三角筋の痛みの対処法とは?原因別に治し方を解説【専門家監修】

監修者

ヒラガコージ

柔道整復師/ランニングアドバイザー

三角筋は筋トレだけでなく日常生活動作にも重要な筋肉。肩周辺の痛みや痺れ、四十肩などが三角筋にも原因がある事も多いです。今回は三角筋が関与して痛みが発生した時のタイプ別原因とその対処法(ストレッチなど)をご紹介。病院に行っても治療院でツボをついても解決しなかった方、必見です。

そもそも三角筋とは?三角筋の構造と働き

三角筋って名前は聞いたことあるけど、どんな筋肉ですか?

ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス

柔道整復師/ランニングアドバイザー

三角筋は肩口にある筋肉で鎖骨、肩甲骨から腕の骨(上腕骨)に向かって付いています。

肩の上げ下げや腕振りに活躍します。腕を支える筋肉のため、上半身の動きには必要不可欠です。

ただ、一瞬のパワーは大きいですが、面積は小さくスタミナが少ない筋肉のため、筋トレのフォームが崩れたり、日常生活で重い荷物を持ち続けたりすると金属疲労のような事を起こして痛みを発してしまう事もあって注意が必要です。

三角筋は前・上・後と3つの方向から上腕骨に向かっている筋肉です。

全体像では中心から外方に向かってついているため、腕を外に開く運動におおきに活躍しますが、場所によって、前部は腕を前にあげたり、後部は腕を後ろにあげる時に活躍し、多彩な動きに関与する筋肉です。

比較的に体表に近い部分にあるアウターマッスルであり、肩甲帯にのみ付着している筋肉です。

そのため、肩関節の瞬発的な動きには秀でている反面、肘関節や手関節などとの直接的な関与はなく、荷物を手で握って腕を持ち上げるなど支点と作用点が大きく離れた時には力負けを起こしてへこたれてしまったり、持続的に力を入れ続けたりすると、すぐに疲れてしまったりなどといった弱点もあります。

三角筋を痛める原因とは

運動をしていないのに日常生活の中で三角筋を痛める原因

激しい運動をしていないのに、なぜ三角筋が痛むのでしょう?

ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス

柔道整復師/ランニングアドバイザー

普段の腕の使い方に問題が出やすいです。腕の根元を支える三角筋の使い方を見直して見ましょう。

先述した通り、三角筋とは肩口から腕に向かって付いている筋肉。腕の重さは平均して片方で3~4kg。それを支える為に三角筋が働きます。

ただ、三角筋のこのような使い方は猿人になってからなのをお気づきでしょうか。

私たち人間の祖先は四足動物で、私たち腕や手と呼ぶものも地面に着いていました。
その中で三角筋は腕(四足動物では前肢)を前にあげる時に収縮します。

ただ、それだけでなく、腕に体重がかかった時に肩関節の保持にも働く為、本来の役割は関節動作だけでなく関節保持でもあります。

重い荷物も持ち続けて腕(肩関節)が引っ張られた状態を続けると、三角筋が伸張しすぎて逆に硬くなり動きが悪くなります。これが運動をしない方の三角筋の不調や痛みに繋がる原因の一つでしょう。

現代は日常生活で腕に強い重さをかけて暮らすようになり、歩行や深い屈伸動作、座位によって四肢に体重がかかる状態が失われてしまった事で体幹部の筋肉が弱化していき、三角筋とって非常に不利な時代になっています。

また、慢性的な運動不足やデスクワークによって現代人は肩こりが多くなっているため、余計に三角筋を含めた肩関節の動きは不十分になっています。

これらを意識して改善していく事も三角筋の痛みを改善するポイントになるのです。

筋トレ・運動で三角筋を痛める原因

三角筋を痛めてしまうトレーニングはありますか?

ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス

柔道整復師/ランニングアドバイザー

三角筋を鍛えるトレーニングにもたくさんの落とし穴があります。少し違った目線でご紹介します。

ボディメイクや代謝アップによるダイエットなどの筋トレで三角筋を鍛えるようになりますが、そのトレーニングフォームや意識するポイントを誤ると、いきなり三角筋を傷めてしまします。

そのヒントが先述した「てこ」です。
小学生の時に理科の授業で学んだ「てこ」。ものすごく重いものを軽く持ち上げたり移動させたりするための理論。
作用点、動きを支える支点、実際に動かすために力を発揮する力点

この三つから成り立つわけですが、三角筋を鍛えるトレーニングをする際、一般的なトレーニングとしてダンベルやマシンを用いたトレーニングでイメージして見ましょう。

ダンベルを肘が曲げられた状態で持ち上げる「ショルダープレス」、立位や前傾位でダンベルをひじが伸ばされて前から持ち上げる「フロントレイズ」、同じく立位や前傾位でひじが伸ばされて外から持ち上げる「ラテラルレイズ」を行なった場合。

