初心者のランニングペースの目安は?ペースを上げるためのトレーニング方法

監修者

藤井隆太

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

【プロトレーナー解説】初心者はランニングペースは何を目安にすれば良いか?ランニングペースを上げるトレーニング方法は?ランニングのペースは、自覚的運動強度と呼吸数という主観的な指標とその結果として脈拍数(心拍数)という客観的な指標がどう変化するかを目安にしましょう!

ランニングペースを決める3つの指標

初心者の場合、ランニングのペースをどのように設定したらいいか教えてほしいです

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

わかりました。ランニングは、誰にでもできる簡単なトレーニングです。3つの指標さえ気を付けていれば、楽しく続けられますので、そのポイントだけ先ずは意識してください。少し細かく説明していきますね。

ペースの指標①「自覚的運動強度」

自覚的運動強度は、簡単に言いますと、自分で感じている運動の「強さ」のことです。走っているペースが「楽である」「ややきつい」「非常にきつい」など、その時の自分の感覚を表しています。

ランニングのペースに関する指標は、専門的な研究が色々と進んでいますが、一番大切なのは「自分の感覚」です。

変に客観的な指標だけを頼りにしてしまうと、自分で自分の力に制限をかけたり、無理に力を使いすぎたりしてしまうため、先ずは自分の感覚を大切にしていきましょう。そのためにも、主観的な強度は知っておきたいところです。

ペースの指標②「呼吸数」

呼吸数は、ランニング中の感覚ですと「息のあらさ」と考えて頂いたら良いと思います。「ハァハァ」言いながら走らないといけないのか、口を閉じたまま走れるのか、その辺りが指標になります。

一般的に安静時の呼吸数は1分間に12〜16回程度と言われています。運動中は少し呼吸が乱れますので1分間に16〜20回程度でランニングをできるといいでしょう。と言っても、ランニング中に呼吸数を数えていられないと思います。

指標は、鼻呼吸で走れるぐらいのペースが目安です。呼吸数を増やす時には、必ず口が空いた呼吸になりますので、走っている時に口呼吸をしないといけないぐらいだと、少し速すぎると考えていきましょう。

ペースの指標③「脈拍数」

脈拍数は、私たちの手首や首のあたりで「ドクドク…」と触れる事ができる拍動の事を言います。少し専門的なことは省きますが、これは私たちの血液を押し流している心臓が動く回数と捉えて頂ければと思います。
つまり、脈拍数の元は心拍数であり、その拍動を手首などで捉えたものを脈拍数と言います。心拍数の定義は下記の通りです。

「一定の時間内に心臓が拍動した回数のことで、通常は1分間の回数(bpm: beat per minutes)で表現されます。心臓が血液を送り出す際には、動脈にその収縮運動を示す脈拍が現れます。このため脈拍数や脈拍も同様の意味になります。」

初心者のランニングペースは「ニコニコペース」から始める

さて、ここまで3つの指標の意味を説明してきましたが、この3つの指標をどれぐらいに設定すれば良いかという事が一番のポイントになります。

簡単にわかりやすくまとめると、設定ペースのポイントは「ニコニコペース」です。
ニコニコペースとは、一緒に走る人が隣にいたとしたら、ニコニコ笑い話をしながら走れるペースと思ってください。

このペースは指標①の自覚的運動強度でいう「楽である」、指標②の呼吸数が乱れない20回以下、指標③の脈拍数が運動強度50%以下(後ほど詳しく説明)になります。

つまり、ランニング初心者の方のペースは、ニコニコ話しながらできるペースぐらいで走るのが一番良いという事になります。先ずはこのペースでのランニングを週に3〜4日続けられるようになっていきましょう。それが2〜3ヶ月以上続いてきたら、いよいよペースを上げていくトレーニングをしていく時期です。

なるほど、確かに中学や高校の時の体育の時にもタイムを意識して速く走り過ぎて、持久走が嫌いな友達がいっぱいいた気がします。

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

そうなんですよ。良いところに気づいていますね。実は、持久走は小学生から中学生、中学生から高校生になるにつれて、嫌いな体育の時間になっているんです。その理由は「走るタイム」を気にして速く走りすぎている事にあると言われています。先ずはニコニコペースでランニングを続けられるようにしていきましょう

