
ロコモの立ち上がりテストは、高さの異なる台から両脚または片脚で立ち、下肢の移動機能を確認するロコモ度テストの一つです。大切なのは低い台へ無理に挑むことではなく、公式手順どおりに成功条件をそろえ、安全に立てた最も低い高さを記録することです。
立ち上がりテストで分かること
このテストは太ももだけを測る筋力測定ではありません。股関節・膝・足首の力、体幹の制御、重心移動、バランスが合わさった立ち上がり能力を見ます。日本整形外科学会のロコモ度テストでは、2ステップテスト、ロコモ25と合わせて移動機能を確認します。単独結果から病名を診断するものではありません。
用意する台と測定環境
公式テストでは10、20、30、40cmの台を使います。座面の高さを測り、沈むソファ、キャスター付き椅子、軽く動く箱は使いません。裸足または滑りにくい条件をそろえ、台の前方を十分に空けます。片脚試行では転倒リスクが上がるため、補助者と安定した支えを用意してください。
成功の条件
腕を胸の前で組み、反動をつけずに立ちます。立てたら姿勢を保ちます。勢いで台から飛び出す、手を使う、反対脚を床につく、立位を保てない場合は成功として数えません。公式資料の動画と説明を測定前に確認すると判定がそろいます。

基本の測定手順
- 40cm台に浅すぎず深すぎない位置で座り、両足を肩幅程度に置きます。
- 腕を胸の前で組み、両脚で立ち上がって安定を確認します。
- 公式手順に沿って両脚でより低い台へ進みます。
- 片脚試行は安全を確保し、指定された姿勢と順序で行います。
- 成功した高さ、両脚・左右片脚の別、支えや痛みの有無を記録します。
ロコモ度の判定は「どの高さから、両脚または片脚で立てたか」の組み合わせで行います。自己流の順番では公式判定と一致しません。日本整形外科学会の最新版判定表を使い、年齢にかかわらず無理な片脚試行は避けます。
うまく立てない原因
足が台から遠い、膝が内側へ入る、上体を起こしたままで重心が前へ移らない、台が高すぎる・低すぎる、怖さで動きが止まるなどが考えられます。失敗は即座に筋力不足を意味しません。痛みや可動域、バランスの影響を切り分けます。
ロコモ予防の筋力トレーニングは測定後の運動選びに役立ちますが、痛みがある状態で結果だけを改善しようと反復しないでください。
測定前の共通セルフチェック
測定値を比べる前に、測ってよい体調かを確認します。発熱、強い疲労、胸の痛み、普段と違う息切れ、めまい、動悸、急な関節痛がある日は実施しません。睡眠不足、飲酒、激しい運動の直後も結果を揺らします。治療中の病気がある人、転倒歴がある人、医師から運動を制限されている人は、自己判断で負荷の高いテストを始めず医療者へ相談してください。
床は乾いて滑らず、周囲にぶつかる物がなく、照明が十分な場所を選びます。椅子や台を使う場合はぐらつきがないかを押して確認します。転倒の可能性がある測定では、壁や手すりの近くに立ち、可能なら補助者に同席してもらいます。ただし、支えを使ったかどうかは結果に必ず記録します。
同じ条件で再測定する
変化を見る目的なら、時刻、履物、床、器具、休憩時間、説明、計測者をできるだけそろえます。練習で慣れただけでも結果は良くなるため、初回だけ練習を行った場合はそのことも残します。左右を測る場合は開始側を固定し、疲労が影響しそうなら十分に休みます。
結果の読み方
公式のロコモ度判定は立ち上がりテストだけでなく、2ステップ値とロコモ25も含めて確認します。いずれかが該当する場合の扱いを含め、日本整形外科学会の最新情報を参照してください。
一度の値だけで「体力がある・ない」と決めません。測定誤差、体調、痛みへの不安、器具への慣れが含まれます。判定表を使うときは、対象年齢、性別、測定姿勢、用具、単位が自分の条件と一致するかを確認してください。研究や公的資料の基準は集団の目安であり、病名を決める診断基準とは限りません。
記録用メモ
- 日付・時刻と測定場所
- 測定条件、器具、履物
- 結果と単位、左右差
- 痛み、息切れ、ふらつき、支えの使用
- 前日の運動、睡眠、服薬など普段と違う点
改善を確認するなら、毎日競うより同じ手順で数週間おきに見直す方が実用的です。数値が急に悪化した、日常動作まで難しくなった、症状を伴う場合は、再挑戦を繰り返さず専門家へ相談してください。
よくある間違い
最も多いのは、前回と違う条件なのに数字だけを比較することです。台の高さ、歩行距離、テンポ、休憩、腕の使い方が変わると別のテストになります。また、失敗動作を成功として数える、終了条件を途中で変える、良い方の値だけ残すことも避けます。開始前に「成功の条件」「中止条件」「記録単位」を紙に書くと迷いが減ります。
測定はトレーニングではありません。限界まで何度も繰り返すと疲労で精度が落ち、転倒や痛みのリスクも高まります。必要な試行回数だけ行い、練習と本番を分けてください。
中止と受診の目安
胸の圧迫感、冷汗、強い息苦しさ、失神しそうな感覚、突然の激しい頭痛、片側の力が入りにくい状態が出たら直ちに中止し、緊急性に応じて救急要請を検討します。鋭い痛み、腫れ、しびれ、ふらつきが残る場合も再測定しません。数値が悪いこと自体を病気と断定せず、症状と生活上の困りごとを添えて医療機関へ相談しましょう。
関連する体力チェック
FAQ
普通の椅子で代用できますか?
