筋トレ前後で同じストレッチをしてはいけない!正しいやり方を知ろう

監修者

原田 直生

JHCA-ホリスティックコンディショナー, aFT-アディダスファンクショナルトレーナー

【プロトレーナー解説】ストレッチは筋トレの前後どっちでやるのか、そもそもストレッチの効果とは何なのか?…意外と分かっているようで分からないストレッチについて、プロのトレーナーが徹底解説!ストレッチのメニューもご紹介!

ストレッチのタイミングはいつ?

僕カラダが硬いんですが…ストレッチってやっぱり必要ですか?

原田 直生監修トレーナーからのアドバイス

JHCA-ホリスティックコンディショナー, aFT-アディダスファンクショナルトレーナー

そうですね。。柔軟性次第で筋トレの効果も変わってきますからね…

やっぱりストレッチしないといけませんね。今日から筋トレ前には前屈ストレッチをします!!

原田 直生監修トレーナーからのアドバイス

JHCA-ホリスティックコンディショナー, aFT-アディダスファンクショナルトレーナー

ん?!ちょっと待ってください。ストレッチって何のためにやるかご存知ですか??

えぇ?!え〜と…

今やストレッチ専門店が出来るほど私たちの生活に身近となっているストレッチ。スポーツや筋トレを全くやってこなかった人でも、「ストレッチをやったことがない」という人はいないのではないでしょうか。
それだけ身近でありながらも「ストレッチは筋トレ前にするのか?筋トレ後がいいのか?」「どれくらいの時間やったらいいのか」ご存知ない方も多いはず。中にはストレッチの目的も良く分からず「なんとなく」やっている人も…。

そこで今回は改めてストレッチの目的やタイミング、使い分けなどについて解説していきます。

ストレッチは筋トレの前か、筋トレの後か、どっち?

そもそも、あなたはストレッチに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?
「筋肉を伸ばす」「柔軟性を高める」「疲労回復」などなど。。その大半は「緩めること」を目的とした、リラクゼーション系のイメージが強いのではないでしょうか。
もちろんそのような効果もあるのですが…もしも運動前・筋トレ前にリラクゼーションを目的としたストレッチを行うとどうなるでしょう?

結果は筋の興奮を抑えることとなり、筋肉が発揮する力(筋出力)を低下させ、その後のパフォーマンスや筋トレの効果を落とすこととなってしまいます。

では、ストレッチは筋トレの前に行ってはいけないのか…実はそう言うわけでもありません。
結論から言うと、ストレッチは筋トレ前後どちらも必要!!で、「それぞれに適切なストレッチを行う」ことが重要なんです!!

筋トレ前後でストレッチの目的は変わる?

運動前・筋トレ前にストレッチを行う理由

「疲労回復」などのリラクゼーションを求めて運動前・筋トレ前にストレッチをすることはないですよね?
運動前・筋トレ前の場合、「筋肉を引き伸ばすことで関節が動く範囲(ROM)を確保する」事を目的とし、そうすることで「筋肉の収縮・伸長する範囲が増え、競技パフォーマンスや筋トレの効果を最大限に引き出す」ことや「可動域が増えることで肉離れなどの怪我のリスクを減らす」ためにストレッチを行います。

運動後・筋トレ後にストレッチを行う理由

激しい運動や筋トレを行うと、主として働いていた筋肉の長さは縮んでしまいます。
試しに上腕二頭筋のトレーニングであるダンベルカールを限界まで行ってみてください。そうすると、肘を伸ばそうと頑張っても伸びきらず、肘が曲がったままになるはずです。

これは上腕二頭筋が収縮したことで筋肉の長さが一時的に短くなっている状態です。そこで筋トレ後は縮んだ筋肉の長さを元に戻し、疲労回復のためにストレッチを行う必要があります。
※高強度の運動をした後や普段から運動回数が多い人は筋肉が短くなっている可能性が高いです。

原田 直生監修トレーナーからのアドバイス

JHCA-ホリスティックコンディショナー, aFT-アディダスファンクショナルトレーナー

このように筋トレ前後ではストレッチを行う目的が大きく異なります。大きく異なるはずなのに…筋トレ前後で同じようなストレッチをしている人は要注意です。。

ストレッチの種類とは?

運動や筋トレの前後ではストレッチの目的が大きく異なります。大きく異なると言うことは、それぞれに合ったストレッチの種類を適切に使い分けなくてはなりません。そこでストレッチの種類を2つの方法と2つの状態で整理していきましょう。

2つの方法「パッシブ」と「アクティブ」

パッシブ(他動的)ストレッチとは拮抗筋の収縮が入らないタイプのストレッチのことで、反対にアクティブ(自動的)ストレッチは拮抗筋の収縮があるストレッチをさします。

拮抗筋とは伸ばしている筋肉と拮抗する側に位置する筋肉を言います。
例えば背面の筋肉のストレッチでもある長座体前屈をイメージしてみましょう。この場合、拮抗筋は身体表面にある筋肉です。

パッシブストレッチだと、重力に任せて脱力した状態や誰かに背中を押してもらって自らは脱力し前屈をしているような状態になります。一方、アクティブストレッチは身体の表面の筋肉を収縮させるため、腹筋に力を入れながらつま先へ手を伸ばしている…というような状態になります。

2つの状態「スタティック」と「ダイナミック」

スタティック(静的)ストレッチとは動きを伴わないストレッチのことで、反対にダイナミック(動的)ストレッチとは動きを伴ったストレッチをさします。
先ほどの長座体前屈でだと、スタティックストレッチの場合は動きが伴わないためその場で止まっている状態です。一方、ダイナミックストレッチは動きを伴うため、自ら(または誰かに背中を押され)前後に繰り返し動いている状態です。

