三角筋は筋トレだけでなく日常生活動作にも重要な筋肉。肩周辺の痛みや痺れ、四十肩などが三角筋にも原因がある事も多いです。今回は三角筋が関与して痛みが発生した時のタイプ別原因とその対処法(ストレッチなど)をご紹介。病院に行っても治療院でツボをついても解決しなかった方、必見です。
そもそも三角筋とは?三角筋の構造と働き
三角筋って名前は聞いたことあるけど、どんな筋肉ですか?
ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス
柔道整復師/ランニングアドバイザー
三角筋は肩口にある筋肉で鎖骨、肩甲骨から腕の骨(上腕骨)に向かって付いています。
肩の上げ下げや腕振りに活躍します。腕を支える筋肉のため、上半身の動きには必要不可欠です。
ただ、一瞬のパワーは大きいですが、面積は小さくスタミナが少ない筋肉のため、筋トレのフォームが崩れたり、日常生活で重い荷物を持ち続けたりすると金属疲労のような事を起こして痛みを発してしまう事もあって注意が必要です。
全体像では中心から外方に向かってついているため、腕を外に開く運動におおきに活躍しますが、場所によって、前部は腕を前にあげたり、後部は腕を後ろにあげる時に活躍し、多彩な動きに関与する筋肉です。
そのため、肩関節の瞬発的な動きには秀でている反面、肘関節や手関節などとの直接的な関与はなく、荷物を手で握って腕を持ち上げるなど支点と作用点が大きく離れた時には力負けを起こしてへこたれてしまったり、持続的に力を入れ続けたりすると、すぐに疲れてしまったりなどといった弱点もあります。
三角筋を痛める原因とは
運動をしていないのに日常生活の中で三角筋を痛める原因
激しい運動をしていないのに、なぜ三角筋が痛むのでしょう?
ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス
柔道整復師/ランニングアドバイザー
普段の腕の使い方に問題が出やすいです。腕の根元を支える三角筋の使い方を見直して見ましょう。
ただ、三角筋のこのような使い方は猿人になってからなのをお気づきでしょうか。
その中で三角筋は腕(四足動物では前肢)を前にあげる時に収縮します。
ただ、それだけでなく、腕に体重がかかった時に肩関節の保持にも働く為、本来の役割は関節動作だけでなく関節保持でもあります。
重い荷物も持ち続けて腕(肩関節)が引っ張られた状態を続けると、三角筋が伸張しすぎて逆に硬くなり動きが悪くなります。これが運動をしない方の三角筋の不調や痛みに繋がる原因の一つでしょう。
また、慢性的な運動不足やデスクワークによって現代人は肩こりが多くなっているため、余計に三角筋を含めた肩関節の動きは不十分になっています。
これらを意識して改善していく事も三角筋の痛みを改善するポイントになるのです。
筋トレ・運動で三角筋を痛める原因
三角筋を痛めてしまうトレーニングはありますか?
ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス
柔道整復師/ランニングアドバイザー
三角筋を鍛えるトレーニングにもたくさんの落とし穴があります。少し違った目線でご紹介します。
そのヒントが先述した「てこ」です。
小学生の時に理科の授業で学んだ「てこ」。ものすごく重いものを軽く持ち上げたり移動させたりするための理論。
作用点、動きを支える支点、実際に動かすために力を発揮する力点。
この三つから成り立つわけですが、三角筋を鍛えるトレーニングをする際、一般的なトレーニングとしてダンベルやマシンを用いたトレーニングでイメージして見ましょう。
三角筋の力だけでダンベル持ち上げようとすると作用点がダンベル、肩関節が支点、三角筋が上腕骨についている筋の停止部が力点となります。作用点と力点、支点がとても離れていて、三角筋だけで持ち上げようとするとダンベルの重り、負荷以上のパワーが求められてしまうのです。
もちろん個人差はありますが、それほどトレーニング歴が長くなかったり、トレーニング頻度が高くなかったりする人であれば、500mlのペットボトルに水が入った程度の負荷でもいいでしょう。
そしてもっと大きな負荷を持ち上げたたい、もっと強い負荷を身体にかけたいと思う方は、肩甲骨を寄せて背筋群によって支点の強度を高めた上で重いダンベルを持って三角筋(肩関節)を動かす事がいいでしょう。
三角筋を痛めるとその先に起こる問題
三角筋を痛めるとその先には何か問題がありますか?
ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス
柔道整復師/ランニングアドバイザー
三角筋自体の痛みだけでなく、三角筋が働かない時期が長引くと肩関節全体の問題へ発展する事もあります。
三角筋の筋力不足から四十肩に?