練習や経過観察はできますが、座面高が公式の10cm刻みと違えば公式判定には使えません。高さをcmで記録しましょう。
片脚で立てないと異常ですか?
一つの結果だけで異常や病気とは判断できません。痛みや日常生活の不自由があれば専門家に相談してください。
毎日測ってもよいですか?
限界試行を毎日行う必要はありません。同条件で間隔を空け、運動の経過確認に使います。
まとめ
安定した規定高の台、成功条件、両脚・片脚の区別をそろえることが正確さの要点です。安全を優先し、結果は他のロコモ度テストと合わせて読みましょう。
結果別に次の行動を選ぶ
40cm台の両脚立ち上がりから不安定なら、まず日常の椅子から手を使わず安全に立てるかを確認します。低い台や片脚へ進む前に、足位置、前傾、痛みの有無を見直します。両脚はできるが片脚で左右差が大きい場合は、片足立ちや歩行速度など別要素も確認します。
運動へつなぐときは、安定した椅子からの立ち座り、支えを使ったスクワットなど、成功できる範囲を選びます。判定を良くするために低い台から勢いよく反復するのではなく、膝とつま先の向き、足裏の接地、呼吸を整えます。
測定の再現性を高める詳しい方法
開始前の説明を固定する
同じ人でも、説明の言葉が変わると努力の仕方が変わります。「普段どおり」「できるだけ速く」「痛みのない範囲」では意味が異なります。採用した資料の指示文を短く書き、毎回同じ内容を伝えます。励ましの有無や回数の読み上げも統一します。
練習と本番を区別する
初めての動作は手順理解に時間がかかります。安全な練習を行い、姿勢と終了条件を理解してから本番へ進みます。練習で疲れた場合は十分に休みます。本番を複数回行う方式では、最良値か平均値かを事前に決め、都合のよい値だけ選びません。
計時と回数の誤差を減らす
ストップウォッチ担当と動作判定担当を分けられると数え間違いが減ります。一人で行う場合は動画を安全な位置から撮り、後で確認する方法があります。ただし撮影機器を操作しながら測定せず、個人情報を含む動画の共有範囲に注意します。
数値と単位をセットで書く
時間は秒、距離はm、台高はcm、心拍はbpm、回数は回として残します。「12」だけでは後から意味を確認できません。小数点の扱いも統一し、機器が示す桁以上に細かく記録しません。測定不能は0と同じとは限らないため、「中止」「未実施」「補助あり」を区別します。
結果を運動計画へ反映する手順
- 安全上の問題や症状がなかったかを最初に確認します。
- 前回と測定条件が一致するかを確認します。
- 総合値だけでなく、失敗動作や左右差を見ます。
- 改善したい要素を一つ選び、低い負荷の運動を決めます。
- 運動量を記録し、同じ条件で間隔を空けて再測定します。
測定結果が良かった日でも、急に運動量を倍へ増やさないでください。反対に低い値が出ても、罰のように運動を追加しません。疲労や痛みが残らない量から始め、頻度、時間、強度のうち一つずつ調整します。
家族や補助者が確認する点
補助者は記録だけでなく、転倒経路を塞ぐ物を除き、緊急時にすぐ支えられる位置を取ります。腕を引っ張って成功させた場合は正式結果に含めません。本人が中止を申し出たら尊重し、記録のために続行させないでください。
結果を共有するときは「できなかった」と評価するより、「この条件ではここまで安全にできた」と事実を伝えます。数値は生活を支えるための情報であり、他人と競う順位ではありません。
再測定の前に振り返るチェックリスト
前回と同じテスト名でも、条件が一つ変われば結果の意味は変わります。記録用紙を見て、器具の寸法、開始姿勢、合図、テンポ、終了条件、休憩、補助具、履物が一致しているかを順に確認します。風邪、寝不足、筋肉痛、暑さなど普段と違う要因があれば、無理に予定日に測らず延期する判断も大切です。
改善が見られたときは、日常生活でも同じ変化があるかを確かめます。測定だけ上達しても、外出、立ち座り、階段、家事が楽になっていなければ、運動内容を見直す材料になります。反対に数値が同じでも、痛みが減った、支えが不要になった、息切れが軽くなったなら重要な変化です。
専門家へ伝える情報
相談するときは結果だけでなく、採用した手順の出典、実施日、単位、症状が出た時点、日常で困る動作をまとめます。動画がある場合も、本人の同意とプライバシーを確認して扱います。医師、理学療法士、健康運動指導士などが同じ条件を再現できる記録ほど、次の判断に役立ちます。
セルフチェックの目的は合格点を取ることではなく、安全に運動を選び、変化を早めに捉えることです。結果に不安があるときは限界試行を繰り返さず、より安全な評価へ切り替えてください。


