マラソンにペースメーカーという役割があるって知ってる?その意味とは?

監修者

植松駿太

Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー

レースで自己記録更新を狙うランナーの皆様!賢くペースメーカーを利用し、自己ベスト更新を狙いましょう!マラソン大会につきもののペースメーカーについてその役割や利用するメリットをご紹介します。

マラソン中継でよく目にするペースメーカーとは?

日本や海外の主要マラソン大会はよくテレビでも放映されてますよね。オリンピックなどでも中継を見るとよく先頭の選手や有名選手の前に違うゼッケンをつけて走っている人がいますがあれはどういう選手なんですか?

植松駿太監修トレーナーからのアドバイス

Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー

ペースメーカーのことですね。ペースメーカーについてはあまり中継でも触れられないので、少し紹介しましょう

ペースメーカーとは、均等なペースでレースや特定の選手を引っ張る役目を持った走者のこと

特に先頭の選手を引っ張る場合にラビットと呼ばれることもあります。また、有力選手をその他の選手やトラブルから回避することを目的に走るガードランナーもおり、そのガードランナーと区別することもあれば、ペースメーカーは同時にガードランナーの役割も果たしているとも言えます。

フルマラソンの場合、距離としては30kmまでの先導を依頼されることが多いです。 マラソン大会ではやはり先頭集団がよく実況されます。その中でも一番先頭に、違うゼッケンを着けたランナーがいることがあります。アナウンサーは色違いのゼッケンランナーが先頭を走っているのに、それには触れません。2,3番手の優勝候補の選手についてよく中継しています。ほとんどのペースメーカーは途中で走るのを辞めるため、大会の優勝や記録には関係ないからです。

彼らは主催者と契約し、仕事としてその役割を果たします。自身が完走することや、記録を出すことを目的としてはいないのです。

実はすごいペースメーカーの役割

ペースメーカーは仕事として走っているのですね?ではなぜペースメーカーまでつける必要があるんですか?

植松駿太監修トレーナーからのアドバイス

Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー

ペースメーカーは高い精度で狂いなく予定しているペースを走ってくれます。誰にでもできるものではありません。例えば有名マラソン大会で、男子の世界記録更新が期待され、実際に更新ペースでレースが展開されているとします。その世界記録更新ペースで走っている有力選手を、ほぼ狂いなく一定ペースで30km近く引っ張るのです。しかも風を先頭で受けながらです。

このようにペースメーカーが高いレベルでその役割をまっとうしてくれることで、選手や大会運営側には大きなメリットが生まれます。

ペースメーカーの主な役割

・選手自身がペースを気にしながら走らなくて済むので、心理的負担を軽減できる
・実際にペースが乱れることは少なく、一定のペースで走ることができる
・ペースが一定に保たれることにより、選手は体力の消耗を最小限に抑えることができる
・ランナーたちの風よけになるため、楽に走れる
・沿道からの侵入など、選手をトラブルから回避する役目も同時に担うことができる
・これらの影響で、好タイムが出る可能性が高まる

ペースメーカーがいるのといないのとで、選手の記録が左右されます。特に記録が出やすいといわれる大会で、天候なども好条件に恵まれた時は、世界記録、日本記録更新の期待が高まります。 すごい記録が生まれるためには、レース中に高い集中力が要求されますが、マラソンは長丁場です。自分の時計を何回も何回も小まめにチェックしたりなど、余計なことに気を回さずに自分自身やライバル選手の動きのみに集中できる環境はランナーにとってとても嬉しいことなのです。

高橋尚子選手がベルリンマラソンで当時の世界記録を更新したときにもペースメーカーを置いていました。ペースメーカーはとても大事な役割を担っているのです。

ランナーがやってしまう本番でのミス

皆さんもレース本番でこんな経験はありませんか?

・走るペースは計画していたものの、舞い上がってしまってペースがバラバラになってしまった
・後ろから来るランナーに負けたくなく、ついついペースを上げてしまい後半失速した
・大勢の大会でスタートが思うように走れず、直後にスタートの後れを取り戻そうとペースが速くなってしまった
・向かい風の強い大会で体力を消耗した ・途中一人だと心が折れ、失速してしまった

ありますあります!特に私は負けず嫌いで、年配の方に抜かれたりすると、ついつい抜かすことを考えてオーバーペースになってしまいますね

植松駿太監修トレーナーからのアドバイス

Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー

そうですよね。普段は一人で走っていて気づかない人も、集団になるとついつい自分の負けず嫌いが出てしまうんです。そういう苦い思い出がある方は、是非ペースメーカーを利用してみてください。

レース本番では普段のランニング以上にアドレナリンが脳内に分泌されます。アドレナリンは興奮作用があり、どちらかと言うとオーバーペースに陥ることが多いのです。集団で走ることがペースを乱すことにならないよう、冷静にレース運びをしましょう。とは言ってもなかなかコントロールできない方や、ペースメイク以外にも風よけなど利用して体力を温存したいと考える方は是非ペースメーカーの存在を利用してみてください。

ペースメーカーを利用して自己記録を更新!

