より速くより長く走るマラソンのコツを伝授!プロトレーナーが解説!

監修者

藤井隆太

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

【プロトレーナー解説】マラソンのタイムがなかなか縮まないと悩んでいる方。マラソンを速く長く走るコツはあるのでしょうか?速く長く走るためには、ペース配分、呼吸法、ランニングフォーム、デッドポイント、セカンドウィンドウを意識する必要があります。今回は速く長く走るコツを解説します。

マラソンを速く走るためのコツ|①ペース配分

マラソン大会に出場するんですが、どうしたら速く走れるでしょうか?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

「マラソンに偶然はない」と言われるほど、マラソンは練習をしっかり積む事でしか結果は出しにくいのですが、できる限り練習を積んだという前提で、速く走るためのちょっとしたコツをお伝えしていきますね

ペース配分のパターン3つ

マラソンは、42.195kmやハーフマラソン、クォーターマラソンなど、様々なカテゴリーがありますが、今回は一番長い距離を走るフルマラソンに絞って内容を記載していきます。
フルマラソンは、オリンピックに出場するような選手でも2時間少しという時間が必要であり、マラソン初心者でも多くの大会で制限時間は7時間程度になっている事が多く見受けられます。これだけ長い距離をできるだけ速く走ろうと思うと、とてもペースが重要となります。

ペースに関しては、大きく3パターンが見られます。

1.前半つっこみ型
2.前後半イーブン型
3.力蓄え型

簡単には上記の3パターンが基本となります。

ペース配分のパターン|①前半つっこみ型

先ず1つ目の前半つっこみ型ですが、多くのマラソンランナーの方はこのパターンに陥るのではないでしょうか。言い換えると後半失速型とも言えます。

42.195kmともなると、なかなか練習で走る距離ではないため、経験が不足してしまいます。経験していない距離を走る場合はどうしてもペースを抑える事が難しく、20km走や30km走などで走っているペース配分で走ってしまいます。このペース配分で走ってしまうと、当然、後半にペースが乱れてしまい、速く走る事が難しくなってしまいます。

ペース配分のパターン|②前後半イーブン型

2つ目の前後半イーブン型、このペース配分が一番力が発揮できる(速く走る)と言われています。
しかし、このペース配分はかなり玄人になってこないと難しく、そう簡単には実現できないペース配分です。

ペース配分のパターン|③力蓄え型

3つ目が力蓄え型。つまり、後半にペースを上げていける走り方の事を言います。後半にペースを上げていこうと思うと、相当に力を蓄えておかなければなりません。なぜなら、多くのマラソン大会で後半は周りのランナーが失速してくるからです。自分がペースを上げなくても、周りが失速していくことで勝手にペースが上がっていると感じる事がありますが、多くの場合、良くてイーブンペース、場合によっては自分のペースも落ちているが、周りのランナーがさらに遅くなっている場合があります。

どのペース配分がベスト?

マラソンを速く走るためのコツの1つ目は、ペース配分を最初から最後まで同じぐらいで走る事がポイントです。マラソンはコツコツと走り続ける事が何よりも重要であり、難しいところと言えるでしょう。

マラソンを速く走るためのコツ|②呼吸法

呼吸について

2つ目は、呼吸法についてです。
呼吸の面白いところは、自分でコントロールができる事です。比較するために少し説明を加えると、私たちの心臓は自律神経という神経が繋がっており、私たちが自分の意思で心臓を止めようとしてもできません。

でも呼吸は別です。私たちが意識的に呼吸を止めようとすると、一時的には止められます。しかし、ずっと止めておくことは不可能で、酸素が足りないと身体が訴えてきた時には、すでに呼吸が無意識のうちに始まっています。
要するに、無意識のうちに始まるという意味では、自律神経(コントロールできない神経)が呼吸のリズムを作っていますが、自分で変えられるという意味では体性神経(コントロールできる神経)が呼吸のリズムを作っています。

