腹筋は筋肉痛でも鍛えていい?治し方から鍛え方まで紹介

監修者

宮城島大樹

NESTA PFT 食コンディショニングアドバイザー

「腹筋は毎日トレーニングをしてもいい」という言葉をたまに耳にします。しかし、昨日のトレーニングで腹筋に筋肉痛が出ているのだけど、本当にトレーニングをしてもいいのかな?そんな疑問を持っている方に、腹筋の鍛え方や筋肉痛のメカニズム、そして治し方を徹底解説します!

筋トレに欠かせない「超回復理論」とは?

腹筋の鍛え方を語る前に、筋トレをする上で欠かせない「超回復理論」というものに触れる必要があります。おそらくトレーニングをしたことのある方は、誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

超回復というのは、端的に言うと「トレーニングによって筋肉が成長するメカニズム」を示したものです。

通常、筋トレやハードな運動をすると、筋肉を構成している筋繊維に様々な亀裂や傷などの損傷が生まれます。そして筋トレ後の休養中に、体の中では成長ホルモンをはじめとした様々な物質が分泌され、筋繊維にできた損傷を治そうと働きます。

するとこの回復期間中に、筋肉が元々傷ついていた状態よりもより太く、より強く成長します。この仕組みが超回復なのです。この超回復が起こっているタイミングを狙ってさらにトレーニングを行うことで、「トレーニングによる筋繊維の損傷→超回復→トレーニングによる筋繊維の損傷」と言う好循環を回すことができるようになります。

ちなみに、筋肉というのはその成長の状態を覚えています。そのため、運動していない期間が続いた後に筋トレを再開しても、想像より早く前の重量を上げられるようになるのです。これを筋肉の記憶=「マッスルメモリー」と呼んでいます。

筋肉による超回復の期間の違い

超回復理論があるため、筋トレは毎日行うよりも、一定期間の休養を挟んだ方がより効率的に筋肉を成長させることができるというわけです(筋トレ上級者の中には、トレーニングする部位を3分割や5分割などに細かく分けることで、週5日〜7日という非常に高頻度でトレーニングを行うという人もいます)

そしてこの超回復の起きている時間ですが、筋肉のサイズによって若干のバラツキがあります。

しかし、それらを平均するとおよそトレーニング後から「48時間〜72時間」の間とされています。よく筋トレを行う頻度は(全身を1度に鍛えるのであれば)週2〜3回が望ましいと言われることがありますが、ちょうどこの頻度だと「毎週月曜日・木曜日」「毎週月曜日・水曜日・金曜日」のようにこの超回復の期間を空けてトレーニングをすることが可能というのが大きな理由の1つでもあります。

これに照らし合わせると、腹筋もこの期間に照らし合わせれば毎日トレーニングをするのではなくて1、2日起きにトレーニングをした方がいいのでは?という疑問が浮かびます。しかしそこには、腹筋のちょっとした裏事情が隠れているのです。

腹筋の超回復は比較的早い!

先ほど、超回復が起こるタイミングは筋肉によってバラツキがあると触れました。その中でも超回復の早い筋肉の代表として挙げられるのが「腹筋」です。実は腹筋は、トレーニングからおよそ24時間後には超回復が始まっていると言われています。

24時間後、つまりトレーニングをした翌日の同じタイミングには腹筋はトレーニングに最適な状態になっているというわけです。

これが、「腹筋は毎日トレーニングをした方がいい」と言われる理由ですね。

腹筋は毎日行うかはトレーニングの強度次第

超回復理論の観点で見ると、腹筋トレーニングを毎日行うのは理にかなっていると言えます。ただし、それもトレーニングの「強度」によって大きく変動すると言えるでしょう。

例えば、次の2つのトレーニングの仕方では、その休養期間も大きく変わってきます。

①毎日仕事から帰ったあと、プランクやクランチの簡単なトレーニングを10分ほどかけて行う
②週1回、ジムでクランチ、サイドレイズ、レッグレイズ、プランクなど複合的に30分〜45分ほどかけてトレーニングを行う

当然、2つのうち非常にトレーニング強度の高い②を毎日行うのはオーバーワークになってしまうでしょう。一方①のようなトレーニングであれば比較的負荷は軽いので、毎日行うことで一定の筋力アップや筋力の維持が可能と言えます。

このように、トレーニングの頻度と別にトレーニングの強度でも、トレーニングの考え方は大きく変わります。

例えば前述のように5分割など非常に細かい部位に分けてトレーニングをするという場合は、それぞれの部位のトレーニング頻度が週1度になるということも珍しくありません。しかし、それでも筋肥大を起こして筋肉を成長させることは十分にできます。

そのため、腹筋の鍛え方は先ほどの例のように「どのくらいの強度で行うか」によって、毎日行うか何日間かの休養期間を設けるかを決めると良いでしょう。

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「筋肉痛」とは一体何なのか?