大会によっては、先頭集団だけでなく自分が目標とするタイムで走ってくれるペースメーカーが配置されていることもあります。これを利用し、ペースがバラバラになるのを防ぎましょう。精神的にもとても余裕が生まれるのが分かると思います。

ペースメーカーは一流ランナーだけのものではない

でもペースメーカーって我々とは縁のないものではないですか?

植松駿太監修トレーナーからのアドバイス

Fit Arc認定ランニングアセスメントスペシャリストアドバンストレーナー

いえ、最近では市民マラソンでも、大会主催者がペースメーカーを一般の皆さんも利用できるよう依頼していることが多いようです。1kmを4分で走ったり、1kmを5分で走ったりする人です。私も知人から頼まれたこともありました。逆に自分が選手の後ろに入る場合は、風よけでかなり楽になるのを感じます。

自分の狙うタイムには丁度良いペースメーカーがいない場合、信頼できる知人にペースメイクをお願いしてみてもいいかもしれません。どうしてもレースの雰囲気にのまれ、ペースを保てない方は、これらを利用してみてください。

また、ペースメーカーは風よけとしても利用できます。

ペースメーカーの風よけとしての効果はどれくらい?

では前の走者を風よけとして使った場合、空気の抵抗はどれくらい変わるのでしょうか。工学院大学機械工学科の伊藤慎一郎教授によると、単独で走ったときの抗力係数は0.97だったが、2人のペースメーカーに前後に挟まれて走った場合は0.11となり、空気抵抗はほぼ9分の1に減ったといいます。

ちなみに2人のペースメーカーと3人で縦に並んで走り、一番後方にいた場合の抗力係数は0.30で、真ん中で走る場合より効果は小さいのです。 つまりペースメーカーのすぐ後ろにピタッとつき、その後ろにもランナーがいる。そんな状況で走ることができると、かなり楽ができるようです。
最も効果が高かったのは、3人のペースメーカーを横一列に並べてその後方を走る場合です。抗力係数0.07と単独で走った場合の10分の1以下に空気抵抗は減っていました。
大勢出場するマラソン大会であれば、このような条件の中走ることも可能かもしれませんね。

【参考文献】
マラソンと水泳から学べる流体力学(2012)

ペースメーカーのお仕事、報酬は?

ペースメーカーの報酬は公表されていません。しかし、国際レースのような大きな大会では100万円以上となります。また、個人差もあり一流の実績のあるペースメーカーだと200万円を超えることもあるそうです。非常に高額ですが、その報酬に見合うだけの技術と実力を兼ね揃えているので簡単にできる仕事ではありません。
選手と同じように、大会本番で絶対に失敗しないようトレーニングも体調管理も万全にして当日を迎えなければなりませんからね。

一方オリンピックなど、少数で各国の競技性が高い大会ではペースメーカーは走りません。

そんなペースメーカーについて日本陸連では性別や年齢など、いくつかの規定を設けています。
・女性ランナーに男性ペースメーカーはつけない
・ゼッケンで選手とペースメーカーを区別する
・ペースメーカーの役割(ラップライム、何キロまで走る)を前日に公表

いつからペースメーカーはあったの?

いつからこのペースメーカーは認知され始めたのでしょうか。実は日本では、2003年まではその存在を公表していませんでした。それまではペースメーカーがレースから外れる場合に、アクシデントなどとして実況していたのです。近年ではその存在も一般的になってきました。
黒子役に徹し、脚光こそ浴びないものの、優勝を狙えるくらいのかなりの実力者が走っています。これからはそんな目線でもレースを見ると面白いかもしれません。

また、一流選手の先頭ではなく、市民マラソンのペースメーカーとして走る場合はボランティアレベルのことも多いようです。しかしマラソン大会の参加料を無料にしてくれたり、多くのランナーの前で目立ちながら走るわけですから、好んでやる方も多いようです。