筋トレ後の頭痛は「労作性頭痛」かも!?原因と治し方

監修者

谷口 隼

JSPO-AT、JATI-ATI

【プロトレーナー解説】筋トレや運動など、特定の動きをすることで起こる頭痛を労作性頭痛といいます。労作性頭痛が起こってしまった場合の治療方法や予防方法について解説します。

筋トレ中に起こる頭痛は一体何?

筋トレをしたら頭痛になることがあるんですが、なぜでしょうか?

谷口 隼監修トレーナーからのアドバイス

JSPO-AT、JATI-ATI

これは、筋トレをしている時に襲ってくる頭痛の一種で、「労作性頭痛」の可能性があります。

労作性頭痛の原因とは?

労作性頭痛が発症する原因は「筋トレなどの運動をすることによってのみ発症する」ということがその他の頭痛と違うことであり、運動に起因される頭痛は労作性頭痛と判断して良いでしょう。

医学的に労作性頭痛の原因を紹介すると、以下のようなものが原因として挙げられます。

<原因>
・脳の血管拡張
筋トレをしたり激しい運動を行うと、血液の流れがよくなります。すると、それに伴って血管が拡張します。そのため、脳の血管が刺激され、頭痛につながるといわれています。

・髄液圧の上昇
少し難しい話になりますが、脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液という液体にひたされています。この脳脊髄液は、脳の形を維持したり、脳の水分量を調整したりといった役割をしています。この脳脊髄液に圧力が加わると、全体の圧力が上昇し頭痛が起きるといわれています。

・頭蓋骨の筋肉異常
頭蓋骨にも筋肉はあります。過度な筋トレや、何らかの特殊な動きによって、頭蓋骨の筋肉に異常が出ると労作性頭痛につながる可能性があります。

・水分不足
体内の水分が不足すると、血液がドロドロになり血流が悪くなります。血流が悪くなると、脳が血行不良に陥り、それが原因で頭痛が起きている可能性があります。

さらに、この労作性頭痛はどんな動きによって引き起こされるかも個人差があります。

例えば、腕立てをした時に労作性頭痛が起こる人もいれば、スクワットをした時に労作性頭痛が起こる人、重たい荷物を持ち上げた時に労作性頭痛が起こる人など、様々です。共通して言えるのは、「何か特定の動きをした時に、必ずその頭痛が起こる」ということです。

労作性頭痛の症状とは?

症状や発症の仕方については以下のように個人差があります。

・運動中か運動後かは個人差がある
・症状の持続時間は個人差がある(ほんの一時的なものか、48時間継続する場合もある)

頭痛の程度も人それぞれで、ズキズキ出した軽い痛みを伴うだけの場合もあれば、誰かに後頭部を殴られたかのような強い痛みを伴う場合もあります。

また、頭全体が痛くなり、その場に立っていられなくなるほどの状態になる場合もあります。発症している時間も人それぞれで、数分から数十分で症状が治まる場合もあれば、半日から1日以上痛みが治まらないという場合もあります。体調や、個人差によってこの労作性頭痛の程度や期間は変わってくると言われています。

ちなみに、咳やくしゃみも筋肉の動きの一種なので、くしゃみをすると頭が痛くなるという人も労作性頭痛の可能性があります。

労作性頭痛の治し方・予防方法4つ

谷口 隼監修トレーナーからのアドバイス

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治し方・予防方法は主に以下の4つです。1つずつ見ていきましょう。

鎮痛剤やインドメタシンなどの薬

筋トレや運動後(中)に頭痛が発生してしまった場合の治し方は、鎮痛剤を服用しましょう。具体的な成分としてインドメタシンが効果的です。

インドメタシンが労作性頭痛に効果的であることを検証する実験があり、15人の被験者に対しインドメタシンを1日25mgずつ服用させ、最高150mgまで体内のインドメタシン濃度を高めた結果、筋トレや運動によって頭痛が引き起こされなくなった人が13人(87%)もいたのです。
その後インドメタシンの服用を中止すると、13人のうち12人が再度運動後に頭痛を発症しました。

