運動と脳との関係!運動が脳に与える影響を解説!

監修者

中嶋 沙理英

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

ここ10数年で、運動と脳の関係の研究が急速に進められています。ごく日常的に、あまりにも身近すぎて気にも止めなかった、運動が脳に与えている影響や効果を、脳科学の分野でとても鮮やかに解説してくれています。今回は、そんな運動と脳の関係性のほんの一部をご紹介します。

そもそも運動と脳って関係しているの?

運動した後、気持ちがスッキリした経験はありませんか?

ストレス溜まった時は暴飲暴食!買い物三昧!!先生、付き合ってください!

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

え?!もちろん大歓迎ですが、その前に一緒に走りに行きませんか?運動したらもっとスッキリしますよ。

えええ・・・どうしようかなあ・・・。

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

騙されたと思って、さあ、行きましょ♪

恋愛、家庭、仕事の悩みなどのストレスを解消するために、運動を選ぶ方は少なくないでしょう。運動をすると気分がスッキリするし、思考もクリアになり、運動後は心地いい疲労感がありますよね。

けれども、なぜスッキリするのか分かっている人は、ほとんどいないのではないでしょうか。もちろんそのスッキリ感は「脳」が感じています。

今回は、その私たちの脳が感じる「気持ち」や「感情」にとって、なぜこんなにも運動が大きな影響力を持っているのか、そしてそれが人間の生活にどのような形であらわれるか、驚きに満ちた運動と脳のつながりを解説します。

なおこの解説内容は、個人への医学的アドバイスではなく、一般的な情報を提供しています。

運動で気分がスッキリする仕組み

確かに運動するとスッキリするけど、何故スッキリするのか、なんて深く考えることはしませんね。

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

仕組みがわかればもっと運動したくなること間違いなしです!

運動で爽快な気分になる理由は大きく2つです。

◯理由①
まず一つ目は、心臓から血液が盛んに送り出され、脳血流が増え、脳がよく育つからです。
脳血流とは心臓から脳へ入っていく血液量で、血液量が増えれば、血液の中に含まれる酸素や脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖もよりたくさん運ばれるので、脳は活性化され、ベストな状態になります。

◯理由②
もうひとつは、運動によって様々な脳内物質(神経伝達物質)が増えてくることです。
私達の「思考」や「感情」にかかわる重要な神経伝達物質が増え、脳はどんどん成長します。

運動によって増える脳内物質

喜んだり、悲しんだり、集中したり、怒ったり、色々な感情を持つ理由は脳の物質が働いてるからなんですね

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

そう。自分たちの思考や感情は、実はハッキリとした物質として存在しているんですよね

・幸福感を作り出すエンドルフィン
・自尊心の回復をもたらしたり活動性がアップするノルアドレナリン
・意欲や前向き性格、幸福感に関係のあるドーパミン
・うつ病になると不足するといわれるセロトニンの増加

運動を続ければ続けるほど、より強い満足感を得るようになります。運動によって増えたこれらの脳内物質は、降り注ぐストレスのせいで弱くなってしまう脳を壊れないように守ってくれているのです。

知らないと怖い?!運動しないと、どうなる?

運動をしないと脳が縮む?

脳が縮むって聞いたことあるんですが、そんな怖いことってあるんですが?

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

本当ですよ。

加齢によっても脳は縮んでいきますが、縮むと認知症、アルツハイマー病、うつ、記憶障害などの原因となります。
実は、ほとんど誰も気づいていないのですが、動かない生活は脳も殺してしまうのです。実際に脳は体が動かないことが原因で縮んでいきます。

忘れがちですが、私たちは生物学的に言えば、「動物」です。私もついさっきまで忘れていましたが・・・。
なぜ忘れてしまのかというと、私たちが動かなくていい生活を築いてきたからです。
現代は、狩りをして明日の食料を調達したり、猛獣に追いかけ回されたり、情報を自ら走って伝えに行くことはありません。24時間空いているお店があり、明るく照らしてくれる電気があり、車で好きな場所へ行き、情報はパソコンやスマートフォンで収集します。
それは私たちが全く動かなくてもいい社会を望み、創造し、計画し、実現してきたからです。

