
床からの立ち上がりテスト(Sitting-Rising Test)は、立位から床へ座り、再び立つ動作を、手・膝などの支持とバランスから採点する方法です。床生活の能力を確認できますが、転倒リスクがあるため、痛みや不安がある人が一人で試すテストではありません。
採点の基本
原法では「座る」と「立つ」を各5点から評価し、手、前腕、膝、脚側面など一つの支持を使うごとに原則1点を減点し、目立つバランス崩れは0.5点減点します。合計は最大10点です。ただし採点は観察技術が必要で、動画や原著の手順を確認します。
測定手順
- 滑らないマット上に立ち、補助者が横へつきます。
- 指定に従い、できるだけ支持を使わず床へ座ります。
- 安定して座った後、同様に立位へ戻ります。
- 使用した手、膝、前腕、脚側面とバランス崩れを記録します。
- 座る点と立つ点を別々に採点します。

安全な軽減方法
不安がある場合は採点を目的にせず、安定した台や椅子へ手を置く練習に切り替えます。支持を使った動作を「失敗」とせず、現在必要な補助として記録します。人工関節、急性腰痛、強い膝痛、骨折リスクがある場合は自己実施を避けます。
結果から見るポイント
低い点の理由は筋力だけではありません。股関節・足首の動き、バランス、床への恐怖、痛み、慣れが影響します。点数を上げるために危険な脚の組み方を強制せず、生活で必要な安全な起き方を優先します。
測定前の安全確認
セルフチェックは診断や治療の代わりではありません。胸の痛み、普段と違う息切れ、めまい、動悸、発熱、急な関節痛、しびれ、強い疲労がある日は実施しません。治療中の病気、最近の手術、転倒歴、医師からの運動制限がある場合は、実施の可否と中止基準を医療者に確認してください。
床は乾いて滑らず、照明が明るく、周囲に家具や荷物がない場所を選びます。椅子、壁、測定器具が動かないかを押して確認します。バランスを崩す可能性があるテストは一人で行わず、補助者をつけます。補助者は記録だけでなく、転倒時に支えられる位置に立ちます。
開始前チェック
- 痛みや体調不良がない
- 器具の寸法と配置を測った
- 成功条件と終了条件を理解した
- 時計、記録用紙、筆記具を用意した
- 必要なら補助者と緊急連絡手段を確保した
結果の読み方
SRTの点数は原法の支持・バランス規則で採点した場合にのみ研究値と比較できます。家庭では合計点だけでなく、どこに支持が必要だったかを重視します。
結果は一度の合否で決めません。睡眠、食事、服薬、前日の運動、室温、不安、測定への慣れでも変わります。基準値を使う場合は、年齢、対象集団、姿勢、器具、単位、試行回数が自分の測定と一致するかを確認します。研究上のカットオフは病名を決める診断値とは限りません。
必ず残す記録
- 日付、時刻、場所、体調
- 器具の寸法、床、履物、補助具
- 結果と単位、左右、試行回数
- 失敗動作、支えの使用、中止理由
- 痛み、息切れ、ふらつきなどの症状
変化を見るなら、同じ時刻帯、同じ器具、同じ説明、同じ休憩で再測定します。初回だけ練習した場合は、その事実も記録します。良い値だけを選ばず、採用する値が最良値、平均値、最初の値のどれかを先に決めます。
測定誤差を減らす方法
説明と合図を固定する
「普段どおり」と「できるだけ速く」では努力の仕方が異なります。採用したプロトコルの指示文を毎回同じように読み、開始・終了の合図、励まし、回数の読み上げも統一します。家族が測る場合も途中で判定を甘くしません。
練習と本番を分ける
初めての動作は理解不足で遅くなることがあります。軽い練習で順番と姿勢を確認し、疲労が抜けてから本番を行います。測定を何度も繰り返すと、体力ではなく学習や疲労を測ることになるため、規定回数で終了します。
単位まで書く
時間は秒、距離はcmまたはm、回数は回、質問票は点として残します。「12」のように数字だけ書くと後から比較できません。測定不能、本人の中止、補助あり、0点は意味が異なるため、別々に記録します。
よくある間違い
器具や姿勢を前回と変えたのに同じ表へ記入する、失敗動作を成功として数える、痛みを我慢して最後まで続ける、他人の値と競うことは避けます。また、異なるプロトコルの名称が似ていても、判定表を流用してはいけません。
測定はトレーニングではありません。結果を上げるために同日に限界試行を反復せず、改善運動は安全に成功できる負荷から始めます。頻度、時間、強度のうち一つずつ変えると、身体の反応を確認しやすくなります。
中止・受診の目安
胸の圧迫感、冷汗、失神しそうな感覚、強い呼吸困難、突然の激しい頭痛、片側の力が入りにくい状態があれば直ちに中止し、緊急性に応じて救急要請を検討します。鋭い痛み、腫れ、しびれ、ふらつきが残る場合も再挑戦しません。結果の悪化に日常生活の困難が伴う場合は、記録を持って医療機関へ相談します。
結果を運動へつなげる手順
- 症状や安全上の問題がなかったかを確認します。
- 前回と条件が一致する結果だけを比較します。
- 回数や時間だけでなく動作の崩れを見ます。
- 改善したい要素を一つ選び、低負荷の運動を決めます。
- 数週間続け、同じ条件で再測定します。
数値が良くても運動量を急に倍へ増やさず、低くても罰のように運動を追加しません。測定結果、翌日の疲労、日常動作の変化を一緒に見ます。
関連するセルフチェック
再測定前のチェックリスト
器具、姿勢、合図、テンポ、休憩、履物、補助具を前回記録と照合します。体調が違えば予定を延期して構いません。数値が同じでも、痛みが減った、支えが不要になった、日常動作が楽になったなら重要な変化です。反対に数値が向上しても生活上の困りごとが増えた場合は、測定への慣れだけで判断せず専門家へ相談してください。
FAQ
脚を交差してもよいですか?
