筋肉痛と超回復の関係とは?筋肉をつくるための必須知識!

監修者

中島 健

NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

【プロトレーナー監修】筋トレの用語として有名なのが「筋肉痛」と「超回復」です。よく筋トレ翌日に筋肉痛がきたら良いトレーニングができている証拠だとか、筋肉痛は超回復が始まっている状態などと聞きます。そんな筋肉痛と超回復の真相や2つの関係を徹底的に調べました。

実はよくわかっていない「筋肉痛のメカニズム」

久しぶりに運動したら筋肉痛になってしまいました…。筋肉痛ってなぜなるんでしょうか?

中島 健監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

大丈夫ですか?(笑) 実は筋肉痛のメカニズムというのは確実にはまだ解明されていません。しかし、わかっている部分もありますのでしっかりと対処方法を学んでいきましょう

筋肉痛というのは、部活動や激しい運動をしたことがある人なら誰もが経験したことがあるものではないでしょうか。一般的に筋トレを始めとした運動をした翌日、あるいは2日目以降に全身(あるいは特定)の筋肉が痛くなるのが筋肉痛の特徴ですが、実はこれだけ身近な存在であるにもかかわらず、その原因は医学的にはっきりと特定できていないのだそうです。

少し前までは、筋肉痛は筋肉に溜まった乳酸によって起こると言われていましたが、現在では次のようなメカニズムで筋肉痛が起きているのではと言われています。

① 筋トレ、スポーツなどの運動により筋繊維に様々な傷が生まれる
② 白血球などの成分が、筋繊維の傷を治すために一ヶ所に集まる
③ ②の過程で筋肉に炎症が起き、刺激物質が作られる。
④ 刺激物質によって筋肉を覆っている「筋膜」が刺激され、痛みとして感じられる
⑤ トレーニングにより神経成長因子などが分泌され、その結果、通常では圧受容器を刺激しないような軽度の圧迫や筋収縮にも圧受容器が過敏に反応し、痛みが生じる。

ただし、これは現時点で有力とされている説ということなので、もしかしたら今後全く違う説が登場する可能性もあるかもしれませんが、この記事ではこの説を筋肉痛のメカニズムとして考えて解説していきます。

筋肉痛が筋トレや運動をした2日後にくるのはなぜ?

久しぶりにサッカーや野球といったスポーツを楽しんだ翌日は平気だったのに、2日後あるいは3日後になって急に全身が筋肉痛になってしまいました。そんな歳じゃないのに。なんかショックです(T_T)

中島 健監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

同じような苦い経験をした人は大勢います。
この経験を「ああ、私も歳を取ったなあ」と自虐的に語る人がいるのですが、実は遅れてやってくる筋肉痛というのは年齢が原因ではないのです。

ちなみに私たちが「筋肉痛」と呼ぶ痛みは、正確には「遅発性筋肉痛」と呼ばれています。そして筋肉痛の原因は「筋肉が修復される過程で生まれる痛み」なのですが、この修復のスピードというのは年齢による違いがあまりないそうなのです。

では、なぜ歳を取ると筋肉痛が遅く来るのか。それは「トレーニングの強度」「頻度」が関係しています。要するに、高強度のトレーニングや、トレーニング頻度の多い人ほど早く筋肉痛が出ると考えられます。

年齢を重ねると運動や筋トレを無意識でセーブしてしまいます。その結果、若い人よりも後から筋肉痛がやって来るそうなのです。

つまり、年齢が原因ではなく、トレーニングの質に関係していたということです。

筋肉痛を予防するための2つのコツ

できることなら筋肉痛をなるべく起こさないように運動を楽しみたいですよね。そこで、筋肉痛を予防するために知っておきたい2つのコツをまとめました。

ストレッチとウォームアップ

筋肉痛がひどくなりやすい人、長引きやすい人の特徴は「運動習慣がない」、あるいは「体が冷えた状態ですぐに運動を始める」などが挙げられます。
つまり、筋トレやスポーツに対する体の準備ができていないのに、いきなり体を動かし始めてしまうのが大きな原因なのです。

そのため、運動前には必ずストレッチとウォームアップを欠かさないようにしましょう。ストレッチはゆっくりと体を伸ばす静的なものだと体がリラックス状態になってしまうので、なるべく体を動かす動的なストレッチを取り入れましょう。

中島 健監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

勘違いされがちなのが、「運動後のストレッチが筋肉痛の回復を促進する」ということです。これは誤りであり、ストレッチに筋肉痛の回復を早める効果はありません。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

運動直後のアイシング・交代浴

運動直後に水風呂や冷たいシャワー、あるいはアイスパックなどを活用して体を冷やすことで、炎症を未然に防ぐことができます。また、温かい風呂と水風呂に交代で入る、交代浴は更に効果的だと考えられます。

超回復の仕組みはこんな風になっている!

