スクワットの重量を上げるための方法とは?停滞期脱出!

監修者

野上 鉄夫

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

初心者向けから上級者向けまでスクワットの重量アップの為の基本的なトレーニングの進め方について色々とご紹介します。「キングオブエクササイズ」と言われるウェイトトレーニングの王道中の王道とも言える「スクワット」です。ぜひこの記事を参考にご自身のトレーニングに役立ててみてください。

スクワットの重量を上げるためのフォームの違い

スクワットで高重量を上げていくために、まずとても大切なことは「フォーム」です。重い重量でスクワットを扱いたければ当然「大きな筋肉」を使っていく必要があります。

こんな事を言うと「そもそもスクワットは大きな筋肉を使う筋トレなのに、小さな筋肉を使うスクワットなんてあるの?」と思われる方がいるかもしれません。

実はスクワットにはそのフォームによっては大きな筋肉を使うスクワットと、比較的小さな筋肉を使う(使ってしまう)スクワットがあります。
まず、この点をしっかり頭に入れてトレーニングに取り組まなくてはいけません。

スクワットのフォームの違いとは?

ではどんなフォームの違いがあるのか?
スクワットには大きく以下の2種類があります。

・股関節スクワット
・ひざ関節スクワット

「股関節スクワット」とはその名の通り、股関節、特にお尻の筋肉を中心に使いながら行うスクワットの事です。
それに対して「ひざ関節スクワット」とは、太ももの前の筋肉である「大腿四頭筋」を使いながら上げていくスクワットです。

この場合、大腿四頭筋よりは、お尻の筋肉の方が大きく、出力も強い筋肉なので、高重量でスクワットを行いたければ「股関節スクワット」のフォームを初心者の時点でしっかりと身につけることが大切です。まずは大きな筋肉を使ってスクワットを行えるようにしていきましょう。

重量が上がる「股関節スクワット」とは?

では、股関節スクワットとはどんなスクワットなのか?というと、簡単にいえば「お尻をできるだけ後方に引きながら行うスクワット」の事です。
メカニズムは以下の通りです。

・お尻を後ろに引くと、上半身は骨盤とのバランスを取るために前方に倒す角度が深くなる

・この状態では股関節の屈曲する角度は深くなる

・大きな筋肉である「大臀筋」が十分に伸ばされる事で高い出力を発揮しやすいフォームとなる

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

また、ちょっとしたコツですが、バーベルを担ぐ位置はできるだけ低くすると、この股関節スクワットはやりやすくなりますので覚えておいてください。

もう一方のひざ関節スクワットとは、ひざが前方に移動し、そのためお尻の「引き」も比較的浅いスクワットのことを言います。
こうなると、上半身を前に倒すとかえってバランスが前に崩れてしまうので、上体は自然と起きるフォームになります。
このフォームだと股関節の屈曲する角度は自然と浅くなり、逆にひざ関節の屈曲の角度が深くなるので、大腿四頭筋の筋肉をより使うフォームになるのです。

ひざ関節スクワットは、バーベルを背中に置く位置が高くても起こりやすいです。
そして、この「ひざ関節スクワット」は一般的に「ひざを痛める」フォームとして知られているフォームなので、安全にトレーニングを進めていくためにも「股関節スクワット」のフォームをスクワットを行う初期からちゃんと身に付けるようにしてください。

スクワットは最初は簡単に重量が上がる!

次にトレーニングの進め方ですが、高重量のスクワットを扱いたい!!という目的を持ってスクワットを始めたとしても、トレーニング初期は特別な方法をとる必要は特にありません。

よく言われる一般的な「10回を3セット」行うトレーニングで、まずは十分でしょう。

というのも、スクワットとはもともと筋肉の量の多い「足」や「お尻」の筋肉を使うエクササイズです。ベンチプレスもそうですが、特にスクワットは、トレーニングを普通に進めていくだけで、使用重量がどんどん伸びていくエクササイズの一つです。
そして、その「頭打ち」は、ベンチプレスと違い、ずっと後に訪れます。
それまでは、特別な方法は取らずに、しっかりと基本的なトレーニングの進め方をするべきです。