速く走るための呼吸法

では、呼吸法はどのようにリズムをとるのが良いのでしょう。

①できるだけ大きく吸って大きく吐く(深呼吸)
②小刻みに吸う吐くを繰り返す
③いつもの呼吸を心がける

呼吸法には様々な考え方がありますが、マラソンで速く走るためには、いかに前半に力を使わずに蓄えるかが大切であるとペース配分のところでも書きました。

そのペース配分とも一致しますが、呼吸法はできるだけ「いつもの呼吸を心がける」事がまずは大切になります。

というのもランニング中に呼吸の事を考えるのは可能ですが、常に意識する事は難しく、余計な体力を消耗してしまうことになります。吸気(息を吸う)と呼気(息を吐く)の回数なども色々な考え方がありますが、意識することで疲れを前半にためてしまうと、後半まで同じペースが保てなくなります。そうなると、速く走る事から遠ざかってしまうため、先ずは一定の呼吸でいつも通りを心がける事が大切になります。

その上で、呼気と吸気の回数をコントロールしたり、それぞれの回数に変化をもたせて(例:呼気3回、吸気2回など)、自分が楽に走れる呼吸法を見つけていく事が良いと思います。

マラソンを速く走るためのコツ|③ランニングフォームのポイント

マラソンを速く走るためには、ランニングフォームも重要なポイントの1つになります。最近、着目され始めている言葉に「ランニングエコノミー」という言葉があります。走る時の効率性とでも言い換える事ができるでしょうか。
マラソンは、スタート地点からゴール地点にできるだけ速くゴールすることを目的とするスポーツですので、その間、いかに体力を温存しながら、勝負所で力を発揮できるかが問われるスポーツです。そういった意味合いで、ランニングフォームをいかに効率の良い状態に持っていくかが非常に重要視されています。

ランニングフォームを考える場合、ランニングフォームから身体の動かす部分を操作するのか、身体の動かす部分からランニングフォームを考えるのか(補強トレーニング)でも大きく異なってきますので、今回は特に大切なポイントのみご説明します。

ピッチとストライド

ランニングの走法(走り方)は、大きく「ピッチ走法」と「ストライド走法」に分かれます。
「ピッチ」とは1歩にかかる時間のことで、「ストライド」とは1歩の長さ(歩幅)を指しています。

このどちらのフォームを意識するかでランニングフォームは大きく変わりますが、一般的に日本人に適しているのはピッチ走法と言われています。

しかし大切な事は、日本人だから、どのフォームということではなく、あなた自身の身体状況に応じたフォームが必要になります。

例えば、足の関節が非常に硬い人が無理にストライド走法をしようとすれば、動かない関節を無理に動かすことになり、ランニング障害へ繋がりやすくなってしまいます。逆に関節が柔らかい人がピッチ走法を行うと、せっかく柔軟性があるにも関わらず、その機能を十分に使えない走法になってしまいます。どちらが良いかは非常に難しいのですが、走りながら、ご自身にあった走法を見つけていかなければなりません。

重心移動を上手く使う

私たちに誰もが共通してかかっている負荷が「重力」です。これは議論の余地のない部分であり、必ず全員に同じだけの負荷が常にかかっています。この負荷をどのように使うかが非常に重要になります。重力は垂直方向の力ですが、マラソンはスタートからゴールまでの水平方向へ進む力が必要になります。この水平方向の力をいかに垂直方向の重力から得るかがポイントです。

そのために重要な事は、自分の身体を1本の棒に見立てて、その棒が前に倒れていくイメージが重要になります。その倒れていく棒が倒れないように足が1歩1歩前に出て支えていくイメージで走れるようになると効率の良いフォームになり、結果的に速く走りやすくなるでしょう。

手足は釣竿のように使う

重心移動が上手く行えるようになれば、自分が楽な状況に任せておく方がいいでしょう。
イメージとしては、釣竿のように自分の体を使うことです。身体の中心(重心)を上手く使う事が出来れば、末端部分には自然と力が伝わるものです。