筋肉痛の仕組みや予防法に触れたので、次に超回復について触れていきます。
筋トレを少しでもやったことのある人なら、「超回復」という言葉を1度は耳にしたことがあるかと思います。この超回復というのは、筋トレなどの運動によって体内で起こる次のような変化のことを指します。

①筋トレなどによって筋繊維などがストレスを受ける
②成長ホルモンなどの分泌により筋繊維などの修復が始まる
③その修復の過程で、筋肉がトレーニング前よりも強い状態に回復する

この①〜③までに起こる体の変化を「超回復」と呼んでいるわけです。そしてこの③で筋肉がより強くなった状態を狙ってさらに筋トレやハードなトレーニングで筋肉にダメージを与え、超回復によってより強い筋肉を…という一連の流れを繰り返すのが、筋トレにおける理想的なサイクルと言われています。

つまり、超回復というのは筋肉のクラッシュ&ビルドのサイクルそのものを指しているというわけです。そして多くのサイトや実用書では、その超回復のサイクルを「48時間〜72時間」と説明しているのですが、実は体の部位によって回復時間に差があります。

部位別の超回復にかかる期間

超回復の起こる期間は、一般的に筋トレから「48時間〜72時間後」と言われています。しかしこれはあくまで「一般的」という点がポイントです。
もう少し超回復理論を見ていくと、以下の2点でその時間が大きく前後することがわかっています。

筋肉ごとの超回復のタイミング

全身にある筋肉のサイズや形は全て異なります。ですからその違いによって、筋トレ後の超回復のタイミングも異なってくるのです。こちらもあくまで目安ではありますが、だいたい筋肉によって以下のような違いがあると言われています。

・腹筋:約24時間
・腕の筋肉(上腕二頭筋・上腕三頭筋):約48時間
・大胸筋や広背筋、大腿四頭筋など:約72時間

こう見ると、サイズの大きな筋肉部位ほど超回復に時間がかかるのがわかります。
腹筋は比較的回復の早い部位のため、トレーニングの度に腹筋の種目を入れた方がいいと言う人がいるのもこうした事実が理由のようです。

トレーニングの強度

例えば「筋トレ」と言っても、筋トレ初心者と上級者が行うトレーニング、あるいは自重で行うかウェイトで負荷をかけて行うかでもその違いは大きく出てきます。
トレーニング強度の高い場合や初心者の方が、超回復にかかる時間は長くなります。

筋肉痛になる部位別に分けたトレーニングスケジュール例

上記のような様々な条件で、超回復のタイミングは筋肉の部位によって大きく変わってくるので、それらを全て管理するのは非常に困難です。
そこで、筋肉の超回復として比較的当てはめやすい「48〜72時間」という期間でトレーニングの頻度を決めるのが有効といえるでしょう。

そしてこの超回復の理論に当てはめると、筋トレのスケジュールを以下のように組むことができます。

月:上半身・腹筋
火:下半身・腹筋
水:休息日
木:休息日
金:上半身・腹筋
土:下半身・腹筋
日:休息日

1週間に当てはめてスケジュールを組むと習慣化もしやすいですよね。ただしウェイトなどを活用してかなりハードなトレーニングをする筋トレ上級者の中には、下のようなスケジュールを組む人もいます。

月:胸
火:肩
水:腹筋
木:腕
金:背中
土:下半身
日:休息日

同じ部位のトレーニングを週1回しかこなせていませんが、これでも十分筋肥大や筋力アップは狙えます。まずは最初のスケジュールをこなしつつ、色々と思考錯誤してみるといいでしょう。

筋肉痛と超回復は実際に関係があるの?

筋トレをした翌日に筋肉痛がくると、「筋トレの効果が出ているな!」という達成感を覚える人は少なくありません。そして筋肉痛が起きているということは超回復が始まっていると感じてしまう人もいるのですが、結論は「筋肉痛と超回復は必ずしもイコールの関係ではない」と言うことができます。

ここで難しいのは、完全に無関係と言うわけではないという点です。筋肉痛は筋肉の修復の過程で起こっていると言う説があるように、筋肉の「回復期」にあたると言う認識は間違いではありません。

しかし、超回復が起きている間ずっと筋肉痛であるかと言うと、必ずしもそうではないのです。

実際に筋トレ上級者の中には、かなりハードなトレーニングをしたはずなのに翌日以降筋肉痛が起きないという人もいます。
また、筋肉痛と思っていたものが単なるケガや炎症を起こしているだけと言うことも否定できません。

そのため、「筋肉痛が起きたから超回復している」「筋肉痛が起きていないからトレーニングの効果が出ていない」とは言い切れないのです。

筋トレの効果やスケジュールの管理は、トレーニング中の体感やウェイトをどれだけ上げられたかという記録などでチェックした方がいいでしょう。

中島 健監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

「筋肉の成長のために筋肉痛にならないと!」と考えてしまうと過剰なトレーニングをしてしまうかもしれません。注意しましょう。

筋肉痛の回復期間と超回復のオススメ行動

なかなか区別がしにくい筋肉痛と超回復の複雑な関係ですが、いずれも筋繊維がストレスを受けていることに変わりはありません。
そのため、この2つが起きている期間のオススメの行動と言うのも実は似通っています。そんな行動を3つご紹介しましょう!