人類は、絶えず変化する環境に適応するために身体能力を磨き、思考する力を進化させてきました。知恵を働かせて、食物を見つけなければなりませんでした。
しかし私たちはもはや狩りをしていません。そこまでエネルギーを消費しなくても食べ物は見つかるし、次はどうやって食べ物を手に入れようかと悩むことはありません。
動くことの少ない現代の生活は人間本来の性質を壊し、人類という種の存続を根底から脅かしています。

あまり知られていない運動と脳の関係

運動が脳にも効果があるって、なんとなくそんな気はしていましたがはっきりと意識したことはありませんでした。

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

私もなぜ知られていないか、とっても不思議です。

2000年10月に「ニューヨークタイムズ紙」はデューク大学の研究者が、うつ病の治療には塩酸セルトラリン(薬の商品名:ゾロフト)よりも、運動のほうが効果があることを証明したと報じました。
このほかにも、ラットを運動させるとアルツハイマー病の予防効果が認められたり、不安症、依存症などの精神的な症状の改善も運動が大きな効果があることが分かっています。

しかし、これらの歴史的大スクープは新聞の健康情報欄の隅っこに、小さく小さく掲載されただけなのです。
「運動が脳にとっていい影響を与える」といったニュースは、ポンポンあらわれては、不思議なことにすぐに忘れ去られてしまうのです。この記事を読んだみなさんには、ぜひ覚えておいてくださいね。

脳を理解しよう

これだけは覚えておきたい、「ニューロン」の役割

一番身近なはずで、一番働いてくれてる脳のこと何も知らないんですね・・・。

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

でしょう?知れば知るほど、脳に足向けて寝られませんよ!

私たちの脳を構成する主役は「ニューロン(神経細胞)」です。

電気信号を出して情報をやりとりする特殊な細胞で、情報の伝達と情報の処理を行っています。
大脳で数百億個、小脳で1000億個、脳全体では千数百億個あります。

以前は脳のニューロンの数は生まれたときに決まっており、大人になると増えることはなく、徐々に数が減っていくと考えられていました。

しかし最近では様々な要因のおかげで、大人になってもニューロンが増えることが科学的な常識となっているのです。
ニューロンの数を増やすために最も効果が期待できるのは、運動です。

さらに、ものを覚えたり、認知能力を高めるために必要な脳内の働きを増やしたり、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった思考や感情にかかわる神経伝達物資の分泌を促す効果も、運動にはあります。

例えば、体の筋肉を強くするには、壊してから休ませる必要があります。
同じことがニューロンでも行われています。ニューロンには、もともと修復回復のメカニズムが備わっていて、それは軽度のストレスで作用します。
運動によって引き起こされた脳の活動は分子サイズの副産物を生み出します。
その副産物がニューロンを傷つけるのですが、通常は修復メカニズムが働きます。するとニューロンはさらに強くなり、今後のストレスに対処できるようになるのです。
ニューロンは筋肉と同じようにいったん壊れてより丈夫に作り直されます。ストレスによって鍛えられ回復能力を増していきます。
こうして運動は心身の適応能力を磨き上げていくのです。

運動した時、脳内はどうなっている?

運動するとニューロンはどうなる?

ニューロンは、筋肉と同じように壊れたら強くなるんですね。

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

そうなんです。そうやって脳も体も強くなってくるんです。

運動のすごいところは筋肉の回復プロセスだけでなく、ニューロンの回復プロセスのスイッチを入れることです。

運動すると
・心身ともに強くなる
・考え方が柔軟になる
・難問をうまく処理できるようになる
・決断力が高まる
・うまく周囲に適応できるようになる

この新しくできた神経細胞というのが、私たちの記憶力や思考力を高めるのに重要な働きをしているのです。
というのも、新しい神経細胞のほうが興奮しやすい、つまり、電気信号を流しやすいのです。そのため、情報のやり取りがスムーズにでき、記憶力や思考力を高めるのに最適なのです。
要するに運動によって神経細胞の数が増えるということは、単に数が多くなるというだけでなく、情報のやり取り神経細胞の割合が増えるということでもあります。
運動は、心と体にかかるストレスを巧みにコントロールし細胞レベルにも働きかけるのです。

BDNFとの関係

また難しそうな英語が出てきましたね・・・。

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

大丈夫ですよ、とってもシンプルに解説しますね!