ランニングペースを上げるトレーニング方法①

ランニングがある程度続くようになってきたら、今度は速く走りたくなってきます。その時はどのようにペースを上げていけばいいのでしょうか?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

そうですね。ランニングを続けていく上で、マラソン大会での記録向上などを目標の1つにする事はとても良いことだと思います。
ただ急にペースを上げてしまうと、身体を痛めてしまって、ランニングを続けられなくなったりする事もあるので、注意が必要です。ペースの上げ方について細かくみていきましょう。

自覚的運動強度を意識してペースをあげていく

先に説明していた自覚的運動強度(RPE)は、運動時の主観的負担度を数字で表したもので「Borg Scale」というのが一般的に使用されることが多く、7から19までの段階付けがされています。

<自覚的運動強度(RPE)>
7(非常に楽である)
9(かなり楽である)
11(楽である)
13(ややきつい)
15(きつい)
17(かなりきつい)
19(非常にきつい)

このうち、ランニングに慣れるまでは、11(楽である)程度の主観的なしんどさで走っていただき、ペースを上げていきたい時は、13(ややきつい)の感覚で走る時間を増やしていきましょう。最初は、ランニング中の間に10分程度、それを20分、30分と徐々に増やしていってみてください。知らず知らず、1km6分で楽だったのが、1km5分30秒でも楽に走れるようになってきます。

ただ、1つだけ注意点があります。急に15(きつい)や17(かなりきつい)の負荷量に上げないことです。ランニングが慣れてきたといっても、人の体が本当に順応して様々な細胞の変化が現れるには1年程度の時間を要するとも言われています。ランニングに慣れてきたからといって、急に主観的強度を高めてしまうことは、様々なデメリットを引き起こす可能性がありますので、気をつけておきましょう。

呼吸数を意識してペースをあげていく

上でご説明した「主観的運動強度」を上げていくと、自然と呼吸も乱れやすくなります。今まで鼻呼吸で楽々走れていたのが、口を開けて呼吸しないとしんどくなってきます。鼻呼吸と口呼吸の一番の違いは、一回の呼吸で吸える酸素の量です。みなさん、イメージして頂ければ分かると思いますが、左右の鼻の穴の大きさから吸う呼吸と口を開けて吸う呼吸のでは、どちらの方が酸素を多く吸い込めるかは一目瞭然と思います。

ですので、ペースを上げていくときは、口呼吸になる程度まで呼吸を追い込んで頂いて良いと思います。ただ、まだ「ハァハァ」感じるところまで追い込んではいけません。先ずは、鼻呼吸が口呼吸になる程度までにしておいてください。これが主観的運動強度の13(ややきつい)と一致すると良いでしょう。

脈拍数を意識してペースをあげていく

最後に脈拍数ですが、これは意識してもコントロールできません。先に書かせて頂いた「自覚的運動強度」「呼吸数」を意識した結果「脈拍数」がどうなっているか経過観察してみてください。自分の主観的指標と客観的指標をすり合わせる作業をするのに用いましょう。

脈拍数で間違った使い方をされる方の多くは「脈拍数が○○だからこれ以上は速く走れない」などと制限を自分につけてしまうことです。これでは一番大切な自分の感覚がほったらかしの状態で数字だけで自分を縛ってしまいます。そうならないように注意しながら脈拍計を使っていきたいところですね。

ランニングペースを上げるトレーニング方法②

ここまでの話をまとめると、ランニングのペースの目安は「自覚的運動強度「呼吸数」という主観的な指標を用いましょうという説明をしてきました。その上で「脈拍数」という客観的な指標を加えることで、自分自身の感覚と客観的な身体の反応を知り、ペースを上げる指標になるという事でした。