スクワットの基本的なフォームの注意に関してはこの記事の主旨とは違うので割愛いたしますが、一点だけ気をつけていただきたいことがあります。

それは「降ろす深さ」です。
スクワットは「太ももの前面が床と水平になるまで降ろす」ことが基本です。
その他のフォームの注意点も大切なのですが、まず「降ろす深さ」に関しては、堅守してトレーニングを進めていきましょう。

下ろす深さが「浅い」と、筋肉への刺激が十分ではなくなり、下半身の筋肉の筋肥大が不十分になります。すると「停滞」や「頭打ち」が早く訪れてしまう上に、そこを打ち破るにも時間がかかってしまいます。

まずはスクワットは深く下ろして筋肉への刺激はきっちりと行い、下半身の筋力をしっかりと養うようにしましょう。

【初心者向け】スクワットの重量を伸ばすメニュー

では具体的なトレーニングプログラムですが、僕がスクワット初心者から徐々に上級者になっていく過程で行っているスクワットの進め方をご紹介します。
ここでは一般的なフリーウェイトトレーニング初心者の男性をサンプルにご紹介します。

<初心者がまず行うメニュー>
まずはウォーミングアップとして、以下を行います。

1. 30kg〜40kgで10回×1セット
2. 40kg〜60kgをメインセットとして10回×2〜3セット

セット間インターバル2分です。

この時期はまだスクワットの初心者と言える段階です。この時期の平均的な使用重量はこれくらいになることが多いです。

セット数は最初はウォーミングアップ1セット、メインセットを2セットとしますが、週に2回実施で2週間から1ヶ月もすると大抵の場合メインセットは3セットできるようになる方がほとんどです。

<2〜3ヶ月後の重量の変化>
ウォーミングアップ30kg、メイン40kgでやっていた初心者の方も、メインセットの重量が60kgくらいまで上がっているパターンが多いです。

<半年後の重量の変化>

半年もたつと、メインセットの重量が70kg〜80kgくらいになっているという方も決して珍しくはありません。

スクワットはこのように「普通にトレーニング」しているだけでも、半年ほどでメインセットの使用重量が2倍くらい延びることが珍しくないトレーニングなのです。

この時期は特に特殊なことはせずに基本的な進め方をして身体をスクワットの重量の伸びに対して「安全に」対応させていくことが大切です。
10回×3セットというのは、一般的に「筋肥大」を目的としたトレーニングですが、この時期はいたずらに使用重量を伸ばすトレーニング法を行うのではなく、しっかりとしたベースを作っていくことに集中しましょう。

【中級者向け】スクワットの回数を減らして重量を上げる

ここからがこの記事の本題になっていきますが、使用重量が80kgを超えてくると、「10回」という回数に工夫をしていく必要に迫られてきます。より「高重量」を扱うための工夫です。
ここからは「脱初心者」です。主に中級者向けのトレーニングとなってきます。

まずこの段階では「回数の調整」で、使用重量を伸ばすようにします。具体的に説明します。

・メインセットの回数を「10回」から「6回〜8回」に減らす

・その代わり扱う重量を伸ばす

・メインセットが3セットであれば真ん中の1セットの重量を上げて、回数を8回から6回に下げる

70kg〜80kgの10回×3セットのスクワットができる方なら回数をこれくらいに落とすと90kg〜100kgくらい使えるようになるはずです。
ざっくりとした目安ですが、100kgのスクワットを6回〜8回使用できるだけの基礎筋力が養われるまではこの方法で進んでいくのが安全です。

そして3セットとも100kgを6回〜8回使えるようになったら、さらに「回数を下げて使用重量を伸ばすセット」を追加します。
次の段階としては回数が3回から5回ギリギリ扱える重量まで上げてトレーニングを進めます。

最終的には1回ギリギリ扱える重量を行えるようにしましょう。
その際は最初はメインセットの真ん中のセット1セットだけトライアル的に取り組むのがいいでしょう。おそらくですが、120kgくらいまではこの方法でも十分に扱えていくと思います。

ただ、このレベルまで上がってくると流石にセット数は3セットというわけには行かず、ウォーミングアップには2セット以上必要になると思いますし、メインセットも4〜5セットにはなっていると思います。