運動と脳の関係を、さらに深く掘り下げていきましょう。運動による脳への効果に影響を与えている物質で「脳由来神経栄養因子」BDNF (Brain-Derived Neurotropic Factor)と呼ばれている成長因子があります。

運動をすることで、このBDNFが増えるということもわかっています。
このBDNFが、脳の神経細胞(ニューロン)を成長させたり、あらゆるストレスからニューロン守ったり脳に栄養を送る血管の形成を促すことで脳をどんどん強くすることが明らかになりました

BDNFとは、神経細胞の生存を維持し、神経細胞が突起を伸ばしネットワークを形成し、神経を修復し、保護するのを助ける働きがあります。
しかも、それだけではなく、記憶などに重要な神経結合や思考や感情に関わる神経伝達物質が増やすとされています。
運動をすることが、他のどんな刺激よりもはるかに多く成長因子を増やします。
BDNFは、運動によって増えるだけでなく、ストレスによって減ることがわかっています。つまり、負担にならない程度に運動するというのがもっとも効果的ということです。

脳の働きをよりよくするための運動とは?

脳を鍛えるためにこんな運動をしよう!

本当に運動って脳にいいんですね!特に脳を鍛えることができる運動ってあるんですか?

中嶋 沙理英監修トレーナーからのアドバイス

マンツーマン専門ピラティス教室LB-Cat代表/ NSCA-CPT / PHI Pilates Mat I &II / Lesmills™ BODYJAM™、CX-WORX™ /骨盤力®️認定講師

ありますよ!やり方次第で効果がさらに上がります。

運動の中でも、特に有酸素運動はBDNFの分泌量を増やすという数多くの研究が示しています。

ランニングやウォーキングなどの有酸素運動は、不安やストレスを感じたとき、安静なままでいるよりも脳にいい影響を与えます。
運動が苦手な方は、最初のうちはウォーキングから、慣れてきたり、気が向いたら短い距離を走ったりしてみましょう。
途中で苦しくなる可能性はありますが、無理のないペースで動き続けてみましょう。思考や感情などの脳の癖を変化させるには、ピザを食べたり、薬やお酒を飲むより、運動した方がよほど効果的です。体の筋肉の張りが緩むので、脳にストレスをフィードバックする流れが断ち切られるからです。
例えば早歩きしただけでもスッキリした感覚があるのならば、脳のストレスは本当に減っているのです。

他にもエアロビクス、ヨガ、ピラティス、ウェイトトレーニングなどのスポーツクラブで提供されているものから、フットサル、テニス、山登り、サイクリングなど様々な運動が挙げられますが、中でも複雑な体の動きほど脳にいいという報告もあります。

複雑に体を動かすには、複雑な神経回路が必要になります。
その動きが複雑であればあるほど、神経のネットワークを強く広げていくことになります。なのでダンスのような複雑な動きになるほど、脳にはよりプラスになるということです。

2003年にアルバートアインシュタイン大が発表した研究では、75歳以上の方469名を5年以上調査し、余暇の活動と認知症発症の関係を調べたところ、ダンスが最も有効という結果でした。
中でも特に社交ダンスが認知機能維持に有効といわれますが これは姿勢を良くして異性や周囲のスペースに気を配りつつ音楽にあわせてダンスするという極めて複雑な要素が求められるからでしょう。
さらにいくつかの研究では、有酸素運動を行うことで、記憶をつかさどる海馬が大きくなることがわかっています。
また、継続的な運動によって、脳の認知能力が強化されることも明らかになってきています。

運動が何よりの刺激となって、脳が「学びたい」「強くなりたい」と意欲を持ち、準備をし、能力を高め、脳は変化に対応できているのです。
運動が脳の働きをどれほど向上させるか多くの人が知り、それをモチベーションとして積極的に運動を生活に取り入れていただけることを願っています。