スタティックストレッチとは?効果とやり方、メニュー12選

監修者

佐藤公治

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

【プロトレーナー解説】スタティック(静的)ストレッチとは何か?その仕組み、特徴、効果、ダイナミック(動的)ストレッチとの違いや取り入れ方を解説します。さらに各部位の代表的なスタティックスストレッチのやり方をご紹介します。

スタティックストレッチ(静的ストレッチ)とは

そもそも、ストレッチとはどのようなものなのでしょうか?

佐藤公治監修トレーナーからのアドバイス

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

ストレッチングとはその名の通り、筋肉などを「伸ばす」という行為になります。今回はスタティックストレッチについて説明しましょう。

スタティックストレッチとは何か?

筋肉は、その両端が一つ、または複数の関節をまたいで骨についています。その筋肉の端と端を遠ざけるようにして、筋肉を伸ばしていくのが、スタティック(静的)ストレッチです。
(筋肉の端と端のうち、体の中心に近い方を「起始(きし)」、体の中心から遠い方を「停止」といいます)

この時、ストレッチによって伸ばされているのは、じつは筋肉だけではありません。
筋肉(筋繊維)を何層にもわたって取り囲んでいる結合組織の筋膜や腱、靭帯、関節包、さらには皮膚や神経、血管などの軟部組織(骨以外の組織)も、同時に伸ばされています。

スタティックストレッチは、筋肉を伸ばすことを狙って行いますが、結果的に、さまざまな組織の柔軟性を維持したり、向上させたりすることができるのです。

スタティックストレッチの主な効果

スタティックストレッチは柔軟性の向上のほか、数多くの効果が期待できます。

●関節可動域の維持・改善
軟部組織の柔軟性の向上の結果、関節の可動域(関節の動く範囲)を維持、または広げることができます。

●疲労回復
血管が伸縮することで血行が促され、筋肉内に酸素・栄養素がいきわたり、また疲労物質が効率よく除去され、疲労回復を促すことができます。

●腰痛、肩こりなどの予防
生活の中で同じ姿勢・動作を長く続けていると、特定の筋肉だけが硬く短くなってしまいます。この状態が、腰痛や肩こりの原因になることが多々あります。
(例えば下半身の左右、または前後の筋肉にアンバランスが生じると骨盤が歪み、腰痛の一因となります)
各部位のストレッチを行うことで筋肉のアンバランスが解消され、コリや痛みを予防・改善する効果が期待できます。

●リラクゼーション効果
ストレッチによって体がほぐれると、筋肉の緊張が緩和されます。また、深く呼吸する(息を吸う)ことによって副交感神経が優位になり、それによってリラックス効果が得られます。

ストレッチの種類と特徴

スタティック以外にも、ストレッチのやり方はあるのでしょうか?

佐藤公治監修トレーナーからのアドバイス

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

ストレッチは大別すると、「スタティック(静的)」と「ダイナミック(動的)」の2種類があります。

スタティックストレッチの特徴

スタティックストレッチは、反動を用いることなく、息を吐きながらゆっくりと静かに対象の筋肉を伸ばしていく、安全なストレッチ方法です。

反動を用いずに行うのは、反動をつけると筋肉が急激に伸ばされてしまうからです。
筋肉が急激に伸ばされると、体がこれは危険な兆候と察知し、筋肉がそれ以上伸びないようにブレーキをかけてしまいます(これを「伸張反射」といいます)。
スタティックストレッチでは伸張反射が起きないよう、ターゲットの部位をゆっくりと伸ばしていくことが大切です。

また、伸ばす際に息を吐くと、横隔膜が弛緩し(ゆるみ)ます。すると神経回路は、副交感神経が優位になり、筋肉をよりリラックスさせることができます。

スタティックストレッチは、体が温まった状態で行うと伸びやすく、また疲労回復に好影響を及ぼすことから、筋トレなどの運動後に行うことが推奨されています。
(単独で行う場合は、軽いウォーミングアップセットの後、15~30秒程度を目安に伸ばしていきます)。

ダイナミックストレッチの特徴

ダイナミックストレッチは、ある筋肉が収縮している(引き締まっている)ときは、拮抗筋(反対側の筋肉)は弛緩している(伸びている)という、相反神経支配による反射メカニズムを応用したものになります。

例えば、脚を振り上げてハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)を伸ばそうとします。このとき、反動を用いて脚を振り上げるのではありません。
拮抗筋である腸腰筋(太ももの付け根の筋肉)や、大腿四頭筋(太ももの表側の筋肉)などの股関節を屈曲する筋肉を収縮させることで、脚を高く振り上げます。
すると、ハムストリングスが反射的に弛緩し、ストレッチがかかりやすい状態となります。

このようにダイナミックストレッチは、ある筋肉を可動域いっぱいにまで収縮させ、同時にその拮抗筋を弛緩させるという動作を繰り返すことになります。
そのため、伸ばしたい箇所がどこなのかを明確にしてターゲット部位に効かせる、正しい動作が欠かせません。

ダイナミックストレッチは動きを伴って行うので、体を温めながらストレッチを行うことができ、そのためスポーツの準備運動に用いられることが推奨されています。

スタティックストレッチのやり方6選〜下半身編〜

各部位のスタティックストレッチには、どのようなやり方がありますか?