三角筋の力だけでダンベル持ち上げようとすると作用点がダンベル、肩関節が支点、三角筋が上腕骨についている筋の停止部が力点となります。作用点と力点、支点がとても離れていて、三角筋だけで持ち上げようとするとダンベルの重り、負荷以上のパワーが求められてしまうのです。

もちろん個人差はありますが、それほどトレーニング歴が長くなかったり、トレーニング頻度が高くなかったりする人であれば、500mlのペットボトルに水が入った程度の負荷でもいいでしょう。
そしてもっと大きな負荷を持ち上げたたい、もっと強い負荷を身体にかけたいと思う方は、肩甲骨を寄せて背筋群によって支点の強度を高めた上で重いダンベルを持って三角筋(肩関節)を動かす事がいいでしょう。

三角筋を痛めるとその先に起こる問題

三角筋を痛めるとその先には何か問題がありますか?

ヒラガコージ監修トレーナーからのアドバイス

柔道整復師/ランニングアドバイザー

三角筋自体の痛みだけでなく、三角筋が働かない時期が長引くと肩関節全体の問題へ発展する事もあります。

三角筋の筋力不足から四十肩に?

三角筋は肩関節を動かすに当たって非常に大切な役割を担っています。肩をすっぽり囲っている筋肉であるため、肩関節の適合性を保ちながら肩関節の運動を起こしている重要な筋肉です。

しかしながら、三角筋を炎症等で働きが不十分でその上普段からあまり肩関節を守るためのインナーマッスルとなる肩腱板が不足していたり腱板断裂・損傷をおこしていたりする場合、肩関節の適合を保持する力が著しく不足します。

関節の支持力が失われると、手で荷物を持ったり、腕周辺で運動を起こしたりする際に肩関節周辺の骨は重さに引っ張られる形になりますが、骨は引っ張られる力が働いた際、骨の中にあるカルシウムが外に引き出される傾向があります。(骨ピエゾ効果)

三角筋が使われていない間に肩関節周辺の骨からカルシウムが漏れ出すと、そのカルシウムが関節や筋肉に付着し、石灰化まで行くと肩関節周囲炎(四十肩の正式名称)となってしまうのです。

三角筋の痛みが長続きしていたり、痛みが治って動かせるようになっても運動をサボってしまったりすると二次災害を引き起こす可能性があるため、要注意です。

手軽な三角筋の痛みを解消する方法とトレーニング

普段からあまりトレーニングをしない方でも普段の身体の使い方を少し気にするだけで三角筋の痛みの軽減や改善が期待できます。
ジムに通わず日常生活でもできるものをご紹介いたします。

急な痛みに対応する為にはアイシング

三角筋の怪我はほとんどが一部の場所を酷使するオーバーユースか血流不足によって筋肉が固まってしまうロッキングです。

特にオーバーユースの場合、筋肉の付着部になる腱を傷める事が多いです。そこですぐに行えるものがアイシングです。

プロ野球の投手が登板後に肩や肘に氷嚢を当てて包帯でぐるぐる巻きにしています。あんなイメージで炎症が収まるまで、とにかく冷やす事が重要です。

冷やす手段は氷が断然理想的ですが、現実的に難しい時には保冷剤湿布で代用してもいいでしょう。

ただ、熱を取りきるという観点だと、保冷剤の場合必要以上に皮膚が冷えてしまったり、湿布の場合、炎症部の熱が取り切る力がなく熱が停滞してしまったりする事があります。氷嚢も湿布も時間を20分程度に限定して行うことをお勧めします。

ペットボトルで行うラテラルレイズ

ダンベルを左右の手に1つずつ持って、腕を伸ばして広げたら外側から腕を上げていくのがラテラルレイズ。
フリーウエイトでは代表的なトレーニングの一つですが、ダンベルを使う場合は体幹部の力の使い方をしっかり意識しないと肩関節三角筋をすぐさま傷めてしまいます。
そこでトレーニングをあまりやらない方や初心者の方には500mlのペットボトルを使ったラテラルレイズがオススメです。

<やり方>
①2つの500mlのペットボトルに水をきっちり入れる
②左右の手に500mlのペットボトルを持って立位または座位になる
③肘を伸ばしたら肩甲骨を寄せて鳩尾(みぞおち)を前方に突き出すように胸を張る
④肘を伸ばして肩甲骨(特に下の方)をしっかり寄せ続けながらゆっくりと左右の腕を外側から持ち上げていく
※腕をあげるのは肩の高さよりやや上まで。首に力が入らないよう鳩尾と肩甲骨の意識をしっかり持ちましょう。
1日10回3セットを目安に行ってください。