ここに加わって考えていきたいのが、1kmあたり、平均どれぐらいのペース、あるいは時速で走ると良いかという事です。

先ずはジョギングでの習慣作り

1kmあたりの平均ペースも最近では、スマートフォンのアプリを用いる事で簡単に計測ができてしまいます。非常に便利になったと感じますが、簡単に計測できるが故に、平均ペースばかりを気にして、速いランニングになり過ぎている方が非常に多い印象があります。

例えば、ジョギングとランニングの違いは?と言われたら、どのように考えるでしょう。陸上の現場で耳にする感覚としては、ランニングは時間を計測して平均ペースなどを出しますが、ジョギングは○分や○時間などペースを気にせず、ゆったり行うランニングの事を指す場合が多くあります。

つまり、ジョギングはピラミッドで表現すると「土台」の部分にあたります。土台がしっかりしていれば、その上に多くのものを積んでいくことができますので、ペースを上げる前に上に説明した3つの指標でジョギング習慣をしっかり作りましょう。

その上で平均ペース(時速)を意識していく「12分間走」

最後に1kmあたりの平均ペース(時速)についてまとめていきます。

平均ペースをどれぐらいで走る方が良いかは、人それぞれで違います。目標としている大会のタイムや今後どこまで成長したいかによって、大きく異なってきます。

そこで、ある程度ランニングの習慣作りができた方、目安としては、3ヶ月以上週に3〜4回走る方は「12分間走」を実践してみてください。

12分間走は、その名の通り、12分間のランニングを行います。その時に進んだ距離によって、おおよそのあなたのランニング能力が評価できます。

本来であれば、陸上競技場内で正確に計測する方が良いのですが、なかなかそのような環境にない方も多くおられると思います。

その場合は、信号などで途中で止まることがない公園内の周回コースや河川敷などの12分間連続して走れる場所を見つけてください。そこで12分間でどれぐらいの距離が走れるか確かめてみてください。12分間というのは行なっていただければよく分かると思いますが、ダッシュするように全力で走ると最後まで体力が持ちませんし、ゆっくり走ると体力が余ってしまいます。程よい自分のギリギリの速さで走ることになります。

この時の平均ペースが出せるようにアプリ等で距離を算出できるようにしておきましょう。12分間で走った距離、これを計算していただければ、皆さんそれぞれの1kmあたりの平均ペースを計算できます。あとは、この数字を基準にご自身が出場する大会によって、どのぐらいの平均ペースで意識して走れば良いか考えてみてください。12分より短い大会に出る場合は、12分間走のペースよりも少し速く、12分よりも長い大会に出る場合は12分間走のペースよりも少し遅く走る方が良いでしょう。

12分間走でランニングの効果判定も行う

12分間走は、ランニングの平均ペースの意識だけでなく、ご自身のランニングの効果判定に使う事ができます。例えば、10月に行なった12分間走の距離が2500mだったとします。12月に同じように計測した場合に2700mまで進む事ができたとしたら、200m分余分に走れるようになっている事がわかります。そういった意味でも12分間走は効果的に使う事ができます。

ランニングペースを上げる上での注意点

ランニングのペースを上げるためには、主観的な指標「自覚的運動強度」「呼吸数」と客観的な指標「脈拍数」が大切であることを最重要点としてまとめてきました。

ランニングが習慣的に行えるようになった方は、平均ペースを意識して上げていきたくなるものです。ですが、無理にペースだけを意識して上げてしまうと、多くの方が継続したランニングをできなくなっているように思います。

私たちのカラダは、非常に精密な機械のような作りになっています。その大切な身体をGPSによるペースだけで管理するのではなく、自分たちの感覚を大切に、その上に様々なデータを用いながら、ランニングを続けていくことで、知らず知らずランニングの平均ペースは速くなってくるものと思います。

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

何よりも、ランニングが習慣的に行えるようになってきているとしたら、それはあなたの健康に良いことです。

たまに12分間走をしてみたり、様々な大会に出て記録を目指してみたりすることで、目安のペースはつかめてきますので、習慣的に行えるようになったランニングをこれからもニコニコペースを忘れずに続けていきましょう。