ランニング初心者こそ心拍数を活用しろ!心拍数の目安、計算方法、計測グッズも解説!

監修者

藤井隆太

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

【プロトレーナー解説】ランニングに心拍数を活用すると様々なメリットがあります。ランナーの心拍数の活用方法、心拍数の計測方法、心拍数と運動強度の目安、おすすめの心拍数計測グッズをご紹介します!

心拍数と脈拍数とは

ランニングも習慣づいてきたので、色々と興味が湧いてきました。最近は時計をつけるだけでも心拍数を測る事ができるって聞きますが、そうなんですか?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

ランニングが習慣づくと、ただ走るのも少し退屈に感じますよね。おっしゃる通りで、最近は時計をつけるだけで、手首で心拍数を計測できるようになってきてるんです。

やっぱりそうなんですね。でも心拍数を測ってもどう活用していいかわかりません。心拍数を活用する方法を教えてもらえないでしょうか?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

わかりました。実は腕時計で計測できるのは、心拍数ではなく、手首で測る脈拍数なんです。少し詳しく説明していきますね。

そもそも心拍数とは

私たちが身体を動かすためには、全身に血液を流す必要があります。これはなぜでしょうか?

血液は、私たちが口から入れたものを全身へ運ぶ役割があるからなんですね。
例えば、ほとんど無意識に行なっている「呼吸」です。呼吸では、主に酸素を吸い込み、二酸化炭素を吐き出す。これを1分間に12回〜16回も繰り返しています。吸い込んだ酸素は、私たちの身体の中へ入り、肺と言われる部分へ到達します。肺の端っこのようでは、血管と繋がっている場所があり、ここで酸素が血液内に流れて入っていくんですね。

血液内に入った酸素は、そのまま心臓へと流れ、再度心臓から私たちの手足へ流れていきます。この心臓から手足へ流れる血液を押し出す心臓の拍動回数のことを「心拍数」と言います。

心拍数と脈拍数の違い

心臓から出た血液は動脈を通って、手足へ流れていきます。この動脈で感じる拍動を「脈拍数」と言います。

心拍数と脈拍数は、同意語として扱われますが、心臓の病気などでは、心拍数は増えないのに脈拍数が増える事があったりしますので、念のため違いを知っておいた方がいいですね。とは言っても、一般的には、脈拍数は心拍数として用いられますので、今回は心拍数として扱い説明していきます。

初心者が心拍数を活用する4つのメリット

それでは、心拍数を活用した方が良いメリットについて、少し詳しくみていきましょう。

ポイント①:呼吸の変化と連動して考える

先ず、1つ目は呼吸数のデータと心拍数のデータの違いについてです。実はこの2つの数値、似たようで大きく違うんですね。何が違うかと言いますと、呼吸は半分随意的にコントロールできるんですが、心拍数は全く随意的にコントロールできないんです。

どういう事かと言いますと、呼吸というのは、私たちが意識すれば早くもなるし、遅くもできますが、心拍数はそれができないんです。つまり、走っていてしんどいし、やめたいなと思うと呼吸数は勝手に上がりやすくなってしまいます(呼吸が乱れると走るのをやめられるという脳の錯覚)が、心拍数は上がっていない場合があるんですね。心拍数は身体が必要としているエネルギーを届ける事が役割なので、メンタル的に走るのをやめたいなと感じていても、身体にそれほど負荷がかかっていなければ、勝手には増えたりしないんですね。

要するに、今身体にかかっている負荷に対して、心拍数は嘘をつかない、呼吸数は状況によっては嘘をつくという事が言えます。そのため、呼吸数の変化とともに心拍数の変化を捉えておくと、本当に必要なトレーニングができるということになります。

ポイント②:エネルギー消費の割合

次に、エネルギー消費についてです。私たちが走るためには、大きく分けて2つのエネルギーを消費します。それは「糖」と「脂肪」です。これも心拍数と深い関わりがあります。

結論から申しますと、心拍数が低いぐらいのペースで運動をすると、主に「脂肪」がエネルギーとして消費され、心拍数が早いぐらいのペースで運動をすると、主に「糖」がエネルギーとして消費されます。