運動前後ではこれらを組み合わせて使うことが重要です。

運動前は「アクティブ・ダイナミックストレッチ」

アクティブダイナミック(自動的・動的)ストレッチは拮抗筋の収縮を伴い、関節を動かしながら行うストレッチです。
長座体前屈だと、腹筋に力を入れながら自ら前後に動きを入れて行っている…というイメージです。
拮抗筋が縮むことで主動筋が結果的に伸びるため、筋の興奮を下げることなく筋温を保ったまま関節可動域を広げることが出来ます。筋トレや運動前のウォームアップとして最適です。

運動後は「パッシブ・スタティックストレッチ」

パッシブスタティック(他動的・静的)ストレッチは拮抗筋の収縮は入らず動きも伴わないストレッチです。
長座体前屈だと、重力または誰かに背中を押されることで自らは脱力しその場で静止している…というイメージです。拮抗筋の収縮や動きが入らないため、筋の興奮を抑え、本来の張力へ戻し、疲労回復を期待できます。

トレーニング別おすすめストレッチメニュー

ストレッチに種類があるなんて知りませんでした。。

原田 直生監修トレーナーからのアドバイス

JHCA-ホリスティックコンディショナー, aFT-アディダスファンクショナルトレーナー

これからは目的に合わせた方法でストレッチを行いましょうね!

はい!頑張ります!!

ストレッチはあくまでも個々の身体の状態やトレーニング目的に合わせて行うことが必要不可欠です。万人が共通してやるべきストレッチというものは存在しません。
そこで最後に「トレーニング別に必要となる」筋トレ前後のストレッチをご紹介します。普段のトレーニングのお役に立てれば幸いです。

スクワットで臀部に効かせたい場合のストレッチメニュー

ヒップアップのために取り組む人も多いスクワット。臀部に効かせたのに大臀筋の柔軟性がないことで深くしゃがめずお尻に効かない人へ…
スクワット前は大臀筋の「アクティブダイナミックストレッチ」を入れてみましょう!!

①右膝を立てたまま仰向けに寝る
②片方の手の平を腰と床との隙間に入れる
③右膝90度の角度を保ったまま肩に向かってまっすぐ上げる(10回繰り返す)
※腰と床との隙間に入れた手の平が潰れないように気をつける

拮抗筋となる股関節付け根の腸腰筋を収縮させることで、結果的に大臀筋の柔軟性と股関節屈曲の可動域を引き出しています。

スクワット後は大臀筋の「パッシブスタティックストレッチ」で張力と疲労を回復させましょう!!

①両膝を曲げイスに浅く腰掛ける
②左膝にあぐらの形になるように右足の外くるぶしを引っ掛ける
③背スジを伸ばしたままお辞儀をする(20秒間保持)
※背スジ丸まらないように注意する

重力によって大臀筋を他動的に引き伸ばし弛緩させている状態です。

ベンチプレスで胸へしっかりと効かせたい場合のストレッチメニュー

バストアップや胸板を厚くするベンチプレス。しっかりと胸を張った姿勢で行うことが重要です。その為にもベンチプレス前は大胸筋の「アクティブダイナミックストレッチ」を行いましょう!!

①イスに浅く腰掛ける
②手の平を天井へ向け両腕を正面へ伸ばす
③肘を90度曲げる
④背スジを伸ばし少しお辞儀をする
⑤肘の角度を保ったまま背中を寄せるように肘を開く(10回繰り返す)
※「いないいないばー」をするようなイメージです

拮抗筋となる背中の僧帽筋中部繊維や菱形筋を収縮させることで、結果的に大胸筋の柔軟性と肩関節水平伸展の可動域を引き出しています。

ベンチプレス後は大胸筋の「パッシブスタティックストレッチ」を行いましょう!!

①壁の横に立つ
②壁側の肩の角度90度・肘の角度90度を作る
③肘から手の甲までを壁につける
④壁側と逆側の足を踏み出しながら前方へ体重移動(20秒保持)
※必ず手の甲を壁側に向けて行ってください

重心移動によって大胸筋を他動的に引き伸ばし弛緩させている状態です。

デッドリフトでしっかりハムストリングスへ効かせたい場合のストレッチメニュー

ももの裏側のスッキリ感を作るために必要なデッドリフト。でもどうしても腰が丸まってハムストリングスに効かない人へ。デッドリフト前はハムストリングスの「アクティブダイナミックストレッチ」を行いましょう!!

①膝を伸ばし仰向けに寝る
②右足の足首を曲げつま先を天井へ向ける
③片方の手の平を腰と床の隙間へ入れる
④足首を固定し膝を伸ばしたまま右足を降り上げる(10回繰り返す)
※腰と床との隙間が潰れず、膝が曲がらない範囲で行いましょう

拮抗筋となるもも表の大腿四頭筋を収縮させることで、結果的にハムストリングスの柔軟性と股関節屈曲の可動域を引き出しています。

デッドリフト後はハムストリングスの「パッシブスタティックストレッチ」を行いましょう!!

①イスに浅めに腰掛ける
②右膝を伸ばしてつま先を天井へ向けておく
③背スジを伸ばしお辞儀をする(20秒保持)
※背中が丸まらないように注意しましょう

重力によってハムストリングスを他動的に引き伸ばし弛緩させている状態です。

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