休養

まず1つ目は何と言っても「休養」です。酷使して疲弊した筋繊維を休ませることは一番の回復行動と言えるでしょう。

そこでパッと思い浮かべるのは「睡眠」です。睡眠中には成長ホルモンも分泌されて筋肉の成長を助けてくれるので、まさに体を癒すゴールデンタイムとも言えるでしょう。寝る前にストレッチなどをしてリラックスできるとさらにいいですね。

そして、休養と聞くともう1つ思い浮かべるのは「入浴」ですが、運動直後は熱々のお風呂に浸かるのを避けた方がいいでしょう。熱いお湯への入浴というのは意外に体力を使ってしまい、回復に使いたいエネルギーを消耗してしまうというわけです。ジムや自宅で汗を流した後は、できればシャワーかぬるま湯の半身浴などでさっと済ませる方が良いでしょう。

栄養補給

体の成長には「運動」「休養」、そして「栄養」も欠かせません。体が一気に修復から成長へと向かう回復期には栄養の重要性は特に高いでしょう。そこで、「トレーニング前」「トレーニング中」「トレーニング後」の3つの視点でどのような食事や栄養補給が必要かを解説します。

・トレーニング前
筋トレ前に摂取したいのは糖質(を含む炭水化物)です。
ダイエット中などでは敬遠されがちな糖質ですが、運動時には欠かせないエネルギー源となります。できれば運動1時間前などに摂取しておくと消化吸収のタイミングもいいですが、時間がない場合は直前にバナナを2本程度食べておけば十分です。

トレーニング前に摂取する糖質は、GI値の低いものを選びましょう。

・トレーニング中
トレーニング中はBCAAなどのサプリメントを摂るのも良いでしょう。
BCAAは筋トレ中の集中力アップの他、筋トレ前後に飲むことでそれぞれ「筋肉痛の抑制」「筋肉の成長を助ける」といった効果があるので、プロテインに次いで人気のあるサプリメントです。
・トレーニング後
トレーニング後は体内で筋肉を修復する作業が始まるため、この修復を手伝うためにしっかりと栄養を摂取しましょう。風邪を引いたときにも栄養摂取が必須ですよね。ざっくりですがこれと同じ理由です。
具体的にどの栄養素が良いかというと、バランス良く5大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)を摂取することがいいでしょう。

ここで誤解しがちなのが、プロテインの摂取です。タンパク質(プロテイン)は筋肉を作る栄養素ですので、トレーニング後にプロテインを摂取することは大切なのですが、プロテインが筋肉痛の回復を早めるといった科学的根拠はありません。プロテインは筋肉の成長のために摂取しましょう。

目安はトレーニング後30分以内と言われています。また、この時に重要なのは「タンパク質と一緒に糖質も摂取する」という点です。タンパク質が筋肉などに合成されるには糖質の存在が必要不可欠なのです。コンビニなどで手にはいるウィダーインゼリーなどでも良いでしょう。

運動

体が修復されている筋肉痛・超回復には休養と栄養が大切とお伝えしましたが、実はもう1つ大切な要素があります。
それが「運動」です。「体を休めることと正反対なのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、実は筋肉痛や超回復が起こっているタイミングでは、むしろ体を動かした方が良いと言われているのです。

これを「アクティブレスト(積極的休息)」と呼んでいます。まったく体を動かさない状態よりも、積極的に運動をした方が血流やリンパの流れが良くなり、疲労物質が抜けやすいことがわかっています。

このアクティブレストを活用するうえでポイントとなるのが「軽い負荷」の運動を行うという点です。あまり負荷の強いトレーニングでは休息にならなくなってしまうので、具体的には次のような運動がオススメです。

・ウォーキング
・軽めのジョギング・ランニング
・サイクリング
・ストレッチ
・ヨガ

これ以外にも、軽く汗を流す程度のスポーツ(登山やテニスなど)やストレッチ、いつもより軽い重量を扱った筋トレも効果的です。自分の好みに合わせて取り組んでみましょう。

筋肉痛と超回復は似ているようで違う

筋肉痛と超回復は直接的な関係は薄いですが、どちらも似たような時期に起こるというとてもわかりにくい存在です。
筋トレ生活ではこの2つを以下のように考えておくと良いでしょう。

・筋肉痛はトレーニング強度のバロメーターだが、ケガや過負荷の可能性も考慮する
・超回復は筋肉の成長サイクルだが、鍛える筋肉やトレーニング内容で大きな違いが生まれる

それぞれの違いを考えつつ、ケガのない効率的な筋トレライフを送ってください。

中島 健監修トレーナーからのアドバイス

NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

記事にもあるように、筋肉痛や超回復というメカニズムは科学的にはハッキリとわかっていません。しかし、トレーニングで効果を求める場合しっかりと追い込めたかどうかの目安に筋肉痛はなると思います。超回復に関しては回復時間を目安にし、ある程度筋肉痛が回復したら次のトレーニングを実施するといいと思います。筋肉痛にならないとトレーニングをした気がしないという方も多いですが、筋肉痛にならなくても適切な強度で行っていればトレーニング効果は出るという事はしっかりと覚えておきましょう。

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