TUGテストのやり方|立つ・歩く・方向転換を測る安全な方法

椅子から立ちコーンまで歩く人物

結論:TUG(Timed Up and Go)テストは、椅子から立ち、3m歩いて向きを変え、戻って座るまでの時間を測ります。複数動作を連続して行うため、初回やふらつきがある人は必ず補助者をつけ、普段の歩行補助具を使用します。

TUGテストのやり方とは

TUGは立ち上がり、直線歩行、減速、180度方向転換、再着座を一続きでみる移動能力テストです。CDCのSTEADIでも高齢者の可動性評価として示されています。時間が長い理由は脚力だけとは限らず、痛み、バランス、視覚、理解、方向転換への不安などが関わります。単独の秒数で病名や将来の転倒を断定しません。

測定値は、その日の能力を完全に表す点数ではありません。睡眠不足、疲労、食事、服薬、室温、床面、説明の理解、測定者の反応時間でも変わります。最初に「何を知りたいか」を決め、同じ条件で変化を見る材料として使いましょう。基準値を参照するときは、対象年齢、性別、測定姿勢、試行回数、採用方法、単位が自分の手順と一致するかを確認します。異なる手順の数字を横並びにすると、改善も低下も誤って見える可能性があります。

測定前の準備と安全確認

肘掛けのある標準的な安定した椅子を壁際に置き、前脚位置から直線3m先へコーンまたは床テープを置きます。往復経路の幅を十分に取り、敷物やコードを除きます。普段使う杖や歩行器は使用し、靴も通常のものにします。測定者は方向転換側を確認し、参加者の横後方を移動できるようにします。

測定日は体調を確認し、発熱、強い倦怠感、胸痛、安静時の息苦しさ、強いめまい、急な麻痺やしびれがあるときは行いません。動作中に鋭い痛み、視界が暗くなる感じ、冷汗、動悸、いつもと違う息切れが出たら直ちに中止し、安全な姿勢で休みます。症状が強い、休んでも改善しない、転倒して頭を打った場合は医療機関へ相談してください。セルフチェックは診断ではなく、受診の代わりにもなりません。

具体的な測定手順

立つ・歩く・方向転換・着座の流れ
立つ・歩く・方向転換・着座の流れ
  1. 椅子に背をつけて座り、手は肘掛けへ置く。足を安全に立てる。
  2. 『用意、始め』の合図で計時し、自分の通常の方法で立ち上がる。
  3. 普段の安全な速さで3m先まで歩き、目印を回って方向転換する。
  4. 椅子まで戻り、向きを変えて安全に座る。お尻が座面へついた時点で計時を止める。
  5. 秒数とともに、使用した補助具、方向転換の側、よろめき、手の使用を記録する。

やり直す条件を先に決める

測定を始める前に、足が線を越えた、補助物へ体重を預けた、指定姿勢を保てなかった、計時操作を誤ったなど、やり直し条件を決めます。都合のよい試技だけを選ばず、無効になった理由も記録すると、次回の手順が安定します。練習回数と本番回数を混同しないことも大切です。

記録の残し方と結果の見方

0.1秒単位の時間だけでなく、椅子高、肘掛け、3mの測定起点、靴、補助具、指示した歩行速度を残します。再測定で椅子やコースを変えないよう床位置を記録すると便利です。CDC資料には高齢者の転倒リスクスクリーニングとして12秒以上という目安がありますが、対象と手順をそろえた臨床上の目安であり、自己診断の境界線ではありません。

結果は「できた・できない」で終わらせず、動作の質も短くメモします。左右差、ふらつき、痛み、息切れ、手の補助、途中停止などです。初回値を基準に、同じ場所・道具・説明・採用法で再測定します。わずかな差をすぐ改善や悪化と決めず、複数回の傾向と日常生活の変化を合わせて判断してください。

よくある間違い

3mを歩数で推定する、軽い椅子が動く、コーンの手前で折り返す、最大速度で急ぐ、普段の杖を外すと結果と安全性が変わります。測定者が腕を引くと標準値ではなくなります。着座時に後ろ向きのまま勢いよく倒れ込まず、椅子の位置を確認してから座ります。

スマートフォンで撮影して確認する場合は、撮影操作のために一人で危険な姿勢を取らないでください。動画はフォーム確認には役立ちますが、カメラ角度によって距離や角度が歪みます。数値は実物のメジャーやタイマーで測り、動画だけから推定しないようにします。

難しい場合の調整と次の運動

練習は一度、ゆっくり順路を確認する程度にします。方向転換が苦手なら、測定ではなく手すりや見守りのある環境で小さな歩幅の方向転換を練習します。転倒歴、繰り返すふらつき、立ちくらみ、急な歩行変化がある場合は、秒数にかかわらず医療・リハビリ専門職へ相談します。胸痛、強い息切れ、急な麻痺は測定を中止し緊急性を判断します。

運動へつなげるときは、測定動作そのものを毎回最大努力で反復するのではなく、必要な要素を安全に練習します。最初は安定した支持物の近くで少ない回数から始め、翌日まで痛みや強い疲労が残らない範囲にします。数値が低いことを理由に、急に高負荷の筋トレや強いストレッチを追加しないでください。

複数の体力チェックを組み合わせる

結果を総合して考えるには、自宅でできる体力測定の全体ガイドへ戻りましょう。静的バランスは開眼片足立ちテストの測り方で確認できます。下半身の反復力は30秒椅子立ち上がりテスト、移動を含む機能はTUGテストと組み合わせると、一つの数字に偏りにくくなります。リンク先が自分に適さない場合は無理にすべて実施する必要はありません。

FAQ

杖を使ってもよいですか?