代表的なセットの組み方は

ウォーミングアップ
60kg10回 
80kg10回

メイン
100kg×8回 
110kg×3回〜5回
120kg×1回
110kg×1回〜3回
100kg×6回〜8回

といった感じです。これくらいまでがスクワット中級者の使用重量の目安だと思っていただいていいと思います。

【上級者向け】フォームを浅くして重さ慣れさせる

人にもよると思いますが、この辺で「頭打ち」、つまりスクワットの使用重量が伸びなくなってくる方が見受けられてきます。
ここから先は「フォーム」での調整が必要です。

ここからは完全に「上級者」向けのトレーニングとなります。
どういう調整かというと、最初に太ももの前面を床と水平待まで降ろす事を遵守するよう言いましたが、この辺でそれを「解除」します。つまり「浅い」スクワットの実施です。

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

僕はこれを「重さ慣れ」と読んでいます。

膝や股関節の曲がりは浅くしてもいいから、とにかく今までよりも重い重量を担いでスクワットをさせます。
使用重量は130〜150kgくらいになっていることが多いです。

スクワットの不思議なところは今までメインセットで行なっていた重量でも「十分に重い!!」と思っていたのに、それ以上の重量をいざ担いでみると、その後に今まで行なっていた重量を担ぐとやたらと「軽く感じる」ことが多々あります。「感覚が重さに慣れる」のです。
この「感覚」を覚えることはスクワットの使用重量を伸ばしていく上ではとても大切な事です。

回数は1回〜2回使える重量、いわゆるほぼ「MAX」ですが、ハーフスクワット、時にはもっと浅いクォータースクワットになることによって、その使用重量はさらに重くなります。
浅いスクワットでも、とにかくそのフォームで扱えるギリギリの使用重量を担いで「重い重さ」を身体に覚えさせるようにしましょう。

もちろん使用重量はその人の身体が扱えるギリギリの重量です。体幹をはじめとする各場所にかかる負荷は非常に高いものになります。

ここで怪我をしないためにも、今までに行なった「筋肥大」を目的としたトレーニングによる体づくりがものを言ってきます。そして、この「浅い」スクワットで重量に慣れてきたら、そこから徐々に「深く」しゃがめるようにしていきましょう。

重量が伸びない!停滞期脱出のためのトレーニングの組み方

最後にスクワットの停滞を脱出するのに大切になるのが「トレーニング計画」です。というのも、「年がら年中同じトレーニング」をしていることは決していいことではありません。何事にも「メリハリ」が必要なのです。

「慣れによるオーバートレーニング」と言う言葉をご存知でしょうか?
これは同じトレーニングを続けていくとトレーニングの刺激に身体が慣れてしまい身体がトレーニングに全く反応しなくなることを言います。

ここでご紹介したトレーニングのうち初心者のトレーニングの進め方まではそのままでいいと思います。しかし中級者から上級者トレーニングに関しては「このまま一年中同じようにトレーニングをする」のはおすすめではありません。

筋肉を大きくするための「筋肥大」を目的とした時期と、主に使用重量を伸ばしたい「筋力向上」を目的とした時期を「交互」に取り入れることが最終的にスクワットの使用重量を伸ばしていく上では必要不可欠になってきます。

そしてこの期間は「3ヶ月ごと」に交互に行っていくのがおすすめです。ある時期は、トレーニングは6回から8回中心のトレーニングとして「筋肥大」を目指し、ある時期はもっと重くして1回〜3回ギリギリ上がる重さのトレーニングを中心に「筋力向上」を目指すトレーニングを行う・・と言った感じです。

実際にはもう少し複雑な組み方をするのですが、ざっくりとした参考として頭においておいてください。

野上 鉄夫監修トレーナーからのアドバイス

NSCA 認定パーソナルトレーナー・日本トレーニング指導者協会(JTAI) 認定指導員・健康運動指導士 

最終的に非常に身体に負担がかかる重さまで伸ばすことのできる種目、「スクワット」です。特に最後にご紹介した「浅いスクワット」でのギリギリ扱える重量でのスクワットにおいて身体にかかる負担は相当なものです。
このトレーニングを日常的にずっと続けるのは怪我を起こすリスクが非常に高いと言えます。

スクワットは決して使用重量が「伸びない」種目ではありませんが、ぜひこの記事をご参考にしながら「安全」にトレーニングを進め、使用重量を伸ばしていってください。

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