ビルドアップ走法とは?効果と具体的なやり方、トレーニング方法を解説

監修者

藤井隆太

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

ビルドアップ走とは、ランニング・マラソンにおいてペース設定を徐々に上げていくトレーニングの1つです。ビルドアップ走にはどのようなトレーニング効果があるのでしょうか?ビルドアップ走の具体的なペース設定とおすすめの練習頻度についても解説します。

ビルドアップ走とは?

ビルドアップ走って、どんなトレーニング方法を言うんでしょうか?ペース設定の方法など教えてください。

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

ビルドアップ走は「ビルドアップ」という語源にランニングの「走」るが加わった造語です。ビルドアップは「身体を鍛え上げる」という意味がありますので、ビルドアップ走とは、身体を鍛え上げるランニング方法という意味になりますね。

なるほど、でもいまいち、どう活用していいのかわかりません。どのようにトレーニングに組み込めば良いか詳しく教えてもらえませんか?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

わかりました。では、他の練習方法や走る距離、持久力やスピード強化にどのように影響があるのか詳しくみていきましょう。

ビルドアップ走とは?ペース走との違い

◯ビルドアップ走
ビルドアップ走とよく比較されるのがペース走です。
ビルドアップ走は、わかりやすく言うと徐々にペースを上げていくトレーニング方法のことを言います。
◯ペース走
それと比べて、ペース走は同じペースで走り続けるトレーニングのことを言いますね。
つまり、ビルドアップ走とペース走の大きな違いは、走っている中でペース設定を変えると言う点にあります。
マラソンへの練習は、走り込みが中心になりますので、このペース設定を変えるという事がとても重要になってきます。

ビルドアップ走の効果とは?

ビルドアップ走とペース走の違いは、ペース設定の違いにあるんですね。よくわかりました。でもペース設定を変えながら走る事でどのような効果が得られるんですか?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

そうですね。なぜ、この練習をする必要があって、どのような効果があるのかを知っておくことはとても大切な事です。では、今度はビルドアップ走で得られる効果を感じていきましょう

ビルドアップ走をすることは身体にどんな負荷を与えるか

ビルドアップ走は、お伝えした通り、徐々にペースを上げていく練習方法をいいます。

例をあげると、10kmの距離を走る場合に、3kmまでは1kmあたり5分のスピード、6kmまでは1kmあたり4分30秒のスピード、9kmまでは1kmあたり4分のスピードで走るように徐々にペース設定を変えていくことになります。

この徐々にペースを上げる事は、身体へかける負担も徐々に上げることに繋がります。

最初の3kmが心拍数110回、6kmまでの心拍数が130回、9kmまでの心拍数が150回、というように心拍数から見ても、徐々に身体に負担をかけていることに繋がります。
つまり、ビルドアップ走とは、徐々に身体に負担をかける練習方法ということができます。

徐々に身体に負荷を与える事で得られる3つの効果

①ペース変化に対する対応力が身につく

ビルドアップ走の効果で一番大切なことはここだと思います。
ペースの変化を意図的に行い、それに心肺機能筋組織内臓系等が順応できる能力をつけることができます。

もう少し噛み砕きますと、マラソン大会へ参加していると、状況によってペースの上げ下げが行われます。
強いランナーは、ペースが多少上下しても、それに対応できるだけの能力を持ち合わせていますが、上位争いで途中でよく脱落するようなランナーはペースの変化に対応できないことが多くあります。ビルドアップ走の練習をしておくと、ペースの変化に対しての耐性を高めることができ、同じペースで走っていたランナーと接戦になった場合に力が発揮できるようになります。

②より高い負荷での練習ができる

ランニングに慣れてくると、様々な練習方法を試す事になると思いますが、ペース走ではある一定の距離を同じペースで走るため、あまり速いペース設定では続けることができません。

しかし、ビルドアップ走では、最初のペースがゆったりとしたペースで始まるため、最後の数キロをいつものマラソンペースより速いペースで走るトレーニングも可能になります。

私たちの身体は、走りはじめは身体の各組織が順応するまでに少し時間がかかります。
そのため、一気にスピードに乗せてしまうと、高い負荷の練習をする前に疲れてしまうことが出てきます。
ビルドアップ走では、徐々に負荷を高めるため、最後の数キロをかなり高い負荷の練習にまで追い込むことができるので、そういった面でも大きな効果が期待できます。

③トレーニングに集中できること

最後は少し心理的な内容になりますが、一定のペース設定だけで20km走や30km走をすると、途中でそのペースに飽きてしまうことがあります。
ビルドアップ走では、その飽きを防止することもでき、練習メニューにマンネリ化が生じてきた場合に有効な練習とも言えます。

ビルドアップ走で得られる効果まとめ

総合的にまとめると、普通にペース走だけを繰り返しているだけでは、その練習に自分の身体が慣れてきてしまいます。人の身体は順応できるという最大のメリットであり、デメリットがありますので、同じ練習では筋肉の質も量も変化が乏しい状態になってしまいます。
そこで、ビルドアップ走を入れる事で、普段使用していない筋肉を使用したり、より高い心拍数でのトレーニングを行うことができ、全体的に負荷をかけた練習ができる事になります。結果的に目標としているペースでのランニングが楽に感じられるようになるでしょう。

ビルドアップ走の具体的なペース設定と練習頻度

では、最後にビルドアップ走の具体的なやり方と頻度について考えていきましょう。

ビルドアップ走のペース設定の具体例

ビルドアップ走では、ペース設定とどの大会に目標を定めるかが一番重要な課題となります。

今回は、フルマラソンを想定して考えてみましょう。
例えば、フルマラソンを4時間以内で完走したいとします。
その場合、ペース設定は1kmあたり5分40秒で走りきらなくてはならなくなります。この場合ビルドアップ走では最終的にこのペースより15秒〜30秒ほど速いペースまで最後は上げて終わるようにしましょう。

具体的に見ていきます。
(15kmのビルドアップ走の例)
15kmのビルドアップ走をする場合を想定します。

◯スタート〜5km
最初の5kmはフルマラソンペースよりも遅いペース1kmあたり6分前後ぐらいで走り続けます。

◯5km〜10km
10kmまでの次の5kmはペースをレースペースまで上げていきましょう。1kmあたり5分40秒前後で走行していきます。

◯10km〜15km
そして最後の15kmまでの5kmは1kmあたり5分20秒前後ぐらいまでスピードを上げてランニングを行います。

最後の5kmは心拍数も上がりやすく、非常にしんどいトレーニングになると思いますが、そのペースを体感していく事で、次にそのペースで走った時の余裕度が徐々に高まってきます。何度かそのペース設定で繰り返し、最後のセットがしんどくなくなってきたら、それぞれのペースを10秒ほど上げていきましょう。

ビルドアップ走の練習頻度

このビルドアップ走の頻度ですが、一般市民ランナーの場合、多くても週に2回、あるいは週に1回か2週に1回でも十分効果を発揮するでしょう。

ペース走よりも負荷が高い練習になりますので、あまり無理をせず、身体のどこにも痛みがないときに行うようにしていきましょう。

どこかを痛めた状態でこのトレーニングを行なってしまうと、その痛みの部位をかばったランニングフォームになり、あまり良い練習になりません。あくまでもコンディションをしっかり整えることを意識した上で、是非取り組んでみてほしい練習方法の1つです。

最後にワンポイント

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

ビルドアップ走のように、負荷の高いトレーニングは、1人で行わず、自分より速いランナーの方に引っ張ってもらうと良い練習になります。ランニング仲間も増やして、辛い練習を楽しい練習にする心がけも大切でしょう。