしているアスリートにとっては、このように自分の行なっている競技に近い形で取り入れることにより、競技に合わせた「試合で使える持久力」を養うことが可能になります。

③ トレーニングの環境に合わせてみる

トレーニングを行う環境がエアバイクのあるジムなのか、自宅なのか、など環境によってもHIITトレーニングのメニューを変える必要があります。

例えば、グランドや体育館のように動き回れる場所であり、競技的特異性が、瞬発系の動きが多い環境であれば、トレーニング種目は「プライオメトリックトレーニング 」の種目からチョイスするのもいいでしょう。

タックジャンプ10回(約20秒)→10秒休息→シザースジャンプ10回(約20秒)→10秒休息→腕立てジャンプ10回(約20秒)→10秒休息→連続スタンディングロングジャンプ10回(約20秒)→10秒休息→ラテラルバウンディング20回(約20秒)→10秒休息を2ルーティン行うといったような手法です。

この場合、連続して持久的に行なっていくので、ジャンプ強度はデブスジャンプのような高強度のものは取り入れず、低〜中強度の種目で構成したり、使う筋肉を微妙に変えながら実施することが必要だと思われます。

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HIITを実施するときの注意点

① HIITを1日のトレーニングのどこで実施するべきか?

HIITをする際の注意点はありますか?

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

HIITを実施するときにまず注意する点は、このトレーニングのストロングポイントの捉え方を間違えないということです。

あくまでこのトレーニングの特徴は、「短い時間で心肺持久力を向上させられる」点にあります。

トレーニングの順番の基本は「持久系トレーニングは、1日のトレーニングの中でも最後に持ってくる」というのが鉄則になります。
HIITトレーニングは、あくまで持久系トレーニングに属するため、ウェイトトレーニングや、スピードトレーニング、技術トレーニングを行なった後、つまり、1日のトレーニングの「最後」に実施することが大切です。

HIITを1日のトレーニングの最後に持ってくることは、それまでのトレーニングの疲労も重なっている状態(事前疲労)からHIITを行えるので、はるかに効率的にトレーニングを実施することができます。

② HIITはどれくらいの頻度で行うべきか?

頻度についてですが、HIITは実施している最中は「全力」で動作しています。そのため使う筋肉は主に「速筋」であることが多いのです。
速筋のトレーニングに関しては、基本「筋トレ」と同じような休息が必要になります。

したがって、HIITを実施した場合は、筋トレを実施た場合と同じように最低でも48時間ほどの休息を与えた方がいいと考えられます。

また、HIITは実際に行うとその疲労度は相当なものなので、オーバートレーニングの防止の観点から見ても、週に3回の実施頻度が推奨となります。

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

HIITに期待したような体脂肪燃焼効果が望めないとしてもHIIT自体は様々な観点でとても効果的なトレーニングです。体力アップや心肺機能アップをしたい方はぜひチャレンジしてみてください。

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