それを変に腕を振ろうとしたり、足を持ち上げようとしたりすると、非効率なランニングフォームへ繋がりやすくなります。
人それぞれ上半身・下半身の柔軟性や筋力が違いますので、決まった手足の動きは意識しすぎずに、最初は自分の走りやすい感覚に任せてしまいましょう。

着地も同様に自然に任せる

最近は、踵着地が良いのか、足裏全体での着地が良いのかなど、フォームの足の部分だけを取り上げて議論される事がありますが、これはほとんど意味がありません。

足がどのように着地していくかは、体の全体の使い方による影響を大きく受けます。そのため、着地だけでどれが良いかを議論すると、非常に難しさが出てきてしまい、それだけでは判断できない事になると思います。着地も変に意識はせず、釣竿を扱うように自然な着地を心がけていきましょう。それがあなたにとって、良い着地方法といえるでしょう。

マラソン大会で42.195kmを走っていると、その時の状況で色んな判断を迫られる事が出てきます。
先ずはピッチ走法とストライド走法を知っておく事、そして、重力を意識したフォームを身につける事が重要です。
そこからさらに高みを目指していく時に、自分の身体の状況を専門家にしっかりみてもらい、的確なアドバイスを受ける事が速く走るための近道だと思います。

マラソンを速く走るためのコツ|④デッドポイントとセカンドウィンドウ

ランニングを始めると感じる事があると思いますが、走り始めがしんどく感じて、数キロあるいは10~20分程度走った後に身体が軽くなってくるような感覚に陥ります。最初のしんどく感じる状態の事をデッドポイント、その後に身体が軽く感じ始める事をセカンドウィンドウと言います。

この原因については、一定の知見がなく、はっきりと言えませんが、安静時の心拍数が60回程度に対して、走り始めると、ゆっくりのペースでも120回程度まで増える事から、身体の中の酸素不足という言われる事が多くあります。デッドポイントに入った時にスピードを一度緩めた方が良いか、そのままをキープした方が良いかが難しいところです。賛否両論ある部分ですが、個人的には、強いデッドポイントを感じるペースでは、マラソンではペース配分が早すぎるか、練習を十分につめていない可能性があるので、一度スピードを落とすことをオススメします。

マラソンを速く走るためのコツ|⑤日々の練習

目標を持つこと

マラソンで速く走るためには、目標を持つ事が非常に重要です。ランニングが日課になり、走る事が好きになっても、大会で○○分以内などの具体的な数値化した目標がなければ、速く走ることは容易ではありません。目標は高すぎず、低すぎずで、ギリギリ達成できるかできないかぐらいの目標が良いです。
また、走る距離もマラソンの経験がない方は、10kmのレースやクォーターマラソン、ハーフマラソンが後半失速せずに走れるようになってきたら、フルマラソンへのチャレンジしていくというように、1つ1つ達成していける目標があるとよりランニングを楽しながら、より速く走る事ができるようになれるでしょう。

日々の積み重ね

最後は、一番重要な事です。速く走るためには、何より大切な事があります。練習をコツコツと日々続けることです。マラソンに偶然はないと言われるほど、マラソンは簡単に速く走る事ができません。だからこそ、マラソンで速く走れるようになった時の喜ぶは格別です。速くなるには、自分の努力を日々繰り返す中で、ペースやフォームなどを効率の良い方向へ進めながら、練習を続けていく事。これが一番大切になります。

より長い距離を求めた先には…

ここまで書いてきた通り、マラソンは42.195kmという長い距離ですが、この距離が難なく走れるようになってきたら、もう1つ上の世界が広がっています。それが「ウルトラマラソン」です。ウルトラマラソンは、フルマラソン以上の距離のマラソンを示す事が多いのですが、一番よくある大会の距離が100kmです。多くの大会では、日の出とともにスタートし、日暮れとともにゴールするような制限時間の設定になっており、マラソンというよりは1つの旅のような雰囲気すら感じさせます。マラソンが速く長く走れるようになってきたら、そのような長い距離に挑戦することもマラソンの楽しさの醍醐味かもしれませんね。