普段使っている補助具は安全のため使用し、種類を記録します。補助具なしの値とは分けて扱います。

走ってもよいですか?

通常は普段の安全な歩行速度で行います。走るテストではありません。

12秒を超えたら転倒しますか?

いいえ。CDCの目安は高齢者のスクリーニング情報の一つで、個人の転倒を確定しません。他の所見と合わせて専門職が判断します。

まとめ

TUGテストのやり方は、条件を統一して初めて比較に使えるセルフチェックです。距離・時間・回数だけでなく、姿勢、道具、左右、補助具、症状も記録しましょう。安全に完了できない場合は数値を取ることより中止を優先し、必要に応じて専門職へ相談してください。

参考情報

測定方法と安全確認の参考:公的機関・原著資料。資料の対象者と測定条件を確認したうえで参照してください。

測定の精度を高める実践ポイント

TUGの記録は、器具が高価かどうかより、手順をそろえられるかで信頼性が変わります。測定前に道具を並べ、床の水平と滑り、照明、通路の障害物を確認します。説明文は毎回同じ言葉で読み、開始合図も統一します。測定者が変わると判断のタイミングが変わるため、可能なら同じ人が担当します。家族が手伝う場合は、数値を急かさず、安全確保と読み取りを役割分担してください。

主な指標は立ち上がりから再着座までの秒数ですが、数値だけを残すと測定条件の違いに気づけません。最低限、「椅子・3m・補助具・通常速度・方向転換側」を一緒に記録します。さらに動作の質として「コーンを正しく回り、椅子を確認して安全に座れるか」を観察します。数値が同じでも、痛みなく安定してできた場合と、ふらつきや代償動作を伴った場合では意味が異なります。

タイマーとメジャーの読み方

ストップウォッチは押しやすいものを用い、開始・終了の基準となる身体位置を先に決めます。手動計時には測定者の反応時間が含まれるため、百分の一秒まで表示されても細かな差を能力差とみなしません。メジャーは床や壁へまっすぐ固定し、斜め上から読まず目盛りへ視線を合わせます。計算した値には元の距離と時間も残し、後から式を確認できるようにします。

再測定するタイミング

同じ日に何度も最大努力を繰り返すと、動作への慣れで上がる一方、疲労で下がることもあります。規定回数を終えたら追加測定を重ねず、運動計画を見直す目的なら2〜4週間など一定期間を空けます。再測定前の激しい運動、長時間の座位、飲酒、睡眠不足は結果へ影響しやすいため、前回と大きく条件が違う日は延期も選択肢です。

改善の確認では、1回の最高値ではなく複数回の傾向を見ます。前回より良くても安全性が下がった、値は変わらなくても動作が滑らかになった、といった変化も重要です。反対に、明らかな低下が続く、日常の立ち上がりや歩行が急に難しくなった、転倒が増えた場合は、自己流の練習量を増やす前に原因を専門職へ相談してください。

記録用テンプレート

  • 測定日・時刻・場所・室温
  • 採用した手順と試行回数
  • 道具の寸法、距離、椅子や床の種類
  • 左右、靴、補助具、見守りの有無
  • 測定値:立ち上がりから再着座までの秒数
  • 痛み・息切れ・めまい・ふらつきの有無
  • 動作メモ:コーンを正しく回り、椅子を確認して安全に座れるか
  • 次回も同じにする条件と変更点

このテンプレートをスマートフォンのメモや紙に保存し、単位を省略しないようにします。写真を残す場合は個人情報の扱いに注意し、測定に必要な床位置や器具設定だけを撮影すると再現しやすくなります。数値を他人と競うのではなく、自分の生活に必要な動作を安全に保つための情報として使いましょう。

測定当日の流れ

開始前

食後すぐや入浴直後を避け、水分を取り、普段どおりの服装と履物を選びます。本番前に順路をゆっくり歩き、コーンの回り方と椅子への戻り方を確認します。説明を最後まで読んでから道具を配置し、途中で迷わないようにします。見守る人は、測定を成功させるために体を押す役ではなく、転倒防止と記録を担当します。

測定中

呼吸を止めず、数値を伸ばすための勢いや反動を使いません。測定者は応援でペースを変えさせず、決めた合図と終了条件を守ります。姿勢が崩れたときは無理に続けず、その試技を無効とするか、安全を確保して終了します。痛みや恐怖感が出た時点で、予定回数が残っていても中止します。

終了後

椅子に座るなど安定した姿勢で呼吸と体調を確認し、値と単位をすぐ記入します。椅子前脚から3m地点、補助具、方向転換側を記録します。測定後に症状が残る場合は運動を追加せず休み、回復しない場合は医療機関へ相談します。次回の比較に必要なのは最高記録だけではなく、同じ手順を再現できる具体的なメモです。