これは、トレーニングの強度を設定する上で非常に重要で、糖をよく使用する走り方をしてしまうと、身体の中に乳酸という筋肉を疲れさせる物質が溜まりやすくなって、運動を継続できなくなってしまいます。この乳酸が溜まりすぎないペースで走るためにも、自分にあった心拍数レベル(運動強度)で走る事が重要と言われています。

ポイント③:自律神経系

次に、自律神経系の問題です。心拍数は、最初の呼吸数との関係でも述べた通り、「自立」して動きます。つまり、私たちが意識的に止める事が不可能という事です。私たちが意識して変化を与えられない神経を「自律神経」と言い、この神経は精神面の影響を大きく受けるとされています。

例えば、ストレスや疲労が溜まっていると、安静時の心拍数が増えて、全身の筋肉の緊張が高まってしまいます。筋肉の緊張は血管の圧を高める要因の1つとなり、結果的に心拍数をさらに増やしてしまいます。心拍数が増えれば、運動強度が増してしまいますので、これまでにご説明してきた呼吸数は乱れやすくなり、エネルギー消費も糖が中心になりやすくなります。

その結果、高強度の運動が行いにくくなったり、レースで結果を出しにくくなってしまいます。そのためも、安静時の心拍数も含めて、心拍数を把握しておく必要があります。

ポイント④:筋肉の緊張度合い

最後に心拍数と筋肉の緊張度合いですが、これも自律神経のところで少し触れましたが、心拍数が高くなると、筋肉はそれだけ血液を速く流していることになりますので、心臓の筋肉(心筋)に負担が多くかかります。

筋肉に負担が多くかかるということは、筋肉の緊張が高まることを意味し、その状態では長時間の運動は困難になってしまいます。そのため、心拍数を適切に保てるランナーは筋肉の緊張度合いもコントロールしやすくなり、レースでの良い結果に繋がりやすいと言えます。

心拍数の計測方法

何となく、ランナーとして心拍数は計測した方が良い事がわかりました。でもどうやって計測したらいいのでしょう?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

そうですね。計測の方法は大きく分けて3つあります。解説していきますね。

①胸ベルトを使用する(心電式)

先ず、一番信頼性の高い計測方法をご説明します。最近では、後にご説明する手首の時計での心拍数の計測が増えていますが、一番信頼性の高い計測方法は、やはり胸ベルトの使用です。胸ベルトを使用して心拍数を計測する場合、病院で心電図を計測する方法と同じ方法をとります。

②腕時計を使用する(光学式)

次に腕時計型の計測方法です。この方法は、光学式心拍計センサーを用いますが、そもそも心拍数そのものは計測していません。皮膚に対して、光を当てて、その透過性を見ることで心拍数を計測しています。この方法では、心電式に100%近づけることは技術的に難しいと言われていますので、ある程度の目安で利用する方が良いかもしれません。

③自分で計測する(手動)

最後に、意外にもこの方法が誤差が少ないかもしれません。自分で計測する方法です。手首の親指側に橈骨動脈という動脈が流れています。ここを自分の指で押さえて「ドクドク」と脈打つ回数を自分で数えます。30秒間数えたものを2倍すれば、その時の心拍数を知る事ができます。

心拍数の活用方法|心拍数と運動強度(ペース)の目安

心拍数の計測方法にも色々とあるんですね。よくわかりました。でもこの数値、どのように利用していけばいいのでしょう?

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

そこが一番大切なところですね。ここが初心者の方こそ心拍計を利用した方が良い理由にも繋がりますので、詳しくご説明していきますね。

心拍数で運動強度(ペース)を決める

心拍数は、ランニングを行う上で、運動強度を設定するのにとても重要です。アメリカ心臓協会(AHA)では下記のような運動強度の設定が良いとされており、日本の心疾患に対する運動療法のガイドラインでも引用されています。

つまり、心拍数の運動強度では「220ーあなたの年齢」これを最大心拍数として、これに0.5〜0.7を掛け算した時の心拍数程度で運動をする事が望ましいとされています。