原法の指示と本人が安全に選ぶ方法を確認します。特定の方法を無理に強制しません。
椅子につかまったら何点ですか?
原法外の外部支持となるため正式採点より、安全な補助動作として別記録にします。
床に座れないと異常ですか?
一つの結果で診断できません。痛みや生活上の困難がある場合は専門家へ相談します。
まとめ
座る・立つを各5点から支持とバランスで評価します。採点より転倒防止を優先しましょう。
支持した部位を図で残す
手、前腕、膝、脚側面のどこを使ったかを簡単な人体図へ印すると、合計点が同じでも動作方法の変化が分かります。安全な生活動作として必要な支持は無理に外しません。
フォームを観察するときの具体的な視点
正面だけでなく、可能なら横からも姿勢を確認します。正面からは左右の足幅、膝や骨盤の偏り、支持物への接触を見ます。横からは体幹の傾き、動作範囲、開始・終了姿勢がそろっているかを見ます。速さや回数が良くても、後半だけ動作範囲が小さくなった場合は、完全な反復と崩れ始めた時点を分けて記録します。
動画を使う場合は、本人の同意を得て、安全な位置へ端末を固定します。撮影ボタンを操作しながら測定しません。映像は動作を振り返る補助であり、画角やレンズの影響もあるため、専門的な診断には使いません。保存・共有範囲にも注意してください。
記録表の作り方
一行目に採用したテスト名と手順の出典を書きます。列には日付、結果、単位、器具条件、成功回数、失敗回数、症状、中止理由、補助の有無を設けます。左右がある場合は右と左を別列にし、左右差の計算方法も固定します。質問票では総得点だけでなく、該当した領域を残します。
例として「42」という数字だけでは、42秒、42回、42点のどれか分かりません。「42秒、膝角度約90度、手の補助なし、腰が落ちて終了」のように条件と終了理由を添えると、次回も同じ基準で比べられます。測れなかった場合は0とせず「体調不良で未実施」「痛みで中止」と書きます。
結果が前回より悪かったとき
まず条件の違いを探します。椅子や台の高さ、床、履物、練習回数、休憩、計時者が違えば、能力低下とは限りません。睡眠不足、脱水、発熱、前日の強い運動、食事不足、薬の変更も確認します。一日だけ悪い場合は体調が戻ってから同条件で測り直します。
急な低下が続く、転倒や体重減少がある、今までできた日常動作が難しくなった場合は、限界試行を反復せず医師や理学療法士などへ相談します。記録表があれば、いつから何が変わったかを伝えやすくなります。
結果が良くなったとき
数値の改善に加えて、動作が滑らかになった、支えが減った、息切れや痛みが減った、翌日の疲労が軽いかを確認します。測定への慣れだけで良くなることもあるため、数値が一度上がっただけで負荷を大幅に増やしません。
運動を進める場合は、回数、保持時間、動作範囲、外部負荷のうち一つだけを少し変えます。安全に反復できる期間を作り、次の測定日まで通常の練習を記録します。テストそのものを毎回の主運動にする必要はありません。
家族・補助者の役割
補助者は成功させるために身体を押したり引いたりせず、転倒防止と客観的な記録を担当します。本人が中止を申し出たら尊重し、残り時間や回数のために続行させません。声かけは「あと少し頑張って」ではなく、事前に決めた終了条件を伝える形にします。
結果を本人へ返すときは「できない」「平均以下」と決めつけず、「この条件ではここまで安全にできた」「この動作で支えが必要だった」と事実を共有します。セルフチェックは順位づけではなく、生活を安全にする方法を選ぶ材料です。
専門家へ相談するときに伝える内容
測定名、採用手順、結果と単位、器具寸法、症状が出た時点、日常で困っている場面をまとめます。治療中の病気や薬がある場合は、自己判断で薬を止めず処方内容も伝えます。数値だけより、転倒、外出減少、食欲、睡眠、体重変化などを添える方が全体像を共有できます。
なお、再測定日は前回の結果を見ながら動きを合わせず、その日の状態を同じ説明で測ります。結果に不安がある場合は自己流で基準を緩めず、採用した手順と記録を専門家へ示してください。安全に測れなかったという情報も、運動や支援を選ぶ大切な判断材料になります。