佐藤公治監修トレーナーからのアドバイス

ティップネス明大前にてパーソナルトレーニング活動中。NSCA認定パーソナルトレーナー、日本ストレッチング協会認定ストレッチングインストラクター。

ポジションや柔軟性によってさまざまなやり方がありますが、ここでは各部位の代表的なストレッチのやり方とコツを解説していきます。

大腿四頭筋(太ももの表側)のストレッチ

①横向きに寝て、両ヒザを曲げて腰を丸めます。上側の脚を後方へもっていき(かかとをお尻に近づけて)、上側の手でつま先を持ちます。下側の手は腕枕にするか床面に伸ばし、上体を安定させます。
②上側の脚のつま先を後へ引いて、太ももの表側を伸ばします。背中は反らせずに、股関節(太ももの付け根)を支点にして脚を後方へ引いていきます。

ハムストリングス(太ももの裏側)のストレッチ

①両脚を伸ばして座り、片方の脚のヒザを曲げて、足の裏を伸ばしている脚の太ももの内側につけます。
②胸を張って背すじを伸ばし、股関節を支点に上体を倒し、太ももの裏側を伸ばします。このとき、体幹が曲がって背中が丸くならないようにします。

腸腰筋(下腹の深部)のストレッチ

①正座をして、両手を床につき、片方の脚を後方へ伸ばします。もう一方の脚はヒザを曲げたまま横(外側)に出します。
②股関節を支点に上体を起こし(余裕があれば、曲げているヒザの側へひねり)、下腹の深部(太ももの付け根)を伸ばします。

殿筋(お尻)のストレッチ

①両手を後方に着き、ヒザを90度に曲げて座ります。片方の足のすねを、もう一方の太ももの上にのせます。
②胸を張って背中を真っ直ぐに伸ばしたまま、股関節から上体を前に傾けていきます。上になっている足側のお尻の筋肉を伸ばします。

内転筋(太ももの内側)のストレッチ

①四つん這いの姿勢から、片方の脚をつま先を前にして、横へ伸ばします。
②背すじを伸ばしたまま、お尻を後へ引いていきます。伸ばしている脚の股関節を支点に、太ももの内側を伸ばします。

腓腹筋(ふくらはぎ)のストレッチ

①立った姿勢から、足を前後に大きく開き、手を前脚の太ももにのせます(壁があれば、壁に両手を着きます)。
②後足のかかとを床に押し込むようにして、ふくらはぎの筋肉を伸ばします。

スタティックストレッチのやり方6選〜上半身編〜

大胸筋のストレッチ

①両腕を肩の高さに上げてヒジを曲げ、手の平をやや外側へ向けます。
②肩甲骨を後に引き寄せ、胸の筋肉を伸ばします。バリエーションとしてヒジの高さを下げると大胸筋の上部が、下げると下部が伸びやすくなります。また、壁に片手を着いて片側ずつ行うやり方もあります。

広背筋(背中、わきの下)のストレッチ

①両手を組んで頭上に上げ、肩甲骨を上げ伸び上がります。この時、手の平を下向きにすると、広背筋下部が伸びやすくなります。
②上半身を横に倒し、背中の側面を伸ばします。下半身は動かないように固定して行います。

三角筋(肩)のストレッチ

①両腕を腕組みするように胸の前に上げ、上側の手で下側の腕のヒジを持ちます。
②下側の腕を横方向へ引き、上側の腕の肩を伸ばします。上半身は捻らないように固定して行います。
※写真では、下側の手で上側の腕のヒジを持つ構図になっています。

上腕二頭筋(力こぶ)のストレッチ

①片方の腕を後方へ、ヒジを伸ばして引きます。
②手の平が上を向くように捻り、手首をやや内側に曲げて、肩・腕をさらに後方に引いていき、力こぶを伸ばします。

上腕三頭筋(二の腕)のストレッチ

①片方の腕を頭上に上げ、背骨に触れるようにヒジを曲げます。
②もう一方の手でヒジを持ち、横に引いて二の腕を伸ばします。

僧帽筋上部(首の付け根)のストレッチ

①片方の手で、頭の反対側の側面を押さえます。
②手を引いて頭を横に倒し、首の側面を伸ばします。伸ばす側の手を背中に回して、手の甲を腰に当てておくと、さらに強度が上がります。