さて、ここまでで超回復理論やトレーニング強度という2つの視点から、腹筋トレーニングの頻度について触れてきました。ここからはもう1つ、新たに「筋肉痛」という視点から腹筋の鍛え方を見ていきます。

よく筋トレをした翌日や2日後以降に筋肉痛がやってくると、「おっ、昨日の筋トレの効果が出ているな」と感じる人がいます。しかし、そもそも筋肉痛というのはなぜ起こるのでしょうか?

筋肉痛は、正式には「遅発性筋肉痛」と呼びます。まさに、遅れてやってくる筋肉の痛みというわけです。そしてこの筋肉痛ですが、実はまだ医学的に明確な原因というのがわかっておらず、いくつかの説が存在しています。

よく筋肉痛は、筋トレ中に筋肉に溜まる乳酸によって引き起こされると言われていましたが、今はそれよりも筋繊維の損傷によって起こる炎症が原因というのが有力なようです。この説によれば、筋肉痛は次のような仕組みで起こるとされています。

①トレーニングによって筋繊維に大小様々な損傷が生まれ、そこから炎症が起こる。
②炎症を引き起こした組織を取り除くために、白血球が集まる。
③白血球が組織を取り除く過程で、いくつかの「発痛物質」が発生し、痛みや腫れなどが起こる。

腹筋も含め筋肉痛が起きている時の筋トレは逆効果

筋肉痛というのは筋トレ初心者ほどよくあらわれます。慣れない動きに今まで使っていなかった筋肉が使われたことで、筋肉がより損傷した状態になっているというわけです。

この状態でさらに腹筋のトレーニングをすることで、筋トレ効果が得られるでしょうか?答えは「NO」と言えます。ただでさえ痛みが起きていて細かい動きができない筋肉痛の中でトレーニングをしても、適正フォームで腹筋を鍛えることは難しいでしょう。

そもそも、筋肉痛というのはいわば「筋肉が損傷したことによって起こる現象」です。ただでさえ傷ついている状態にさらに負荷を与えても、損傷が広がってしまうだけです。

そのため、筋肉痛が起きているうちはなるべく休養による回復に努め、腹筋のトレーニングは控えた方がいいでしょう。

ちなみに、筋トレ中級者や上級者になると、トレーニング後に必ずしも筋肉痛が起きない場合があります。それは効果的なワークアウトができなかったというわけではなく、継続的に高強度のトレーニングを続けていくことで、筋肉痛が起こりにくい体質になっているということが考えられます。

筋肉痛を防ぐ方法

筋肉痛が起こりやすい人の特徴として挙げられるのは、久しぶりに体を動かしたという人です。序盤で「マッスルメモリー」に触れましたが、筋肉は長く運動から離れていても、今までの運動によって成長していた筋繊維などは衰えにくくなっているのです。

筋トレというのは筋肉の伸縮によって負荷を与える運動で、それは腹筋トレーニングでも変わりません。長らく運動をしていないせいで柔軟性の失われた筋肉を急に伸び縮みさせれば、筋肉に様々な損傷が生まれてしまうのは自然なことと言えます。

そのため、筋肉痛を防ぐには「継続的な運動習慣」が効果的です。

筋肉痛は運動に慣れていない体に起こりやすいです。これから腹筋を鍛えたいという方は、まずは1回5分の運動からで構わないので、毎日続けられる範囲の運動習慣を身につけることから始めるといいでしょう。ただし、この運動中に筋肉痛が起きたらしっかりと休養を挟むようにしてください。

毎日できる腹筋の鍛え方① プランク

では、実際に毎日行う腹筋のトレーニングとしてオススメな鍛え方をいくつか紹介します。

まずはじめに紹介するのが「プランク」です。このトレーニングは筋肉の「等尺性伸縮」を利用した、アイソメトリックトレーニングの1つでもあります。

アイソメトリックトレーニングの特徴は「同じ姿勢をキープすることで筋肉を鍛える」という点にあります。実際にプランクも、うつ伏せの姿勢から両肘、つま先を立てて、体を浮かせた姿勢を30秒〜60秒キープすることで腹筋を鍛えます。