この結果からインドメタシンの服用が労作性頭痛の対処や予防になることが言えます。

【参考文献】

酸欠にならないために呼吸をする

前述したように、筋トレなどの高負荷の運動を行うと、血流が活発になり血管が圧迫されて頭痛を引き起こす場合があります。
そうならないために、筋トレ中はしっかり呼吸をしながら行いましょう。

特にレッグプレスなどのマシンを使うトレーニングで呼吸を止めながら行うと、一気に酸欠になり、低血圧症になってしまう危険があります。しっかりと呼吸をして全身の酸素を循環させながらトレーニングをすることは頭痛の予防になります。

ポイントは、
・負荷を持ち上げる:息を吐く
・負荷をゆっくりと降ろす:息を吸う

以上の点を意識して行ってみましょう。

また、つい呼吸を止めて筋トレを行なってしまう場合は負荷が重すぎることが考えられます。呼吸を意識して出来る負荷設定をしていきましょう。

負荷設定を見直す

前述した呼吸を意識するために負荷設定を見直すのはもちらん、負荷があまりにも重すぎる場合は頭蓋骨周りにある筋肉が歯を食いしばったり、呼吸を止めて筋トレを行うことで過剰に力が入ってしまいます。

この状態での筋トレを繰り返すことで頭痛を引き起こしている可能性が考えられます。負荷設定を見直し、少しずつ重い重量に挑戦していきましょう。

休息を取る

もし運動中に頭痛がしたらまずは休んでください。そして前項にあったように酸欠にならないようにしっかりと深呼吸をしましょう。

運動後に頭痛がする場合もトレーニングを行うことを2,3日控えましょう。頭痛がする間は決して激しい運動を行わないでください。その期間の間に症状が改善される可能性があります。

頭蓋骨周りの筋肉のマッサージ

筋肉は一度緩めると力が入りづらくなる性質があります。
そのため、こめかみなどを「痛気持ちいい」と感じる程度でマッサージを行い、あえて力が入りづらい状態を作ってあげてから筋トレをしてみましょう。

また、肩こりと頭痛は密接な関係にあります。(緊張型頭痛)首回りのストレッチも行い、頭痛を予防していきましょう。

谷口 隼監修トレーナーからのアドバイス

JSPO-AT、JATI-ATI

もし、毎回同じトレーニングをする時に頭痛が起きる時はそのトレーニングだけメニューから外してみると良いでしょう。

水分を多めに摂取する

水分不足が労作性頭痛の原因の一つであるとお伝えしました。そのため、トレーニングを始める30分から1時間ほど前にコップ1杯~2杯の水を飲み、トレーニングをしてみてください。それで症状が改善されるようであれば筋トレをする前に毎回水を飲むことで、労作性頭痛は改善されます。

解明されていない労作性頭痛のメカニズム

実は、労作性頭痛にはまだ解明されてない部分がたくさんあり、ここに挙げたものが原因のすべてかどうかはわかりません。それほど、人によって労作性頭痛が起こる原因は違うのです。

一般的に労作性頭痛になる原因として多く挙げられているのが上記の4つの原因です。しかしそれだけではなく、人によっては全く別の原因もあるかもしれません。もし、労作性頭痛になってしまったら、まずは自分が何の動きをして、頭痛になったのか。そしてここに挙げた4つの原因の中にそれが当てはまるのかどうかを考えてみてください。

谷口 隼監修トレーナーからのアドバイス

JSPO-AT、JATI-ATI

筋トレにおいて労作性頭痛は、非常に厄介な存在です。

毎回特定の部位をトレーニングした時に頭痛が起こるため、その労作性頭痛と関係のある体の部位は、十分な量のトレーニングができないまま、他の部位に置いていかれてしまうのです。そのため、バランスよく体を鍛えるためには、一度病院に行って医師に診てもらうのが最も確実な治療方法だといえます。

もしあなたが本気で労作性頭痛に悩みなのであれば一度病院へ行ってみてください。

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