小胸筋の構造と作用とは?こりや痛みを取るストレッチも紹介!

監修者

勝俣智之

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

理学療法士、パーソナルトレーナーの視点から【小胸筋】を徹底解説!この小胸筋という筋肉、大胸筋の下に隠れている縁の下の力もちです。特に姿勢の調整にはとても大事となる筋肉です。どのように姿勢に絡んでくるのか?身体に対しての影響とは?ストレッチなどのケア方法を紹介していきます!

小胸筋の構造と作用とは?

あまり聞きなれない筋肉ですね。具体的にどこにある筋肉なのでしょうか?

勝俣智之監修トレーナーからのアドバイス

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

大胸筋の裏側に隠れている筋肉です。ではまずその場所から説明しましょう

小胸筋の構造

小胸筋(英語名:Pectoralis minor muscle)は大胸筋の上部を剥がすと確認することができる筋肉です。(大胸筋は上から鎖骨部、胸肋部、腹部の3つに分かれます)
筋のつき始めを表す「起始部」と着き終わりを表す「停止部」は以下の通りとなります。

起始部:第2(3)~第5肋骨の前面
停止部:肩甲骨の烏口突起

肋骨から肩甲骨をまたぐ筋肉となります。
また、停止部である肩甲骨の烏口突起には他の筋も付着します。
これは何を意味するかというと、他の筋への影響も強いということです。

小胸筋の作用

勝俣智之監修トレーナーからのアドバイス

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

基本的には肩甲骨、もしくは肋骨を動かすことがメインの筋です。ですがその他にも大事な仕事があります。

まずは基本的な作用は以下の通りです。

①肩甲骨の前傾、下方回旋
②肩甲骨を固定すると、第2~第5肋骨を引き上げる

ここで言う作用とは、一般的に骨の動きを表します。

バストアップ効果

ここでは運動による作用のひとつを説明します。
フィットネスにおける1番の恩恵はバストアップ効果です。女性の運動目的で、この項目はとても多く聞きます。

先ほどの小胸筋の作用を思い出して下さい。
「肩甲骨を固定すると、第2~第5肋骨を引き上げる」といった効果があったと思います。肋骨を下から上へ持ち上げるということは、バストそのものを持ち上げてくれるということです。
女性に限らず男性の胸部のボディメイクにも重要かと思います。

是非鍛えましょう!方法はこの後紹介致します!

小胸筋が上手く作用していないと?

動きについては分かりました!バストアップのようなボディメイクにも影響があったのですね!その他に運動や生活に影響がでることもあるのでしょうか?

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小胸筋は目立ちませんがとても重要な役割を持っています。ではその辺りを説明しましょう。

呼吸補助筋として働く

呼吸には吸気(吸う)と呼気(吐く)があり、小胸筋は呼気の補助筋として働きます。
なお、吸気でメインで働く筋肉は横隔膜と外肋間筋が働き、呼気は拡張した肺が自然に戻る(受動的反跳)ことで行われる筋の作用は基本的にはないとされています。

吸気は基本的には上記で紹介した横隔膜と外肋間筋の働きですが、意識的に行う努力吸気と呼ばれる動きでは以下の筋も介入してきます。
[胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋]

また同様に意識的に行う努力呼気では以下の筋が介入されます。
[内肋間筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋]
<内肋間筋>
<腹直筋>
<内腹斜筋、外腹斜筋>
<腹横筋>
小胸筋はこの努力呼気の一部として働く役割を持っているのです。例えば深呼吸をしたときや、呼吸が乱れ、本来の呼吸が行えなくなったときなどに手伝ってくれます。

胸郭の動き

呼吸には胸郭の動きが必ず伴います。この胸郭の動きが何らかの原因により妨げられると、十分な呼吸とは言えない状態となってしまいます。
胸郭には様々な筋が付着していますが、この小胸筋も悪さをしてしまう筋のひとつです。

また小胸筋の機能を思い出していきましょう。

①肩甲骨の前傾、下方回旋
②肩甲骨を固定すると、第2~第5肋骨を引き上げる

基本はこれらの働きです。
もし小胸筋が硬くなってしまうと、肩甲骨は前傾方向に常に引っ張られた状態となってしまいます。(下方回旋の動きもありますが、硬くなるときは主に前傾方向のみが強くでます)

また肩甲骨が固定された状態であれば、第2〜5肋骨が常に引き上がった状態ということです。この状態で固定されてしまうと胸郭がうまく動きません。そしてその中にある肺の動きも制限されてしまいます。結果として呼吸がうまく行えない、といった結果に繋がるのです。

胸郭がうまく動かない弊害としては、
●身体の連動性の低下
●換気能力の低下
●自律神経への影響
●肩、腰、膝へのストレスの増加

など様々です。
ケアを頻繁に行い、固まらないようにしていくことが重要です。

姿勢への影響

小胸筋の作用、こちらは姿勢にも影響があります。
度々登場する「肩甲骨を前傾させる」。この状態で固まると厄介なのです。ここから少し話がややこしくなります。

①まず小胸筋の影響により、肩甲骨が前傾方向で固定されます。
②その動きに合わせ胸椎は後弯しやすくなります。(いわゆる「猫背」の状態です)
③胸椎後弯に合わせ腰椎も後弯、また骨盤も後傾していきます。
④頚部は前を向く姿勢を保つため伸展します。(顎が上がった状態です)