例を上げておくと、40歳の方であれば、220ー40=180。これに0.5〜0.7を掛け算しますので、心拍数は90〜126回/分程度で運動をすると良いという事になります。先ずは、この程度の強度で20〜60分、週に3〜5日続けられるようになる事が望ましいでしょう。

初心者こそ心拍数を利用した方が良い最大の理由

藤井隆太監修トレーナーからのアドバイス

理学療法士、認定ランニング指導員、TOGUインストラクター、SpineDynamics療上級認定セラピスト、mysole®︎ベーシックマイスター

最後にランニング初心者の方が、心拍数を利用した方が良い最大の理由をまとめておきます。

私はもう8年近くランニングを続けており、フルマラソンもサブ3がもうすぐ!というところまで来ています。ここまでくると、正直な感想としては、心拍数は必要ないと感じています。なぜでしょう?心拍数は、私たちの身体にどのような負荷がかかっているかを客観的に伝えてくれます。これは安全に程度な運動強度でランニングをするためには非常に重要な事です。これにより、心拍数を計算して、高くなっていたら、少し意識して強度を下げる事ができます。

ランニングは、良くも悪くも私たちの身体に前向きなホルモンを放出したり、自律神経の交感神経を刺激して、あまり負荷がかかっていないような錯覚に陥る事があります。ランナーズハイなどの感覚がそれに近いものですが、これが非常に危険です。運動習慣がない方で心臓発作などが生じる原因の1つに「急な運動」があげられます。これは、中高年の方に関わらず、若い学生でも同じです。電車に間に合わないからと、普段運動していない人が走って電車に駆け込み、急に電車内で動かないということをすると、心臓に急激な負荷が加わり、心臓発作が生じるというのはよくある話です。

学校の持久走で普段運動していない学生が頑張りすぎて倒れたというニュースも後を絶ちません。ランニングは非常に身体に良いものですが、急激な心拍数の増加は非常に身体に悪いということも頭のどこかに入れておかなければなりません。そのため、初心者の方ほど、心拍計を用いて運動強度を設定していただき、安全にランニングを楽しんで頂きたいと思います。逆にランニングの玄人になってくると、体感である程度の心拍数の予測ができるようになってきます。そこまできたら、心拍計を手放す時期なのかもしれませんね。

ランニング時に心拍数を計測するグッズ

ランニングをしている時に心拍数を計測するグッズは、先ほどご説明したような、胸ベルトタイプと腕時計タイプがあります。初心者の方にオススメしているのは、最近ではやはり腕時計タイプだと思います。数年前に出てきた時は、計測の誤差が大きく、とても使えるものではありませんでしたが、今は改良されて、かなり精度が高くなってきています。その中でも、市民ランナーがよく使用しているメーカーを3社ご紹介します。

Garmin(ガーミン)

Garmin は単に製品を設計・販売するのではなく、ライフスタイルを包括的に捉えています。航空機から船舶、自動車からフィットネス、無線ソリューションからアウト ドアレクリエーションまで、Garmin の従業員たちは、空中に、水上に、森の中に、ハンドルの後ろに、あらゆるところに考えを巡らし、適応かつ改善する方法を考えています。ランニングの腕時計もかなり多くの種類が出ており、それぞれのライフスタイルに合わせて選択する事が可能です。

Suunto(スント)

スントは80年以上前にフィンランドで誕生しました。トップレベルのオリエンテーリング選手であり、熱心なアウトドア愛好家であったトーマス・ヴォホロネンが、溶液充填コンパスの大量生産方法を発明したのです。「Suunto」は、「方向」という意味のフィンランド語に由来し、「スーント」と発音します。スントは、腕時計タイプが販売される前に、胸ベルトタイプで心拍計を計測できる商品を多くラインナップしていました。今では腕時計での心拍数計測が普及したため、その商品も多くなってきています。

EPSON(エプソン)

エプソンといえば、プリンターを想像する方が多いと思いますが、エプソンも心拍が計測できる時計を販売しています。しかも、上記2社と比べると、スポーツウォッチとしての歴史は浅いのですが、日本製ということもあり、人気も出ているようです。

ランニングウォッチの機能には、大差ないところまで各製品の質が高まっているので、ご自身の会社の好みやデザインを重視して選ばれると良いかもしれませんね。