しかしながら、三角筋を炎症等で働きが不十分でその上普段からあまり肩関節を守るためのインナーマッスルとなる肩腱板が不足していたり腱板断裂・損傷をおこしていたりする場合、肩関節の適合を保持する力が著しく不足します。
関節の支持力が失われると、手で荷物を持ったり、腕周辺で運動を起こしたりする際に肩関節周辺の骨は重さに引っ張られる形になりますが、骨は引っ張られる力が働いた際、骨の中にあるカルシウムが外に引き出される傾向があります。(骨ピエゾ効果)
三角筋が使われていない間に肩関節周辺の骨からカルシウムが漏れ出すと、そのカルシウムが関節や筋肉に付着し、石灰化まで行くと肩関節周囲炎(四十肩の正式名称)となってしまうのです。
三角筋の痛みが長続きしていたり、痛みが治って動かせるようになっても運動をサボってしまったりすると二次災害を引き起こす可能性があるため、要注意です。
手軽な三角筋の痛みを解消する方法とトレーニング
ジムに通わず日常生活でもできるものをご紹介いたします。
急な痛みに対応する為にはアイシング
特にオーバーユースの場合、筋肉の付着部になる腱を傷める事が多いです。そこですぐに行えるものがアイシングです。
プロ野球の投手が登板後に肩や肘に氷嚢を当てて包帯でぐるぐる巻きにしています。あんなイメージで炎症が収まるまで、とにかく冷やす事が重要です。
冷やす手段は氷が断然理想的ですが、現実的に難しい時には保冷剤や湿布で代用してもいいでしょう。
ただ、熱を取りきるという観点だと、保冷剤の場合必要以上に皮膚が冷えてしまったり、湿布の場合、炎症部の熱が取り切る力がなく熱が停滞してしまったりする事があります。氷嚢も湿布も時間を20分程度に限定して行うことをお勧めします。
ペットボトルで行うラテラルレイズ
フリーウエイトでは代表的なトレーニングの一つですが、ダンベルを使う場合は体幹部の力の使い方をしっかり意識しないと肩関節や三角筋をすぐさま傷めてしまいます。
そこでトレーニングをあまりやらない方や初心者の方には500mlのペットボトルを使ったラテラルレイズがオススメです。
<やり方>
①2つの500mlのペットボトルに水をきっちり入れる
②左右の手に500mlのペットボトルを持って立位または座位になる
③肘を伸ばしたら肩甲骨を寄せて鳩尾(みぞおち)を前方に突き出すように胸を張る
④肘を伸ばして肩甲骨(特に下の方)をしっかり寄せ続けながらゆっくりと左右の腕を外側から持ち上げていく
※腕をあげるのは肩の高さよりやや上まで。首に力が入らないよう鳩尾と肩甲骨の意識をしっかり持ちましょう。
1日10回3セットを目安に行ってください。
※下の動画はダンベルで行った場合のラテラルレイズの例です。
簡単な四つ這い腕立て伏せ
さらに一般的な足を伸ばして爪先立ちの形では行わずに、膝をつく四つ這いで行えば負担が少なく、ダイレクトに上半身、特に肩関節に程よい負荷がかかります。
<やり方>
①膝をついて四つ這い姿勢をとります。
②手同士の幅は肩幅から各20cmずつ外に開いたところにします。
1日5回2~3セットがいいでしょう。
簡単な方法でも三角筋の痛みを改善できる方法はありますが、重要なのは痛みがあるうちはアイシングでしっかり消炎に努める事と運動をする際には肩甲骨や鳩尾の意識を忘れない事が重要です。
三角筋の効率かつ安全な筋トレ
そんなみなさんに、解剖学をベースに安全で効率の良いトレーニング方法をご紹介します。
ベンチプレス/ダンベルプレス
イメージは大胸筋という胸の筋肉をメインに使いますが、三角筋の前部(鎖骨側)にも十分な効き目があります。
<やり方>
①ベンチやベッドに仰向けになり、負荷となるバーやダンベルを持つ。
②鳩尾(みぞおち)を突き出しながら肩甲骨を寄せ、背中を反らしながら背中の中心部がベンチから離れて背骨のアーチを作る。
③背骨を反らすタイミングに合わせながら胸を張って徐々にひじを曲げながら、持っているバー、ダンベルを引き下げていきます。
トレーニングをあまりしない方、機能改善だけを目指したい方は1~3kgぐらいの負荷でも十分です。
ベンチプレスは一見シンプルに見えますが、間違ったやり方をしてしまっている人が非常に多いです。筋トレBIG3の1つに数えられるほど絶大な効果を秘めているので、正しいフォームで行い、その効果を十分に享受しましょう。ベンチプレスで鍛えられる筋肉部位・やり方・効果について解説します。
アップライロロウ
これにはもう一つメリットがあります。
サイトレイズやラテラルレイズなど腕を伸ばしてダンベルなどの負荷を持ち上げるエクササイズに比べて、支点力点と作用点が近い為、三角筋を痛めるリスクがグンと下がります。初心者や三角筋が弱い方にはこちらがおすすめです。
<やり方>
①左右のひじを曲げて、ダンベルかケトルベルを1つだけ胸の前で持ちます。
②安定する立ち方をしたら、肘を外側に向けながら肩→肘の順番で曲げて持ち上げます。
③顎の前まで持ち上げたら、すぐに降ろさずにピタッと止める瞬間(理想は1~2秒)を作りましょう。
トレーニング効果を効かせたい筋肉が三角筋に狙っている為、肩から動かすようにしましょう。
ただ、この時も背筋に力が入っておらず、三角筋と肩関節のみに力を依存してしまうと三角筋に強すぎる負荷がかかってしまう為、肩甲骨同士を寄せた状態の上で行うことが大切です。
【プロトレーナー解説】三角筋は前部・中部・後部と大きな筋肉で、それぞれ構造の性質が違うため、鍛え方にコツがあります。三角筋の構造と筋トレメニューを徹底解説します!