ポイントは、浮かせた体が一直線になるようお腹にしっかり力を入れることです。

アイソメトリックトレーニングは筋繊維を太くする=筋肥大は起きにくい種類のトレーニングですが、プランクはお腹にある3つの主要な筋肉、腹直筋・腹斜筋・腹横筋を刺激できる便利なトレーニングでもあります。

腹筋トレーニングの導入として、30秒の3セットを目安にトレーニングの「慣らし」として取り組むといいでしょう。

【プランクについてもっと詳しく知りたい方はこちらから】

毎日できる腹筋の鍛え方② クランチとレッグレイズ

「クランチ」「レッグレイズ」はいずれも腹筋の正面にある腹直筋を鍛えられますが、クランチは腹直筋上部、レッグレイズは腹直筋下部をそれぞれ鍛えられます。この2つは1セットで行うのがいいでしょう。

クランチを行う時のポイントは、「背中を丸めるようにして上体を起こす」「上体を起こすのは肩甲骨が浮くまで」の2つです。よくこのトレーニングでは腰まで上半身を持ち上げる人がいますが、体を動かす範囲が広いと腹筋への負荷が弱くなってしまうので注意してください。

それに対して、レッグレイズを行うと時のポイントは「両手を腰に敷く」という点です。このトレーニングはまっすぐ伸ばした足を上下に動かすのですが、この動作は腰に強く負担がかかります。そのため、両手を腰の下に敷くことで腰の補助をしてあげるというわけです。

いずれも、10回3セットを目安にゆっくりとした挙動で行いましょう。

毎日できる腹筋の鍛え方③ リバーストランクツイスト

「リバーストランクツイスト」は、主に脇腹にある腹斜筋を鍛えることができます。このトレーニングの特徴は、レッグレイズのように真上へ上げた足を、左右に倒すという点です。

レッグレイズとの違いは、両足は膝をやや曲げておくという点と、腰を少し浮かせるという点です。腰を浮かせることで、両足を左右に大きく倒せるようになり、より腹斜筋の負荷を上げることができます。

動作中は体が左右に倒れやすいので、両手を広げて姿勢を保てるようにしましょう。このトレーニングを左右それぞれに10回ずつ倒すのを1セットとして、合計3セット行なってみてください。

はじめのうちは、今回紹介した3種類のトレーニングをそれぞれ1つずつで構わないので取り組んでみてください。徐々に基礎体力や筋力がついてきたら、この3種類を一度にトレーニングしたり、あるいは他の部位のトレーニングも組み合わせて行うといいでしょう。

【リバーストランクツイストについてもっと知りたい方はこちらから】

腹筋などの筋肉痛を早く回復させるコツ

なるべく筋肉痛が起こらないようにトレーニングをしたいけれど、どうしても筋肉を成長させる上で筋肉痛になるのは避けて通れない道です。では、筋肉痛をなるべく早く回復させるにはどうすればいいでしょうか?いくつかコツをまとめてみました。

筋肉の血行を促進させる

筋肉痛のダメージ回復には、筋肉の血行を促進させる必要があります。そのために、ぬるめのお湯に半身浴に入るのがオススメです。またこれ以外にも、例えば散歩やウォーキングなど軽めの運動、伸ばしすぎない軽めのストレッチも筋肉痛の緩和や回復を早めるのに有効とされています。

栄養補給

トレーニングの後には、休養と適切な「栄養補給」も欠かせません。筋肉を作るのに欠かせないタンパク質や血行を促進してくれるビタミンC、ビタミンEなどを多く含む食材を選ぶといいでしょう。

タンパク質を多く含むのは肉や魚、大豆といった食品が、そしてビタミンC、ビタミンEを多く含む食材にはナッツや植物オイル、生野菜などがオススメです。

その他、筋肉痛の解消に効果的なことは以下のようなものが挙げられます。参考にしてください。
①しっかりと休養する
②運動後に筋膜をほぐす
③運動前のカフェイン摂取
④アイシング

宮城島大樹監修トレーナーからのアドバイス

NESTA PFT
食コンディショニングアドバイザー

ただし、アイシングやカフェインなどは感覚をなくして痛みをごまかしているにすぎません。これは治しているわけではないので筋肉痛は基本的に放置しておくしか対処法はありません。

筋肉痛と上手く付き合いながら腹筋を鍛えよう!

筋トレの頻度や強度、そして筋肉痛のメカニズムについて紹介しました。筋肉痛は筋トレでは避けられないものですが、痛みを軽減させたり早く回復させる方法も存在します。筋肉痛と上手く付き合いつつ、それぞれに合ったペースで腹筋を鍛えていきましょう!

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