このような不良姿勢の完成です。
③で良い姿勢を保とうとして、過度な腰椎伸展を作ろうとする場合もあります。どちらも腰への負担は強くなります。

肩関節への影響

姿勢に影響があるということは、そこから派生して様々な箇所にも影響を与えます。その代表的な部位が肩関節です。

ここでまた小胸筋の機能です。今回は特にこちらの機能のみにピックアップします。

①肩甲骨の前傾、下方回旋

腕を上に挙げる動作を「挙上」と呼びます。
この挙上動作に伴う肩甲骨の動きは「後傾」と「下方回旋」です。
見事に小胸筋による作用はこの動きと拮抗していることが分かります。
拮抗しているということは、しっかりと機能していれば「制御している」ことになりますが、機能不全を起こしていれば「動きの妨げ」になります。

また、先ほどの姿勢への影響により肩関節の骨頭求心性の異常が生じることもあります。
これは上腕骨と肩甲骨の関節が理想の位置ではないということです。
この状態だと肩関節周囲にある筋のテンションが一定ではなくなり、どこかに歪が生じ痛みが発生する可能性が上がります。

勝俣智之監修トレーナーからのアドバイス

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

いくつか小胸筋がうまく働かなくなったときの例をあげました。小胸筋ひとつで、というと若干大げさではありますが、私が臨床やトレーナーの現場で見てきた限り関係性は非常に高く感じています。
日々のケアが重要です。

固まらせない!小胸筋のケア・ストレッチ方法!

目立たない割には大事な筋肉なのですね。固めないためにはどうしたら良いですか?

勝俣智之監修トレーナーからのアドバイス

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

それではここからケア方法に入りましょう。運動前後、さらに運動のない日でも1日のうちに何回か行って頂くと効果が期待できます。

①ボールマッサージ

テニスボールぐらいの硬さがお勧めです。
効いている感じが少ない方は野球の軟式のボールやソフトボールぐらいでも構いません。
上記部位に円を描くように、また他方向にも押し付けていきます 30秒〜60秒程度を2〜3回繰り返して下さい。

②ストレッチ

壁に手をあて、胸を前方に突き出していくように胸部を引っ張ります。
小胸筋の構造上、手は斜め下方につけておくと効果的ですがその表面にある大胸筋もストレッチをかけることで更に効果が期待できます。
手を斜め上方と真横の2方向、先ほどの斜め下方と合わせて3方向行いましょう。
全て30秒〜60秒ほど、2〜3回実施していきましょう。

勝俣智之監修トレーナーからのアドバイス

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

大胸筋と小胸筋は隣り合っているだけに深い繋がりがあります。その他にも腕や肩、背中など近い筋肉も合わせてアプローチしてもらうと効果的です。

小胸筋のトレーニング方法4つ!

先ほど紹介してもらったバストアップ効果、こちらはストレッチだけでも効果はあるのでしょうか?それとも別の方法が必要ですか?

勝俣智之監修トレーナーからのアドバイス

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

ストレッチだけでも効果は期待できます。筋肉が本来持っている力が発揮できれば変化はありますが、トレーニングをすることでより高い効果を出していきたいですね。

①腕立て伏せ

基本的なトレーニングのひとつです。
メインは大胸筋ですが、隣り合う小胸筋も一緒に働いてきます。
厳しい方は膝つき、ベンチで角度をつけるなどでも構いません。
手幅は肩幅よりやや広い程度、下げた際に胸の広がりを感じるように行うことがポイントです。

②スキャプラープッシュアップ

先ほどの腕立て伏せの応用です。
本来小胸筋には直接的な腕への影響がない筋です。
腕の介入がない分、より刺激が入る動きとなります。
腕立ての姿勢から肩甲骨を寄せ、床を押すように背中(肩甲骨)を広げていきます。
こちらも膝立ちやベンチを使用しても構いません。

③リバースプッシュアップ

画像のように椅子やベンチを身体の後方で支え、肘を曲げていきます。
下げた際に胸を広げていくような刺激を感じとれると良いでしょう。
本来は上腕三頭筋と呼ばれる二の腕へのトレーニング方法です。
合わせて効果が期待できるトレーニングとなります。

④ダンベルプルオーバー

ベンチに仰向けとなり、両手で持ったダンベルを頭の上まで持っていきます。肘が開きすぎないことがポイントです。
戻すときにも肘をやや閉める意識を持つと効果的です。

トレーニングは全て10回~20回程度、できる範囲での調整をお願い致します。

勝俣智之監修トレーナーからのアドバイス

⬛︎所有資格 理学療法士、NSCA-CSCS ⬛︎指導実績 2016/2017 U18野球日本代表合宿サポート、横浜リゾート&スポーツ専門学校非常勤講師

小胸筋はあまり目立つ筋肉ではありませんが、非常に重要な役割を持っています。
スマホやパソコンなどで背中が丸まってくると、大体はこの小胸筋も硬くなっていきます。
日常的に固めないケアと、可能であればトレーニングまでチャレンジしてみて下さい!

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