※下の動画はダンベルで行った場合のラテラルレイズの例です。

簡単な四つ這い腕立て伏せ

腕立て伏せと聞くと腕や胸の筋トレとイメージされる方が多いと思います。確かに腕や胸も鍛えられますが、三角筋にも効果的な筋トレとなります。
さらに一般的な足を伸ばして爪先立ちの形では行わずに、膝をつく四つ這いで行えば負担が少なく、ダイレクトに上半身、特に肩関節に程よい負荷がかかります。

<やり方>
①膝をついて四つ這い姿勢をとります。
②手同士の幅は肩幅から各20cmずつ外に開いたところにします。

③肩甲骨を寄せ合った状態で肘が90度になるところまで身体を下ろします。
④肘が90度まで曲がった事が確認できたら、そこからゆっくり元の四つ這いまで戻っていきます。この時、肘を伸ばし切っても肩甲骨の寄り具合を変えずに、次の回数に迎える事が理想的です。
1日5回2~3セットがいいでしょう。

簡単な方法でも三角筋の痛みを改善できる方法はありますが、重要なのは痛みがあるうちはアイシングでしっかり消炎に努める事と運動をする際には肩甲骨や鳩尾の意識を忘れない事が重要です。

三角筋の効率かつ安全な筋トレ

三角筋が痛くて整体や治療院で診てもらっても、治療の直後だけは調子が良くて明確な原因の改善にならなかった方、病院でレントゲン撮影をして骨などに異常はなく運動不足を指摘されたけど何をしたらよいかわからない方。トレーニングをしているけれども三角筋に安全なフォームがわからない方。

そんなみなさんに、解剖学をベースに安全で効率の良いトレーニング方法をご紹介します。

ベンチプレス/ダンベルプレス

トレーニング、特にフリーウエイトトレーニングでは代表的な種目になる、ベンチに仰向けになって負荷をかけた状態で天井方向へ腕を押し上げていくプレス。
イメージは大胸筋という胸の筋肉をメインに使いますが、三角筋の前部(鎖骨側)にも十分な効き目があります。

<やり方>
①ベンチやベッドに仰向けになり、負荷となるバーやダンベルを持つ。
②鳩尾(みぞおち)を突き出しながら肩甲骨を寄せ、背中を反らしながら背中の中心部がベンチから離れて背骨のアーチを作る。
③背骨を反らすタイミングに合わせながら胸を張って徐々にひじを曲げながら、持っているバー、ダンベルを引き下げていきます。

③バーやダンベルを目一杯引き下げたら、バーを持つ場合はそのまま真っ直ぐ天井へ、ダンベルを持つ場合は天井方向へ押し上げながら、身体から一番離れたところで左右のダンベルがくっつくように押し上げます。
※ダンベルやバーを下ろす時はもちろんの事、天井方向へ押し上げていくときも肩甲骨同士を寄せて鳩尾を天井方向へ突き出したまま行うことが重要なポイントなりますので意識して行いましょう。

トレーニングをあまりしない方、機能改善だけを目指したい方は1~3kgぐらいの負荷でも十分です。

アップライロロウ

三角筋と合わせて首元の筋肉が鍛えられるとして知られているアップライトロウ。

これにはもう一つメリットがあります。
サイトレイズやラテラルレイズなど腕を伸ばしてダンベルなどの負荷を持ち上げるエクササイズに比べて、支点力点と作用点が近い為、三角筋を痛めるリスクがグンと下がります。初心者や三角筋が弱い方にはこちらがおすすめです。

<やり方>
①左右のひじを曲げて、ダンベルかケトルベルを1つだけ胸の前で持ちます。
②安定する立ち方をしたら、肘を外側に向けながら肩→肘の順番で曲げて持ち上げます。
③顎の前まで持ち上げたら、すぐに降ろさずにピタッと止める瞬間(理想は1~2秒)を作りましょう。

※ダンベルやケトルベルを持ち上げる際、肘から持ち上げてしまうと肘周辺の筋肉にパワーを取られてしまい、また首に力が入った状態でダンベルを持ち上げてしまうと首の筋肉(僧帽筋)に力を取られてしまいます。

トレーニング効果を効かせたい筋肉が三角筋に狙っている為、肩から動かすようにしましょう。
ただ、この時も背筋に力が入っておらず、三角筋と肩関節のみに力を依存してしまうと三角筋に強すぎる負荷がかかってしまう為、肩甲骨同士を寄せた状態の上で行うことが大切です。